概要・あらすじ
早川三郎は船乗りを目指すべく、中学卒業と同時に故郷を離れ、高洋丸と呼ばれる船に乗り込むことを決意する。しかし、実際に三郎が目にした高洋丸は、フェリーと呼ぶにはあまりに不釣り合いなオンボロ船であった。先行きに不安を感じる三郎だったが、山本研二や船長などの頼れる仲間たちに囲まれ、次第に船乗りとして成長していく。
登場人物・キャラクター
早川 三郎 (はやかわ さぶろう)
中学を卒業後、高洋丸の乗組員として働くことになった少年。母親想いの生真面目な性格で、着任当初は緊張のあまり固くなりすぎて、失敗することも多かった。しかし、山本研二の破天荒な振る舞いや、船長とその家族たちの暖かさに触れることによって、次第に年相応の振る舞いを見せるようになり、高洋丸そのものにも強い愛着を抱くようになっていく。
山本 研二 (やまもと けんじ)
高洋丸の停泊する桟橋で、早川三郎と出会った青年。どさくさに紛れて高洋丸に無賃乗船をしてしまう。船員免許を持っており、自ら働いてその対価にしたいと申し出て、甲板士として迎えられることとなった。ひょうきんな性格だが、船員としての腕は確かで、三郎からは時折呆れられながらも兄貴分として慕われる。また、時折高洋丸に対して、並ならぬ思い入れを抱いていると思わしき様子を見せる。
船長 (せんちょう)
高洋丸の船長を務める男性。初代船長であった父親の跡を継ぎ、舵を取っている。若い頃から船に乗っていたベテランで、家族や船員たちの信頼も厚く、早川三郎からも尊敬されている。山本研二に対しては、たがいに素直になれないため、普段は厄介者扱いしているものの、いざという時には頼りにしている。
機関長 (なんばん)
高洋丸の機関長を務める女性。船長の妻。夫同様船に精通しており、高洋丸にはなくてはならない存在として信頼されている。娘である早苗とは仲が良く、船長の家に下宿している早川三郎の面倒をよく見ている。また、山本研二を以前から知っていたような素振りも見せた。
早苗 (さなえ)
船長と機関長の娘。両親が舵を取る姿を幼い頃から見て育っているため、高洋丸には強い思い入れを抱いている。さばさばした性格で気が強く、目上の男性が相手であっても、臆さずに自分の意見を主張する。一方で機関長同様面倒見が良く、早川三郎が初めて大きな仕事に就く際には、あたらしい靴を用意すべく、テツヤの店に案内している。
順子 (じゅんこ)
高洋丸が停泊する島で生活をしている高校生の少女。不良グループの一員で、高洋丸の船員である早川三郎をからかうため、偽のラブレターを出すといったいたずらを仕掛けた。しかし、いたずらと知りつつ堂々と呼び出しに応じた三郎に、次第に好意を抱くようになり、高洋丸の船員たちとも交流するようになる。
テツヤ
高洋丸が停泊する島で靴屋を営んでいる青年。早川三郎が仕事に使う革靴を用意するよう早苗に頼まれる。その際に三郎が大きな足をしていることに関心を持ち、「手足が大きい人は大物になる」と激励した。なお、早苗とは互いに想い合っている仲で、彼女のためなら朝早くから店を開けることも厭わない。
駐在 (ちゅうざい)
高洋丸が停泊する島に勤めている警察官の男性。職務に対しては真面目な性格ながら、島が平和すぎるために暇を持て余すことも多々ある。早苗とは親しい間柄で、友人感覚で口喧嘩をすることもあれば、船の運航の手伝いを頼まれることもある。
チビ
発泡スチロールの箱に乗せられ、捨てられていた子犬。海に流されたところを高洋丸に発見され、救助された。その際に山本研二に懐くようになり、彼がどこへ行くにも後をついていく。やがて高洋丸に居つくようになり、研二や早川三郎の弟分として可愛がられるようになった。
オバサン
高洋丸の前に突如現れた女性。かつて山本研二と婚約していたと語っており、彼の消息を追って高洋丸へとやって来た。早川三郎からは「おばさん」と呼ばれ、最初こそ反論したものの、すぐに自分自身を「オバサン」と呼ぶようになる。男女関係で女ばかりが泣く現実をよしとせず、研二と一緒になるために高洋丸で働こうとするなど、逞しい性格をしている。
先生 (せんせい)
高洋丸の客の1人。眼鏡をかけた温厚な性格の男性。本土に病気の母親がいるため、定期的に高洋丸を利用している。船長や仲間内からは先生と呼ばれており、その呼び名に違わず博識な面を見せる。船長には時折水産学の本を提供しており、早川三郎が航海士を志していることを知ると、船長や山本研二の頼みを受け、数冊の本を譲り渡した。
アキコ
早川三郎と幼なじみの少女。三郎からはアキちゃんと呼ばれている。高洋丸で働く三郎に会いに来たところ、順子と鉢合わせ。会って早々に、順子が三郎に想いを寄せていることを見抜いた。のちにオバサンを交えた3人で意気投合し、三郎や山本研二にちょっかいをかけるようになる。
犯罪者 (はんざいしゃ)
本土で何らかの犯罪を起こし、警察たちに追われていた男性。逃走の際に、みなと祭りのどさくさに紛れて出航間際の高洋丸に乗り込んだ。警察から逃れるために外海に出るよう船長を脅すが、物理的に不可能であるうえ、船長なしでは船の運航もままならないため、観念してしまう。
子供たち (こどもたち)
みなと祭りを終えて本土から出航した高洋丸に、いつの間にか乗り込んでいた少年と少女。あたかも互に知り合いのように見られていた2人だが、実際は偶然居合わせただけである。アメリカに行きたいと公言しており、船長からはその際に、逃走したいだけという犯罪者とスケールが違うと言われた。
かあちゃん
早川三郎の母親。女手一つで三郎を育て上げた女性。出張先に高洋丸が停泊していると聞き、三郎に会いにやって来た。しっかりした性格だが調子がいい面もあり、船長と山本研二を目の前で「いい男」と評して、2人の鼻の下を伸ばした。
場所
高洋丸 (こうようまる)
早川三郎が乗り組む、島と本土を往復している船。島の住人たちにとっては唯一の連絡船でもあるため、愛着を持っている人は非常に多い。しかし、普通の連絡船と比較すると小さめで、見た目もややぼろいため、島の人からは親しみを込めて「ボロ船」と呼ばれることもある。
イベント・出来事
みなと祭り (みなとまつり)
本土の港で開催されるお祭り。連日多くの人でにぎわっている。オバサンは食堂で作られたお弁当を出店で売り出しており、山本研二も女装をしてこれを手伝った。また、仮装行列が道を練り歩くという催しがあるが、研二は途中で眠ってしまったため、参加することができなかった。