あらすじ
第1巻
武家出身の永倉朱音は、突然自宅を賊に襲われ両親を亡くしたうえに、実家が取り潰しになってしまう。朱音はなぜ両親が殺されたのか、その真実を知るために太夫になって、自ら吉原でも5本の指に入る遊郭「曙楼」に身を沈める。曙楼の楼主と曙楼の内儀は、朱音を曙楼のお職(No.1)である朝明野に仕込んでもらう事にするが、朝明野は無下にその申し出を断る。朝明野が断った事に対して挑発的な言葉を口にした朱音は、朝明野から今すぐに客を取れば面倒を見てやると告げられる。朱音が吉原の中を歩き回って客を探している最中、神社で近江屋惣右助と出会い、初対面にもかかわらず彼に敵意を向けられてしまう。結局朱音は客を取る事はできなかったが、その晩に惣右助が曙楼を訪れ、朱音を身請けしたいと申し出る。今日来たばかりの朱音を身請けさせるのは吉原のルールに反すると、朝明野と惣右助は言い争いになる。結果、朝明野は惣右助にまずは朱音の馴染みになるよう命じ、その日まで朱音は朝明野の新造になり、教育を受ける事となった。惣右助の真意が見えない中、朱音は紫と共に新造出しに出るが、その途中で朱音の着物の帯が破れてしまう。
第2巻
新造出しの際に帯が破れた永倉朱音だったが、すぐに近江屋惣右助が助けに入った事により、大事に至らずに済む。そして朱音は、惣右助が吉原で姉を探しており、そのために神谷利一郎と手を組んでいた事を知り、好意ではなく、自分を利用するために親切にしていた事にショックを受ける。そんな中、朱音を気に入っている三橋兵衛は、彼女と一晩を過ごそうと手を尽くすが、惣右助の介入によって失敗する。あくまで利害関係で自分を助けてくれたと考えていた朱音だが、息を切らせて遊郭「曙楼」にやって来てくれた惣右助の姿に胸を高鳴らせる。一方の惣右助は、武家という存在が憎いからこそ、朱音を心底自分に惚れさせると宣言し、そのままキスをするのだった。そんな中、三橋の世間話から朱音の両親を襲った賊の手掛かりが見つかった事で、朱音はあえて三橋に近づき、酔い潰して情報を聞き出す。すると三橋は、朱音の父親が賄賂を受け取っていた疑惑があると語り、朱音は激しく動揺する。
第3巻
近江屋惣右助は吉原で自身に恨みを抱く暴漢に襲われるが、永倉朱音と共に返り討ちにする。この事件以来、朱音と惣右助は思い人同士だと吉原で噂になり、さらに朱音は惣右助から再度身請けをさせてほしいと申し出を受ける。しかし朱音は嬉しい気持ちを押し隠し、両親の仇を取るまでは惣右助を受け入れる事ができないと答える。そんな中、朱音は葵と親しくなり、葵の思い人である佐吉への恋心を聞いているうちに、自身も惣右助に恋心を抱いている事を自覚し始める。一方、身請けを断り続ける朱音に対して惣右助は、時が来たら自分が金を出して親元請け(親や親族が身請けする事)をすると告げる。自分が招いた結果とはいえ、惣右助とはふつうの夫婦になれないのだと朱音は絶望する。そんな中、葵の実家・伊勢谷が朱音の父親と付き合いがあり、朱音の父親の贈収賄の疑いに少なからずかかわっている事を知った朱音は、葵に協力を依頼する。両親の仇に関する真相に近づけたと喜ぶ朱音だったが、遊郭「曙楼」に出入りする客から、惣右助が見合いをしたと言う噂を耳にしてしまう。
第4巻
永倉朱音と近江屋惣右助は思いを通わせつつも、朱音は両親を殺害した賊が何者なのかを知るまでは、このまま新造として遊郭「曙楼」に留まる事にした。惣右助は朱音の父親の贈収賄疑惑について調べていると、松阪屋からあまり詮索しない方がいいと忠告される。そんな中、吉原では夏恒例の祭りが行われる事になり、曙楼はライバル関係にある遊郭と俄(にわか・各遊郭からの寸劇などの出し物)の演目が被ってしまう。絶対に負けたくないと曙楼の女達は気合と活気にあふれ、朱音は一時的だが親の仇の事を忘れていた。俄は朝明野の圧倒的な存在感もあり、曙楼は聴衆に絶賛される。一方、朱音に協力すると約束した葵と佐吉から、朱音の父親の贈収賄疑惑を払しょくするような情報が集まり始める。そんな中、俄での朝明野の姿にあこがれた客が朱音に接近し、朝明野と付き合いたいと毎日のように文を渡すようになる。朝明野と客のあいだに立たされた朱音は苦悩するが、惣右助の機転によって事なきを得る。そして惣右助は、その礼として朱音と同じ布団で一晩過ごしたいと告げる。
第5巻
永倉朱音の父親の贈収賄疑惑について調べていた葵と佐吉が、心中を装って何者かに殺害される事件が発生する。朱音は自分にかかわった事で起こった惨事に責任を感じて塞ぎ込み、自分のすべき事にも身が入らずに、やせ細っていく。そんな朱音の姿を見た近江屋惣右助は朱音に喝を入れ、朱音は再び前を向く決意を固める。そんなある日、朱音は惣右助と初めて同じ布団で夜を明かすが、朱音はもうこれ以上大切な人を失いたくない思いから惣右助を拒絶し、惣右助は遊郭「曙楼」に出入り禁止になってしまう。惣右助はどうにか手を尽くして朱音に近づこうとするが、朱音の決心は固く、惣右助を受け入れる事はなかった。しかし、どうにか朱音と二人きりになった惣右助は、これからは三橋兵衛と松阪屋を頼れと言い残して姿を消す。その後、三橋は朱音に手を貸すとは口では言うもののつかみどころがなく、朱音は本当に信じていいものか悩んでいた。また、裸婦を描く事で有名な人気絵師・菊川英水は、朱音の気の強そうなところを気に入り接近するが、朱音は惣右助以外の人の前で着物を脱ぐ事はできないと拒絶する。結局は惣右助以外の人を信じる事ができず、朱音は自分がどうするべきか悩む。
第6巻
永倉朱音は、三橋兵衛と松阪屋の計らいにより近江屋惣右助の愛唱に戻る。そして、葵と佐吉の殺害の黒幕は中村忠篤だと判明する。朱音、惣右助、三橋、松阪屋はそれぞれが中村を貶めれば利がある事から、四人は結託する事となった。そんな中、中村は遊郭「曙楼」を訪れ、惣右助と朱音の関係を知りながらも、わざと惣右助の目の前で朱音を寝所に招きたいと申し出る。惣右助の機転により中村の要求は実現しなかったものの、惣右助は中村に本当に自分に忠実な存在なのかと疑われ、忠誠心を試されたのだと戦慄する。そんな中、曙楼に上州池田藩藩主・真堂が訪れ、紫を自分の藩に連れて帰りたいと言い出す。最高の玉の輿だと曙楼の女達は色めき立つが、神谷利一郎に恋心を抱いている紫はどうしても受け入れる事ができない。紫は朱音に対し、以前から気になっていた利一郎との関係について真実を打ち明けてほしいと訴えるが、朱音は紫の苦しい心中を理解しつつも、親の仇に巻き込めないとなにも言う事ができない。
第7巻
朝明野の子供が熱を出し、永倉朱音は朝明野から医者を呼ぶように言われる。医者の牧村賢守は女好きで軽い性格をしており、朱音は驚愕する。一方、葵と佐吉が殺害されたとされる日に、牧村が血の臭いをさせながら遊郭「曙楼」に現われた事もあり、牧村が中村忠篤からの刺客なのではないかと、朱音は警戒心を抱く。同じく牧村の存在を怪しんだ近江屋惣右助は、彼の素性を探り出す事に成功するものの、彼に撃退されてしまう。その後朱音は、自宅の近江屋から曙楼に惣右助の所在を尋ねる使いが来た事により、惣右助が行方不明になっている事を知る。そして朱音は牧村がなにか事情を知っているに違いないと、単身牧村のもとへと急ぐ。
第8巻
このところ、永倉朱音は遊郭「曙楼」に顔を見せない近江屋惣右助に業を煮やし、吉原の門まで様子を窺いに来ていた。そこに通りかかった紫と共に曙楼へと戻ろうとしていると、何者かによって二人は誘拐されてしまう。朱音が目覚めると見知らぬ船に乗っており、なぜか惣右助も乗船していたために助けを求めようとするも身動きが取れない。結局朱音は、惣右助の目のつくであろう場所に自身のかんざしを置き、助けが来るまで自分にできる事をしようと決める。一方、曙楼から朱音と紫が行方不明になっている事を知った惣右助は捜索中に朱音のかんざしを見つけ、誘拐事件だと悟る。そして惣右助は神谷利一郎、牧村賢守と協力して調べた結果、怪しい人物として最近博打で作った借金が嵩んでいると噂されている千川家が浮かび上がる。
第9巻
遊郭「曙楼」に永倉朱音の元婚約者・誠二郎が現われ、朱音に協力する代わりに自分の妻になるよう迫る。朱音の心の中には近江屋惣右助がいるものの、両親が殺害された事件や父親の贈収賄の疑惑を晴らすためには、誠二郎の協力がどうしても必要であった。そんな中、神谷利一郎は紫に求婚している上州池田藩藩主・真堂ならば、過去の帳簿を手に入れる事ができるのではないかと提案する。しかし、紫が真堂に願い事をしてしまうと、そのまま嫁ぐ事になる可能性が高く、朱音はそれはできないと拒否する。だが、利一郎は秘密裏に紫に接近し、土下座をして真堂から帳簿をもらってほしいと懇願する。紫は利一郎への恋は叶わなかったものの、一生心に残る女性になれたと涙し、要求を受け入れるのだった。そんな中、朝明野が身請けされる事になり、曙楼は大いに盛り上がる。朱音は縁談が決まったにもかかわらず、浮れたところを少しも見せない朝明野と話しているうちに、朝明野こそ惣右助が探していた姉だと気づいてしまう。
登場人物・キャラクター
永倉 朱音 (ながくら あかね)
15歳の少女。7月8日生まれ。身長158㎝。旗本永倉家の一人娘であったが、親を殺され、家は取り潰しにあってしまう。親を殺した、腰に三日月のあざのある人物の情報を得ようと、自ら女郎の身になって吉原の頂点に上り詰めようと、決心するのだった。そして吉原の門をくぐり、曙楼のナンバーワン花魁の朝明野の妹女郎になり、茜と名乗ることになる。 そんな永倉朱音に武家出身ということで最初は敵意を向けながらも、身請けを申し出たのが近江屋惣右助。彼の申し出を断ってしまった永倉朱音だったが、彼と深くかかわっていくにつれて、次第に心惹かれていく。近江屋惣右助が刀を携えた3人の男に襲われたとき、とっさに錫杖を薙刀代わりにして、後先考えずに男たちに立ち向かってしまうような、無鉄砲で強気な性格をしている。 しかし近江屋惣右助の言葉や態度には、ちょっとしたことでも涙を流してしまう弱い部分もある。曙楼に客としてきた三橋兵衛との会話から、親の死と家のお取り潰しの不自然さを知り、永倉朱音を追って曙楼にやってきた永倉家の元用人であり兄的な存在の神谷利一郎と共に、その隠された謎を探ろうとする。
近江屋 惣右助 (おうみや そうすけ)
高利貸しの若旦那。20歳。7月29日生まれ。身長180㎝。頭の切れる色男。旗本に髷を切られ、ザンバラ頭をしている吉原の人気者。初対面の永倉朱音に敵意をむき出しにしてきたかと思えば、突然身請けするといいだすような無茶をする。碁の腕前はなかなかのもの。齢5歳にして、利子の二重取りの仕組みを見破ってしまうほど利発な子だった。 小普請組の御家人である秋津家に生まれる。父親が飲んだくれて内職もせず、貧しさから近江屋惣右助の姉である8歳の娘を吉原に売り、さらに近江屋惣右助が12歳になった時、陰間茶屋に売ろうとした。それをみかねた近江屋の親父が金を出して、惣右助を引き取ることになる。そんな過去から惣右助は武家嫌いになった。吉原では敵娼(あいかた)は一人と決まっていて、一度馴染みを作ったら、ほかの見世にあがるのはご法度。 しかし、近江屋惣右助は姉を探すために、吉原の見世を渡り歩いているので、浮気者だと周りから思われている。永倉朱音が家の再興のために動いていることを知り、力を貸すことになる。
神谷 利一郎 (かみや りいちろう)
永倉家に代々仕えていた用人(旗本などの家で家計や雑事を執り行っていた人)。神谷家の嫡男。24歳。11月9日生まれ。身長184㎝。永倉朱音が幼い頃からそばにいて、彼女の兄的な存在。屋根から落ちた永倉朱音をかばって、左顎に傷を負っている。出家して仏門に入っていたが、永倉朱音が女郎に身を落としたことを知り、還俗して曙楼の若ぇ衆(店員)として働き、永倉朱音を守る。 仏門に入っていたため頭を剃っていたが、現在は短髪になっている。江戸時代では月代(さかやき)を剃って髪を結うのが普通であったため、短髪は野暮ということで、布で頭を覆って隠している。永倉家の用人であり、永倉朱音と主従関係にあることを、「永倉家御用達の札差であった近江屋の若旦那」である近江屋惣右助に知られ、それを黙っている変わりに、惣右助の頼み事を引き受けることになる。 普段人当たりのいい若者であるが、永倉朱音がかかわることになると、女の紫に対しても容赦のない態度をとる。
朝明野 (あさけの)
曙楼のお職(ナンバーワン)の花魁。23歳。10月23日生まれ。身長164㎝。曙楼の楼主から、永倉朱音を仕込むよう頼まれるが断る。しかし指導を断った自分に対して、生意気な口をきいてきた永倉朱音に、客を連れて来いと無理難題を吹っ掛ける、ちょっと意地悪な性格。どうにか難題をクリアし、自分の妹女郎となった永倉朱音に対して表立って優しいことをするわけではないが、時にこっそりと気遣う言葉をかけるなど、とても気が付く女性。
紫 (ゆかり)
曙楼の引込禿(かむろ)で、花魁・朝明野の禿(遊女の世話をする幼女)。永倉朱音と同じ15歳。身長156㎝。左の口元にほくろがある。初めのころは、永倉朱音に卵を分けてあげるなどして親切に接していた。しかし新造出し(見習い遊女の披露)で、帯が切れるというハプニングを、永倉朱音がみごとに乗り切ったため、次のお職(ナンバーワン)を争う相手とみなし、なにかと意地悪をしてくる。 いずれは吉原の頂点に登りつめるという野望を持つ。永倉朱音と神谷利一郎が二人きりで、こっそりと話しているのを見て、二人のただならぬ関係に気が付き、それをネタに永倉朱音を脅すなど、かなりの曲者。
曙楼の楼主 (あけぼのろうのろうしゅ)
曙楼の主。曙楼は、永倉朱音が買われた吉原でも5本の指に入る廓。白髪交じりの髪で煙管をくわえていて、話すのは一言だけだったりする寡黙な人物。寡黙ではあるが、たえず笑っている表情をしているため、雰囲気は柔和。廓に来るには少々歳がいっていた永倉朱音を、曙楼の内儀は受け入れることを渋ったが、楼主の意向で受け入れ、曙楼一番の花魁である朝明野の指南を受けさせる。
曙楼の内儀 (あけぼのろうのおかみ)
曙楼の内儀。ほとんど言葉を発することのない曙楼の楼主の意向を理解できる、唯一の人物といってよい。
誠二郎 (せいじろう)
永倉朱音の許嫁だった旗本の次男。永倉朱音の両親が殺され、婚約が解消になった後も永倉朱音を妻にと望み、方々探して曙楼まで永倉朱音を訪ねてきた。永倉朱音を連れ戻そうとするが、拒否されてしまう。
松阪屋 (まつざかや)
朝明野の上客。大きな材木問屋を営んでいるナイスミドルな男性。義侠心があり、顔も広いことから、近江屋惣右助が「永倉家の贈収賄に関することを探ってほしい」と頼んだ人物。贈収賄の件で、かなりの大物が裏にいるだろうと知った松阪屋は、近江屋惣右助に、あまり首をつっこまないほうがいいと忠告をする。
三橋 兵衛 (みつはし ひょうえ)
松阪屋の接待で曙楼に来た侍。34歳。11月13日生まれ。身長173㎝。曙楼とは別の店で、名代の振袖新造(若い見習いの女郎)に手を出したという噂のある人物。近江屋惣右助は武家嫌いではあるが、三橋兵衛とは軽口を叩き合える気心の知れた仲。奉行を務めてもおかしくないくらいの家柄だが、ふざけた軽い性格で助兵衛。 酔うと口が軽くなる。
葵 (あおい)
曙楼の女郎。18歳。4月26日生まれ。身長162㎝。右目になきぼくろがある。甘いもの好き。飛びぬけて美人ではないが、明るくて愛嬌のある性格で、あっという間に座敷持ちになった。曙楼に来る前は、伊勢屋という大きな材木商のお嬢さんだった。急に身代が傾いて、親は首をくくり、葵は借金のカタに身売りをした。葵の家の材木商で手代をしていた佐吉とは両想いではあったが、身分が違うので、文のやりとりをするのがせいぜいであった。 しかし女郎に身を落とした葵に佐吉が会いに来て、ようやく身も心も結ばれることができ、年季があけたら一緒になろうと約束をしている。日陰に落ちた自分を哀れむのではなく、人生を楽しもうと前向きに生きている。永倉家の贈収賄の事件に、葵の家の伊勢屋が関係していることを知り、佐吉と共に永倉朱音の力になることを約束する。 佐吉のおかげで、重要な手がかりをつかむことができたが、葵と佐吉の二人は、心中にみせかけて何者かに殺されてしまう。
佐吉 (さきち)
葵の間夫(まぶ)。昔は葵の家の材木商の手代だった。材木商のお嬢さんであった葵とは両想いであったが、身分の違いで結ばれることはなかった。働いていた材木商がつぶれて葵が女郎になり、そこへ訪ねていったことで二人は身も心も結ばれる。後に小間物の行商をはじめる。永倉家と伊勢屋の贈収賄の件で、永倉朱音の力になることを、葵と共に約束。 重要な手がかりをつかむが、葵と心中したように見せかけて、何者かに殺されてしまう。
瀬山 菊之丞 (せやま きくのじょう)
近江屋惣右助が贔屓にしている人気の若手役者。女形。19歳。身長169㎝。女形なので髪は女性の結い方をしているが、月代があるので、それを隠すため布をかぶせている。近江屋惣右助を何度も口説いているが、近江屋惣右助からは役者として贔屓にされているだけの関係。綺麗な顔をしているが、その口から出る言葉はかなり下品。
喜瀬川 (きせがわ)
朝明野をライバル視する秋葉屋のお職(ナンバーワン)の花魁。上客は細田屋。芸者などが芝居や物語の登場人物に扮装し、即興芝居を披露して練り歩く吉原の夏の一大イベント「俄」で、朝明野と張り合って光源氏の格好をするが、不評で泣きをみることになる。
細田屋 (ほそだや)
喜瀬川の上客。風貌のさえない小柄な男性。御用商人の仲間入りをして、同じ材木商の松阪屋と張り合っている。勘定奉行の中村忠篤とつながっていて、贈収賄の罪を伊勢屋になすりつけた黒幕の一人。
中村 忠篤 (なかむら ただあつ)
1年ほど前に抜擢された勘定奉行。家の紋は片喰紋。いつも商人を連れて、それぞれの馴染みの見世で接待を受けている。細田屋もその商人たちの中の一人。彼が勘定奉行の任に就く前後から、複数の商人たちとの間で贈収賄などの怪しい動きをしており、そのことに気が付いた永倉朱音の父を殺した。
菊川 英水 (きくかわ えいすい)
裸の女しか描かない人気の絵師の男性。彼の絵は、三橋兵衛も好んで見ている。道中で永倉朱音を見初めて、絵を描きたいと曙楼にやってきた。自分に描かれれば、評判になって吉原一にもなれる、ただし裸の女しか描かないから脱げ、と永倉朱音に告げる。しかし永倉朱音はその誘いを断り、「菊川英水を振ったという噂が流れるくらい、たいしたことではない」と啖呵をきる。 菊川英水としては振袖新造(若い見習いの遊女)ごときに振られた、などという噂が立つのは恥なので、永倉朱音の振袖姿を描くことを承諾するしかなかった。
牧村 賢守 (まきむら かたもり)
上役のお目付けのお庭番を務める青年。ふだんは「真木村賢生」という偽名を使い、町医者をしている。一見女好きの軽い性格に見えるものの、実際は剣術の達人で、頭の回転も速い情報通でもある。中村忠篤の不正疑惑に目をつけ、独自に調査をしている際に永倉朱音、近江屋惣右助と出会い、手を貸す事にする。
場所
曙楼 (あけぼのろう)
吉原でも5本の指に入る店。江戸町1丁目にある。現在のナンバーワンの花魁は朝明野。主人公、永倉朱音はここで茜と名乗り、朝明野の妹女郎となって吉原でナンバーワンを目指す。
書誌情報
青楼オペラ 12巻 小学館〈フラワーコミックス〉
第1巻
(2015-10-26発行、 978-4091377777)
第2巻
(2015-10-26発行、 978-4091377784)
第3巻
(2016-03-25発行、 978-4091383099)
第4巻
(2016-07-22発行、 978-4091384775)
第5巻
(2016-12-26発行、 978-4091388186)
第6巻
(2017-05-26発行、 978-4091391872)
第7巻
(2017-09-26発行、 978-4091395672)
第8巻
(2018-03-26発行、 978-4091398680)
第9巻
(2018-08-24発行、 978-4098701032)
第10巻
(2019-02-26発行、 978-4098703319)
第11巻
(2019-08-26発行、 978-4098705245)
第12巻
(2020-02-26発行、 978-4098707584)