「魔法」は人間に試練を与える生き物のような存在
この世界の「魔法」は、生き物のような存在であり、それぞれに意思を持っている。歴史は人間よりも長く、1000年以上前から存在する魔法もいれば、最近出現したばかりの魔法もいる。その姿は獣や魚、虫、不定形などさまざまだが、共通して人語を理解し、人間に試練を課す習性を持っている。魔法ごとに異なる試練を乗り越えた者は、魔法の真名(しんめい)が記された魔法石を得て、その魔法の主人となる。真名は魔法の効果を発動するための呪文でもあり、試練を突破した者にしか読むことができない。習得された魔法は基本的に、主人が死ぬまで「魔法心円(マジックサークル)」と呼ばれる精神世界で過ごすことになる。なお、既に確認されている魔法は3185種で、人類はそのうち402種を習得している。
魔力を宿す女性だけが「魔女」として活躍できる
試練に挑み「魔法」を習得するハンターたちは「魔女」と呼ばれている。魔法産業が盛んな首都、ナタリーには、マンチネル魔女協会が設置されており、魔女の管理や魔法の研究などが組織的に行われている。また、マンチネル魔女学院という教育機関も存在し、適正試験に合格した魔女候補生の育成が行われている。「魔女」という呼称は「男性には魔力が備わっていない」という常識に基づくもので、魔法に関する事業や産業は女性の独壇場となっている。男性であるイチが魔法を習得し、協会から魔女として公認されたのは、異例中の異例である。
イチが習得した伝説の「王の魔法(キング・ウロロ)」
「王の魔法(キング・ウロロ)」は、「超越特化魔法」という学名が付けられた伝説の「魔法」であり、玉座を抱えた怪鳥のような姿をしている。「女性には傷を付けられない」という特殊ルールを楯に、「魔女」による試練の攻略を阻み続けていたが、男性の狩人であるイチに意表を突かれ、不服のうちに彼の魔法となった。習得時には魔法石を出さなかったり、主人となったイチの身体から生えてきたりと、さまざまな点で通常の魔法とは一線を画している。ウロロを習得したイチの身体には、一般的な魔女に相当する魔力が宿り、通常の魔法の習得も可能になった。ウロロの効果は「修練を必要とせず、どんな魔法でも呪文を唱えるだけで最大出力を引き出せる」というもの。発動時、イチは大きなとんがり帽子を被った姿に変貌する。特化した魔法は地形を一変させるほど強力だが、身体への負担も大きく、使用すると3日間意識を失ってしまう。
登場人物・キャラクター
イチ
殺気に敏感な狩人の少年。身長165センチ、体重60キロ、体脂肪率11%。黒髪で、身体は傷だらけ。6歳で山に捨てられた野生児で、自決用の小刀を使い狩猟をして何年も生き延びてきた。山中で旅の漁師、ミナカタと出会い、野外での生存に必要な知識を授かっている。食べない生き物を殺すことを殺戮(さつりく)と自戒しているが、殺意を向けられた場合はその限りではない。この「死対死(しついし)」の理念を大切にする一方で、獲物を前に好奇心を抑えきれず、死対死の成立を待ち焦がれる姿も描かれている。ある日、デスカラスの「魔法」狩りに乱入して「王の魔法(キング・ウロロ)」を習得し、その身に魔力を宿した。ほどなくマンチネル魔女協会から公認され、反人類魔法専門部隊デスカラス班所属の「魔女」として魔法を狩り集めるようになった。その狩猟スタイルは、魔法の効果より生態に着目したもので、従来の魔女と一線を画している。なお、愛用の小刀は協会の杖工具部で改造を施され、魔法の杖に生まれ変わった。
デスカラス
マンチネル魔女協会に所属する魔女の女性。褐色の肌に下がり眉、髪を解くと膝下まで届く豊かな黒髪が特徴。レイピア型の魔法の杖を愛用している。自己陶酔に浸るナルシストだが、「銀雪の魔女」ことチクトゲ・トゲアイスと同様に、11歳で魔女となった最年少記録の保持者で、「貫穿(ラズド)」「再生(パルシオン)」「熟睡(タフタフ)」など、多様な魔法を使いこなす。現代最強と謳(うた)われる一方で、自由奔放な人格破綻者としても有名で、規律を重んじるトゲアイスを筆頭に上層部からは問題児と認識されている。ある日、「王の魔法(キング・ウロロ)」を習得するための試練に挑むも、女性の攻略を阻む絶望的なルールに苦戦し、現場に居合わせた狩人のイチにウロロを習得されてしまう。やむを得ず彼を協会に誘い、部下としてこき使うようになった。なお、「深淵の魔女」という二つ名で呼ばれているが、協会で「鏡わたり(ミラージュ)」を使用した際、登録名称が「超天才みんな大好きデスカラスちゃん」であることが判明した。
クレジット
- 原作
書誌情報
魔男のイチ 6巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2025-01-04発行、978-4088844022)
第2巻
(2025-03-04発行、978-4088844176)
第3巻
(2025-06-04発行、978-4088845807)
第4巻
(2025-08-04発行、978-4088846118)
第5巻
(2025-10-03発行、978-4088846958)
第6巻
(2025-12-04発行、978-4088848655)







