喪黒福次郎の仕事

喪黒福次郎の仕事

藤子不二雄Aの代表作『笑ゥせぇるすまん』の主人公、喪黒福造の弟である喪黒福次郎が、社会に不安を抱き、人生に苦悩する人々を幸せにするために暗躍する姿を描いたハートフルコメディ。「カピタン」1997年7月号から1998年6号にかけて連載された作品。

正式名称
喪黒福次郎の仕事
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
レーベル
ビンゴ・コミックス(文芸春秋)
巻数
全1巻
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あらすじ

襟戸進介は飲み会の帰りに「面影飲食街」にある行きつけのスナック「SNACK紅薔薇」に入っていく。カウンターに座ると、美人なママがいつものように襟戸を優しく迎え入れてくれる。しかしその翌日、飲み会の帰りに出会った不思議な男、喪黒福次郎から、もう「SNACK紅薔薇」には行かない方がいいと電話で忠告される。喪黒からの余計な一言に気分を害した襟戸は、今日も仕事終わりに、大好きなママのいる「SNACK紅薔薇」へと足を向けるのだった。(エピソード「危険なわき道の薔薇」)

片石吾郎はゴルフが大好きで、今日も会社の同僚や部下達と、緑いっぱいのフェアウェイにボールを打つ爽快感を楽しんでいた。しかし、ドライバーで打ち上げたボールがコースを外れてしまい、片石が急いでボールが落ちた場所を見に行くと、ボールはOB杭の外側に出ていた。ゴルフのルールでは、ボールがOB杭を越えてOBとなった場合は、元の地点から1打罰を加えて打ち直さなければならない。堅実なプレイを信条としている片石としては、部下や同僚の前で格好悪い姿を見せたくない。悩んだ末に片石は、周囲に誰もいない事を確認して、ボールをOB杭の内側に移動させ、何事もなかったようにアイアンでコースインさせてしまう。その後、ゴルフは何のトラブルもなく終了したが、翌日、喪黒福次郎と名乗る男から、ゴルフ場で行ったような不正行為はやめた方がいいと警告される。(エピソード「小さなインチキ大きなマチガイ」)

若者を中心に人気を集めている俳優の唐木竜二は、「ハードの唐木竜二」というキャッチコピーで売り出していた。そのため、自身の役者としてのイメージを何よりも大切にし、プライベートで業界関係者と遊ぶ事を避けていた。そんな唐木は「MANOS」という名のバーの常連で、ここが仕事を忘れて素の自分をさらけ出す事ができる心の拠り所だった。ある日の仕事帰り、いつものように「MANOS」でカウンターに座ると、見慣れない客が1人で、カウンターに座っていた。彼は鰐沼という名前で、唐木と同じような悩みを抱えており、2人はすぐに意気投合する。「MANOS」で語り合ったあと、唐木は鰐沼から誘われて外人の水着バーに連れて行ってもらい、破目をはずして飲みすぎてしまう。結果、次の日も鰐沼と水着バーに行くという約束をしたにもかかわらず、仕事もある事からすっぽかしてしまう。その日の仕事帰り、「MANOS」に立ち寄った唐木は、カウンターでとなりに座った喪黒福次郎から、あなたのようなスターが約束を破ると、社会的信用を失う事になりかねないと忠告を受ける。(エピソード「微笑の仮面」)

イラストレーターの白井清一は、仕事柄パソコンに向かって作業する事が多く、いつの日からか仕事の息抜きに、1人で麻雀のゲームをする事が趣味になっていた。そんなある日、公私共にお世話になっている文明社の塚原から、今度雑誌で麻雀の特集を組む事になったから白井も参加してみないか、と持ち掛けられる。最初は断ろうと考えていた白井だったが、パソコンと生身の人間相手ではどう違うのか実験してみないかという、塚原の言葉に好奇心を抱く。こうして白井は塚原と共に初めて雀荘に入るのだった。(エピソード「魔雀のささやき」)

サラリーマンの外尾視郎は毎朝、満員電車に揺られながら会社に出勤する事に苦痛を覚えていた。だがある日、電車の窓から見えるマンションのベランダで頬杖をついている女性に一目惚れした事で、最近では電車に乗る事が楽しみで仕方がない。いつしか外尾は、仕事にも手がつかなくなるほどに、1日中彼女の事ばかり考えるようになっていた。そんなある日、仕事から帰宅する途中に喪黒福次郎に声をかけられ、いつも電車の窓から眺めている女性の事は、あこがれるだけに止めておいた方がいいと忠告される。余計なお世話だと憤慨した外尾は、次の日に思い切って彼女の住むマンションの最寄駅で降り、マンションへと足を運ぶ。(エピソード「電車の窓からの眺め」)

さえない会社員の津木内清一は、なぜかいつも不運に見舞われてしまう人生を送っていた。そして今日も、最寄りの駅に向かうバスに目の前で発車され、最悪な朝を迎えていた。その後、次のバスに乗って無事に最寄駅に辿り付いたものの、今度は電車に乗ろうとしたところを後ろから押されて、乗客の女性の胸を触ってしまう。女性に痴漢と間違われた津木内は、必死に女性に身の潔白を訴えるものの、周囲の乗降客にまで痴漢だと決めつけられてしまう。そんな絶対絶命の状況の中、一部始終を目撃していた喪黒福次郎が、女性に経緯を説明してくれた事で事件は収束を迎えた。しかしその後、胸を触られた女性からあとをつけられ、身元をつきとめられてしまい、会社や自宅へ嫌がらせの電話をされるようになる。(エピソード「ついていない男の不運」)

曲がった事が嫌いで、一本気にあふれた性格をしている会社員の一本木正志は、今日も通勤途中の電車内で、マナーの悪い乗客を注意していた。そんな一本木の性格が災いして、注意された乗客男性が憤慨し、一本木に殴りかかろうとする。そこに同じ車両に乗り合わせていた喪黒福次郎が、身を呈して助けてくれる。喪黒は一本木に対し、正しい事が必ずしも通る世の中ではないので、これからは相手を見て注意した方がいいと忠告する。しかし、一本木はその日の仕事帰りにも、駅の階段に座り込んで煙草を吸っている若者達を注意し、彼らに絡まれてしまう。(エピソード「一本気もほどほどに…」)

妻の典型的な姉さん女房な性格に頭の上がらない毎日に、ストレスを感じていた坊谷良彦は、妻への反発心から、飲み屋で知り合った従業員の女性と、飛行機で出張先の九州へと向かう。坊谷は妻からのストレスから解放されて、自由気ままな時間を過ごしていた。ホテル内のロビーで酒を飲みながら煙草を吸っていると、羽田から九州へと向かう飛行機でとなりのシートに座っていた喪黒福次郎が姿を現し、共に酒を酌み交わす事になる。坊谷は喪黒と会話を重ねる中ですっかり意気投合し、いっしょに来た女性と回る予定だったゴルフに喪黒も誘い、3人でゴルフを楽しむ。(エピソード「旅の終わり…」)

木鳥良行は、新宿西口の高級ホテル「ゼブラホテル」で、明日に試験を控えている丸井富夫に食事を振る舞って相談に乗っていた。木鳥は中堅のエリートサラリーマンのように見えるものの、実は失業中の身で、自宅では貯蓄を切り崩しながら生活する妻が待っているのだった。ある日、就職活動がうまくいかずに公園のベンチで一人途方に暮れていると、喪黒福次郎に声をかけられ、木鳥の身辺を調べさせてもらったと告げる。喪黒の話に憤慨した木鳥は、先日相談に乗っていた丸井を騙して、丸井の父親からお金を巻き上げようとは思っていない事を喪黒に説明し、今後は丸井とはかかわらない事を約束する。(エピソード「ホテル・わが別世界」)

新宿西口の「ロマン横丁」の中にある居酒屋「夢路」の常連客の1人、蕗谷光二は、今日もカウンターに座って上機嫌で酒を楽しんでいた。するととなりに喪黒福次郎が座り、しばし会話を楽しむ事になる。その後、日中に仕事でロマン横丁の近くを通りかかると、偶然にも喪黒と再会し、いっしょに昼食を取る事になる。食事を終えた2人は「夢路」の前で立ち止まると、蕗谷は準備中の札のかかった入り口をじっと物思いに耽るように見つめていた。そんなの蕗谷の様子を見た喪黒は、蕗谷が「夢路」に通いつめているのは、看板娘の夢子に入れ込んでいるからだと確信する。こうして蕗谷は喪黒から、一度夢子を食事に誘ってみてはどうかとアドバイスされる。(エピソード「赤提灯のともしび」)

音梨貴代は夫の上司の奥さんが大の麻雀好きな事から、週に2回、麻雀を打つ事を習慣にしていた。そして今日も夫を仕事に送り出してから、麻雀を打つために奥さんの家へと出かけるのだった。しかし麻雀があまり得意ではない音梨は、奥さんをはじめとする麻雀仲間達からカモられ、負けが続き、家計に確実に負担がかかっていた。夫の出世に影響するかもしれないからと、やりたくない麻雀を打ち続ける日々の中、通りすがりのサラリーマン、喪黒福次郎がトイレを借りに家を訪ねて来る。喪黒は音梨がやりたくもない麻雀を打ち続けて困っている事を見抜き、麻雀に参加するのは止めた方がいいと忠告する。(エピソード「夫のいない間」)

新宿西口の超高層ゾーンから少し離れた、十二社という町にある中華料理屋「紅龍」のカウンターで晩酌をしていた久留味つくるは、となりの喪黒福次郎が自分とまったく同じメニューを注文した事から会話する事になる。食事を終えて店を出ると、久留味は喪黒に漫画を生業にしている事を明かす。すると、喪黒から仕事部屋を見てみたいと言われ、喪黒を自宅に招いて得意のつまみ料理を振る舞う。喪黒は久留味の料理を大絶賛。これをきっかけに、久留味の料理に興味を持った喪黒から、知り合いの食通を紹介される事となる。(エピソード「グルメな転職」)

登場人物・キャラクター

喪黒 福次郎 (モグロ フクジロウ)

ボランティアでトラブル処理をしている男性。恰幅がよく、黒髪で蝶ネクタイにダブルのスーツを着用し、がま口のようなデザインのショルダーバッグを左肩に背負っている。スーツの背中には「福」という文字が描かれている。タレ目でクルリとカールした前髪と赤い頬が特徴。人の心の奥にひそむ欲望を駆り立てて破滅に追い込む兄がいるが、そんな彼とは対照的に、人生の落とし穴に落ちてしまった人に救いの手を差し伸べている。 普段から笑顔を絶やさず、物腰は柔らかで、初対面の相手に対しても気後れする事なく話せる社交的な性格をしている。電車や飛行機などの交通機関を利用する人達の人間観察をする事が趣味で、新宿西口の十二荘という町の商店街をブラブラと歩く事が大好き。藤子不二雄Aの代表作『笑ゥせぇるすまん』の主人公、喪黒福造の弟である。

襟戸 進介 (エリト シンスケ)

34歳の商社マンの男性。黒髪を中分けにしてメガネをかけていて、スーツを着用している。会社では、仕事帰りに上司に飲みに誘われるなど非常にかわいがられており、仕事面でも高く評価されている。「面影飲食街」にある行きつけのスナック「SNACK紅薔薇」の美人ママがお気に入り。妻帯者で一軒家に住んでいる。まじめでおとなしい性格のため、頼まれ事をされると断れない性分で、押しや誘惑に弱い。

片石 吾郎 (カタイシ ゴロウ)

45歳のサラリーマンの男性。黒髪で中肉中背、目が大きくてスーツを着用している。公私のスイッチの切り替えがうまく、職場では決して馴れ合う事なく仕事に専念している。プライベートでは、友人や職場の同僚や部下達と思い切り大好きなゴルフを楽んでいる。そんな彼の仕事への姿勢にあこがれている部下は少なくない。趣味のゴルフでは、どんな局面になってもダボ以上は叩かない、堅実なゴルフをする事で有名。

唐木 竜二 (カラキ リュウジ)

38歳の男性俳優。長い黒髪を中分けにしていて、サングラスをかけている。襟付きの柄シャツの上からジャケットを羽織っている事が多い。主に若者向けのテレビドラマに出演する事が多い売れっ子の役者で、キャッチコピーは「ハードの唐木竜二」。役者としてのイメージを非常に大事にしており、仕事以外ではあまり業界関係者と交流する事を好まないストイックな性格。 プライベートでの楽しみは、行きつけのバー「MANOS」で一人カウンターに座り、寡黙なマスターを相手に酒を酌み交わす事。

白井 清一 (シライ セイイチ)

31歳のイラストレーターの男性。黒髪を中分けにして眼鏡をかけており、白い長袖のワイシャツの上からベストを着用している。仕事柄パソコンに向かう事が多く、仕事の息抜きにパソコンでゲームをするようになり、最近は麻雀のゲームソフトにはまっている。毎日のように麻雀を打っているが、一度も雀卓で麻雀を打った事がない。まじめでおとなしい性格ではあるが、好奇心旺盛で、面白そうな事には何でも首を突っ込んでしまう。

外尾 視郎 (ソトオ シロウ)

34歳のサラリーマンの男性。黒髪の坊主頭で眼鏡をかけており、スーツを着用している。まじめでおとなしい性格。出勤時に乗る満員電車の窓から見えるマンションのベランダでいつも頬杖をついている女性が気になって仕方がなく、仕事が手につかないほど。仕事帰りに同僚と行きつけの飲み屋「香味や」で、酒を酌み交わしながら会話するのが何よりの楽しみ。

津木内 一夫 (ツキナイ カズオ)

33歳の男性会社員。黒髪で眉毛が八の字に垂れ下がっており、スーツを着用している。妻と二人で集合住宅に住んでおり、会社へはバスと電車を使って通勤している。その名前の通り、目の前で乗りたかったバス等の乗り物に先に出発されたり、満員電車で痴漢に間違われたりと、何かと不運な事ばかりを引き寄せてしまう体質。気が弱い性格から、口論になっても言い返す事ができない。

一本木 正志 (イッポンギ マサシ)

38歳の男性会社員。黒髪の短髪でスーツを着用している。常識から逸脱した行為やマナー違反には、どんな相手に対しても厳しく注意をする、正義感にあふれた勇敢な性格。特に最近はマナーの悪い若者が増えた事に憤りを感じている。

坊谷 良彦 (ボウヤ ヨシヒコ)

36歳のデザイナーの男性。黒髪を七三に右分けにしていて、白いワイシャツにネクタイを締めてベストを着用している。5つ年上のキャリアウーマンの女性と仕事で知り合って結婚をしたが、典型的な姉さん女房で、いつも頭の上がらない毎日を過ごしている。そんな家庭での日常の反発心から、飲み歩く事が多く、時々飲みに行く飲み屋の従業員の女性と親しくなる。 しかし元来、気が弱くて度胸のない性格をしているため、最後の一線を越える事ができない。

木鳥 良行 (キドリ ヨシユキ)

失業中の37歳の男性。黒髪を整髪料で整え、上品なスーツに身を包んでいる。眼鏡をかけた気取り屋で、他人からの目を気にするタイプ。表向きは中堅エリートサラリーマンのように振る舞い、年下の若者に食事や酒を奢ったり、相談に乗るなど兄貴風を吹かしている。しかし実は求職中で、妻には就職活動のためにお金が必要だと偽り、貯蓄を崩してホテルの食事代や宿泊代を工面してもらっている。

丸井 富夫 (マルイ トミオ)

18歳の男子高校生。黒髪で眼鏡をかけていて、高校の制服を着用している。自宅は富山にあり、父親がさまざまな事業を経営する大企業の社長。大学受験のために東京に上京して来ており、新宿の高級ホテル「ゼブラホテル」に泊まっている。勉強熱心でまじめな性格の持ち主で、同じホテルに宿泊している木鳥良行と知り合い、食事を重ねるうちに木鳥の事を本当の兄のように慕うようになり、尊敬している。

蕗谷 光二 (フキヤ コウジ)

会社を経営している39歳の男性。黒髪を整髪料で整え、スーツを着用している。新宿西口のロマン横丁が大好きで、横丁の中にある居酒屋「夢路」の常連客の1人。堅物でまじめな性格ではあるが、実は「夢路」の看板娘の夢子が目当てで通いつめている。毎日のように「夢路」に通っているため、自宅で待っている妻にはあまり快く思われていない。 趣味はパソコンで日記を付ける事。

夢子 (ユメコ)

新宿西口の「ロマン横丁」の中にある居酒屋「夢路」の看板娘。長い黒髪を後頭部で束ね、着物に白い割烹着を身につけている。容姿のよさと、寡黙であまり自分の事を語らないミステリアスな雰囲気で人気がある。蕗谷光二をはじめとする常連客の中には、彼女目当て通いつめている男性客も少なくない。

音梨 貴代 (オトナシ タカヨ)

30歳の主婦。茶色い髪で、短いパンチパーマの髪型をしている。普段は柄の入った長袖シャツとパンツを着用しているが、出かける時にはイヤリングを付けて化粧をし、柄物のスーツを着用する。夫と2人で一軒家に暮らしていて、旦那を仕事に送り出したあとは、週に2回、夫の仕事先の上司の奥さんの家に招かれて、麻雀をするのが習慣になっている。 しかし実は、麻雀はあまり得意ではなく、負けが続いて家計に負担がかかり、本心では麻雀に誘われる事に嫌気がさしている。

久留味 つくる (クルミ ツクル)

32歳の男性漫画家。眼鏡をかけていて、黒髪で前髪が一束はねており、チェック柄の長袖シャツに黒いスラックスを着用している。コミック雑誌「コミックグルメ」に「クルミツクル」というペンネームで「くいしん坊」という漫画を連載している。「料理漫画の名料理人」というキャッチコピーを持つほどに料理がうまく、つまみを自分で作って晩酌をするのが好き。 手塚治虫を尊敬しており、手塚治虫のポートレートを自宅の仕事部屋の壁に貼っている。

書誌情報

喪黒福次郎の仕事 全1巻 文芸春秋〈ビンゴ・コミックス〉 完結

第1巻

(2000年1月発行、 978-4160900622)

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