『魔法使いの嫁』から零れた美しい物語の欠片
本作は、ヤマザキコレの『魔法使いの嫁』の特典などで発表された短編漫画を中心に、外伝エピソードを1話完結のショートストーリー形式でまとめている。各エピソードは時系列が異なるが、主人公の智世(チセ)が魔法使いのエリアスと共に暮らし始めてからの日常や、彼らを取り巻くキャラクターたちの過去に焦点を当てている。なお、原作『魔法使いの嫁』は、家族から見放され孤独だったチセが、エリアスに弟子兼花嫁として迎え入れられ、不思議な絆を築いていく魔法ファンタジー。テレビアニメ化をはじめ、多数のメディアミックス展開も行われている。
曾祖父の言葉を手がかりに、オークニーへ旅立つ
奇妙な言葉を残して亡くなった曾祖父。その死後、青年のネイサンは物置でアザラシのような不思議な毛皮を見つける。曾祖父の言葉を唯一の手がかりに、ネイサンはその毛皮を携えてスコットランドの群島「オークニー」へ旅立つ。そこで彼は、アザラシのような腕を持つ妖精、海豹人(セルキー)の子供と出会い、曾祖母のローミーが実は海豹人であったことを知る。
春の大掃除と吸血鬼カラントの訪問
春の訪れと共に、エインズワース家では家事を請け負う妖精のシルキーが楽しげに大掃除を始めていた。これは、暖炉を使わなくなる春の時期に煤払(すすはら)いを兼ねて行う、イギリスの古くからの習慣に倣ったものだった。家の主であるエリアスや智世、ルツもその大掃除に加わるが、そんな一家のもとに吸血鬼のカラントが訪ねてくる。
登場人物・キャラクター
羽鳥 智世 (はとり ちせ)
15歳の少女で、髪は赤毛でショート、瞳の色は緑(この配色は西欧で「魔女」の印と言われる)。普通の人間には見えないものが見え、さらに魑魅魍魎が寄ってくる。その力のために家族は離散し、母は彼女の目の前で命を絶つ。数奇な運命を経て、人外で異形の魔法使いエリアス・エインズワースに引き取られた彼女は、彼の弟子となってイングランドの田舎にある彼の家に住むことになる。イギリスへ渡ってからは、チセと呼ばれることが多い。彼女の持つ力は「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」と呼ばれ、尋常でない度合いで魔力を吸収・生産することができるというもの。そのため強大な魔法の行使が可能となる。しかしその膨大なエネルギーの流れは、彼女を短期で摩耗させてしまうので、何もしなければ彼女は3年で活動を停止しまうと言われている。
エリアス・エインズワース
大型犬の頭蓋骨に山羊の角を生やした頭部を持つ、長身の異形。「人間にもなれず精霊にも戻れない汚れた存在」と言われる。性別は男性。人間の顔に化けることもできるが、感情をコントロールできなくなると魔獣のような姿になってしまう。「茨の魔法使い」「影の茨(ソーン)」「裂き喰らう城(ピルム・ムーリアリス)」といった様々な異名を持つ。強大な魔法を扱い、その世界では有名人で教会からも目をつけられている(教会からの案件を遂行することで、自由を許されている)。膨大な量の魔力を吸収・生産することができる羽鳥智世をオークションで落札し、自らの弟子にする。チセと共に暮らし、魔法をはじめさまざまなことを教えている。彼女の摩耗に関しては、何らかの手段を考察中らしい。料理をまったくしたことがなかったが、チセに教わり、サラダや簡単なオーブン料理を作れるようになった。
関連
魔法使いの嫁 (まほうつかいのよめ)
ヤマザキコレの代表作。2013年に同人誌として頒布した作品がベースとなっている。舞台は現代のイギリス。魔力の生成と吸収に長けた「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」と呼ばれる特殊体質を持つ少女、チセが、人外の... 関連ページ:魔法使いの嫁
書誌情報
魔法使いの嫁 断片集 1巻 ブシロードクリエイティブ〈ブシロードコミックス〉
第1巻
(2024-04-12発行、978-4048996228)
魔法使いの嫁 断片集 2巻 ブシロードワークス〈ブシロードコミックス〉
第2巻
(2025-04-08発行、978-4048996723)







