概要・あらすじ
東京湾岸地域をホームとする、プロ3部リーグに所属する「東京ワンダーズ」は、毎年昇格のチャンスを逃し、低迷していた。そのため、スタジアムも作ってもらえず、その建設予定地も放置状態だった。元日本代表のカリスマCB(センターバック)で、東京ワンダーズの象徴的存在である吉永衛は、さびれたスタジアム建設予定地に来ていた。するとそこに、高校生の先客があり、涙を流しながら工事現場の塀をバンバン叩いていた。
あまりの大泣きに心配する吉永だったが、少年は涙をぬぐったかと思うと、次の瞬間には何事もなかったかのようにその場を立ち去った。あまりの切り替えの早さに驚き、吉永は彼の後を追った。電車内で、少し遠くから少年を観察する吉永。エナメルバッグには湾岸総合高校の文字があり、バッグからユニフォームがちらりと見えた。
どうやら彼はサッカー少年で、背番号は「3」、CBのようだった。名前を確認しようと、吉永が彼に近づいた時、電車が大きく揺れた。少年にぶつかってしまった吉永は、彼を倒してしまうと心配して手を差し出した。しかし倒れたのは吉永の方だった。カリスマCBである自分が当たり負けした事に呆然とする吉永だったが、バッグに書かれた少年の名前を確認する事は忘れなかった。
バッグには「千明明」とあった。「怪我はないか」と気遣う少年に別れを告げ、電車を降りた吉永は急いで東京ワンダーズのクラブハウスに向かう。その日は契約更改の日だった。吉永は、新しくGMに就任した桂木という青年と交渉に入る。
桂木は契約書を提示するが、そこに記載された年俸は0円だった。いわゆる「0円提示」である。吉永はその提示にあっさり「OK、わかった」と答える。その態度に桂木は表情を険しくし、入団時の言葉を忘れたのかと問いかける。4年前の東京ワンダーズ設立記者会見。鳴り物入りで同クラブに入団した吉永は、最短の3年で1部リーグに昇格し、4年目には世界の舞台までチームを引き上げると宣言したのだ。
しかし実際は、3部リーグになるまで2年。その後2年経っても2部リーグにすら昇格できていないのだ。にもかかわらず、あっさりと引き下がろうとする吉永の態度に、桂木は怒り、責任を追求する。しかし吉永の答えは意外なものだった。解雇を受け入れたわけではなく、0円で契約して来年はただ働きをするという。
桂木は驚き、自分の非礼を詫びる。実は契約更新は決定事項で、吉永の気持ちを確かめるために、うその0円提示をしたのだ。吉永は、5000万円の金額が書かれた本当の契約書を受け取るが、「0円」の契約書にサインする。慌てる桂木を尻目に、吉永は「GMの独断で契約して欲しい選手がひとりいる」と話す。それは、その日偶然出会った高校生の事だった。
吉永は少年の名は「センメイメイ」だと言った。そしておそらく湾岸総合高校のサッカー部のCBだという事以外は、ほとんど知らなかった。吉永が引っかかっていたのは、電車内で自分が当たり負けした事だった。なぜ自分が倒されたのか解らない事に、期待感を抱いたのだ。その話を聞いて、まったく常識はずれだと言い放つ桂木だったが、謎の高校生の獲得を決定する。
「吉永が5000万円を蹴って、それと引き換えに無名の高校生を獲得」というセンセーショナルなネタに宣伝効果があると判断したためだ。翌日。さっそく桂木は高校生を探し、獲得交渉をするが、「プロでプレーする自信がない」と入団を断られる。連絡を受けた吉永は、桂木と高校生が待つ、湾岸総合高校のグラウンドへと向かった。
そこには昨日の高校生「千明明」がいた。名前の読みは「センメイメイ」ではなく、「ちぎらあきら」だった。明がプロ入りを断った理由は、フィジカル面での不安だった。身長が伸びない事に悩んでいたのだ。吉永はグラウンドの隅に転がっていたテニスボールを手にし、明の身長が伸びるかどうか、テニスボールで確かめてやると言った。
あっけに取られる明と桂木を尻目に、吉永流の実力テストが始まった。
登場人物・キャラクター
吉永 衛 (よしなが まもる)
プロ3部リーグ「東京ワンダーズ」のCB(センターバック)でチームを代表するベテラン選手。40歳過ぎの男性。サラサラのロングヘアが特徴。元日本代表DFで、ドイツ1部リーグでは「カイザー・ヨシ」と呼ばれていたカリスマ。東京ワンダーズに鳴り物入りで入団し、チームを3年で1部リーグに昇格させると宣言するが、有言実行にはいたらなかった。 高校生の千明明の未知数の力に惹かれて、自分の契約金5000万円を使って、明の獲得をチームに提案する。
千明 明 (ちぎら あきら)
湾岸総合高校3年生の男子。サッカー部に所属しており、ポジションはCB(センターバック)。東京ワンダーズの熱烈なファンで、同チームでプレーするのが夢。しかし、身長が低い事に悩んでおり、東京ワンダーズGM(ゼネラルマネージャー)の桂木からのオファーをいったんは断る。
桂木 (かつらぎ)
プロ3部リーグ「東京ワンダーズ」のGM(ゼネラルマネージャー)。青年。メガネとクールな外見が特徴。冷徹かつ狡猾な性格で、クラブを潰すために親会社から送り込まれたという噂を立てられている。
クレジット
- 原作
書誌情報
Mr.CB 15巻 秋田書店〈ヤングチャンピオン・コミックス〉
第1巻
(2019-02-20発行、 978-4253149570)
第10巻
(2022-09-20発行、 978-4253303750)
第11巻
(2023-02-20発行、 978-4253303767)
第12巻
(2023-07-20発行、 978-4253303774)
第13巻
(2023-12-20発行、 978-4253303781)
第14巻
(2024-04-18発行、 978-4253303798)
第15巻
(2024-09-19発行、 978-4253303804)