OUT PITCH

OUT PITCH

実在の球団である、東京ヤクルトスワローズを舞台に展開される野球漫画。一軍の本拠地である神宮球場はもちろん、二軍の本拠地である戸田球場も忠実に描写されている。一方で、例え話以外には実在選手が登場せず、登場人物全員が作品オリジナルの選手である。「週刊コミックバンチ」第282号(2007年4月13日号)から第335号(2008年5月23日号)にかけて連載された作品。

正式名称
OUT PITCH
ふりがな
あうと ぴっち
作者
ジャンル
野球
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概要・あらすじ

阪神タイガースで大活躍する強打者の江神攻から、かつてリトル時代に三振を奪ったことが唯一の自慢だった幸村風児は、新大阪大学の野球部に所属する二軍のピッチャー。すっかり落ちぶれてしまった幸村の背景には、幼なじみにして恋人でもあった水面直の死という大きな要因があった。いつかプロ野球選手になって迎えに行くという直との約束が守れそうにないと悟った幸村は、野球に区切りをつけるために生前の直と一緒に練習していた場所を訪れる。

そこで幸村は、直のキャッチャーミットを持った少年と出会う。不思議に思った幸村が事情を聞くと、その少年は幸村と直の間に生まれた子供であること知る。さらに直は生前、誰よりも幸村のことを信じており、一心不乱に野球に打ち込んでもらいたいがために、あえてこのことも隠していたことを知る。

幸村はその思いに応えるべく、再びプロ野球選手を本気で目指す決意を固める。

登場人物・キャラクター

幸村 風児 (こうむら ふうじ)

新大阪大学の二軍に所属する22歳の男性。リトル時代には江神攻を三振に打ち取り、スカウトの茂木了介にも注目される、将来有望なピッチャーだった。高校卒業時のドラフトで指名されなかったこと、さらに幼なじみの水面直の死などをきっかけにやる気を失っていくが、水面風人と出会い、自分の可能性をもう一度試そうと奮起する。 のちに東京ヤクルトスワローズの育成ドラフトで指名される。

水面 直 (みなも すなお)

幸村風児の幼なじみの少女。時に弱気になる幸村を引っ張っていく存在で、リトル時代はキャッチャーを務めていた。幸村と同じ高校に進学し、野球部のマネージャーとして、そして恋人として幸村のことを支えていたが、若くして不慮の事故で亡くなる。享年18歳。

水面 風人 (みなも ふうと)

幸村風児と水面直との間に生まれていた子供。外ハネのクセ毛と、眉毛の形が父親似。東京ヤクルトスワローズに入団する前からの滝心之介のファンだが、一番好きな選手は父親である幸村。

水面直の父 (みなもすなおのちち)

水面直の父親で、幸村風児のリトル時代の監督。褐色の肌にサングラスをかけている強面で、当時は指導としてケツバットを取り入れていた鬼監督。幸村にとっても恐ろしい存在だったが、孫の水面風人には甘く、彼を前にするとその強面もほころぶ。

江神 攻 (えがみ せめる)

弱冠22歳にして阪神タイガースの4番打者を務める主砲。野球センスが抜群で、これまでの人生でもリトル時代に幸村風児に三振を喫して優勝を逃した以外、優勝を逃したことがないというほど順風満帆な野球人生を送っている。一見無骨だが野球に対してはストイックで、常に気を抜かない完璧主義者。滞空時間の長い打球が持ち味で屋外球場では場外弾を叩きこむことも珍しくない。

江神 志帆 (えがみ しほ)

江神攻の妹。リトル時代に兄を三振に切って取り、優勝を阻止した幸村風児の実力を認めており、将来的に兄とはライバル関係になる存在と考えていた。職業は台場テレビのディレクターを務めており、スポーツ関連の番組を担当している。

久須美 紳一郎 (くすみ しんいちろう)

東京ヤクルトスワローズの監督で42歳。ジェントルマン然とした風貌で、外出する時はハットを欠かさず被っている。選手たちと共に戦う姿勢を示すために、わざわざスパイクを履いて指揮を執っている。昼食に月見そばを食べるとその日の試合に勝てるというジンクスを信じている。

茂木 了介 (もてぎ りょうすけ)

かつて東京ヤクルトスワローズで内野手として活躍し、現在はスカウト部の部長を務める。リトル時代から幸村風児に注目しており、江神攻から三振を奪った際の幸村の美しいフォームを強く記憶していた。未完の大器である素材と出会えることをスカウトの喜びと考えており、幸村のことを気にかけている。

山中 勇次 (やまなか ゆうじ)

東京ヤクルトスワローズのスカウト部のメンバーで担当地域は関西。スカウト部の茂木了介が気に掛けている幸村風児が投げる姿を見て、茂木と同様にその美しいフォームに魅了された。それからは幸村に、ドラフトで指名されるような活躍をして欲しいと願っている。

二本柳 寛一 (にほんやなぎ かんいち)

元東京ヤクルトスワローズの捕手で、現在はチーム運営部戸田寮寮長兼二軍総務を務めている67歳。毎日、早朝に起床して寮内の見回りをしては、元捕手としての経験も活かして寮内の細部の管理まで気を配っている。

目黒 健太郎 (めぐろ けんたろう)

東京ヤクルトスワローズの二軍投手コーチ。1年目、2年目の歳の若い新人には実力がどうであれ頻繁にチャンスを与える起用方針をとっている。その投手の課題を克服させるためや成長のためなら、たとえ打ち込まれても簡単にマウンドからは降ろしたりしない強い信念を持つ。

上野 正平 (うえの しょうへい)

東京ヤクルトスワローズの40歳のベテラン選手で投手兼コーチを務めている。投手としては主に敗戦処理の場面での登板が多い。ランナーを背負ってからのクイックが苦手で、野村浩次のイップスを招く原因となってしまう。

竹元 吹雪 (たけもと ふぶき)

新大阪大学野球部の一軍にしてエースを務める、大学野球界ナンバーワンと評される本格派左腕。かなりの自信家で、プロ入り前から新人王の獲得を明言している。自らが一軍でエースとして活躍しているのをいいことに二軍を見下し、下級生を自分の手足のように使う性格の悪い面がある。大学卒業後はドラフト1位で東京ヤクルトスワローズに入団した。

蔭山 良夫 (かげやま よしお)

東京ヤクルトスワローズに所属する28歳の投手。高校生ドラフトで指名されてから3年目に一軍登板を果たし、主に左打者とのワンポイントリリーフで活躍した。しかし、ここ2年間は肘を痛めてしまい、二軍で調整している。七種類のフォームと七色の変化球を投げ分ける老獪なピッチングで打者を翻弄する。

野村 浩次 (のむら こうじ)

東京ヤクルトスワローズに所属する29歳のブルペン捕手。ショートバウントも難なくキャッチするなど、キャッチングの腕は随一。元々、強肩強打を買われ即戦力としてドラフト2位で入団した。相手チームの盗塁に際し、二塁への送球をマウンド上のピッチャーに当ててからはイップスに陥り、そこからは成績も落ち込んでしまった。

武田 アラキ (たけだ あらき)

東京ヤクルトスワローズに所属する、通算300ホーマーを誇る35歳の主砲。「悪魔の左手」の異名を持つ引っ張り専門の右打者で、ホームグラウンドである神宮球場のレフトポール際に打球がよく飛ぶことからそのポールは「アラキポール」と呼ばれている。また、バットのことを「相棒」と呼ぶなどとても大切に扱っている。

敷島 瑞穂 (しきしま みずほ)

東京ヤクルトスワローズに所属する、通算158勝をあげている35歳のエースピッチャー。ローテーションを守り続け、年間200イニングを投げて故障もしないことから「鬼腕」の異名を持つ。普段は物腰が柔らかいが、マウンドに立つとビーンボール気味の球を投げて咆哮をあげる気性の荒い人物に豹変する。また、東京ヤクルトスワローズ投手陣のチームキャプテンも務める。

吉岡 陶冶 (よしおか とうや)

東京ヤクルトスワローズに所属する23歳のピッチャー。高校生ドラフト1位で入団し、2年目から早速クローザーとして定着した。持ち球はストレートにツーシーム。練習にはよく遅刻してくるが、勉強熱心な面もあり無類のデータ魔としても知られる。

ハンサム・レイス (はんさむれいす)

東京ヤクルトスワローズに所属する外国人捕手。来日前は「ミスターブロック」と呼ばれていた。日本に来てからは環境に適応するために毎日3、4種類の野球ノートを付けているという努力家。また、球種が少なく悩む幸村風児にツーシームを習得するように助言したりするなど協力的である。

志度 丈志

東京ヤクルトスワローズに所属する26歳。ポジションはセカンドで、志度英志とは兄弟で息の合ったコンビプレーを見せる。プロは魅せることも必要だと考えており、必要がない場面でもジャンピングスローをする派手好きな一面がある。

志度 英志

東京ヤクルトスワローズに所属する24歳。ポジションはショートで、志度丈志とは兄弟で息の合ったコンビプレーを見せる。プロには堅実なプレーこそが必要だと考えており、派手好きな兄の丈志とは正反対の性格の持ち主。

滝 心之介 (たき しんのすけ)

これまで巨人、西武、中日、ソフトバンクと4球団を渡り歩いた末に去年から東京ヤクルトスワローズに所属するようになった26歳の外野手。素晴らしい素質を持つものの、むらっ気がある選手で使いどころが難しいと言われていた。今のチームとは相性がいいようで、主にその俊足を活かして一番打者として活躍している。

落合 ヒロミ (おちあい ひろみ)

東京ヤクルトスワローズの試合をよくチェックしているヤクルトファンの女子高生。野球に関する知識が豊富で、幸村風児のピッチングを一目見ただけでその弱点を見抜くほど。高校ではソフトボール部に所属しているが、試合中の接触プレイで先輩に怪我を負わせたことに罪悪感を感じ、学校へは足が遠のいている。

吉岡 敏男 (よしおか としお)

当時、日本球界最速158キロの球を投げた剛腕クローザーで通算150セーブをあげていた名投手。命に関わる病気を患っていたが、それを隠してマウンドに立ち続け若くしてこの世を去った。東京ヤクルトスワローズのクローザーである吉岡陶冶の叔父であり、彼にとって憧れの存在だった。

杉山 清貴 (すぎやま きよたか)

新大阪大学野球部の二軍に所属していた、幸村風児のチームメイトで友人。卒業後は「餃子のO将」という餃子店に就職し、餃子を焼いては空いた時間に幸村を応援するために球場に足を運ぶ生活を続けている。のちに独立し、自分の餃子チェーン店を展開するまでになる。

田宮 次郎長 (たみや じろちょう)

阪神タイガースの監督を30年続けているプロ野球界の重鎮。強打者は作られるものではなく生まれてくるものという持論のもと江神攻の非凡なバッティングセンスを認めており、将来的に阪神タイガースの歴史に残る強打者になると考えている。洞察力にも優れ、江神が幸村風児のことを必要以上に意識していることも見抜いていた。

クラレ 岡山 (くられ おかやま)

阪神タイガースに所属する29歳の投手。東京ヤクルトスワローズとの対戦を得意とし、球の出所が分かりにくいフォームで相手バッターを翻弄する。決め球はチェンジアップだが、その他にも大きく横に曲がって落ちるスローカーブも投げる。

パリス・ヒルトン (ぱりすひるとん)

阪神タイガースに所属する助っ人外国人。ベースに覆いかぶさるほどの極端なクラウチングスタイルの打撃フォームで相手ピッチャーに内角を攻めさせにくくしている。幸村風児のプロ初登板時には、ストレートを叩いて見事にレフトスタンドへ運んだ。

集団・組織

東京ヤクルトスワローズ (とうきょうやくるとすわろーず)

東京に本拠地を置くプロ野球球団。チームカラーは内野手の守備力と堅実なプレイ。ここ数年投手力の低さが課題になっており、監督である久須美紳一郎も右の本格派エースの獲得を球団の重点強化ポイントに挙げている。

新大阪大学 (しんおおさかだいがく)

幸村風児が野球推薦で入学した、野球部はさほど強くない無名の大学。しかし、竹元吹雪の入部により三部から二部リーグに昇格、現在では創部以来一度も成し遂げることのなかった一部リーグ昇格も視野に入るほど勢いのあるチームとなっている。

その他キーワード

高速ドロップ (ふぁすとどろっぷ)

幸村風児がプロに入るために習得した決め球。ストレートほどの球速がありながら、鋭く真下に落ちるカーブ。その球速と落差は目の肥えている久須美紳一郎すら「往年の大投手を彷彿とさせる」と絶賛した。

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