あらすじ
第1巻
香港伍龍会に所属する殺し屋のシンシア・ロウは、ある日ターゲットの護衛をしていたかつての師匠、スターリング・キャラダインをその手にかける。まだ性格が甘いところがあるため涙に暮れるシンシアだったが、次の仕事は容赦なく舞い込んできて、日本に向かう事となる。日本では、二重人格者の殺し屋、弑四方犠が香港伍龍会の日本支部を壊滅させていた。たまたまその場に居合わせていたシンシアは、四方犠の正体が高野果苗という少女である事を知るが、勝ち目がないと悟り、勝負を挑まなかった。一方、喧嘩番長の久我阿頼耶はプロボクサーの島原カルロスの挑戦を受け、初戦では敗北したもののリベンジマッチで奥義「魔弾」に開眼し、勝利を収める。その後、阿頼耶とカルロス、シンシアらは旅行でタイに行く事になり、シンシアはここでも依頼を受け、現地の殺人鬼を討ち果たすのだった。
第2巻
弑四方犠は同じ学校に通うシンシア・ロウの正体が、自分の抹殺を命じられている殺し屋だという事を知っているため、シンシアを挑発する。銃を抜くシンシアだったが、雪崩式ボディスラムで3階の窓から下のプールに投げ落とされ、あっけなく敗北してしまう。その後、シンシアは殺しの依頼先で、ターゲットの護衛をしていた四方犠と遭遇し、闇の格闘ショーの舞台で再び、四方犠と対決する事になる。素手でなら中国拳法の達人である自分に利があると考えたわけだが、四方犠は格闘術でもシンシアを圧倒し、シンシアは半殺しの目に遇わされてしまう。そんな中、島原カルロスが公園で通り魔の中塚侑実子に襲われて病院送りとなる。仇討ちのため侑実子に挑んだ久我阿頼耶は、日本刀で重傷を負わされながらも魔弾で、侑実子の顎を打ち抜く。
第3巻
香港伍龍会から足抜けしたシンシア・ロウを連れ戻すため、シンシアの姉でありフリーの殺し屋として香港伍龍会の仕事を請け負っているシベール・ロウから、三人の殺し屋が「シンシアを生け捕りにせよ」という依頼を受ける。三人はレストランで偶然にシンシアとその友人達に遭遇したため、ロシア人の巨漢の殺し屋であるグレンチコが、極小の暗殺弾でシンシアに毒物を食らわせる。シンシアは毒に耐性があるため半日程度寝込んだだけだったが、体調は全快しないままグレンチコに襲撃され、一対一で対戦する事になる。グレンチコの前で不殺の誓いを口にしたシンシアは、グレンチコを戦闘不能にしただけでその場を去るが、弑四方犠がその場に現れてグレンチコを自宅に拉致する。さらに三人の殺し屋の一人で、少女のような外見をしたブリギットが、四方犠の部屋に侵入してグレンチコを殺害し、そのまま四方犠と戦闘に突入する。
第4巻
弑四方犠に惨敗したブリギットは、喉を搔き切られる事となった。警察が出動して来たため、四方犠は瀕死のブリギットを残してその場を立ち去るが、呪術師のホセ・パウリスタ・リベイラが、ブリギットを回収する。一方、シベール・ロウは紫水流眩術の道場破りに行き、その宗家である紫水智衛を殺害したため、紫水智衛の娘である紫水ほたるはシベールへの復讐を誓う事になる。その後、シンシア・ロウと久我阿頼耶は、ホセと彼の能力でゾンビになったブリギットに襲撃され、拉致される。シンシアはシベールの前でブリギットと対決させられ、からくも勝利を収めた。シンシアはこの段に至り、ほたるら友人達に自分の素性を打ち明ける。ほたるとシベールが対面し、一触即発の空気の中、殺し合いはしたくないというシンシアの意向が汲まれ、文化祭において5対5の両陣営が対決する事になる。
第5巻
「舌打ち師(タンクリッカー)」の異名を持つ拳法家の宝凌羽が来日した。彼はシベール・ロウの招集に応じたものの、シベールに協力する気はなく、紫水ほたるの側につくつもりだった。その頃、弑四方犠は東洋一と言われるその腕前に興味を持ったシベールの襲撃を受け、命こそ取られなかったが敗北し、重傷を負わされる。そんな中、刑務所から出獄して来た檎桐鸞と、突如協力を申し込んできた正体不明の謎のマスクマン、自称「謎の暗黒仮面ノワールX」の参加によって、ほたる側はシンシア・ロウと島原カルロスを加え、五人のメンバーを揃える事に成功する。その頃シベールは、ホセ・パウリスタ・リベイラや、ホセの能力であやつられている久我阿頼耶、格闘技界で名を馳せる猫堂聖夜、さらに自身を含めて四人のメンバーを揃えたものの、五人目が見つからずにいた。そんな中、ほたるに協力を申し出るも断られてしまった凌羽が、利害の一致からシベールに協力を申し出て、5対5マッチが始まる事となった。その緒戦、カルロスはボディへのワンパンチで猫堂聖夜を一蹴するのだった。
第6巻
舞台は戻って、島原カルロスが中塚侑実子に刺されたあとの事。命に別状はなかったカルロスは、傷の治療のための入院中、外出許可を取ってWBX日本ライト級チャンピオン韮沢純一とのタイトルマッチに挑んだ。韮沢は「UFOアッパー」という大振りのアッパーを得意とするインファイターで、一方のカルロスは典型的なアウトボクサーだった。その相性から、カルロスは終始距離を取って優位に試合をリードしていくが、ケガによるスタミナのなさが祟って、UFOアッパーを喰らってしまう。しかし、そこでカルロスが紫水ほたるの師事のもと獲得した奥義「絶対運命改変拳(デスティニーファウスト)」が発動し、カルロスは「自分がアッパーを紙一重で回避した平行世界」へと移行。これによりカルロスはカウンターを決め、タイトル獲得を決めたのだった。
第7巻
島原カルロスは、5対5ではなく五人勝ち抜き戦にルールを変更しようと言い出す。そのカルロスを背後から猫堂聖夜が襲うが、ホセ・パウリスタ・リベイラがそれを捕まえて締め落とし、勝ち抜き戦への変更に同意する。こうしてカルロスと、久我阿頼耶が対戦する事になった。ノーガード戦法を取るカルロスに困惑する阿頼耶の前で、カルロスは愛の告白をして、その唇を奪うと同時にノックアウトされる。ショックで正気に戻った阿頼耶を、今度は檎桐鸞が急襲。歯が飛び骨が折れる激戦の末、両者はダブルノックアウトとなった。その後、本来ならばホセとノワールXの対戦になるはずだったが、そこに突如として「闇闘技界の覇者」を自称する、帝王キングカイザー100世なる謎の覆面の人物が現れ、マスクを外したノワールXの顔面を爆破してしまう。困った紫水ほたるは、自らノワールXのマスクをかぶり、ノワールXとしてリングに上がる。これにシベール・ロウサイドが同意したため、次はホセとほたるが対戦する事が決定する。
第8巻
下段からのタックルで紫水ほたるを捕えようとしたホセ・パウリスタ・リベイラだが、ほたるに飛び膝蹴りを貰ってその眼を見てしまい、ほたるの瞳術にかかって完敗する。次はほたると宝凌羽の勝負である。凌羽は盲目であるので、瞳術は通用せず、ほたるは危うく殺されかかる。だがリング上からシベール・ロウに瞳術をかけ、自分を救わせると共に、凌羽を倒させた。ほたるは場外負け扱いとなり、凌羽は失神してしまったので、シベール側は五人目のシベール自身を残すのみであり、ほたる側はシンシア・ロウと、勝手に五人目として出場する事を宣言している帝王キングカイザー100世を残している。帝王キングカイザー100世は再び姿を現し、シベールから正体を問われたが、まともな答えは返さず、自分の前にシンシアと戦えと言ってリングサイドに立った。そしてシンシアとシベールの対決が始まったが、シンシアの身体に異変が起こった。突如として、その身体が年齢相応の体格にまで成長したのである。
第9巻
シベール・ロウの語るところによれば、シンシア・ロウは今の姿が本来のものなのだという。幼い頃にシベールが鍼(はり)打ちを誤って、シンシアの代謝能力を狂わせてしまった結果として、今の姿があるという。身体能力が向上した事でシベールとどうにか互角の戦いを繰り広げるシンシアであったが、結局勝負の途中で、シンシアの身体はまた縮んでしまった。そこで勝負は終わりかと思われたが、シンシアを一喝してリングに上がる者があった。それは島原カルロスである。試合の順番も何も無視して、シベールに一騎打ちを挑むカルロスだが、頼みの「絶対運命改変拳(デスティニーファウスト)」も通用せず完敗。そこに今度こそ一対一で決着をつけるため、シンシアが進み出る。
登場人物・キャラクター
シンシア・ロウ
香港から都立粟の花高校に留学してきた15歳の少女。中国名は羅麗靑。気弱かつ流されやすい性格で、体格もかなり小柄。しかしその正体は香港マフィア香港五龍会の暗殺者。幼いころから様々な暗殺技術を仕込まれた戦闘のプロである。任務で暗殺の師匠を殺してしまったことをきっかけに、暗殺者としての自分の人生に疑問を持ち始める。 戦闘スタイルは中国拳法。
高野 果苗 (たかや かなえ)
都立粟の花高校に通う15歳の少女。内気で気弱な性格が災いし、小さいころからいじめを受けてきたが、高校では転校生のシンシアと友達になる。幼少期に両親から虐待を受け、そのストレスのせいで二重人格者になってしまった。「弑・四方犠」という名のこの別人格は、強く頼りがいがあり、果苗は彼のことを王子様の様に慕っている。
弑 四方犠 (しい よもぎ)
幼少期に両親から虐待を受けていた少女高野果苗が生み出した、もう一人の人格。果苗とは正反対の攻撃的な性格で、並外れた知能と身体能力を持つ。果苗を守ることを最優先事項としており、そのためなら殺人をも厭わない。彼女を虐待していた両親を殺したのも彼である。殺し屋としても活動中で、「東日本で最高の成功率を誇る殺人代行業者」の異名を持つ。 戦闘スタイルは、鋭利なワイヤーを中心とした武器術。
久我 阿頼耶 (くが あらや)
聖ヒネモス女学院高等部に通う16歳の少女。生け花の宗家に生まれ、家元としての将来を嘱望されていたが、幼稚園の時に同級生の島原カルロスを殴り倒してから素手で人間を殴る快感に目覚め、気づけばストリートファイターとしてケンカ三昧の日々を送るようになっていた。気が強くサバサバした性格だが、ケンカに対しては人一倍ストイックで、日々過酷なトレーニングを積んでいる。 戦闘スタイルは我流のケンカ殺法で、長い脚を駆使した蹴り技が主体。
島原 カルロス (しまばら かるろす)
都立粟の花高校に通う17歳の少年。日本人の父とブラジル人の母を持つハーフ。インターハイのボクシングライト級王者で、現在はプロで活躍中。負けず嫌いな性格で、幼いころ自分をケンカで負かした久我阿頼耶をつけ狙うが、後に彼女に恋心を抱くようになる。戦闘スタイルはボクシングで、巧みなフットワークを活かしたアウトボクシングが持ち味。
檎桐 淋 (ごとう りん)
聖ヒネモス女学院高等部に通う16歳の少女。大の格闘技マニアで、その知識と熱意は「歩く格闘技通信(データベース)」と称されるほどだが、自身は虚弱体質でケンカも弱い。久我阿頼耶の親友であり、彼女のケンカのサポートを行うことも。中塚侑実子の起こした殺人事件に巻き込まれて左目を失い、アイパッチを着けている。
紫水 ほたる (しみず ほたる)
24歳の女性で、都立粟の花高校の英語教諭。幼いころに事故で両親を失い、武術家の養父の紫水智衛に引き取られ、眼力だけで人を自在に操る紫水流眩術を仕込まれる。正義感の強い性格で、汚職に巻き込まれて自殺した兄の仇を打つために、独りで悪人を制裁して回っていた。父の智衛を殺したシベールに復讐を果たすため、利害を共有するシンシアらをメンバーに、五対五マッチを企画した。
シベール・ロウ
シンシア・ロウの姉。中国名は羅彗中。実業家、モデル、格闘家を兼業する才媛だが、、裏の顔は世界を股にかける暗殺者。天才的な戦闘能力の持ち主で、素手で人を殺し、拳銃の弾丸をも避けることができる。性格はわがままで気まぐれ、傍若無人。もともと暗殺者の家督を継ぐ予定だったが、面倒がって妹のシンシアに押しつけ、香港五龍会には属さないフリーの暗殺者となった。 香港五龍会から依頼を受け、シンシアを連れ戻すために来日する。その際高名な武術家である紫水智衛に立ち合いを挑み、彼を殺害。娘の紫水ほたるに恨みを買っている。戦闘スタイルは中国拳法。
中塚 侑実子 (なかつか ゆみこ)
一見普通の少女だが、実は強度のサイコパス。損得や感情から解放された「理由なき殺人」の完遂をもとめて、殺人を繰り返す。無痛症患者でもあり、体の痛みを感じない体質。肉体の限界を超えたパワーを引き出し、容易に人間を撲殺する力を持っている。久我阿頼耶との死闘の末収監され、危険人物として拘束されることになった。
檎桐 鸞 (ごとう らん)
檎桐淋の姉。かつて関東最強を謳われた伝説の不良少女。粗暴な見た目と言動に反して非常に優秀な頭脳を持ち、高校卒業と同時に弁護士の資格を取得している。高校卒業記念に、世の中の腐敗を正そうと、政財界の大物を素手で殴って回った過去があり、2年間の懲役に服していた。 刑期を終えたのちは紫水ほたるの企画した5対5マッチに参加し、久我阿頼耶と戦うことになる。戦闘スタイルは我流のケンカ殺法と、野生の勘。
ホセ・パウリスタ・リベイラ
ニット帽に迷彩ズボン姿のメスチソの男性。ブードゥ教関係の組織に所属する暗殺者。かつてシベールと戦った際に切り裂かれた口元の傷をマフラーで覆い隠している。現在はシベール・ロウの部下として、紫水ほたるの企画した五対五マッチにシベール側のチームで参加している。 戦闘スタイルはブラジリアン柔術で、実在の柔術家ヒクソン・グレイシーがモデル。
宝 凌羽 (ぱお りんゆう)
「舌打ち師(タンクリッカー)」と呼ばれる盲目の拳法家。かつては少林寺武術学校の天才拳法家として名を馳せていたが、シベール・ロウに敗れ視力を奪われる。その後超人的な努力によって、舌打ちで生じる反響音を利用する反響定位技術(エコーロケーション)を身に着け、武術家として更なる成長を遂げた。 シベールに復讐を果たすため来日する。戦闘スタイルは少林拳で、その技前は天才的。
集団・組織
香港伍龍会 (ほんこんごりゅうかい)
『CYNTHIA_THE_MISSION』に登場する架空の組織。中国沿岸を主に勢力拡大を図る香港マフィア。シンシア・ロウが暗殺者として所属している。