雷神とリーマン

雷神とリーマン

ある日、失恋をきっかけに、仕事だけに生きる味気ない日々を送るようになったゲイの大村のもとに、宙に浮いた雷神の雷遊が姿を現す。神に飽きたから人間になりたいと、大村の家に住み着く事を勝手に決めた雷遊は、人間としての常識をまったく知らず、大村を翻弄し続ける。人間になりたい雷神と、枯れたサラリーマンのルームシェア生活を描く、ワンルームコメディ。「クロフネZERO」2015年1月配信分から掲載の作品で、2017年「WEBマンガ総選挙」2位を獲得している。

正式名称
雷神とリーマン
ふりがな
らいじんとりーまん
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
 
同性愛
関連商品
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あらすじ

第1巻

ゲイの大村は、大切な人に失恋したために色事から遠ざかり、仕事だけに生きる面白味のない日々を送っていた。毎日日付けが変わるまで仕事に追われ、睡眠時間はつねに3~4時間程度。食事すら事務的に済ませる事が多くなり、もはや食べてもおいしさを感じなくなってしまっていた。そんなある日の深夜、疲れ切って自宅に戻った大村は、そこにフワフワと宙に浮く不審者を発見する。ストレスで頭がおかしくなったかと自分の目を疑う大村だったが、雷遊と名乗った不審者は、大村に自分が雷神である事を説明し、神でいる事に飽きたため、人間になるための手伝いをしろと要求する。事態を把握しきれない大村は、自分がゲイである事を伝えて必死に雷遊を追い出そうとするが、雷遊にはなんの効果もなかった。努力むなしく、二人はいっしょの生活を始める事になる。人間としての常識をまったく持たない雷遊との暮らしは混乱を極めるが、大村の必死のレクチャーにより、食事や睡眠などの人間らしい生活を心がける事で、雷遊は少しずつ人間らしさを会得していく。そして横柄ながらも素直な雷遊の心は、何もかも疲れ切った大村を癒し、人として生きる事の喜びを取り戻していく。

第2巻

大村と雷神である雷遊の共同生活は、すっかり日常となっていた。生涯をかけて、雷遊を人間にする事を誓った大村は、学校に行きたがる雷遊のために、はとこにあたる繭雛利久のもとを訪れる。戸籍を持たない雷遊が学校へ行くには、利久の助力が必要だった。雷遊の素性を明かされ、半信半疑ながらも彼を学校に連れて行く事に協力すると決めた利久は、雷遊を仲のいい友達のヤス雅士に紹介する。リーゼントで時代錯誤なガラの悪さを醸し出す彼らとの接触は、一見あやうくも思われたが、そこはさすが神様というべきか、あっという間に意気投合。雷遊は高校生としてすっかりなじんでしまい、初めての高校生活を謳歌しつつ、新たな知識を増やしていく。そんな中で迎えたゴールデンウィークは、大村が出張で家を空ける事になった。雷遊にとって初めて一人で過ごす時間であり、何をしていても大村の事が頭から離れない雷遊に、新たに寂しいという感情が生まれる。寂しさを知った雷遊は、大村恋しさに意識が混濁し始め、本人も予想だにしなかった変化が訪れる事になる。

第3巻

雷遊は夏本番を迎え、繭雛利久雅士ヤスと共に雅士のおじが経営する海の家でアルバイトをする事になった。運転手として同行した大村は、雷遊たちと別行動で温泉三昧の時間を過ごし、日頃の疲れを癒していた。雷遊にとって、働く事は初めての経験だった。海の家でマリン用品の貸し出しを任された雷遊は、浮き輪やフロートをひと吹きでパンパンに空気を入れたり、大量のパラソルやサマーベッドを一度に運んだりと、人間離れした能力を遺憾なく発揮し、周囲を驚かせる事になる。さらに友達とのカラオケや、重山千賀子とのシフォンケーキ作り、花火大会や金魚の世話など、雷遊は盛りだくさんの経験をして未知の感情をゆり起こす。そんな中、大村は雷遊を連れて、高知の田舎にある亡き祖母の家に遊びに来た。一年ほど空き家の状態になっていた家の掃除から始め、魚釣りに山菜採り、縁側での食事を済ませて、薪で炊いた風呂に入る。夏の醍醐味を味わい尽くした二人は、夜庭で横たわる。雷遊はその夜空の美しさに言葉を失うが、大村は星空の下で将来の事を語り始める。そして二人は、互いの存在の大きさを再認識する。

第4巻

新学期が始まったものの、最近まったく学校に来なくなってしまった雷遊を心配した繭雛利久は、重山千賀子といっしょに様子を見に行く事にした。大村の家を訪れた二人が目にしたのは、小さな金色の光の玉になってしまった雷遊の姿だった。会話はできるものの、触れる事すらできなくなってしまった事に驚きを隠せない二人だったが、千賀子は雷遊本人にもわからないその原因を探り始める。撫でるともとに戻る事があるという大村の話をヒントをもとに、安心感が姿を取り戻すきっかけになると考えた千賀子は、逆にその原因が不安やショックによるものだったのではないかと推測する。大村と将来を語った高地での夜に、光になってしまった雷遊は、大村のもとを離れるべきなのかについて悩んでいたのだ。人間になったらどんな人生を送りたいかという千賀子の問いかけにより、あらためて人として子孫を残したいという雷遊の夢を知った大村は、内心複雑な気持ちを抱きつつも、雷遊の考えを聞けた事に笑顔をこぼす。するとその瞬間、雷遊はもとの姿に戻るが、子孫を残したいという夢と大村といっしょにいたいという率直な気持ちから、大村と恋人になりたい気持ちを伝えるが、大村が返した答えは雷遊をさらに混乱させる事となり、雷遊は再び光の玉へと姿を変えてしまう。

メディアミックス

本作『雷神とリーマン』は、舞台「雷神とリーマン」実行委員会主催、ライズコミュニケーション制作によって舞台化され、新宿シアターモリエールにて2018年4月7日から4月14日の8日間の日程で公開された。大村役はインジュンが演じ、雷遊役には二葉勇とミンスのダブルキャストが組まれた。

登場人物・キャラクター

大村 (おおむら)

小さな会社に勤める男性で、年齢は28歳。営業マンとして非常に忙しい日々を送っており、つねに寝不足気味。しかし薄給で、多大なストレスを抱えて生活も乱れており、最近体重が落ち始めている。他人に自分のテリトリー内に入られる事を極端に嫌い、自室での一人の時間を好む。ゲイながら、好きになる人はいつもストレートの男性だったため、失恋ばかりしている。2年前、城ヶ原真に失恋して以来、色事から遠ざかり、ただ生きるためだけに生活する日常に疲れを感じていた。突如として姿を現した雷神の雷遊と生活を共にする事になり、彼を人間らしくすべく、協力する事になった。もともと雷遊を疎ましく感じていたが、大人のサイズになった時の雷遊の姿が非常に自分好みで、無邪気な彼に翻弄されるようになり、次第に恋愛対象として意識し始める。また彼との生活が、すべてが億劫に感じていた大村自身に変化を与え、生きる事への意欲や楽しみを感じるようになる。兄の葵とは、就職して以降疎遠になっており、親類の結婚式に参列した際に久しぶりに再会する事になる。身長181センチメートル、体重73キログラム。弓道が得意。

雷遊 (らいゆう)

40億年以上生きている雷神。人ではないために性別の概念はなく、見た目の年齢や体の大きさなども、自由自在に変化させる事ができる。基本のサイズは、身長200センチ以上で体重は100キロ以上とされているが、詳細は不明。長生きし過ぎて神でいる事が嫌になり、人間になろうと天から降りてきた。偶然落雷した先が、大村のアパートだったため、人間になるための手助けを大村に託し、彼といっしょに暮らし始める。神だけに態度は大きく、かなり傲慢に見えるが、意外と素直なところがあり、根は優しい。本来は睡眠や食事を必要とはしないが、大村と暮らし始めた事がきっかけで、いっしょに睡眠や食事を取るようになる。特にニギリメシを好んで食べるが、ウメボシは苦手。食べた物は体内で吸収される事はなく、排せつの概念もないため、すべて消滅する仕組みとなっている。大村がストレスと戦っている事を知って以降、何かとストレスを解消させようと、スキンシップを図ろうとする事が多い。並はずれた記憶力を持っており、一度得たものは二度と消える事はない。学校生活に興味を持ち、繭雛利久の助力を得て高校に通う事になる。それ以降、雅士やヤス、重山千賀子とも親しくなり、行動範囲を広げていく。素晴らしい歌声で、まさに神の声を持つ。

はな村 (はなむら)

大村の友人男性でゲイ仲間。大村とは4年前、通っていたバーで知り合ったのがきっかけで、虚しさを埋めるためだけの相手として関係を続けてきた。当時は体の関係はなかったが、しばらくぶりに大村の前に現れ、彼に体の関係を求めた。しかし、以前と顔つきが変わって優しくなった大村にふられる。

城ヶ原 真 (じょうがはら まこと)

大学生の頃、居酒屋で大村といっしょにアルバイトをした男性。大村がかつて片思いをしていた相手でもある。一つ年下の大村とは金を出し合って材料を購入し、食事を作ってよくいっしょに食べた仲。社会人になってもなおその関係は続いていたが、彼女ができて以降、大村との関係には終止符が打たれた。もともと男性にモテるタイプで、過去に二度男性から告白された経験があり、ゲイに対して強い嫌悪感を持っている。

繭雛 利久 (まゆびな りく)

大村のはとこにあたる男子高校生。実家は檀家の少ない蓮空寺という小さな寺だが、学校経営に力を入れるようになって以降、生活に安定が見られるようになった。大村に頼まれ、雷遊を一時的に学校に連れて行く事になる。雷遊が人間ではなく神である事は、本人から明かされているが、半信半疑でいる。学校ではガラの悪い連中とつるんでいるが、彼らからは「マユちゃん」と呼ばれ、一目置かれている。重山千賀子の笑顔を見て好意を抱き、素直になれないながらも、千賀子に好意を持ってもらおうと少しずつ努力を始める。

雅士 (まさし)

繭雛利久の友達の男子高校生。リーゼント姿で授業をボイコットするなど、いわゆるガラの悪い不良。利久とヤスとよく行動を共にしている。ヤンチャに見えるが、料理が得意で弁当はいつも自作のものを持参している。セパタクローの選手であるおじが、海の家とペンションを経営しており、夏休み中は仕事を手伝いに行く事もある。大村が雷遊の保護者で年上という事もあって、礼儀正しく接している。

ヤス

繭雛利久の友達の男子高校生。リーゼント姿の瘦せた体形で、頰がこけている。授業をボイコットするなど、いわゆるガラの悪い不良で、利久や雅士とよく行動を共にしている。利久の友達として紹介された初対面の雷遊に、態度が悪いと難癖をつけてケンカを売るが、逆に加減をまちがえた雷遊にボコボコにやられて気絶する。単純な性格なために、これが雷遊をリスペクトするきっかけとなり、仲よくなった。見た目の印象とは180度違い、実は成績優秀で特進クラスに在籍しており、将来弁護士になるためにレベルの高い大学を目指して勉強している。一方で、少々常識に欠けたところがある。

重山 千賀子 (しげやま ちかこ)

繭雛利久や雷遊と同じ学校に通うショートヘアの女子高校生。陰鬱なタイプのために一部のクラスメートから、気持ち悪がられたり面倒な仕事を押し付けられたりと、差別的扱いで陰湿ないじめを受けていた。しかし雷遊に助けられ、自分の存在を肯定してもらえた事で、笑顔を取り戻した。これがきっかけで、ヤスや雅士からの印象も変化し、特に利久は彼女に対してほのかな好意を寄せるようになる。雷遊が目の前で素の姿に戻り、飛んで行ってしまった事があり、利久からの説明を受けた関係で雷遊が神である事は知っている。

お総菜屋のお姉さん (おそうざいやのおねえさん)

惣菜店「Thunder」に勤める女性。惣菜を買いに来た大男二人組の大村と雷遊に、お勧めの惣菜を販売した。その外見とはギャップを感じるほど、ほのぼのとかわいらしい事から彼らに対して非常に好印象を抱いている。のちに、友人のさおりが同じ二人組を知っている事が判明し、それ以降は彼らが恋人同士ではないかと考えている。どちらがタチかネコかで話を盛り上がらせては、隠れ腐女子として楽しんでいる。

さおり

家具店に勤める女性。テーブルを買いに来た大男の二人組の大村と雷遊が気になり、友人に話したところ、惣菜店に勤める友人のお総菜屋のお姉さんも同じ二人組を知っており、彼らが恋人同士ではないかと考えている。どちらがタチかネコかで話を盛り上がらせては、隠れ腐女子として楽しんでいる。

マミ

ポニーテールの髪形をした小さな女の子。家族と共に海に遊びに来ている。兄といっしょに、海の家でアルバイト中の雷遊のもとに浮き輪を借りにやって来たが、イルカのフロートが借りたいと駄々をこねて兄を困らせる。

(あに)

家族と共に海に遊びに来ている少年。妹のマミを連れ、海の家でアルバイト中の雷遊のもとに浮き輪を借りにやって来たが、イルカのフロートを借りたいと駄々をこねる妹に困っている。翌日には、自分が拾った宝物であるキレイな貝を妹に渡し、浮き輪で我慢するように言い聞かせるなど、兄らしさを見せる。

(あおい)

大村の3歳年上の兄。右目尻にホクロがある。昔から成績優秀で難関大学合格のうえ、学費が免除となる特待生に選ばれた。スポーツも得意で、特に弓道の腕に長けており、個人戦では毎回3位以内に入る成績をおさめていた。親から期待をかけられ、つねに応え続けてきたエリート。現在は結婚しており、小学生の娘がいる。大村とは子供が生まれて以降、疎遠になっているが、親類の結婚式に参列して久しぶりに再会する事になった。

大村の父 (おおむらのちち)

大村と葵の父親。現在はガンを患い、入院中で先は長くないとされている。もともと公務員だった事もあり、きまじめな性格で、頭が固く価値観も古い。なんでもこなす葵を溺愛しており、その明らかな愛情の差が大村を実家から遠ざける原因となった。

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