恋愛未経験者同士の恋愛模様
シェリル・ハルフウェートは侯爵令嬢でありながら、母親の不義の子である疑いをかけられて実子と認められず、満足に食事も与えられずに召使い同然の扱いを受けていたため、恋愛の経験すらなかった。一方シェリルの夫であるグレイグ・セノーデルも30歳をすぎて初恋を経験し、それが実らないままシェリルと結婚したため心に傷を負っている。そんな二人の手探りで不器用な恋愛模様が本作の魅力で、最大の特徴となっている。
忍耐強く、心優しいヒロイン
シェリル・ハルフウェートは召使い同然の扱いを受けていたため、薪(まき)の火起こしや料理、洗濯も完璧にこなすことができる。そんな中、流行病で使用人たちが病魔に倒れた際には、たった一人で屋敷を走り回り全員の看病をするなど、心優しく振る舞って気丈な一面を見せる。またグレイグ・セノーデルから受け取るはずだった支度金はハルフウェート侯爵家が詐取したため、衣服はセノーデル家のある雪深い地域には似つかない薄手のドレスしか持っていなかった。しかし、シェリルは新しいドレスをねだることもなく、わずかな暖を取って寒さに耐えていた。その後も、使用人に物腰柔らかく優しく接する姿を目の当たりにしたグレイグは、シェリルの本当の人柄を知り、妻として対等な関係を築いていく。なお当初からシェリルの振る舞いを間近で見ていた、執事のテリーをはじめとする使用人たちは、彼女の悪い噂(うわさ)がデマであることを確信していた。
恋敵は傲慢な性格の、妹リリア・ハルフウェート
シェリルの恋敵となるのは、グレイグが本来求婚するはずだったシェリルの妹であるリリア・ハルフウェート。リリアは、ハルフウェート侯爵に似た宝石のようなブルーの瞳と、艶のある金髪ロングヘアの見目麗しい美少女。夜会ではシェリルを名乗り、淑女であるリリア自身の振る舞いによってシェリルの名誉を回復すると嘯(うそぶ)いているが、その本当の目的は自らの健気さをアピールするためである。そして、裏ではシェリルのことを「高慢な男好きの尻軽女」と偽りの噂を流していた。実際のリリアは傲慢な性格で、たびたび男性と問題を起こしている。
登場人物・キャラクター
シェリル・ハルフウェート
ハルフウェート侯爵令嬢で、グレイグ・セノーデルの妻。黒髪のロングヘアに黒い瞳を持つ。しかし、両親の外見を受け継いでいないため、父親からは不義の子であると断定され、召使い同然の扱いを受けていた。そんな中、グレイグに求婚されて嫁いだものの、彼が求婚したのは妹のリリア・ハルフウェートだと知り、落胆する。そしてグレイグから1年後に離縁されることを受け入れて客室に滞在している。父親と継母はリリアばかりをかわいがり、愛情に飢えて育ったため自虐的で自己肯定感が低い。物腰が柔らかく使用人にも優しく接しており、その人柄がグレイグにも伝わって愛情を注がれるようになると、本来の明るさを取り戻す。
グレイグ・セノーデル
辺境伯を任されている青年。赤みがかった茶髪をしている。夜会で出会ったリリア・ハルフウェートをシェリル・ハルフウェートだとカンちがいして求婚したため、シェリルが嫁いで来た時は驚愕(きょうがく)した。結婚当初はリリアが悪意を持って流した「シェリルは高慢で男好き」という噂を信じて嫌悪していたが、本当のシェリルが心優しく忍耐強い人物であることを知り、次第に愛するようになる。シェリルに手酷(てひど)い仕打ちをした自分は夫にふさわしくないと悩み、彼女にふさわしい男性を探すものの、思った以上にシェリルを大切に思っていることを自覚し、正式に求婚した。30歳にして遅い初恋をするが、実らなかったため心に傷を残している。
クレジット
- 原作
-
ヤマトミライ
- 構成
-
となり凛 , Amary
書誌情報
間違いで求婚された女は一年後離縁される 全4巻 双葉社〈モンスターコミックスf〉
第1巻
(2022-05-08発行、 978-4575414622)
第2巻
(2022-09-09発行、 978-4575414837)
第3巻
(2023-03-10発行、 978-4575416022)
第4巻
(2023-08-10発行、 978-4575417081)