あらすじ
45歳となった高橋加代子は、数々の恋愛の果てに高橋修一と結婚し、性格や価値観の違いに悩みながらも、15年間いっしょに生活を共にしていた。しかしある日、加代子は修一からいきなり離婚を切り出される。加代子は結婚当初からずっと修一に無関心で、妻としては褒められることはなにひとつしていなかった。しかし修一はいつも優しく、絶対に自分を見捨てることはないと言っていたため、加代子はすっかり安心しきっていたのだ。突然のことで現実を受け入れられない加代子は、そのまま家を飛び出し、その日から友人の藤堂ヒロミの家に転がり込む。一方のヒロミは、夫の藤堂秀樹に浮気され、息子の藤堂耀司は秀樹の不倫相手である寿子の家に入り浸っている状況にあった。ヒロミは加代子に、修一も絶対に浮気をしており、離婚の理由も女性がかかわっていると指摘。しかし数日後、自宅に戻った加代子は、修一から衝撃の事実を打ち明けられる。修一は浮気をしているのではなく、友人として親しくなった本田詩織に片思いをしているだけで、しかも詩織からは既婚者とは交際できないと、すでにふられていたのだ。それでもあきらめきれない修一を、いつしか加代子は応援するようになる。
関連作品
ハッピーマニア
本作『後ハッピーマニア』は、安野モヨコの『ハッピーマニア』の続編となっている。前作は本作の15年前、高橋加代子(旧姓・重田加代子)の独身時代の物語で、加代子と藤堂ヒロミ(旧姓・福永ヒロミ)が、幸せをつかむために数々の男性たちと恋愛の末に、それぞれが高橋修一と藤堂秀樹と結ばれるまでを描いている。
登場人物・キャラクター
高橋 加代子 (たかはし かよこ)
主婦の女性。高橋修一の妻で、年齢は45歳。時おりアルバイトやパートに出ることはあるが、定職には就いていない。旧姓は「重田」で、独身時代は「シゲカヨ」のあだ名で呼ばれていた。ショートヘアのスレンダーな体型で、スタイル抜群。服装や髪形にこだわりを持っているため、実年齢よりも若く見える。しかし、性格はわがままで子供っぽいところがあり、高橋加代子自身それを自覚しつつも、なかなか改善できずにいる。15年前、紆余曲折の末に現在の夫である高橋修一と結婚するが、新婚時代から性格の不一致を痛感し、家出をしたり、浮気をしたり、気に入らないことがあると修一に暴力を振るったりと、身勝手に振る舞っている。しかし、それでも修一はいつも自分に優しかったため、いつしか修一は自分が何をしても許してくれると、慢心するようになる。しかしある日、突然修一から別れを切り出され、深いショックを受けつつも、少しずつ現実を受け入れるようになる。そして、修一とその片思い相手である本田詩織の恋愛を応援することに決め、加代子も自らの幸せを新たに模索し始める。
高橋 修一 (たかはし しゅういち)
会社員の男性。高橋加代子の夫で、年齢は41歳。スポーツ刈りで、眼鏡をかけている。食事や生活習慣など健康に気遣っているため、新婚の頃から若々しく、現在も実年齢よりも若く見える。加代子からは、今も「タカハシ」と名字で呼ばれることがある。誠実でまじめな性格で、家事も積極的にこなし、お金に関しても堅実でしっかり者。しかし恋愛経験が乏しいため、夢中になると一人だけでテンションが高くなってしまう。その結果、歯の浮くようなセリフを言ったり、人の気持ちを考えない行動を取ったりと、相手を困惑させることも多い。15年前、さまざまな困難を乗り越えて加代子と結婚し、彼女の精神的に不安定な人間性も理解したうえで、加代子一筋の人生を送っていた。しかし半年前、駅で体調を崩していた本田詩織を介抱したことがきっかけで詩織に惹かれるようになり、加代子との離婚を決意する。だが、加代子に離婚を切り出す前に、詩織には既婚者とは交際できないと言われてふられており、片思い状態にある。それでも詩織にアプローチを続けているが、思いは空回りしている。
藤堂 ヒロミ (とうどう ひろみ)
化粧品会社の社長を務める中年女性。藤堂秀樹の妻で、藤堂耀司の母親。年齢は50歳。一時は大阪府に住んでいたが、現在は東京都に住んでいる。高橋加代子とは少し歳が離れているが、独身時代から非常に仲がいい。そのため加代子からは、現在も旧姓の「福永」から「フクちゃん」というあだ名で呼ばれている。ウェーブボブヘアのスレンダーな体型で、スタイル抜群。仕事柄もあり、服装や髪形にこだわりを持っているため、実年齢よりも若く見える。歯に衣(きぬ)着せぬ言動で、気の強い性格をしている。また、他者の問題点もはっきりと指摘するため、自分を甘やかしがちな加代子とは相性がよく、彼女のお姉さん的な存在となっている。しかし、この性格や主婦業の傍ら始めた仕事が大成功を収め、多忙すぎることが原因で家族とは距離ができている。そのため現在は、秀樹の不倫相手である寿子の家に息子の耀司も入り浸っていることを知りながら、これを黙認している。そんなある日、加代子から高橋修一と離婚の危機にあることを知らされ、自分の経験を活かしたアドバイスを送る。
本田 詩織 (ほんだ しおり)
薬剤師の女性。年齢は30代で、高橋修一の思い人でもある。胸まで伸ばしたロングヘアに眼鏡をかけ、一見地味な印象だが、薄化粧でもわかるほどの美人。加えて、優し気な雰囲気と愛想のよさで男性受けが非常にいい。ストーカー被害に遭ったことがあり、それからは必要以上に男性とのかかわりを避け、恋愛から遠ざかっていた。そんなある日、電車で気分が悪くなった際に修一から介抱され、これがきっかけで親しくなり、彼に恋愛感情を抱くようになる。しかし、修一が既婚者であることを知ってからは距離を取るようになるが、忘れられずにいる。
藤堂 秀樹 (とうどう ひでき)
会社員の中年男性。藤堂ヒロミの夫で、藤堂耀司の父親。癖のある髪の毛を撫で付け髪にしており、顎ひげを生やして、眼鏡をかけている。結婚当初はヒロミと仲がよく、彼女の気の強い性格も好んでいた。しかし、ワインスクールで出会った寿子と不倫関係になってからは、彼女に骨抜きとなって家に戻らなくなっている。ヒロミと仲のいい高橋加代子のこともよく知っている。
藤堂 耀司 (とうどう ようじ)
高校生の男子。藤堂秀樹と藤堂ヒロミの息子。マッシュヘアで、顔立ちはどちらかというとヒロミに似ている。幼い頃、高橋加代子に面倒を見てもらっていたこともある。父親の秀樹が寿子と不倫していることを知ったうえで秀樹に味方しており、現在は寿子の家に入り浸っている。母親のヒロミとは、彼女の仕事が忙しくなった頃から徐々に関係が悪くなり、現在も仲はよくない。
寿子 (ひさこ)
表情筋エクササイズのエステサロンを経営している中年女性。年齢は59歳。離婚経験が2回あり、最初の離婚の慰謝料でエステサロンを開業した。二人目の夫とは死別しており、この時の遺産で表情筋エクササイズのサロンを始めた。肩まで伸ばした外巻きセミロングヘアにしている。太めの体型ながら、髪形や服装にこだわりを持っており、華やかな印象を与える。また男性の扱いを心得ており、心をつかむのもうまいため、男性に非常にもてる。ワインスクールで藤堂秀樹と知り合い、すぐに秀樹を気に入ってアプローチを始めて不倫関係となる。男性との交際では、時には母親のように世話を焼き、時には交際初期の恋人のように甘えながらも、セックスにおいては完全に主導権を握って虜(とりこ)にしている。秀樹も、この居心地のよさから抜け出せずにいる。
三島 (みしま)
かつて藤堂秀樹と同じ大阪にある会社に勤めていた男性。涼し気な印象の細身のイケメンで、関西弁で話す。既婚者の女性や、精神的に不安定な女性に対して積極的にアプローチしている。そのため周囲からはひそかに、問題のある女性を「事故物件」に例え、「事故物件専」と呼ばれている。15年前、上司である秀樹の家で開かれたホームパーティに参加。その際、東京の自宅から大阪の秀樹と藤堂ヒロミの家まで衝動的に家出して来た高橋加代子に出会い、彼女のことを気に入る。そして肉体関係を持とうとしたが、加代子に断られてしまう。
翔太 (しょうた)
女性向け出張性感エステサロン「フィール♡ストレッチ フォーエヴァー」に勤めている若い男性。藤堂ヒロミとは、施術師と客の関係ながら不倫関係にもある。ふんわりしたくせ毛を刈り上げており、太眉で濃いめの顔立ちをしている。さらにがっちりした体型で、高橋加代子からは体操のお兄さんのようだと評されている。明るく爽やかな性格で、つねに落ち着いている。そのため、ヒロミの機嫌が悪い時も気にすることなく接しており、非常に相性がいい。ヒロミが出張エステを予約したことを忘れてしまった時に、代わりにやって来た加代子と知り合う。
前作
ハッピー・マニア (はっぴー まにあ)
仕事より恋に生き、男と付き合っては別れてを繰り返している主人公。幸せとは恋か?結婚か?それとも…?自分勝手で強烈な個性の登場人物たちが繰り広げる破天荒な恋愛コメディ作品。 関連ページ:ハッピー・マニア