あらすじ
高校生編(第1巻)
H高に通う硬派な女子高校生・志村久美は、恋と無縁の平穏な日々を送っていた。しかし、ある日軟派な色男・白石森男からラブレターをもらったことで、久美の生活は一変することとなる。森男を意識するようになった久美は髪を伸ばしたり、オシャレ好きの鐘棒ゆう子たちに化粧の手ほどきを受けるが、そんな久美に対し、森男は「似合わない」と言い放つ。ショックを受ける久美に、森男は「変わることが怖い」と告げる。だが、久美や森男は高校3年生で、彼らには進路選択という「変化」を求められる大きな問題が目前に迫っていたのだった。
大学生編(第2巻)
志村久美は親友の徳光治子、森下小百合とともに国内の大学へ進学したが、白石森男はアメリカのNY大学に進学してしまう。森男と離れ離れになった久美は、理工学部3年の前原時史と知り合い、心惹かれていく。森男のいない寂しさを前原と埋めようとする久美だったが、ある時、森男が突然帰国して来る。こうして久美の心は、森男と前原との間で揺れ動くこととなる。
NY編(第3巻)
白石森男は、アメリカへ渡ったのは一時的な留学ではなく、最終的には永住するためだと言い出す。近くにいなければ心が離れると確信した志村久美は、日本の大学を辞めてNYの語学学校への進学を決める。高校時代からの親友・徳光治子、森下小百合、大学で親しくなった三好虹子はそんな久美を心配し、観光がてら久美と一緒にNYへ向かうことになった。だがそこで、森男はNYに久美がいない寂しさから、パール・フェイザーという久美そっくりの女性と付き合っていたことが発覚。また、パールは渡米して来た久美を見て、自分が代役だったことを悟り、自殺を図ってしまう。
登場人物・キャラクター
志村 久美 (しむら くみ)
H高3年3組の女子で、風紀委員を務めている。「硬派」を自称し、肩までのボサボサの黒髪で、しゃれっ気はゼロ。情熱を嫌悪し、ニヒリズムを貫き、クールを愛する性格。また数学のことも愛しており、数学の授業ではいつも教師の西川に数学への愛を語っている。友人の徳光治子、森下小百合とはトイレ愛を分かち合う仲間で、何かあるとトイレに集まってトイレ掃除をし、トイレにまつわる下ネタを連発する。 バスケットボール部のエースで、ハンサムなプレイボーイの白石森男のことは、自分から一番遠い存在だと考えていたが、ある時彼からラブレターをもらったことで恋に目覚め、ニヒリズムと恋の板挟みになってしまう。高校卒業後は治子、小百合と同じ大学へ進学する。
白石 森男 (しらいし もりお)
H高3年の男子。ウェーブのかかったロングヘアでチャラチャラしているが、男子バスケットボール部のエースを務めている。軟派なプレイボーイを装っているが、同じ部の島本には根が無愛想であることを見抜かれている。もともと不眠症気味だったが、志村久美に想いを寄せるようになってからは、逆に眠ってばかりいる。部活の練習中・試合中を問わず居眠りをしていることが多くなり、女子たちからは「眠れる王子さま」と呼ばれていた。 重度のシスコンで、白石森男の姉が矢島高史の兄と結婚することになった時は、その悲しみから姉のハイヒールを片方隠してしまった。姉は困った顔をしながらも怒らなかったが、矢島は片方しかないハイヒールの行方を森男に確かめに来た。 それによって森男は姉の変化を受け入れられなかったこと、同じように久美の変化を恐れていることに改めて気づかされることとなった。高校卒業後は、アメリカのNY大学へ留学する。
徳光 治子 (とくみつ はるこ)
H高3年3組の女子。前髪をまっすぐに切りそろえたオカッパ頭で、志村久美や森下小百合の親友。常にトイレ掃除用のモップを手にしており、どんなこともトイレに関する下ネタに変換する変な人物。高校卒業後は久美や小百合と同じ大学に進学し、同じ大学の三好虹子に、小百合とセットで「へっくそコンビ」「ちゃっきり便所娘」「ウルトラ便所コオロギ」などトイレに関する妙なあだ名で呼ばれるようになる。 友人想いで、久美が白石森男との関係に悩んでいる時は親身になって相談に乗り、久美がNYへ行くと言い出した時は、観光目的ではあったが、小百合、虹子とともにNYに旅立つ。
森下 小百合 (もりした さゆり)
H高3年3組の女子で、生物クラブに所属している。肩ほどまでのストレート髪の両サイドを編み込んで、おでこを出した髪型をしている。志村久美や徳光治子の親友。久美や治子と一緒にトイレをたまり場にしていて、屁やクソなどの下品なギャグをよく言っており、くしゃみまで「へっくそ」という徹底ぶりを見せる。高校卒業後は、久美や治子と同じ大学へ進学し、同じ大学の三好虹子に、治子とセットで「へっくそコンビ」「ちゃっきり便所娘」「ウルトラ便所コオロギ」などトイレに関する妙なあだ名で呼ばれるようになる。 久美の恋愛を心配しており、久美が森男を追ってNYへ行くことになった時には、観光目的ではあったが治子、虹子とともにNYに旅立つ。
利子 (りこ)
H高に通う女子。ふわふわの長い髪の両サイドにリボンを付けている、可愛らしい少女。白石森男のガールフレンドだったが別れることになり、トイレで泣いていたところを、志村久美に見つかった。森男に振られた形になっているが、実は利子の方が先に心変わりしており、それを森男に感づかれた結果の破局であった。
島本 (しまもと)
H高に通う男子。男子バスケットボール部のキャプテンで、白石森男の友人。すぐに居眠りをする森男を引きずって試合に出場させているが、もともと森男が不眠症で志村久美を好きになってから反動のようによく眠るようになったのを知っている。居眠り癖のせいでレギュラーを外されそうになった森男を信じ、慈悲を与えるようにコーチに頼む。
紫生堂 麻美 (しせいどう あさみ)
H高に通う女子。常にばっちりフルメイクでオシャレと恋に情熱を傾けており、「軟派の最高峰」とも評される。鐘棒ゆう子、高清セーラとともに「化粧ばえ三人娘」と呼ばれることもあり、そろって白石森男を狙っている。長いウェーブのかかった黒髪で、黒目の大きな派手な美人。三人娘の中ではリーダー的存在。志村久美を含む他の生徒からは「三美女」とも呼ばれている。
鐘棒 ゆう子 (かねぼう ゆうこ)
H高に通う女子。常にばっちりフルメイクでオシャレと恋に情熱を傾けており、「軟派の最高峰」とも評される。紫生堂麻美、高清セーラとともに「化粧ばえ三人娘」と呼ばれることもあり、そろって白石森男を狙っている。外にカールした髪をヘアバンドでおでこを出している知的な風貌の美人で、「ブスは有害」と言ってはばからない。 志村久美を含む他の生徒からは「三美女」とも呼ばれている。
高清 セーラ (こうせい せーら)
H高に通う女子。常にばっちりフルメイクでオシャレと恋に情熱を傾けており、「軟派の最高峰」とも評される。紫生堂麻美、鐘棒ゆう子とともに「化粧ばえ三人娘」「三美女」などと呼ばれることもあり、そろって白石森男を狙っている。そのため志村久美のことを敵視しており、「ふすまをやりでつついたような顔」と表現した。 ふわふわのロングヘアで、三人娘の中では最も可憐で可愛らしい容貌。
矢島 高史 (やじま たかし)
H高に転校して来た男子。前髪は片目を隠すほど長く、横分けにしている。制服はかなり着崩していて、更には目を離すとタバコをくわえる不良少年で、風紀委員の志村久美にには名前ではなく「問題児」と呼ばれている。兄が白石森男の姉と結婚しているため、白石森男とは義理の兄弟にあたる。かつてバスケットボール部に所属していたため、かなりの実力の持ち主。 H高の男子バスケットボール部に勧誘された際には、出身地が日光だと言ったことで、コーチになぜか「趣味だ」と言われて入部した。
西川 (にしかわ)
H高で3年3組の担任を務める男性教師で、担当は数学。年齢は29歳。髪をオールバックにして眼鏡をかけた細身の人物で、妻と3人の子供がいる。数学を愛する志村久美から、授業中に「ベクトルは美しい」「整関数の愛について聞かせろ」などと言われ、何かと翻弄されている。久美の守護霊が「トイレの神(トイレットペーパーの意)」だと発言する。
白石森男の姉 (しらいしもりおのあね)
白石森男の姉で、ロングヘアの大人っぽい美女。矢島高史の兄と結婚して家を出ており、シスコンだった弟の森男に大きな傷を残した。結婚の時に森男にハイヒールの片方を隠されてしまうが、その理由は解らずただ優しく微笑むだけであった。義理の弟の矢島に招待されて森男のバスケットボールの試合を見に来た際、森男を応援していた志村久美と知り合った。
コーチ
H高の男子バスケットボール部のコーチを務める中年男性。ダンディな口ひげを生やし、スリーピースのスーツを着て蝶ネクタイを締め、非常に丁寧なしゃべり方をする人物。何に対しても「趣味だ」と答えるのが口癖。寝てばかりの白石森男をレギュラーから外そうした際も、慈悲を与えて森男が更生するチャンスを作って欲しいという島本に対し、「趣味だ」と承諾した。 実は大学の教授で、ディスコのフリーパスを持っているなど、謎が多い。
あたい
いつもヘッドフォンをして歌っている音楽好きの少女。H高の前で志村久美の数学の教科書を拾ったことをきっかけに、久美を勝手に「友達」と呼んでライブハウスに誘う。恋人の雄二が本当に好きで、その想いを隠すことなくまっすぐに常にさらけ出している。一方で、彼のために高校を中退しており、そのことについては後悔している。 一人称が「あたい」だが、周囲からも「あたい」と呼ばれている。
雄二 (ゆうじ)
ライブハウスでボーカリストとして活躍する長髪の若い男性で、あたいの彼氏。曲を作れず、歌うことしかできないのがコンプレックスで、あたいにもそんなところがかっこ悪いと言われている。自分のために学校を辞め、家も出て来たあたいの純粋でまっすぐなところに時に苛立ちを覚えることもあるが、本当はあたいのことを愛している。
国吉 (くによし)
白石森男の幼なじみの若い男性。長髪を下の方で結んでいて、大きな三角眼鏡をかけて軟派な外見をしている。初対面の志村久美を「可愛い子ちゃん」と呼ぶなど、性格も軟派。森男を連れて高原の野外ダンスパーティに、アルバイトのホストとしてやって来たところ、落としたカフスを旅行で高原に来ていた徳光治子と森下小百合がゴミ拾いのバイトで拾い、志村久美に届けてもらった。
正彦 (まさひこ)
白石森男のおじで、アメリカの大学で助教授をしている。頬がこけて痩身の、影のある雰囲気のハンサムで、白石森男の母親によれば、森男は自分よりも正彦の方に似ているという。幼い頃から森男にアメリカ映画を見せるなどの英才教育を行い、彼をアメリカ好きにした張本人。森男がアメリカに来ることを歓迎しており、森男が自分の働く大学に進学したいと言い出したため、話を聞くため一時帰国した。
阿早 (あそう)
志村久美の母親と20年来の親友で、若くておしゃれな中年女性。映画評論家として活躍しており、テレビに出演したこともある。髪はいつもアップにしてシンプルなスーツ、品のいいアクセサリーを身につけた清潔感のある美女。久美が尊敬している人物。
白石森男の母親 (しらいしもりおのははおや)
白石森男の母親。17歳で結婚したこともあって容姿も若く、森男に対する理解もある。志村久美に対して好感を持っており、森男に振り回される久美を慰めたり応援している。実は若い頃はパーマをかけてバンダナを巻き、タンクトップにタイトミニスカート、網タイツにロングブーツという派手なファッションをしていた。当時、森男の父親に手を見られ、働く手ではなく母親になる手だと気に入られ、結婚することとなった。
前原 時史 (まえばら ときふみ)
志村久美が進学した大学の理工学部の3年生で、バスケ同好会のメンバー。背が高く、長めの黒髪を後ろに撫でつけた、ぶっきらぼうで不良っぽい雰囲気がある青年。バスケットボールを見学していた久美にボールをぶつけて、突き指させてしまったことをきっかけに、久美と関わるようになった。
三好 虹子 (みよし にじこ)
志村久美が進学した大学の同学年の女子。おでこを出したさらさらのストレートヘアで知的な美貌の持ち主。服装はフェミニン系を身に着けていることが多い。落ち着いた雰囲気の美人であるものの、初対面の久美に唐突にワイ談をしかけるなど変わった性格で、大学ではちょっとした有名人。久美のことは「志村氏」と呼んでいて、愛しているとも崇拝しているとも言っているが、どこまで本気かは解らない。 周囲からは女性が好きな「ユリ族」と見なされているが、三好虹子本人はそのような言動はあくまで冗談だと言っており、実際に男性からプロポーズされた際には素直に迷う姿を見せる。
前原 昭
前原時史の父親で、ピアニスト。ピアニストになることを拒否した時史とは喧嘩ばかりしている。ぼんやりとした中年男性だが、ピアノの腕は一流。ぼさぼさの髪に頬がややこけた優男風の外見をしている。方向音痴で、自分の別荘へ行く道に迷った時に志村久美と出会った。ピアニストということもあり、人の指を気にして見る癖がある。
加藤 進 (かとう すすむ)
白石森男が進学したNY大学に通う男子で、森男と同じ下宿に住んでいる。長いストレートの黒髪を1つに結んでおり、眼鏡をかけている。自分には戦死したじいちゃんの霊が憑いていると語り、すぐに戦争に関連づけて「空襲」「敵機が来た」「宣戦布告!」などと叫び出す。そのためアメリカ人が嫌いで、特にスー・コードウェルのことは派手な遊び人と決めつけ、喧嘩ばかりしている。
スー・コードウェル (すーこーどうぇる)
白石森男が進学したNY大学に通う、ゴージャスな美女。かつてパール・フェイザーの同居人であり、彼女の恋人だった白石森男が訪ねて来るたびに、近くの喫茶店に出向いて時間を潰していたため、コーヒー党になった。加藤進には「遊び人」と呼ばれているが、性格は外見ほど派手ではなく友達想いで、パールを振った森男のことを恨んでいる。 加藤とは犬猿の仲で寄ると触ると喧嘩をしている。
ミセス・シンシア (みせすしんしあ)
NYで白石森男が住む下宿の大家をしている中年女性。くるくるの髪をアップにしていて、睫毛が長く、左目の下にほくろがある。水玉にリボンの付いた可愛らしい服などを好んで着ている。加藤進から「美人、美しい、輝かしい」という意味だと教えられ、自分のことを「トシマ」と言っている。非常に日本びいきで、下宿には日本刀や掛け軸などが置いてあり、下宿人は日系と日本人ばかりという徹底ぶり。
田所 由利 (たどころ ゆり)
白石森男が進学したNY大学に通う女子で、森男と同じ下宿に住んでいる。黒髪で目が大きく、ふわふわのボリューミーな髪型をしている。前髪はスダレのように垂らしている。森男とパール・フェイザーの関係を知っており、パールそっくりの志村久美が日本からやって来た際には複雑な気持ちを抱くこととなる。
水森 (みずもり)
志村久美が進学した大学の先輩で、ダンス同好会に所属している若い女性。ワンレンの髪型で眼鏡をかけた、知的でクールな雰囲気を漂わせた人物。また早耳にして地獄耳で、学生課にも顔が利くキャンパス内の情報通。一人称が「わがはい」であるなど、少し変わった感性の持ち主。ダンスは上手いがもっぱらソロで、ソシアルは苦手としている。 NYのダンシングチームに入団するため、のちにNYへ留学する。NYに来てからはストレートの髪をばっさり短く切って、パーマをかけるようになる。NY大学の学生のジョディとはいとこ同士。
パール・フェイザー (ぱーるふぇいざー)
白石森男が進学したNY大学に通う女子。肩までの金髪ウェーブヘアに青い瞳の可愛らしい人物。志村久美によく似ており、徳光治子や森下小百合が、久美が和式トイレなら、パールは洋式トイレと独特の例えを口にしていた。久美とは外見だけでなく、笑い顔や仕草も似ている。スー・コードウェルの元同居人で、当時は白石森男と付き合っていた。 自分が久美の身代わりだと知りつつも森男を好きでいたが、渡米して来た久美と森男が一緒にいるところを見て、自殺を図る。以前は幼なじみのジョディと付き合っていたこともある。
シュレイダー
白石森男が進学したNY大学に通う男子で、バスケットボール部に所属している。ボリュームのある髪を横分けにした、鉤鼻にやや垂れ目の人物。フレンドリーで明るい性格で、白石森男のバスケットボールの才能に目をつけており、招待試合に無理やり出場させた。
ジョディ
白石森男が進学したNY大学に通う男子で、水森のいとこ。シャープな美貌の青年だが、パール・フェイザーが自殺を図った時には、入院した病院名も聞かずに飛びだし、慌てて走って戻って来るなど早とちりなところがある。パールの幼なじみにして元恋人で、別れた今でもパールのことを心配している。
場所
H高 (えっちこう)
志村久美や白石森男が通う高校。女子の制服はブレザーにリボンタイ、ひざ丈の箱ヒダのスカートに白いソックス。男子はブレザーにネクタイ。なお、森男が制服を失くして姉のセーラー服を着て登校した際にも、特にとがめだてもされることはなく、服装には寛容である様子。
NY大学 (にゅーよーくだいがく)
白石森男や加藤進たちが進学したアメリカの大学。森男は「チビのイエロー」などと罵られたが、バスケットボール部の試合での活躍により女子学生の人気者になった。