概要・あらすじ
帝の子供である光源氏は、京の都に知らぬ者はいないと言われるほど、神がかった美しい青年であった。そんな光源氏を女性たちが放っておくわけもなく、そのうえ本人も無類の女好きなために、恋の噂が絶えることはなかった。しかし、光源氏には誰にも言えない想い人がいた。そんな折、彼と関係を持った女性が亡くなって体調を崩した光源氏は、加持祈禱で訪れた北山で紫に出会い、まだ幼い彼女を引き取ることになる。
登場人物・キャラクター
光源氏 (ひかるげんじ)
「源氏の君」と呼ばれる貴族の男性。幼い頃は「光の君」と呼ばれていた。桐壺帝と、今は亡き桐壺の更衣との間に産まれた息子で、帝の寵愛を一心に受けて育った。そのため、後継争いに関わらせたくないという帝の配慮により、源氏の姓を賜って臣下に下ることになる。正妻がいるものの、美青年なうえに生来の女好きな性格のため、恋の噂が絶えることはない。 しかし、実は密かに想い続けている女性がいる。本作『GENJI 源氏物語』では、彼の17歳から40歳半ばまでの人生が描かれている。
紫 (むらさき)
藤壺の実兄である兵部卿宮の娘。藤壺の姪にあたるため藤壺に面影が似ている。父親とは疎遠で、母親が早くに亡くなったため北山で祖母と暮らしていた。祖母が亡くなった後は光源氏のもとに引き取られ、のちに妻となる。純粋無垢で子供っぽいところがあるが、愛情の深い女の子。
藤壺 (ふじつぼ)
桐壺帝に寵愛された亡き桐壺の更衣に生き写しの女性。15歳で桐壺帝に見初められて入内。10歳だった光源氏の義母となった。優しく穏やかで美しい女性で、帝の寵愛を一心に受けていたが、密かに光源氏に想いを寄せている。
桐壺帝 (きりつぼてい)
現政権の帝で、朱雀帝と光源氏、東宮の父親。とても心優しい男性で、子供たちへの愛情も深い。最初に入内(じゅだい)したのは弘徽殿の女御だったが、2番目に入内した桐壺の更衣を愛し、光源氏をもうける。桐壺の更衣亡き後、藤壺を娶って東宮をもうけた。
頭の中将 (とうのちゅうじょう)
光源氏の幼い頃からの友人で、葵の兄である男性。光源氏より年上だが、芸事や恋愛事で時折張り合ったりするなど、光源氏にとって旧知の親友。よその女との間に子をもうけて妻の逆鱗に触れ、その母子とは疎遠になってしまった。
葵 (あおい)
光源氏の4歳年上の正妻。左大臣の娘で頭の中将の妹にあたる。光源氏12歳、葵16歳の時に結婚したが、夫婦生活はうまくいかなかった。光源氏は葵のもとに滅多に顔を出さず、他の女のもとを渡り歩いているため、顔を合わせても嫌味ばかり言ってしまう。
惟光 (これみつ)
光源氏の乳母子で家来の男性。光源氏との付き合いは長い。夜歩きの際はだいたいお供をしているため、光源氏の女性関係についてはほとんど把握している。たまに辛辣なことも言うが、基本的には主人想いの家来である。光源氏に劣らずかなりの女好きで、主人とは馬が合うらしい。
少納言 (しょうなごん)
紫の身の回りの世話をする女性。紫が北山で祖母と暮らしていた頃から一緒におり、光源氏に引き取られる際も一緒に付いて来た。風呂や着付け、宮中の人間関係などの知識も教える教育係でもある。素直な紫につられて、つい甘やかしてしまうこともある。
六条御息所 (ろくじょうのみやすどころ)
光源氏の7歳年上の恋人の女性。前東宮の妃だったが、東宮が早くに亡くなったため、幼い娘と里で静かに暮らしている。身分が高貴な上に妖艶で美しい容姿をしているため、言い寄る公達の数も限りなかった。光源氏と関係を持つようになった。
空蟬 (うつせみ)
伊予の介の後妻で、若く気位の高い女性。伊予の介の家で物忌みがあり、息子の家に泊まりに来ていた際、たまたま訪れた光源氏と、嫌々ながらも一夜を共にしてしまう。光源氏が再び訪れるが、ほかの女性と入れ替わって、それきり会うことはなかった。
夕顔 (ゆうがお)
五条にある屋敷に住む女性。たまたま通りかかった光源氏に、歌を詠んだ扇を渡したのが縁となり、逢瀬を繰り返す。光源氏も素性を明かさず、顔を隠して粗末な着物を纏い、毎夜のように夕顔の家に通っていた。しかし、とある理由で、逢瀬の最中に亡くなってしまう。
弘徽殿の女御 (こきでんのにょうご)
右大臣家から桐壺帝に最初に入内した女性。朱雀帝の母親。桐壺帝が愛したのが桐壺の更衣や藤壺だったので、その息子である光源氏にも恨みを抱いている。そのため、光源氏を失脚させようと、よくない噂を流し続けている。
六の君 (ろくのきみ)
弘徽殿の女御の妹。朱雀帝の許嫁で尚侍になる女性。気が強く積極的で、入内が近いというのに光源氏に興味を持ち、自ら歌を詠んで彼に近づいて関係を持つ。朱雀帝との関係はそのままに、いつかまた光源氏と関係を持てることを望んでいる。
朱雀帝 (すざくてい)
桐壺帝と弘徽殿の女御の間に産まれた第一皇子。光源氏の母違いの兄。桐壺帝の次の帝となった人物。母親である弘徽殿の女御や尚侍である六の君とは違って、温和で気の弱い性格をしており、光源氏のことも大切な弟だと思っている。
東宮 (とうぐう)
桐壺帝と藤壺の息子。朱雀帝時代の皇太子。桐壺帝が譲位した後も藤壺と親子で仲睦まじく暮らしていた。桐壺帝が亡くなってからは、後継者争いに巻き込まれないよう、光源氏が後ろ盾に就くことになった。
明石の入道 (あかしのにゅうどう)
明石の浦に住む坊主の男性。一人娘をとてもかわいがっており、都に住む身分の高い方に嫁げるようにと、毎年春秋には住吉明神にお参りしている。それが叶わないうちに自身が死んだ場合は、娘に対しても海に身を投げろと言い聞かせている。