魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?

魔術師のザガンは幼い頃、浮浪者同然の身の上で、つねに力を持つ者から奪われる日々を送っていた。そのためいつしか力を欲するようになり、自分を実験材料にして魔術師を返り討ちにしながら、その力と知識を身につけ、魔術師となった過去がある。時が流れ、魔術師のトップである魔王候補の一人に選ばれるまで魔術師として大成するが、その代償として周囲からは邪悪な魔術師と恐れられ、孤独な日々を過ごしていた。そんなある日、ザガンは知り合いに誘われてオークションを訪れ、そこで商品として売られていた奴隷の少女、ネフェリアに一目惚（ぼ）れする。そしてザガンは、全財産をはたいて即決でネフェリアを購入し、彼女を連れ帰る。

ザガンは自分の城にネフェリアを連れ帰るが、自らの身の上に絶望して心を閉ざしたネフェリアにどう接したらいいかわからず右往左往していた。何とか彼女の心を解きほぐそうとするも、恋愛に不慣れなザガンは本心とは正反対な邪悪な振る舞いで、ネフェリアをさらに絶望させるという悪循環に陥るのが、本作のお約束のパターンとなっている。しかし、二人はいっしょの時間を過ごすうちに少しずつ打ち解け、ネフェリアもザガンが単なる邪悪な魔術師ではないと理解し始める。そんな中、ザガンは自分の得意な魔術に関することなら素直に話せることに気づき、ネフェリアを弟子にする。ザガンはネフェリアと交流を重ねるうちに、彼女を第一に考えつつも、ネフェリアの嫌がることをしないと心に決め、少しずつ周囲への態度も軟化させる。また、ネフェリアも初めて優しく接してくれるザガンに次第に心を開き、彼の役に立つため自発的に行動を始める。不器用な二人は恋をすることで、信頼とそれ以上の気持ちをお互いに育んでいく。

ネフェリアはエルフたちの中でも異端とされる存在で、望むだけで奇跡を起こす「魔法」の使い手。「魔法」は積み重ねた知識と技術でさまざまな力を行使する「魔術」とは根本から違う存在で、エルフからは「この世にあってはならないもの」とされていた。そのためネフェリアは、幼い頃から一族の中で迫害されていた。しかし、人間とエルフの戦いが始まると、エルフは一転してネフェリアの魔法の力を利用することを目論む。エルフたちのその言動にネフェリアは心の底から絶望し、自ら人間に捕まってエルフたちの敗北を決定づける選択をした。エルフたちの敗北する姿を目の当たりにしたネフェリアは、そんな自分の醜さに気づき、さらなる絶望に打ちひしがれ、奴隷扱いを受け入れるようになる。しかし、ザガンはネフェリアの行いを肯定する。自らの罪を受け入れてもらったことで、何もなかった空っぽの少女は、初めて自らの望みに気づき、ザガンを守るため魔術の道に進むことを決意する。