捜査を進める中で事件が連鎖していく
刑事の冴木仁が空き巣の通報を受けて、丘の上にある灰川十三の豪邸を訪れるところから物語は始まる。ただの窃盗事件として捜査が始まるが、屋敷の地下室から13人もの子供の餓死した遺体が発見される。その後、刑務所内での「十三殺人事件」、さらには過去の北海道で起こった「蔵土33人殺し事件」や「四葉事件」など、さまざまな事件に連鎖していくことになる。ちなみに、蔵土33人殺し事件は1938年に岡山県で実際に起こった「津山三十人殺し」事件がモチーフとなっている。
空き家に残された一枚のDVD
十三の邸宅で起きた空き巣被害の捜査に訪れた仁は、捜査中にタイトルが書かれていないDVDディスクを発見する。このDVDを再生した仁は、屋敷の地下室内で起こった凄惨な事件の様子を目の当たりにする。捜査を進める中で、十三は親に虐待されたり、ネグレクト状態の19人の恵まれない子供たちに手を差し伸べ、いっしょに暮らしたりしていたことが判明する。警察は家主である十三を指名手配するが、かつて十三に養われていた蓮水花音や仁の腹違いの弟である瀧本蒼佑をはじめとする生き残った子供たち六人は、いずれも十三は犯人ではないと断言する。
灰川十三とは何者なのか
当初、事件の犯人と目されていた謎多き人物の十三は、作中序盤に刑務所で殺害されてしまう。それを機に十三の戸籍情報はすべてがデタラメであることが発覚し、彼の故郷や生い立ちや家族関係が、捜査を進める中で少しずつ明らかになっていく。さらに十三の次男として育てられた神代タケルは、十三には血のつながった子供が存在することを確信していた。こうして、十三の素性と経歴が明らかになることで、さまざまな事件の真相が浮き彫りになる。
登場人物・キャラクター
冴木 仁 (さえき じん)
Y県警の富字山南警察署に勤務する刑事の男性。スポーツ刈りに近い短髪にしている。幼少期に父親から虐待を受けて育った過去があり、子供を傷つける人間や事件に対して感情が抑えきれなくなる一面がある。DV常習者だった父親と住んでいたが、腹違いの弟である瀧本蒼佑を置いて出奔したことを現在も悔やんでいる。実は子供への虐待家庭を狙った連続暴行事件の犯人でもあり、自分にも父親と同じ暴力衝動があることに苦しんでいる。空き巣の通報を受けて灰川十三邸を訪れ、13人の子供の餓死した遺体を発見する。その後に十三が逮捕され、犯行を自白したあともその顚末に違和感を覚えており、蓮水花音の説得を受けて真犯人の捜索に乗り出す。
蓮水 花音 (はすみ かのん)
かつて灰川十三に保護・養育されていた19人の子供の一人で、成人の女性。母子家庭で育児放棄されていたが、十三に保護された。幼少期の虐待が原因で、他者への共感力や感情表現が欠落している。冴木仁の腹違いの弟である瀧本蒼佑とは、十三の家で家族同然に過ごしていた。十三から、学校では教えてくれない生きるために必要な知識を学んだ。警察が十三を死体遺棄事件の犯人と考えることに異議を唱えており、仁を説得して真犯人を捜索するように求めた。十三の死後、地名の通称から十三の故郷が北海道の蔵土であることを突き止めるなど、情報処理能力に長けている。
クレジット
- 原作
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井龍 一
書誌情報
降り積もれ孤独な死よ 8巻 講談社〈イブニングKC〉
第1巻
(2021-11-22発行、 978-4065263426)
第2巻
(2022-03-23発行、 978-4065270097)
第3巻
(2022-07-22発行、 978-4065283660)
第4巻
(2022-10-21発行、 978-4065297445)
第5巻
(2023-03-23発行、 978-4065308790)
第6巻
(2023-09-22発行、 978-4065329320)
第7巻
(2024-06-21発行、 978-4065351246)
第8巻
(2024-07-23発行、 978-4065363324)