あらすじ
藤棚家に嫁入りした少女、藤棚きぬは結婚初日から夫の藤棚遥に距離を取られてとまどっていた。なんとか親しくなろうと、汚れた遥をきれいにするためにいっしょにお風呂に入ろうとした結果、遥のことを知る機会ができ、自分たちはよい夫婦になれると確信するのだった。(其ノ一)
きぬと遥が結婚してからはや一年。仲睦まじく暮らす二人はお互いの母親のことを話していた。母親について話しているうちに実家でよく食べていたライスカレーの存在を思い出した遥は、きぬに夕食にライスカレーをリクエストするが、きぬは聞いたこともない料理にとまどってしまう。(其ノ十六)
登場人物・キャラクター
藤棚 きぬ (ふじだな きぬ)
日本の西側の地方から富士山の近くにある藤棚家の藤棚遥に嫁いだ少女。結婚する前の名前は「雪乃きぬ」。まだ恋も知らずに幼さも残るが、芯は非常に強い。穏やかな性格で、料理を得意としている。極度な人見知りの遥に、結婚初日からよそよそしい態度や突拍子もない行動を取られとまどっていた。しかし結婚生活を通じて、遥のことを知るうちに遥の人間性と懐の広さを認識する。
藤棚 遥 (ふじだな よう)
藤棚きぬの夫。実家は使用人を何人も雇っているほどの大金持ちだが、少々一般常識に欠けているところがある。きぬと初めて顔を合わせた祝言の日にも床下に閉じこもるような極端な人見知りで、人付き合いが苦手。片目を失明しており、もう片方の視力も極端に低いために杖を使って移動している。穏やかな優しい性格で、きぬのことを何よりも大事に思っている。繊細な心理描写で高い評価を得ている新進気鋭の小説家でもあり、さまざまな知識を身につけている。
藤棚 菖蒲 (ふじだな あやめ)
藤棚遥の姉。自由奔放な性格で行動力があり、今は海外で生活している。和食が食べたくなったと一時帰国して、遥の家を訪ねたことで藤棚きぬと知り合う。強引な一面があるものの、実家や遥についてきぬに伝えて、遥のことを託す。