概要・あらすじ
天才的な才能を持つボクサー・石川凜は、リングの内外問わずの挑発的な言動で観客の憎しみを集めながら、世界王者となる。TVの生番組で一階級上の世界王者・立石譲治を失神させた凜は、立石との試合を余儀なくされる。だが、相馬千代に失恋した凜は自暴自棄となって、売春婦を相手に童貞喪失。風俗通いをくり返す荒んだ生活を送りながら、己の人生を賭けて臨む立石との一戦を迎える。
登場人物・キャラクター
石川 凜 (いしかわ りん)
19歳のプロボクサー。リングの内外で対戦相手や観客に侮辱的な言動をくり返しており、悪名が高い。階級はスーパーフェザーで、ヨーサクレック・シンチャワンジムとの世界タイトルマッチに勝利しチャンピオンとなる。ボクシングの才能は他の世界チャンピオン達と比べても突出しており、自らもそれを自覚している。選手の経歴や思想を前面に出した売り方やそれを求めるファンを嫌い、相手の人生そのものを否定するような挑発をして憚らないが、試合では全力を出し合う快感を求めており、挑発的な言動には相手の本気を引き出す意図もある。 日常ではジムの寮で寝起きし、料理店「天海」で板前見習いをしている。恋愛に関しては初心で童貞だったが、幼なじみである相馬千代に失恋してからは自暴自棄となって童貞を失い、風俗通いをくり返すようになる。
立石 譲治 (たていし じょうじ)
20代後半のプロボクサーで、石川凜が世界チャンピオンになる一ヶ月前にライト級世界タイトルマッチを制していた。かつては暴力団に所属していたが、ボクシングに打ち込んで更生した紳士的な人物として、人気が高い。虐待を受けていた少年期や、比嘉克己との暴力団時代に得た経験から、他人の笑い顔にトラウマを持つ。石川凜の才能に気づきながらも不快感を覚えており、TVの生番組で失神させられた件をきっかけに凜へ対戦を申し入れ、強引な手段で承諾させた。 凜との試合では己の全てを賭け、反則も辞さない戦いぶりを見せる。
中尾 重光 (なかお しげみつ)
石川凜が所属するボクシングジムの会長で、凜からは「師匠」と呼ばれている。現役ボクサー時代は不世出の天才と呼ばれ、不敗のまま引退。その才能は凜と同様、他の世界チャンピオン達から見ても突出していたとされている。一方で人格には幼稚な面があり、記憶力に欠けている様子。風俗やAVを愛好している。凜とは互いに才能を認めあってはいるが、日頃から口喧嘩が絶えず、凜の対戦相手を公然と応援する事もある。 相手に打たせず綺麗に勝つボクシングを信条としており、凜の互いに全力を出し合うスタイルや流血にも不快感を露にするが、試合中に凜の意図を見抜ける唯一の理解者でもある。
相馬 千代 (そうま ちよ)
石川凜と同郷出身の、幼なじみの女性。東京の大学に通っており、喫茶店でアルバイトをしている。凜とは時々会っており多少なりとも親しみを感じていたようだが、非常識な言動をくり返す凜について行けないものを感じ、距離を置くようになっていた。喫茶店の常連であった藤本に、凜の目の前で自ら告白。そのまま藤本と交際し深い関係となる。
関根 (せきね)
石川凜が所属するボクシングジムのトレーナーを勤める壮年の男性。会長の中尾重光に代わってジムの実務を取り仕切っている。凜と中尾の才能を高く評価し、出会えた事を幸せと感じているが、この二人の奔放な言動にしばしば苦労させられている。
桜井 大輔 (さくらい だいすけ)
中尾重光のボクシングジムに所属するプロボクサーで、石川凜の先輩。日本王座に就いたこともあるが現在は奪取されている。
ヨーサクレック シンチャワンジム
タイのプロボクサーで、スーパーフェザー級の世界チャンピオンだったが石川凜とのタイトルマッチに敗れ、王座から陥落する。極貧の家庭に育ち、12歳で両親が他界。三人の弟妹を養いながらムエタイ王者となり、ボクシングに転向した後も世界王者となったタイの英雄的ボクサーだったが、凜の才能の前にボクシングを続ける自信を失い、試合直後に引退を表明した。
杉浦 (すぎうら)
立石譲治が所属するボクシングジムの会長。石川凜との試合を望む立石を支え、対戦実現への根回しを進める。
増岡 雄三 (ますおか ゆうぞう)
スポーツ番組のキャスターを務める、元世界ランキング8位のテニスプレーヤー。番組内で石川凜に、内海美奈子との仲を暴露されるなど恥をかかされる。立石譲治とは親しく、凜と立石の一戦に関しては、露骨に立石を応援する態度を取った。
内海 美奈子 (うちうみ みなこ)
スポーツ番組のアシスタントを務める、女子アナウンサー。通称は「ウチミー」。番組内で石川凜に、キャスターの増岡雄三との仲を暴露される。凜と立石の一戦に関しては、増岡が立石を応援する兼ね合いから、表向きは凜を応援する立場に立った。
比嘉 克己 (ひが かつき)
立石譲治のかつての友人。少年院で立石と出会い、そのツキの太さを見込んで行動を共にするようになった。立石の経歴を利用して二人で暴力団に入り、のし上がるが、兄貴分の情婦や組の商品に手を出し、報復を受け惨殺される。巻き込まれた立石にとっては、この体験が人の笑顔に対するトラウマの原因となっている。
藤本 (ふじもと)
相馬千代が勤める喫茶店によく来ていた常連客。極めてシャイな青年で、千代に恋をするも話しかけることができず、店のナプキンに「年があけたらあなたに話しかけてもいいですか?」と書いて渡し、翌年にやっと会話するようになった。千代に本を貸そうとしたその場で告白を受け、交際するようになる。石川凜については千代の同級生の一人という認識だったが、凜と立石譲治の試合をTVで見て、ボクシングには無知ながら凜の戦いぶりに感嘆した。