先輩の死の真相を探るため調査を開始する
相模北高校の豪腕投手・黒木仁は、全国高等学校野球選手権大会で、LG学園相手に9回表まで0点に抑えていた。しかし、ライトを守る鈴木二郎の落球でピンチに陥ったにもかかわらず、二郎がなぜか笑いながら謝ったことに腹を立て、衝動的に殴ってしまう。甲子園の試合中に前代未聞の不祥事を起こしたことで野球部は対外試合禁止処分が下されることとなった。その後、仁は二郎と和解するものの、二人は周囲から罵られる日々を余儀なくされる。それから2年後。仁は野球部を退部し、学校も休学して冴えない日々を送っていた。そんな中、仁の家に二郎からの手紙が届き、エラーは何者かに仕組まれたことであり、それを知った自分は近いうちに殺されるという内容が綴られていた。その矢先に仁は、二郎らしき水死体が上がったことをニュースで知る。二郎が何者かに殺されたと確信した仁は、犯人を見つけ出すために調査を開始する。
過去の呪縛に苦しむ野球部員たち
2年前の甲子園の不祥事は、当事者の仁と二郎のみならず、相模北高校の野球部員やOBたちにも悪影響を及ぼしている。中でも甲子園ではバットを一度も振ることがなく、センターを守っていた松井英雄は、暴力団関係者に身を落とし、レフトの谷亮も危険物の横流しに手を染めるなど、社会的な信用を大きく失墜させていた。そんな中、当時の野球部監督・広岡弘務の定年に伴い、OBが集う壮行会が行われる。そして仁は、二郎の死にかかわる情報を探るべく壮行会に潜入するが、その矢先に広岡が何者かに殺害されてしまう。さらに、その現場を目撃した先輩の吉井敬ものちに殺害されたことで、二郎の死から始まった事件は同一犯の犯行である可能性が高まる。OBたちは、次は自分たちが殺されてしまうのではないかと危惧し、やがて疑心暗鬼に陥っていく。
2年前の試合の裏で進行していた陰謀
連続殺人事件を調査していた仁は、刑事を務める父親の道からあまり深入りしないように忠告されるが、真実を知らないままだと一生後悔すると考え、犯人を突き止める決意を固める。そんな中、仁は本来甲子園のマウンドに立つはずだった先輩でエースの上原大輔から、試合の裏で八百長が計画されていたことを聞かされる。しかし、その計画は二郎のエラーが仕組まれたことや、二郎や野球部監督の広岡が殺された理由とは結び付かなかった。さらなる疑念を抱いた仁は、暴力団組員の松井から闇社会の密売人・谷亮を探るように助言され、彼が現在潜伏している大坂へと向かう。
登場人物・キャラクター
黒木 仁 (くろき じん)
相模北高校の野球部に所属する男子。ポジションはピッチャー。身長は180センチで、体重は70キロ。両親の離婚後、母親の苗字である「白井仁」となったが、自らは変わらずに「黒木仁」を名乗っている。幼なじみの朝倉シズルや山倉慎之介からは「ジョニー」のあだ名で呼ばれている。幼い頃から野球に打ち込んでおり、ジュニアリーグでは全国大会に出場し、ストレートのみでチームを準優勝まで導いた。150キロを超える剛速球を武器にしているが、制球難に若干苦しんでいる。2年前の全国高等学校野球選手権大会で起こした不祥事で野球部を去り、学校も休学している。しかし、鈴木二郎からの手紙が届いたあとに彼が死亡したことで、その死因に不穏なものを感じ取り、真相を探るために復学する。
鈴木 二郎 (すずき じろう)
相模北高校の野球部に所属していた男子。ポジションはライトで、打順は8番。チームメートからは「ライパチ」のあだ名で呼ばれている。心優しい性格ながら芯が強く、自分が信じたもののためなら自分に危険が及ぶこともいとわない。2年前の全国高等学校野球選手権大会では、LG学園との試合中に平凡なフライを落球してピンチを招くが、笑いながら謝ったことでピッチャーの黒木仁の逆鱗に触れ、殴られてしまう。この不祥事によって野球部は出場停止となり、仁以上のバッシングを受けることとなる。そして、実家の酒屋が潰れてしまったうえに自主退学を余儀なくされ、川崎で独り暮らしをしていた。そんな中、仁と和解を果たして再びいっしょに野球をすることを誓い合うが、その約1年後に相模湖で死体となって発見される。
クレジット
- 原作
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キサラギ リュウ