概要・あらすじ
文明開化の明治時代、16歳になるまで男として育てられた少女・木乃花志乃は、アメリカ人男性ダニエル・アーヴィングに恋したことがきっかけとなり、新時代の女性として成長していく。日本、アメリカを舞台に活躍する志乃の前には、ナネットをはじめとする恋敵だけでなく、三郎など志乃を慕う男たちも現れる。
試練もあるが、志乃は朗らかにたくましく前進していく。
登場人物・キャラクター
木乃花 志乃 (このはな しの)
幼いころに母を亡くし、16歳になるまで男として育てられた少女。東京・芝の小間物問屋木乃花屋の若主人になっていたが、父がお千代と再婚し、弟の千太郎が生まれたことを機に娘として生きていくことを父から望まれた。旗本の3男・仁科三郎正宗との縁談話やダニエル・アーヴィングと出会いがあり、自由に憧れてニューヨークを目指して家出をする。 そして、アーヴィングと恋に落ちたことで志乃の人生は大きく動きはじめる。北辰一刀流の免許皆伝で運動全般が得意。ネコ(ポテ次)に1ヶ月で芸を仕込んだり、のちに写真師となり、N.Y.小町と呼ばれるようになるなど多才だが、家事全般は大の苦手である。 写真師としては、小角変幻斎、弟子丸とともに木乃花屋の向かいに紐育写真館を開業することになる。活発で凛とした性格で、周囲の人々の未来をも切り開いていく。
木乃花 麗助 (このはな れいすけ)
木乃花志乃の父で、東京・芝の小間物問屋木乃花屋の主人。志乃が幼いころ先妻を亡くした。跡取りの男子として志乃を育てたが、お千代と再婚し、息子の千太郎が生まれたことで志乃を娘に戻そうと考える。旗本の3男・仁科三郎正宗との縁談話を進めたことが、志乃の家出の主因となった。 単なる頑固親父というわけではなく、志乃のことを心配し、なにかにつけて力になる心強い存在でもある。
ダニエル・アーヴィング (だにえるあーゔぃんぐ)
開拓使官園の講師として日本にやってきたアメリカ人。誰からも好かれる好青年で優秀な農業、酪農の技術者である。ケンタッキーにある大農場主アービング家の1人息子で、父はサムソン・アーヴィング、母はエリノア。偶然、東京で木乃花志乃と出会い、自分の人生のポーラー・スターと感じるようになり強く惹かれていく。 ナネットによれば、「かよわいタイプに同情しやすい」という。のちに三郎とは深い友情を結ぶことになる。
仁科 三郎正宗 (にしな さぶろうまさむね)
木乃花志乃の幼馴染で、同じ剣道道場の門下生だった。元旗本の3男坊で、親が決めた志乃の婚約者。「退屈しのぎ」といったポーズをとるが、実は志乃に強く惹かれている。父親のコネで開拓使に入って開拓使監事となり、志乃とアーヴィングがいる農学校の監督官として北海道に現れる。 そして、アーヴィングの上司として、2人の関係に深く関わっていく。のちにアーヴィングとは深い友情を結ぶことになる。
小桃 (こもも)
木乃花志乃の幼馴染で東京・芝の漬物屋「百屋」(「桃屋」の記述もある)の娘。男らしい志乃の強烈なファンで行動力があり、志乃の手助けもするが、行く先々に現れては、なにかと志乃を男装させようと試みたこともあった。のちに鹿鳴館に就職し、職業婦人になった。
キャプテン・トマス・ブラキストン (きゃぷてんとますぶらきすとん)
イギリス人で、王立士官学校からクリミア戦争に参加した軍人、鳥類学者で探検家でもある「なんでも屋」。当時、日本では国際結婚が認められていなかったが、日本人の内縁の妻「お園」がいる。アーヴィングを追って北海道に来た志乃に、国際結婚の現実と西洋のレディーの立ち振る舞いと作法、英語を教えた。
小角 変幻斎 (おづの へんげんさい)
横浜で「ふぉとすたじお小角写真館」を営む写真師。弟子丸という弟子がいて、ポテ次というネコを飼っていた。弟子丸によれば腕は確かだが、性格に問題があるため、写真館の経営はうまくいっていない様子である。木乃花志乃に写真技術を教えた。志乃のアメリカ行きに同行し、のちに、東京・芝の小間物問屋木乃花屋の向かいに志乃と紐育写真館を開業することになる。
弟子丸 (でしまる)
氏名の記述はなく不明。横浜で「ふぉとすたじお小角写真館」を営む写真師・小角変幻斎の弟子である。変幻斎の腕を信じており、行動を共にしているため、変幻斎と木乃花志乃のアメリカ行きにも同行した。のちに、東京・芝の小間物問屋木乃花屋の向かいに志乃と変幻斎と共に紐育写真館を開業することになる。 紳士的で丁寧な性格で、これがのちに意外な人物から好意を受けるきっかけとなった。
ポテ次 (ぽてじ)
『N.Y.小町』に登場するネコ。横浜で「ふぉとすたじお小角写真館」を営む写真師・小角変幻斎に拾われ、飼われていた元捨て猫。木乃花志乃の愛猫となってアメリカ行きに同行した。船中で1ヶ月間、志乃に「ハッピーカモーン」などの芸を仕込まれて芸達者となり、一行に幸運をもたらす。アメリカ・ケンタッキーのアーヴィング家が飼っている雌ネコ、「ジェニファー」に一目惚れして猛アタックを開始する。
ナネット オースティン
NYタイムズの有能な女性記者で、ダニエル・アーヴィングの元婚約者。ケンタッキーの大農場主の娘で、農場はアーヴィング家の農場の隣にある。木乃花志乃とは恋敵として衝突するが、交流も芽生える。のちにあることを確かめるために来日する。
カメ
東京の木乃花志乃の家の側で、暴漢に追われているところを志乃とダニエル・アーヴィングに救われたことがきっかけとなり、志乃の家で住み込みのお手伝いさんをすることになった。父親がバクチで作った借金のため、女郎屋に売られそうになったという話だったが、正体は意外な人物だった。
寿 ツル (ことぶき つる)
房州寿20万石の元藩主・寿松竹の娘。亀姫という妹がいる。明治維新前の価値観と婦道を何より重視していた。鶴姫の父・寿松竹は、木乃花志乃に鶴姫の見合い写真の撮影と姫たちを進歩的な婦人に“改良”するよう依頼した。鶴姫ははじめ志乃を嫌うが、少しずつ影響されていく。
寿 松竹 (ことぶき まつたけ)
房州寿20万石の元藩主で木乃花志乃が未来派(テクノ)と評した進歩的な資産家。明治維新前の価値観を重視する娘たち(鶴姫、亀姫)を心配し、志乃に鶴姫の見合い写真の撮影と、娘たちを「進歩的なオナゴ」に“改良”するよう依頼した。
有賀 有稀子 (ありが ゆきこ)
子爵・有賀正親の娘でクリスチャン。北海道開拓のため海を渡った有賀子爵からの連絡が途絶えたことを心配し、病弱な体をおして父を探すために北海道へ旅することになった。その姿を見て心配したダニエル・アーヴィングが道案内を買って出たことから、大騒動が発生し、木乃花志乃の恋敵となる。
狩野 朱鷺夫 (かのう ときお)
帝大の男子学生だが、東京で芸者を殺した容疑者で北海道へ逃げてきた。「ゲーテ詩集」を持ち歩くなど意外とロマンチストなところがある。木乃花志乃からははじめ「どろぼう」と呼ばれるが、偶然が重なって、志乃と2人旅をすることになる。
場所
紐育写真館 (にゅーよーくしゃしんかん)
東京・芝の小間物問屋木乃花屋の向かいにある写真館。木乃花志乃、小角変幻斎、弟子丸が開業した。洋行帰りの腕前が売り。ここで志乃はN.Y.小町と呼ばれるようになった。
書誌情報
N.Y.小町 4巻 講談社〈講談社漫画文庫〉
第1巻
(1997-02-11発行、 978-4062603102)
第2巻
(1997-02-11発行、 978-4062603119)
第3巻
(1997-02-11発行、 978-4062603126)
第4巻
(1997-02-11発行、 978-4062603133)