初恋のように胸がときめく不倫を描く
財前穂波は、共通の趣味を持つ財前俊一と結婚し、他の暮らしなど想像できないぐらい幸せな日々を送っていた。そんなある日、穂波は駅前のテレビ中継で、夫と見知らぬ女性の姿を発見。それがきっかけで、夫の浮気が発覚する。自分とは縁遠いと思っていた夫の不倫に、穂波はショックを受けてしまう。落ち込んでエレベーター内で座り込んでいた穂波に声をかけたのは、階下に住む男性・時松千尋だった。その風貌から勝手に怖い人だと思っていた時松だったが、彼は穂波の健康状態を気遣い、優しい対応をしてくれた。それ以来面識を持つようになった穂波は、頼りがいがあり、色々と親切にしてくれる時松に、次第に心のざわめきを抑えきれなくなっていく。本作のテーマは「初恋」であり、結婚後に初恋のように胸をときめかせる相手に出会った穂波の、葛藤と選択を描いていく。
不倫とは縁遠い保育士×感情に乏しい強面の警察官
保育士の穂波は、友人の不倫話に引いてしまうほど真面目な性格。信じていた夫の浮気が発覚しても、自分の結婚が間違っていたとは認めたくない。しかし、それに反するように時松への想いは募っていき、葛藤することになる。警察官の時松は、感情の起伏があまりない強面の男性。誰かの助けになることで、初めて自分の存在を感じることができる。妻・ミホとの結婚も、必要とされたことが嬉しく、夫になるのが自分の役割だと思ったからである。そんなミホとの関係も、現在は冷え切っており、自分には何かがかけているのかも知れないと考えていた。そんな時穂波と出会い、初めて感情が昂ぶり、本能的にこれが恋だと感じたのだ。
さまざまな不倫を描いた群像劇
歯科技工士である俊一の初恋は、高校生の時。マンガを貸したことで勘違いをし、クラスで一番可愛い女子に告白して撃沈した過去を持つ。そんな俊一の職場に、初恋の女性に似た歯科衛生士・神志那環奈がやってくる。積極的な環奈は俊一を気に入り、二人は肉体関係を持ってしまう。穂波の友人である独身女性・香真莉亜は、中学時代の初恋の人・近広と不倫している。きっかけは、30歳の時の同窓会で両想いだったことが判明したこと。香は、当時満たされなかった気持ちを、今必死に埋めているのだという。本作は、穂波と時松を軸に、その周囲の人々の不倫を描いた恋愛群像劇である。
登場人物・キャラクター
財前 穂波 (ざいぜん ほなみ)
保育士をしている31歳の女性。職場の人に誘われて行った飲み会で、歯科技工士の財前俊一と出会い、28歳で結婚した。漫画好きのインドア派。真面目な性格で、争いごとが大嫌い。平凡ながら幸せな生活を送っていたが、俊一の浮気が発覚し、平和な日々が崩れ去る。自身も、マンション階下の警察官・時松千尋と関係を持つようになる。
時松 千尋 (ときまつ ちひろ)
財前穂波と同じマンションに住む男性。太い眉と体格の良さが特徴の強面の警察官。感情に乏しく無表情だが、優しく親切な性格。既婚者だが、妻はアイドルの追っかけをしており、月に2、3日しか家にいない。穂波と出会い、初めて本気の恋愛感情を抱く。
財前 俊一 (ざいぜん しゅんいち)
財前穂波の夫。歯科技工士をしている33歳の男性。マンガやアニメが好きなインドア派。職場に新しくやってきた可愛い歯科衛生士・神志那環奈と不倫関係になる。穂波との夫婦関係を続けるため、環奈と別れようとするが、欲望に負けて関係を続けてしまう。