概要・あらすじ
2002年のサッカーワールドカップに日本中が沸き立つ中、Jリーグの東京ヴィクトリーのミッドフィルダー河野敦彦は観客としてスタンドにいた。1996年のアトランタオリンピックの日本代表として活躍したが、既に往年の輝きは色褪せていた。スタンドにいた翌日、東京ヴィクトリーから戦力外通告を受け古巣のジェム市原に復帰することになる。
4年後のワールドカップを迎えるともう31歳。後輩からは「U-31なんてない」と陰口を叩かれた河野敦彦は、ジェム市原復帰の条件として背番号10を要求する。5年ぶりに古巣に戻ると一から体を作り直し、レギュラー奪取、そして日本代表への復帰を目指す。
登場人物・キャラクター
河野 敦彦 (こうの あつひこ)
初登場時27歳。プロサッカー選手。「千葉のマラドーナ」と呼ばれ、1996年のアトランタオリンピックの日本代表として活躍。しかし、年を経るごとにその輝きは失われ、いつの間にか代表にも呼ばれなくなる。4年後のワールドカップを迎えると31歳になることから、後輩の瀧川からは「U-31なんてない」と陰口を叩かれた。 2002年のシーズン途中に東京ヴィクトリーを戦力外となり、5年ぶりに古巣のジェム市原に復帰するが、その条件として背番号10を要求した。自らを鍛え直し、主にトップ下ボランチのポジションで活躍する。監督のシニーシャ・クラリィの意外な起用によって攻撃性を開花させ、笠原隆輔、戸澤敏行らと共にチームを牽引する存在となる。 若手の台頭や怪我と闘いながら、もう一度日本代表として招集されることを目指す。
戸澤 敏行 (とざわ としゆき)
プロサッカーのジェム市原の若手。背番号6。ポジションはボランチ。チームに復帰した河野敦彦に対して、当初は反抗的な態度を取り続けていた。しかし共にプレイするうちに、時折対立しながらも打ち解けていく。元々は河野敦彦に憧れ一緒にフィールドに立つことを夢見ていた。監督 に就任したシニーシャ・クラリィの指揮の下で河野敦彦、笠原隆輔らと低迷していたチームを牽引し、優勝争いに加わるまでになる。
山咲 佳奈 (やまさき かな)
ショートヘアーで丸型の眼鏡をかけた女性。週刊フットボールマガジンの新人女性記者。ジェム市原を担当する。元々は野球の取材を希望し、サッカーは素人同然だった。しかし、河野敦彦との交流を通じて成長していく。戸澤敏行、笠原隆輔らジェム市原の面々と親しくなるが、河野敦彦には1人の男性としても魅力を感じている様子。 後にフリーライターに転向する。
笠原 隆輔 (かさはら りゅうすけ)
プロサッカーのジェム市原の選手。生え抜きのベテランで、ポジションはディフェンダー。かつて後ろ足で砂をかけるような形でチームを去った河野敦彦を暖かく迎え、戸澤敏行ら若手との繋ぎ役になる。日本代表監督となったジードによって代表チームに招集された。
西前 (にしまえ)
プロサッカーのジェム市原の選手。若手のフォワードとして、ここ一番のスーパーサブとして起用されることが多い。明るく陽気でムードメーカーでもある。ジェム市原に移籍してきた瀧川と仲が良く、一緒に河野敦彦と山咲佳奈を冷やかしたりしている。
瀧川 (たきがわ)
プロサッカーの東京ヴィクトリーの若手選手。河野敦彦が東京ヴィクトリー在籍時によくつるんでいたが、彼が4年後のワールドカップを迎えると31歳になることから、「U-31なんてない」と陰口を叩いたこともある。ジェム市原の戸澤敏行を、ポジションが同じで年齢も近いことから、ライバル視している。 後にジェム市原に移籍する。
成田 剛士 (なりた たけし)
プロサッカーの東京ヴィクトリーの選手。かつて河野敦彦と共に日本代表選手として活躍したベテラン。2002年のシーズン途中で引退し、以降は解説者となる。引退前に催した飲み会の後、河野敦彦に悔しい胸の内を吐露していた。
アイルトン・シウバ (あいるとんしうば)
褐色の肌のブラジル人男性。ブラジルの代表的なサッカー選手。アトランタオリンピックで日本と対戦し、河野敦彦と親しくなった。2002年、FCマドリーの一員として来日した際に、河野敦彦と偶然再会した。
シニーシャ・クラリィ (しにーしゃくらりぃ)
セルビア・モンテネグロ出身の男性。初登場時38歳。2003年にジェム市原の監督に就任する。これまで指揮を執ったのは弱小チームばかりで、選手の才能を開花させる手腕に優れている。河野敦彦を意外な形で起用し、本来持つ攻撃性を目覚めさせた。
藤堂 涼介 (とうどう りょうすけ)
スキンヘッドで逞しい身体の男性。プロサッカー選手。ポジションはフォワード。アトランタオリンピックの日本代表で、河野敦彦とはチームメートだった。河野敦彦を「あっちゃん」と呼ぶ。横浜フィールダースからセリエAのウディネーゼへ移籍。以後ヨーロッパで活躍し、2003年に名古屋グランパレスに移籍して日本に復帰した。 日本代表監督となったジードによって代表チームに招集される。しかし、かつての面影も無い程様変わりした肉体はドーピングによって作られたものだった。
ジード
2002年にサッカー日本代表監督に就任する。元ブラジル代表の大スター。日本の鹿島ワンダラーズでもプレイし、神様と呼ばれた。藤堂涼介の招集を巡って、河野敦彦は彼のもとに直談判に訪れる。
竹之内 新造 (たけのうち しんぞう)
日本サッカー協会技術部の強化担当。社会人サッカーの舞浜電工のOB。かつて河野敦彦を世界で通用する素材と見込んで買っていた。古巣ジェム市原で息を吹き返した河野敦彦を再度日本代表に推薦しようとする。取材に訪れた山咲佳奈には、河野敦彦が落ちていった背景にある日本サッカー界の未熟さを語った。
クレジット
- 原作