あらすじ
Recette1「いちごショートと丘の上の三兄弟」(第1巻)
女子高校生の木屋町苺は、学校で嫌な事があり落ちたテンションを、大好きなケーキを食べて元に戻そうと、ケーキ店を探していた。しかし運が悪い事に、そんな日に限ってどこのケーキ店も定休日ばかり。それならばと隣町まで足を延ばし歩き始めると、通りかかった丘の上に見知らぬケーキ店・菜花洋菓子店を発見する。小高い丘のふもとには、「本日レディースデー 全品300円引き」の看板が掲げられていた。安さに惹かれてがんばって丘を登り、店を訪れた苺が目にしたのは、ショーケースに唯一入っている商品と、「クレームブリュレ1個7万円」の文字だった。そしてあまりの事に驚きを隠せない苺の前に、この店の店主・菜花大夢と弟の菜花正路、菜花ぱせりが姿を現す。法外な値段にご立腹の苺に、食べたいケーキのリクエストを聞いた大夢は、ご希望のショートケーキを作り始める。
Recette2「ふわふわ女子と香りマドレーヌ」(第1巻)
ある日、菜花正路が学校から帰宅すると、菜花洋菓子店の扉のすきまから匂いを嗅いでいる女子高校生・川端かすみに遭遇する。彼女は、甘いものが大好きだが、現在ダイエット中。食べたい気持ちをぐっとこらえながらも、抑えきれない欲求に悩み、せめて匂いだけでもとお店の前にやって来ていたのだ。一方で正路は、相変わらずまじめにケーキを作ろうとしない菜花大夢に、お店の経営を支えるため、利益の出やすい焼き菓子を作るように促す。
Recette3「兄弟と姉妹と小豆マカロン」(第1巻)
いつものように、商店街のクーポンをたくさんゲットしてホクホク顔で帰宅した菜花正路が菜花洋菓子店の前で見たものは、長く続くお客さんの行列だった。しかしよく見るとそれは道を挟んで向かい側にあるライバル店・和菓子しらかわに並ぶお客さんの列だった。こちら側を敵視するしらかわの美人姉妹・白川ほの香と白川かの香に対して、自分だって和菓子くらい作れると、菜花大夢が作り始めたのは、和菓子の王道・最中。しかし彼の最中は、卵を入れて作る和洋折衷のマカロンだった。大夢は、作り立てのマカロンをちょうど姿を現したかの香に、しらかわのみんなで食べるようにとプレゼントした。その後、大夢はほくそ笑みながら、マカロンに下剤を仕込んだ事を正路に明かす。
Recette4「乙女心と恋のたまご」(第1巻)
日曜日の朝、今日は1日思う存分店の手伝いができると意気込んだ菜花正路は、菜花洋菓子店の厨房へと向かった。そこには、兄・菜花大夢がロールケーキを作ろうとしている痕跡が残されていた。大夢の作るロールケーキは、正路がこの世で一番おいしいと思っている傑作。そのロールケーキを作るなら、店にとって売り上げを大きく伸ばす勝負の日になるとテンションを上げる正路だったが、肝心の大夢の姿が見当たらない。朝から珍しくロールケーキを作ろうと張り切っていた大夢だったが、肝心の卵がなく、お手上げ状態。店の屋根の上に登り、卵を産む事をボイコットし続けているニワトリ達に説得を続けていたのだ。
Recette5~7「兄妹と兄弟の事情ミルフィーユ」(第1巻)
最近テレビで人気のパティシエ「プリンス王子」こと三ノ宮王子。彼は、テレビ番組「ヒルバン」の1コーナー「プリンス王子のスイーツ十字軍」で、街のケーキ屋に突然現れてはその店のケーキを評価。それに対して店主が文句を言って来たら自作のケーキで勝負を挑む。そして必ず王子が勝ち、負けた店の評判はガタ落ちするというのがお決まりの流れとなっていた。そんな彼がやって来たのは、あろう事か菜花洋菓子店。プリンス王子のやり方が大嫌いな菜花正路は、彼との勝負に勝って店の評判を上げようと奮起するが、テレビクルー達は、店のショーケースに売り物が何も入っていない事を確認すると、そのまま帰って行ってしまった。その様子を見届けたあとに姿を現したのは、プリンス王子の妹・三ノ宮泉だった。彼女は消息のわからなくなった兄が、プリンス王子として人のケーキを悪しざまに罵っている姿を見て、兄にケーキ勝負を挑む決意をする。そのために作ったと、ケーキ作り初心者の彼女が持参したミルフィーユはボロボロで、とても彼に太刀打ちできるような代物ではなかった。それを見た正路は、兄の菜花大夢に協力を要請し、泉を応援する事を決める。
Recette8「ババロアとプラズマ坊主」(第1巻)
ある日菜花大夢は、菜花洋菓子店の得意先である「大門寺」に菓子の売り込みにやって来た。そこで大夢を出迎えたのは、幼なじみであり住職の西大路祐天だった。一見、水ようかんのようなババロアを売り込んだ大夢は、祐天と共に寺の敷地内にある別棟へと移動する。怪しげな研究機材が揃えられているその場所で、祐天は大夢にいつものタバコを渡し、大夢の事について語り始める。
Recette9~12「理論派女子と65℃の紅茶」(第2巻)
南雲市にリゾート施設を建てる事を夢としている父親が、菜花洋菓子店が建つ土地の買収に苦労している事を知った言葉・S・サリンジャー。彼女は、父親の夢を叶えようと、身分を偽って菜花正路の許嫁を装い、菜花家に潜入。スパイ活動を行う事を決めた。言葉は、生まれてからずっと特殊な環境下で育った超箱入り娘のため社会経験は皆無で、何でも自分の計算通りに事が運ぶと信じて疑わない。そんな言葉の言動から、正路と菜花大夢には、彼女がスパイ活動を行っている事が明白だった。半ばあきれながらも、あえて言葉の思惑に乗ってみようと、二人は言葉を菜花家に招き入れる。だが、言葉の一挙手一投足はすべてが不審すぎ、二人は解っていながらも彼女に翻弄されていく。
Recette13「青い空と青い草と白いバター」(第2巻)
ある日、菜花正路、菜花大夢、菜花ぱせり、言葉・S・サリンジャーは、ケーキを作るうえで大切な材料の一つであるバターを買い付けに、「猪熊牧場」へ行く事になった。牧場の猪熊大晴にいつも頼んでいるバターは、菜花洋菓子店で使うための特注バターで、塩分や水分量までも指定した特別製。それを受け取りに行った一行が牧場に着いてみると、奥さんのお産にかかりきりの大晴の姿があった。そしてなぜか、牛は逃げてしまって一頭もいない状態。牛から牛乳を搾る事ができない状況で、バターもできているはずがなかった。状況を察した正路ら一行は、手の放せない大晴の代わりに、逃げてしまった36頭の牛を集めに奔走する。
Recette14「ハンドルとまわるアイスクリーム」(第2巻)
猪熊大晴から新鮮な牛乳とクリームを手に入れた菜花大夢は、菜花洋菓子店開店当時からある古い装置「アイスクリームマシーン・小」を使い、アイスクリームを作る事にした。機械に材料を投入し、あとはハンドルを回し続けるだけという状態に目を輝かせた菜花ぱせりは、その作業を自分に任せてほしいと立候補する。大夢と菜花正路はアイスクリーム作りをぱせりに委ね、外出。一人になったぱせりは、兄の言いつけ通り、時計をセットして機械のハンドルを回し始めるが、出来上がり直前になって、ハンドルが壊れてしまう。折れて回せなくなったハンドルを直そうと奔走するぱせりだったが、どうにかしようとすればするほど事態はどんどん泥沼化してしまう。
Recette15~17「幼き日々と沢山のタルト」(第2巻)
ある日、菜花正路と共にコンビニエンスストアに寄った菜花大夢は、そこでアルバイト中の今出川雪近に再会する。雪近は、フランスのお菓子の世界大会で優勝を果たしたパティシエで、店を持たずに旅をしながらケーキを作っている事で有名な実力派。雪近は5年前、ケーキのコンクールで大夢に負けを喫して以来、大夢だけをライバル視してきた。どのコンクールでも大夢にだけは勝つ事ができなかった雪近は、直接対決を申し込んだが、大夢との決闘は実現しないままだった。その雪辱を果たそうと、改めて大夢に決闘を要求、日を改めて開催する事にした。雪近は、昔と印象の変わった大夢に違和感を覚えつつも、常に頭の中は大夢の事でいっぱい。そして、念願の決闘の日を迎えた雪近は、自分のラボの前にあるファミリーレストランの看板を目にする。そこにはまったく身に覚えのない、雪近とファミリーレストランとのコラボレーション企画「ユキチカカフェ」が大々的に宣伝されていた。そして、かかわった覚えのないタルトが販売、提供されていたのだ。
Recette18~19「和洋折衷パフェデート」(第2巻~第3巻)
朝からにやにやし、ソワソワと落ち着かない様子の菜花正路。今日は、彼が日頃節約して貯まった分の貯金を使う、2か月に一度の食べ歩きデーだからだ。学校帰り、言葉・S・サリンジャーと合流してケーキ屋に足を運んだ正路は、さまざまな種類のケーキを注文。季節のケーキをリサーチしながら、大好きなケーキを隅々まで堪能する。その後店を変え、パーラーを訪れた正路と言葉は、和菓子しらかわの職人といっしょに来ていた白川かの香と相席する事になった。いっしょにパフェを食べ始めた矢先、かの香の様子がおかしい事に気づく。
Recette20~25「夏の海と白菜味かき氷」(第3巻)
菜花洋菓子店は夏のあいだ、例年通り近隣の店と合同で、浜辺に海の家を開く事になった。建物の中では、運悪く、ライバル店・和菓子しらかわと隣同士になってしまった。しらかわは、毎年恒例の特製かき氷が大人気を博す中、菜花側を取り仕切る菜花正路は、菜花大夢が決めるはずのメニュー開発が間に合わず、売るものはない状態。菜花ぱせりの占いを10円で売り出し、急場をしのいでいた。一方で、白川ほの香と、大夢の不仲の理由を聞いた正路は、夕方にほの香と二人きりで散歩するという滅多にないチャンスを手に入れた。想う人を前に緊張しつつも、正路はほの香と、大夢の事について話し、思いがけずほの香とメールアドレスの交換をする事に成功する。翌朝、ようやく大夢が決めてきた海の家のメニューは、8000円の超高級デザートコース。絶対に売れるわけがないと絶望していた正路だったが、言葉・S・サリンジャーからの助言をきっかけに、状況は一変する。
Recette26「ハチミツとクマンバチ」(第3巻)
夏も終わりに近づいた頃、菜花洋菓子店では、スズメバチの襲来に頭を痛めていた。店の敷地内では、ハチミツを取るためにミツバチを養蜂しており、スズメバチの目的はそのミツバチとハチミツだった。そのため、スズメバチへの対策としてトラップを設置したりする事は、菜花正路にとって毎年恒例の作業となっていた。しかし今年は、ミツバチ達のあいだでも、スズメバチの数や強さが尋常でない事が噂となり、危機感を覚えたミツバチは、正路ではなく菜花大夢と手を組む事でその対策を講じようとする。
Recette27~31「太陽の沈まぬ部屋とザッハトルテ」(第3巻~第4巻)
小麦野高校の「宮廷菓子研究部」に興味を持った菜花正路は、活動している事を聞きつけて第2家庭科室にやって来た。教室には、中世の貴族の衣装を身にまとった複数のマネキンが置いてあり、壁にはオーストリアのウィーンの街を切り取ったような絵が貼られている。そこに置いてある大きな箱の中から姿を現したのは、部長を務める佐井涼子だった。彼女は、金髪のかつらに中世の男性衣装を身につけ、自分は宮廷菓子職人を目指す「フランツ」であると名乗った。生活時間までウィーンに合わせ、ウィーン菓子を作り続ける彼女が、特に情熱を傾けていたのは「ザッハトルテ」だ。涼子は、国を動かすほどの菓子を作りたいと日々研究を続けていたが、顧問を務める三原美晴からは、教室を時間問わず私的な物として占拠している事を再三にわたり注意されており、約束を守って活動しないと活動停止にすると警告を受けていた。部活を潰される事だけは回避したいと、いっしょに活動する仲間として、正路に白羽の矢が当たる。もともと深入りするつもりのなかった正路ではあったが、彼女の作るザッハトルテに感動し、感じる違和感を率直に伝えたり、実践して作ってみたりと、結局放っておけない状況になった。そんなある日、第2家庭科室は突然閉鎖。美晴によって強引な幕引きがなされてしまう。
Recette32~36「大きな栗と木の下の…」(第4巻)
毎年恒例となった秋の風物詩、柴栗山での「白菜くり戦争」が今年も行われる季節となった。柴栗山は、菜花と白川両家が共同で所有する山。ここにたくさんの栗の木があるため、洋菓子でも和菓子でも秋の素材として重要な栗の争奪戦となってしまう。それを回避するため、毎年両店の当主だけが参加し、山の一番奥にある古い栗の木の「一番栗」を拾ってきた方が、先に山に入り栗を拾う権利を得る事になっていた。しかし、今年は運悪く台風による悪天候の中、強引に行う事になる。山の中に入った菜花大夢と白川ほの香は、滅多にない二人だけの時間を持ち、1年前、二人のあいだで交わされたはずの結婚の約束について話が及ぶ。
Recette37「渋皮モンブランとモンモンとした午後」(第4巻)
菜花正路と今出川雪近は、柴栗山で採れた栗の皮むきを始めた。言葉・S・サリンジャーもそれに参加しつつ、おしゃべりしながら皮むきを進めていく。栗のお菓子について話し始めた三人は、それぞれ正路は和栗のモンブランについて、雪近はフランス産の洋栗を使ったモンブランについて熱く語る。言葉の天津甘栗派は例外として、いつまでも決着がつかない和栗と洋栗の戦いは、菜花大夢に飛び火し、彼は和洋を超えた「あたたかいモンブラン」について、実際に作りながら語り始める。
Recette38~40「11月とみんなが愛するパンケーキ」(第4巻~第5巻)
11月。菜花正路のクラスでは、文化祭でカフェをやる事になった。カフェで提供するメニューを考案するため、正路は白川かの香と佐井涼子と共にさまざまなスイーツの店に足を運ぶ。考えあぐねた末、決定したのはパンケーキ。世間ではさまざまなタイプのパンケーキが人気を博す中、自分達が手掛けるパンケーキの詳細を決めるため、正路は夜を徹して試作を続けた。自分の作ったものをたくさんの人に、お金を払って食べてもらうのは初めてだった正路が、最終的に辿り着いたのは、アイスクリームを練り込んだ生地を焼き上げ、上に冷たいアイスクリームをトッピングする「アイスホットケーキ」だった。
Recette41「非公式メイドの公式マニュアル」(第5巻)
菜花洋菓子店の先々代のシェフであった菜花耕太郎が作ったとされる公式マニュアル「菜花洋菓子店 従業員規定」。言葉・S・サリンジャーは、お辞儀の角度から店内の掃除の回数、備品の詳細な分量に至るまで、店全体に定められた決まりに則って毎日行動していた。そんなある日、言葉のもとに届けられたのは、菜花正路が通う小麦野高校の女子用制服だった。スパイ活動の一環として、小麦野高校への編入を目論んでいた言葉は、許嫁として正路を完全に籠絡しようと、いつものメイド服を学制服に着替え、文化祭真っただ中の正路のもとを訪れる。
Recette42~51「ドラ焼きと十七歳の地図」(第5巻~第6巻)
文化祭が終わり2日経った日。菜花正路は、お菓子を作る事に関して菜花大夢と言い争いになってしまう。一方的に考えを押し付けようとする大夢に対して、苛立ちを募らせた正路は家を飛び出し、外で偶然会った白川ほの香に連れられ白川家に1泊する事になる。早朝4時、いい匂いにつられて和菓子しらかわの工房に足を踏み入れた正路は、そこで和菓子を作るための下準備をしているほの香の姿を目にする。その姿に感銘を受けた正路は、ほの香からしらかわを手伝う事を提案され、甘んじてそれを受け入れる。しらかわの職人達から猛反発を受けながらも、工房に立ち入る事を許された正路は、和菓子作りを手伝ううちに、しらかわの活気あふれる様子を目の当たりにする。自分の店とはあまりにも違うその様子に、落ち込んだ正路は、ほの香に頼み込み、もう1日しらかわで勉強させてもらう事になった。その後、和菓子を届けに訪れた先で、西大寺祐天から「ほの香と正路を恋人同士に仕立て上げようとしている」という大夢の思惑について話を聞いた正路は、兄の思惑の真意を知るために、ほの香に自分と付き合うふりをしてほしいと提案する。
Recette46「汚れたレシピとフロマージュ・クリュ」(第5巻)
2種のチーズを使ったケーキ「フロマージュ・クリュ」は、菜花耕太郎の考案したケーキだった。菜花大夢は、祖父が残したレシピで何度作っても、このケーキが祖父のように美味しくならないと、このレシピを封印してしまう。そして大夢はそのレシピを、いつか菜花正路に掘り出してもらう事を前提に、地中に埋めてしまうのだった。
Recette52~60「菜花洋菓子店と家族のレシピ」(第6巻~第7巻)
言葉・S・サリンジャーが、家出をしたまま帰宅しない菜花正路を探し、街中を歩いていた時、父親である耕成・サリンジャーと出くわす。彼は、言葉が菜花洋菓子店に乗り込んでいる事を知り、店のレシピを秘密裏に入手して来るようにと言葉に指示する。父親の言いつけ通りに菜花のレシピを探す言葉のもとへ、家出したはずの正路が戻り、彼も言葉と同じく祖父のレシピを探している事を知る。そんな中、正路は白川かの香から、菜花洋菓子店の建つ月野原の土地が競売に出されているという衝撃の知らせを受ける。丘の下にいつの間にか立てられた大きな看板には「スイーツパーク建設予定地」の文字が記されていた。その企画を担っている企業「サリンジャー・フード・グループ ジャパン」のCEOを務めている父親なら、状況を変える事ができるかもしれないと、正路にちらつかせた言葉は、父親に頼んでみる代わりにと、自分との結婚を条件に持ち出す。それは、言葉がレシピを安全に手に入れるために考え出した策だったが、事態は思わぬ方向へと動き出す。
Recette61「あとの祭りのきな粉餅」(第7巻)
白川かの香は、菜花洋菓子店を訪れ、最近すっかり元気を失くしてしまっていた菜花正路に声をかけ、「南雲大社」の灯篭祭りに連れ出した。かの香が、元気のない理由を聞き出そうと餌にした出来立てのきな粉餅に食いついた正路は、ぽつりぽつりと「サリンジャー・フード・グループ ジャパン」にかかわる話の一部始終を口にし始める。
Recette62「パリブレストと2人のシェフのタンデム」(第7巻)
「サリンジャー・フード・グループ ジャパン」で菜花正路の作ったタルトタタンを食べて以来、彼の事が気になって仕方がなかったフレデリック・ギモーブは、ある日突然菜花洋菓子店を訪れた。そこに正路の姿はなかったが、ギモーブは、代わりに菜花大夢の作ったケーキ「パリブレスト」を食べて、大夢のケーキ作りの腕に魅了される。
Recette63~68「兄と弟のオペラ」(第7巻)
工事業者は幅を利かせ始め、いよいよ菜花洋菓子店消滅の危機が深刻化していく。菜花正路は自分なりに精いっぱいの抵抗を見せるが力及ばず、兄・菜花大夢にいっしょに戦ってくれるように懇願する。大夢は、そんな正路に対して自分が作ったものよりも美味しい「オペラ」を作る事ができたら言う事を聞いてもいいと言い出した。そんな中、舞い込んできたのは祖父・菜花耕太郎が倒れたという報せだった。祖父の凶報を聞いても動こうとしなかった大夢は、結局、その後1週間で亡くなった耕太郎の葬式にも姿を現す事はなかった。その折、葬式に一般人として参列した西大路祐天から、耕太郎と大夢の関係について話を聞いた正路が店に戻ると、そこで、閉められた店の扉をたたく小さな男の子の姿を目にする。それは、まぎれもなく菜花大夢の幼い頃の姿だった。
Recette69「過去と未来のエマルジョン」(第7巻)
本性を現した菜花大夢は、開き直ったかのように菜花正路にケーキ作りの特訓をし始めた。店の存続をかけた「サリンジャー・フード・グループ ジャパン」との勝負は、3日後にフレデリック・ギモーブを相手に行う事に決まった。それに向け、正路は品目をオペラだけに絞って繰り返し作り続けていく。
Recette70「なのは洋菓子店のいいあとがき」(第7巻)
フレデリック・ギモーブとの勝負から8か月が過ぎた。菜花正路が店主として厨房に立つ菜花洋菓子店には、連日ケーキを食べにくる客で長蛇の列ができていた。今はスポンジしか作れない正路の状況を鑑みて、オーダーメイドショートケーキ専門店として出来立てのケーキを提供するようになり、まだ腕が追い付かない正路は、あれ以来毎月ギモーブとの勝負を続けている。
登場人物・キャラクター
菜花 正路 (なのは せいじ)
菜花三兄弟の次男。年齢は17歳。小麦野高校に通う2年生で、菜花大夢の弟であり、菜花ぱせりの兄にあたる。1994年4月30日生まれ。血液型はAB型。身長170センチ、体重61キロ。しっかり者で、きっちりした性格。クーポンが大好きなクーポンマニア。経営難の菜花洋菓子店を切り盛りするため、日々頭を痛めている。 商店街では日常的にクーポンなどを最大限利用し、節約。その結果貯まったお金は、2か月に一度一気に使う事にしており、主な使い道は大好きな食べ歩き。ケーキ屋に足を運び、季節のケーキをリサーチする事も目的の一つとなっている。将来、自店を日本一の店にする事が夢。店で売れ残ったケーキを翌日の弁当として学校に持って行っているため、学校では「アントワネット」や「マリー」などと呼ばれている。 また、佐井涼子からは、ドイツ語なまりで「ゼージ」と呼ばれている。和菓子しらかわの白川ほの香に想いを寄せているが、白川かの香から想われている事にはまったく気づいていない。好きなお菓子は胡桃のタルト。兄弟で唯一上昇志向の持ち主。兄の作るケーキの味に惚れこんでいる。 お菓子に関する知識は誰にも負けないくらい持っているが、作る事に関しては限りなく初心者。
菜花 大夢 (なのは たいむ)
菜花三兄弟の長男。年齢は20歳。菜花正路と菜花ぱせりの兄にあたり、兄弟で菜花洋菓子店を切り盛りしている。1991年2月2日生まれ。血液型はB型。身長177センチ、体重0~66キロ。5代目シェフであり、パティシエとして天才的な才能の持ち主。天才と呼ばれた3代目、菜花耕太郎をも超える神童と呼ばれた事もある。 しかし、自分本位な性格が玉にきず。洋菓子を作る際の材料には人一倍こだわりを持っているが、気が向かないと商品を作ろうとしない。いつも口にタバコをくわえているが、これは西大路祐天が作ってくれた特別製であり、本当は嫌煙家。実は1年ほど前、店の客と口論になり、客の家に放火しに行こうとして車が横転、事故死した。 しかし、祐天の努力で霊体となった体を実体化し、現世に留まっている状態。葬式までやりかけたが、生き返ったような状態になったため、葬式は冗談だったという事にした。背中からは悪魔のような羽根が生えている。この事実を知っているのは正路とぱせり、祐天だけ。生前は、近寄りがたい雰囲気を持っていたが、一度死んでからというもの、マイペースで優しい雰囲気に変わった。 好きなお菓子はオペラ。金になる事をやりたがらず、金にならない事をがんばる幽霊。
菜花 ぱせり (なのは ぱせり)
菜花三兄弟の三男。年齢は7歳。菜花正路と菜花大夢の弟にあたる。南雲東小学校2年生。2003年6月8日生まれ、血液型はB型。身長112センチ、体重19キロ。天使のように愛らしく、無邪気な性格。ニワトリの幸子が大好きで、幸子の言葉が理解できるほか、動物との会話も可能。折れない心を持つ家庭内企業家で、ある時はおみくじ屋、ある時はたまご売り、占い師と毎週さまざまな職に転職している。 好きなお菓子はパートドフリュイ。
木屋町 苺 (きやまち いちご)
とよの丘高校に通う3年生の女子で、年齢は17歳。学校では卓球部に所属しているが、幽霊部員となっている。2月14日生まれ。身長156センチ、体重50キロ。スリーサイズは上から84-60-86センチ。「春つみいちご」のハンドルネームで、SNS「いちごブログ」を日々更新。実際に足を運んだケーキ店の紹介や評価が主な内容となっている。 この日、誕生日を迎えたにもかかわらず、学校でそれを祝ってくれる友人は誰一人としていなかった。へこんだ気分の時には、ショートケーキを食べて元気を取り戻すと決めており、さまざまなケーキ店を訪れるも、どこも定休日だった。隣町まで徒歩で向かっている最中、偶然に菜花洋菓子店の存在を知る事となった。好きなお菓子はストロベリーショートケーキ。
川端 かすみ (かわばた かすみ)
16歳の女子高校生。5月21日生まれ。血液型はO型。身長159センチ、体重53キロ。スリーサイズは上から85-62-90センチ。小麦野高校に通う2年生で、バレーボール部に所属している。好きなお菓子はパンケーキ。朝食から菓子パンをガンガンいけるイタリア人スタイルのスイーツ女子。趣味は食べる事だが、太りやすい体質が一因となっていつもレギュラー争いについていけないため、現在は甘いものを我慢している。 それが辛くて、菜花洋菓子店に甘い匂いだけをかぎにやって来た。
白川 ほの香 (しらかわ ほのか)
老舗和菓子店「和菓子しらかわ」を営む白川家の長女であり、白川かの香の姉。年齢は20歳。2月3日生まれ、血液型はO型。身長160センチ、体重50キロ。スリーサイズは上から88-59-85センチ。おっとりとしていておしとやかな天然系。美貌も人望も兼ね備え、和菓子作りの腕は超一流の7代目店主。菜花大夢とは同じ年の幼なじみだが、ほの香から大夢へのプロポーズを断られた事で確執となり、それ以来ほとんど口を利かない状態が続いている。 「なのはをつぶせ」という祖父の言いつけ通り、和菓子の味で客をつかみ、ライバル店である菜花洋菓子店をつぶそうと画策していて、大夢に対して「なのは死ね。滅びろ」などという嫌がらせの電話をかけ続けている。 好きなお菓子は海苔せんべい。趣味は釣りと書道。
白川 かの香 (しらかわ かのか)
老舗和菓子店「和菓子しらかわ」を営む白川家の次女で、白川ほの香の妹。7月8日生まれ、血液型はA型。身長158センチ、体重49キロ。スリーサイズは上から86-57-84センチ。小麦野高校に通う2年生で、弓道部に所属している。菜花正路とは同じ年の幼なじみでありクラスメイト。店では宣伝やパッケージのアイデア捻出を主に担当している。 表立っては、ライバル店である菜花洋菓子店に対して牙をむき出しにしているが、幼なじみの正路に密かな想いを寄せており、本当は仲よくしたいと考えている。しかし、いつも姉ばかりを見ている正路の態度に素直になれない部分もあり、態度に表す事ができない。お酒に極端に弱く、酒が体内に1滴でも入ると、トロトロのデレデレ、すっかり素直になってしまう特殊な体質の持ち主。 その状態は、水をかければ治るが、奈良漬を食べて二日酔いになった事があるほどアルコールには弱いため、いつもお店の職人達が目を光らせている。趣味は食べ歩きと締めのバッティングセンター。
三ノ宮 王子 (さんのみや おうじ)
三ノ宮泉の兄。年齢は25歳。6月3日生まれ、血液型はO型。身長176センチ、体重65キロ。洋菓子店「L'Oiseau Bleu(ロワゾー・ブリュ)」の店主を務めていたが、突然失踪。テレビ番組「ヒルバン」のコーナー「プリンス王子のスイーツ十字軍」への出演をきっかけに「プリンス王子」の名で人気が爆発した。あらゆる町の洋菓子店を訪れ、ケーキを酷評。 それに対して店主が文句を言って来たら自作のケーキで勝負を挑む。そして必ず王子が勝ち、負けた店の評判はガタ落ちするというのがお決まりの流れとなっている。最近では他番組への出演も増え、レシピ本なども売れてきている。趣味は読書。好きなお菓子はマドレーヌ。
三ノ宮 泉 (さんのみや いずみ)
三ノ宮王子の妹。年齢は15歳。2月22日生まれ、血液型はB型。身長152センチ、体重43キロ。スリーサイズは上から78-56-79センチ。中沢高校に通う高校1年生。大好きな兄と二人で洋菓子店「L'Oiseau Bleu」(ロワゾー・ブリュ)を切り盛りしていたが、突然失踪してしまった兄を心配していた。しかし、兄が「プリンス王子」を名乗り、人のケーキを悪しざまに罵っている様子をテレビで見て、兄を止めたいという感情が生まれた。 自分が作ったケーキで兄にケーキ勝負を挑もうと奮起するが、彼女はケーキ作りに関しては超初心者。手作りしたミルフィーユは、とても兄に太刀打ちできるものではない状態だった。そこで、菜花正路と菜花大夢の協力を得て、ミルフィーユについて学び、「プリンセスフィユタージュ」と名乗ってプリンス王子に挑む。 その後、その姿がテレビ関係者に見初められ、兄と共にテレビ番組のコーナー・「プリンスプリンセスのスイーツ十字軍2」への出演をきっかけに人気者になった。好きなお菓子はフィナンシェ。鼻炎を患っており、一年じゅう鼻をかんでいる。趣味はヨーグルトを食べる事。
西大路 祐天 (にしおおじ ゆうてん)
菜花洋菓子店の得意先である「大門寺」の住職の一人息子。年齢は20歳。菜花大夢とは、小学生の時からの幼なじみ。12月10日生まれ、AB型。身長178センチ、体重70キロ。ゲイのため、言葉尻にはおネエ感が漂っており、高いモラルと下品さを併せ持つ男色聖職者。好みのタイプは『パタリロ!』の「バンコラン」と「マライヒ」と「パタリロ」。 仏教の教えには懐疑的で、家は継がずに物理学の道に進むつもりだった。しかし、親から「結婚するか、家を継げ」と言われたため、不本意ながら寺の手伝いをしている。学生時代は生徒会長を務め、超優等生で石頭だった。正義感の固まりで、自分一人で世界に平和をもたらす覚悟だったが、現実を知り、自分の無力さと正義感の板挟みになってしまった結果、ゲイとして開眼した。 実は大夢がいつもくわえているタバコを作っているのは彼。寺の敷地内にある別棟に、「ナンマイダーけんきゅうじょ」という看板の秘密基地があり、そこで物理学を基本にしたさまざまな研究を行っている。一度命を落とした大夢の霊体を、タバコの効果で実体化してこの世に留めておく事に成功している。 好きなお菓子はカンノーロ。
言葉・S・サリンジャー (ことのはえすさりんじゃー)
メイド服を着た社長令嬢。年齢は16歳。12月28日生まれ、血液型はAB型。身長157センチ、体重49キロ。スリーサイズは上から88-56-86センチ。父親が、菜花洋菓子店の建っている土地の買収に苦労している事を知り、自らがスパイとなって菜花家に潜入し、店を乗っ取る事を提案。菜花家の家族となって精神的な距離を縮める事を目的に、周到に準備した証拠をでっちあげ、菜花正路の許嫁を装っている。 幼い頃から超箱入り娘として育てられ、自分専用の部屋から一歩も外に出た事がない。そのため、何でも理論づけて考え、すべてが計算通り、予定通りに事が運ぶと信じている。11歳で大学合格、12歳で大学卒業。16歳の時にはイギリスで博士号を取得した天才。 研究内容は進化生物学。大学以外の学校には通っておらず、勉強はすべて独学と家庭教師で賄った。超マクロ視点の持ち主で、人間個人や個別の案件にはほとんど関心がない。関心があるのは人間という生物、ないしは社会というシステムのみ。今まで狙って取得できなかった資格試験の類はないというのがプライド。空手初段まで取得しているが、通信教育で取得したため、彼女が空手をする姿はまるで太極拳のようだといわれている。 紅茶と甘いものが大好きで、紅茶に合うお菓子を見つけると、数か月分一気に購入し、それしか食べなくなる極端な性格。偏った食生活になりがちなため、体脂肪も多め。表情はいつも固く、本人はにこっと笑顔にしたつもりでも実際には表情にまったく変化はないが無自覚。 好きなお菓子はクッキー。
猪熊 大晴 (いのくま まさはる)
「猪熊牧場」を営む既婚男性。年齢は21歳。西大路祐天、菜花大夢とは小学校からの幼なじみ。4月22日生まれ、血液型はA型。身長199センチ、体重99キロ。菜花洋菓子店に牛乳やクリーム、自家製のバターを卸している。現在奥さんは自宅出産のため、産婆さんを呼び、自宅のベッドで出産中。父親がアメリカ人、母親は日本人のハーフで、ごく平凡な国際結婚から生まれたフィジカルエリート。 子供の頃から野性と運動能力を発揮。スポーツ万能だったが、本人はロックシンガーを目指していた。しかしある時、ギターがウクレレに見えるといわれ挫折。なんとなくグレて過ごした時期もあった。奥さんとは高校時代に出会い、一目ぼれした。奥さんの実家だった牧場を手伝っているうちに牛飼いに目覚め、そのまま彼女の実家を継ぐ事になった。 そのため、猪熊は奥さんの姓であり、旧姓は土屋。今でも音楽はやるが、ギターはうるさいのでウクレレしか持たせてもらえない。胎教のためと銘打って牧場で流している歌は、彼のロック魂のたまものではあるが、牛からはあまり歓迎されていない様子。好きなお菓子はウィークエンド。
今出川 雪近 (いまでがわ ゆきちか)
年齢20歳の男性。8月7日生まれ、血液型はA型。身長175センチ、体重65キロ。フランスのお菓子のコンクールで優勝を果たした実力派パティシエ。店を持たず、中古のキャンピングカーをラボとして、旅をしながらケーキを作っている事から、「ボヘミアンシェフ」の異名を持つ。ケーキの材料費捻出のため、現在はアルバイトを転々としている。 最初のコンクールでは小学生にして優勝し、パティシエとしての人生を華々しくスタートさせた。もともとあまりコンクールに興味がなかったが、菜花大夢に出会い、コンクール荒らしの人生を歩む事になった。南雲市の隣のなるさわ市にあるケーキ屋の息子だが、コンクールにばかり参加していたせいで、大量生産という概念がなく、店舗の経営にも興味がないため、実家の跡を継ぐ気もない。 何より、自分の作ったケーキを食べる相手を激しく選ぶタイプのため、経営には不向き。大夢を唯一にして最大のライバルとして敵視しており、十分すぎる実力を持っていながら、つねに自分にコンプレックスを感じている。大夢に対しては、個人的に決闘を申し込む手紙を投かんしたものの、大夢が約束の場所に現れず、実現しなかった。 それ以降、フランスに渡ってコンクールを渡り歩きながら、フランス国内を完全制覇。フランスでは神のような存在となっている。移動先ではその都度大夢に手紙を出し続けていたが、最初の1通目からすべての住所が間違っていた事がのちに判明。彼からの手紙は1通も大夢に届いていなかった。好きなお菓子はクグロフ。 大夢からは名前の「ユキチカ」を文字って「エキチカ」と呼ばれている。
まーちゃん
眼鏡をかけた女性。ある日突然、連れの女性と二人で今出川雪近のラボを訪れた。雪近のファンを名乗り、サインを要求。写真撮影のあと、ファミリーレストラン「リヴァイアサン」で、タルトを食べながら、タルトについての雪近の持論を聞き、細かい指南を受けた。
佐井 涼子 (さい りょうこ)
小麦野高校に通う2年生の女子で、年齢は16歳。菜花正路や白井かの香のクラスメイト。10月24日生まれ、血液型はA型。身長150センチ、体重40キロ。スリーサイズは上から76-55-78センチ。宮廷菓子研究部の部長を務めているが、部員はいない。部室として使用している第2家庭科室では、中世の貴族の衣装を身にまとったマネキンを複数体置く事でオーストリアのウィーンを表現。 自分も手作りの金髪のカツラにそれっぽい衣装を身につけて「フランツ」と名乗り、宮廷菓子職人を目指すウィーンの男性のようにハツラツと振る舞っている。金髪のカツラを外すと、とたんにぼーっとした女子生徒に戻り、生活時間も、ウィーン時間に合わせているため、日中の授業中はいつも眠そうにしていて影は薄い。 第2家庭科室に置いてある大きな箱が巣のような状態になっており、その中で寝起きしている事が多い。そこに夜遅くまでいるため、顧問の三原美晴からは、再三に渡り教室内をすべて片付けるように警告を受けている。菓子作りの腕はかなりのもので、ウィーンの菓子に明るい。特にザッハトルテに深い思い入れがある。 好きなお菓子はエステルハージーシュニッテン。子供の頃に出会った「矢のしっぽ模様のケーキ」(エステルハージーシュニッテン)があまりにも美味しくて、そこからウィーンへの扉が開いた。ウィーンについては、歴史や、通りの名称まで完璧に把握しているが、それ以外はまったく無関心。コンビニエンスストアのお菓子や、街の洋菓子も食べる事はあるが、基本的に不満を言って終わる事が多い。
三原美晴 (みはら みはる)
小麦野高校で教師を務める女性。第2家庭科室で寝起きし、教室を私物化している「宮廷菓子研究部」の佐井涼子に対し、長きに渡り片づけを要求してきた。約束を守って活動ができなければ活動停止にする事も視野に入れ、再三にわたり警告を続けてきたが、最後通告を終えても変化がなかった事を理由に、第2家庭科室を強引に閉鎖、涼子もろともすべてを教室の外へ出してしまった。
トラ
老舗和菓子店「和菓子しらかわ」の工房で働く職人頭の男性で、体育会系の職人達を取り仕切っている。菜花洋菓子店の、特に代表となる菜花大夢に対する敵対心は誰よりも強く持っている。しかし、人情味あふれる義理堅いところもあり、まだ幼い菜花ぱせりや、まじめにしらかわの手伝いに取り組む菜花正路に対してはむげにはせず、大人として接する姿も見られる。
耕成・サリンジャー (こうせいさりんじゃー)
「サリンジャー・フード・グループ ジャパン」のCEOを務める男性で、言葉・S・サリンジャーの父親。菜花洋菓子店が建っている土地を買い取り、新たに「スイーツパーク」を作ろうと目論んでいる。いつも仕事の事しか考えていない仕事の鬼。無表情なところは言葉と似ている。父親・耕次郎・F・サリンジャーの無念を晴らそうとしている。
菜花 耕太郎 (なのは こうたろう)
菜花洋菓子店の3代目当主だった男性で、菜花正路、菜花大夢、菜花ぱせりの祖父にあたり、耕次郎・F・サリンジャーの双子の兄。菜花洋菓子店の前身である「菜花製パン所」の双子の跡取り息子として生まれた。しかし、太平洋戦争のあおりを受け、パン屋は廃業。初代店主である菜花耕作からの言いつけで、耕次郎と店主を決めるための勝負を行った結果、勝負に勝ち、名前を菜花洋菓子店に変えて、営業を再開したという過去がある。 かつては伝説のシェフと呼ばれた天才だったが、現在は引退し、その片鱗はない。孫の顔も覚えておらず、もはやボケた状態。車いすは日常生活を送るうえでの必需品となり、菜花直人、菜花伊万里と生活を共にしている。
耕次郎・F・サリンジャー (こうじろうえふさりんじゃー)
菜花耕太郎の双子の弟。菜花洋菓子店の前身である「菜花製パン所」の双子の跡取り息子として生まれた。しかし、太平洋戦争のあおりを受け、パン屋は廃業。初代店主である菜花耕作からの言いつけで、耕太郎と店主を決めるための勝負を行った。その結果、勝負に負け家を出る事になった。のちに婿入りしたため、菜花の姓を捨て、サリンジャーを名乗る事になったが、自分が作ったレシピも放棄する事となり、失意のうちに亡くなったと伝えられている。
菜花 伊万里 (なのは いまり)
菜花正路、菜花大夢、菜花ぱせりの母親で、菜花耕太郎の実の娘。若い頃は、ケーキ作りには目もくれず、世界中を貧乏旅行していた。そんな自分のお目付け役となってくれていた菜花直人と恋仲になり、彼が婿入りする形で結婚。現在は耕太郎の介護のために菜花洋菓子店を息子の大夢に任せ、田舎で小さな食堂を営みながら夫と父親と三人で暮らしている。 食堂では菜花伊万里の作ったイギリス料理よりも直人の作ったパンが人気。
菜花 直人 (なのは なおと)
菜花正路、菜花大夢、菜花ぱせりの父親。菜花耕太郎のもとで働いていた心優しき職人だった。当時ヤンチャだった菜花伊万里のお目付け役をしているうちに、恋仲になり、婿入りする運びとなった。現在は耕太郎の介護のために菜花洋菓子店を息子の大夢の任せ、田舎で小さな食堂を営みながら妻と義父と三人で暮らしている。 食堂では伊万里の作った料理よりも菜花直人の作ったパンが人気。
フレデリック・ギモーブ (ふれでりっくぎもーぶ)
菜花洋菓子店が建つ月野原に建設が予定されている「スイーツパーク」のために、フランスから呼び寄せられた超一流シェフの男性。世界最高峰のグランプリ「クープシュヴァリエ」で三度の優勝を果たした実績を持つ。次々と革命的なメニューを生み出すお菓子界の神として崇められており、「ゼウス」との呼び声も高い。バケツ一杯のキャンディーを小脇に抱えている。 当初の契約では、味見だけの約束で、作る事は契約外となっていた。とても太りやすい体質で、来日して以来日本の駄菓子にハマり、すっかり太ってしまった。痩せればイケメン。
場所
菜花洋菓子店 (なのはようがしてん)
南雲駅からバスで10分。月野原バス停を下車した小高い丘の上に建つケーキ店。菜花正路と菜花大夢、菜花ぱせりの三人で切り盛りしている。敷地内にはハーブ園や果樹園、養蜂の巣箱などがあり、たくさんのニワトリも飼っているため、ケーキに使う卵やハーブ、はちみつや果物のほとんどは自家製のもので賄われている。営業時間は10時から18時、年中無休で、看板にはいつもレディースデーと表記されている。 大夢がまじめに商品を作らないため、店のショーケースはいつも空っぽに近い状態。それでも店が経営を続けられるのは、常客である「大門寺」からの注文があるおかげ。特に、年に数回、飴細工の仏像の発注を受けており、それがこの店の存在を維持するうえで大切な収入源となっている。 道を挟んで向かい側に建っている和菓子店・和菓子しらかわとは、共に創業100年、南雲市きっての老舗としてライバルの関係にあり、100年に渡り、代々激しい戦いを続けてきた。菜花としらかわが触れ合うと人死にが出るという噂があり、実際、巡り合わせが悪いのか、菜花で商品が売れるとしらかわで食中毒が起きたり、しらかわで子供が生まれると菜花で病人が出たりとまるで呪われているかのような状況があったとされている。 1915年、初代菜花耕作が「菜花洋食軒」として現在の場所に創業。1930年に耕作の長男・菜花作次が2代目店主となり「菜花製パン所」に改名し、パン屋となった。1937年くるみあんパンが大成功をおさめたが、1944年に作次が太平洋戦争で戦死した事を理由に店は休止となり、1946年、作次の息子・菜花耕太郎が3代目シェフとなって店を再開、「菜花洋菓子店」に改名した。 2003年に耕太郎の娘・菜花伊万里に婿入りした菜花直人が4代目シェフとなり、2010年に大夢が5代目シェフに就任。現在に至る。
和菓子しらかわ (わがししらかわ)
南雲駅からバスで10分。月野原バス停を下車したところに建つ和菓子店。菜花洋菓子店とは道を挟んで向かい側にあり、共に創業100年。南雲市一の老舗和菓子店として、日々行列が絶えない人気店となっている。白川ほの香と白川かの香が主な経営者。体育会系の筋骨隆々たる職人達とパートの女性達の力を借りて切り盛りしている。 しらかわのあんは、つぶもこしもすべて自家製。毎日手間暇かけてあんを作り上げている。菜花家と白川家は、100年に渡り代々激しい戦いを続けてきたライバル関係。菜花としらかわが触れ合うと人死にが出るという噂があり、実際、巡り合わせが悪いのか、菜花で商品が売れるとしらかわで食中毒が起きたり、しらかわで子供が生まれると菜花で病人が出たりとまるで呪われているかのような状況があったとされている。
その他キーワード
タバコ
菜花大夢がいつもくわえているたばこ。西大路祐天が作ったもので、命を落とした大夢が、このタバコを1日1本摂取して成分を体内に送る事で、霊体を実体化する効果がある。ただし、大夢自身は本来嫌煙家である。