あらすじ
第1巻
18歳の大学生、砂原世界は、アイドルグループのマジかよ少女隊(マジ少)の熱烈なファン。同じマジ少ファンの友達もでき、イベントやライブに通い、全力で応援していた。ある日、マジ少ファンで友人の久我山創から、とあるボクシングジムに誘われる。そこはマジ少のメンバーでリーダーであるリサリサが、密かにプライベートで通っているジムだった。リサリサ目当てがバレないように二人はジムに体験入会する。実は世界は実家がボクシングジムを経営しており、幼い頃から祖母によって厳しいトレーニングを叩き込まれた天才ボクサーなのだが、祖母に無理やりやらされているだけで、世界自身はボクシングに興味がなかった。世界はボクサーである事がバレないように手を抜くが、トレーナー見習いである少女の駒沢麦に、そのパンチ力を見抜かれてしまう。一方、実家のジムでは世界に強いライバル心を燃やす結城未来が、しつこく世界に対戦を迫る。さっさと終わらせてマジ少の動画が見たい世界は、仕方なくスパーリングに応じ、前人未踏のアマ8冠を成し遂げた天才ボクサーといわれる未来をあっさりとKOする。しかし、その場面をボクシング誌の記者である小日向樹里に見られてしまうのだった。
第2巻
マジかよ少女隊(マジ少)のリサリサ目当てで、コグレボクシングジムに入会した久我山創らアイドルオタク達。実はリサリサは、ジムの会長の娘であり、会長は彼らがリサリサ目当てでジムに来ている事を見抜いていた。会長は久我山達がジムにいるタイミングを見計らって、娘をジムに呼び、対面させて一芝居打たせる。ファンがリサリサを追いかけてジムに来たら、事務所に連絡してそのファンをイベント出禁にしなければならないと伝えるリサリサに、会長は、久我山達はプロボクサーになるためにジムに来ているのだと説得。こうして会長にまんまとハメられ、久我山達はプロテストを受ける事を余儀なくされる。さらに元日本チャンプでもある会長は、スパーリング相手を務めて砂原世界にボクシングの楽しさを伝える。その結果、世界は仲間より一足先にプロテストに挑み、合格。しかし、世界がスパーリングで結城未来を倒した動画が、小日向樹里によって勝手にネットにアップされて騒ぎになり、さらにコグレジムからプロボクサーになった事が、祖母の砂原ウニにバレて呼び出される。世界を8階級制覇世界王者に育てあげるという野望を持つウニは、ウニの大砂原ボクシングジムに移籍するよう命じる。だが世界は仲間もいて、ボクシングの楽しさを教えてくれた会長のいるコグレジムでやりたいと告げ、激怒したウニから勘当されてしまうのだった。
第3巻
コグレジムで仲間といっしょにボクシングをやりたいという気持ちを強くした砂原世界は、コグレジムの会長の家である六畳一間のアパートに居候させてもらい、マジかよ少女隊(マジ少)のおっかけ活動費と生活費を稼ぐために、ハンバーガーショップでのアルバイトを始める。一方、世界を失った砂原ウニは打倒世界を目標に掲げて、世界のプロデビュー戦の相手に強敵の伴場先人を差し向ける。世界はファイトマネー目当てで試合を了承し、オタク仲間達とマジ少の振り付けをしながら入場するのだった。世界は、会長から仕込まれた必殺技「世界アッパー」で伴場をマットに沈め、デビュー戦勝利を収める。世界は、ボクシングファンの注目を集めるが、小日向樹里による戦いに飢えた凶暴な男というイメージ演出によって、「犯罪者」というニックネームを与えられてしまう。
第4巻
砂原世界は同じバンタム級のプロボクサーである白鳥千尋と出逢い、千尋にマジかよ少女隊(マジ少)の魅力を伝えたところ、千尋もマジ少ファンとなり、二人は意気投合する。すっかりなかよくなった二人だったが、同じリングで戦う事になる。しかし、戦績0勝12敗という千尋は口だけのボクサーで、必殺技もクリンチというヘタレっぷり。必殺技「世界アッパー」であっけなく世界に敗れた。続けて世界は東日本新人王トーナメントのバンタム級にエントリーする。1回戦の対戦相手、チーターたかしをパンチ1発でKOし、決勝の対戦相手は砂原ウニがアメリカから連れて来たジョナサン・ウィッチマン。一方、世界のオタク仲間である久我山創ら四人もいよいよプロテストに挑み、久我山以外の三人は合格を果たす。久我山も次回こそはと闘志を燃やしていた。そして迎えた東日本新人王トーナメントの決勝戦。世界はジョナサンを世界アッパーでKOし、リング上で久我山達と大好きなマジ少の振り付けを披露するのだった。
登場人物・キャラクター
砂原 世界 (すなはら せかい)
アイドルグループのマジかよ少女隊(マジ少)をこよなく愛する大学生の男の子。年齢は18歳。気弱そうな外見のいたって普通の人物。同じくマジ少ファンだった久我山創に誘われて、3か月前からマジ少のライブやイベントにも積極的に足を運ぶようになり、そこで出会った吉田、鶴田、ジョーカーを含め、五人でなかよくつるんでいる。 仲間からは「砂っち」の愛称で呼ばれる。マジ少メンバーのさつきんを推しており、ライブ後の握手会やチェキ撮影会を重ねて、さつきんに名前を覚えてもらった。街中で一人でマジ少の曲を振り付けしながら、人目をはばからずに踊ってしまうほど入れ込んでいる。実家は大砂原ボクシングジムを経営しており、砂原世界を8階級制覇世界王者に育てあげようとする祖母の砂原ウニから、ボクシングの厳しいトレーニングを受けて育った。 幼少時から厳しいトレーニングをこなしてきたため、世界本人はとんでもない強さを誇る。しかし、小学5年生の時に、スパーリングで大人をボコボコにしているところを同級生に見られてしまい、同級生から「暴力王子」のあだ名で恐れられ、友達ができなかった。 そんな事もあり、ボクシングを遠ざけていたが、ひょんな事からプロボクサーとなる。バンタム級でプロデビュー後、ボクシング雑誌記者の小日向樹里による、血に飢えた凶暴な男という過剰なイメージ演出によって、ボクシングファンからは「犯罪者」というニックネームを付けられる。家族構成は祖母と両親、高校生の妹の五人。 両親は優しく、嫌ならボクシングをやらなくてもいいと、世界の意思を尊重してくれている。
砂原 ウニ (すなはら うに)
砂原世界の祖母。4回戦ボクサーだった夫の砂原大(まさる)が、現役引退後に設立した大砂原ボクシングジムのボス。ジム関係者から「女帝」と呼ばれる。ジムの経営は息子が担うが、ウニも日々ジムで厳しく指導にあたる。世界を8階級制覇世界王者に育てあげるという野望を持ち、幼少の頃から厳しい鍛錬を課してきた。マルコムとアンガスという巨体の二人をいつも従えており、今も世界にトレーニングを迫る。
会長 (かいちょう)
コグレジムというボクシングジムの会長を務める男性。実はマジかよ少女隊(マジ少)のメンバーであるリサリサの実の父親。砂原世界達がマジ少のファンである事を知り、娘を利用して彼らにプロデビューを決断させるという、なかなかの策士。かつては大砂原ボクシングジムに所属するプロボクサーで、第42代日本ライト級チャンピオンでもある。 頭はだいぶ薄くなったが、今も上半身はムキムキで、1ラウンドだけだが世界のスパーリング相手を務められるほど、体力は衰えていない。世界に初めてボクシングの楽しさを教えた人物。
駒沢 麦 (こまざわ むぎ)
コグレジムに所属するトレーナー見習いで、ボクシング好きの少女。センター分けにした長い黒髪を左右で三つ編みにした地味な見た目だが、かわいらしい顔立ちで、ものすごい巨乳の持ち主。砂原世界のボクシングの才能を見抜き、プロデビュー後は世界のトレーナーとなる。世界がプロテストに合格したら胸をもませてあげると約束して、その約束を実践しようとするなど、実直だが天然なところがある。
駒沢 米 (こまざわ よね)
コグレジムに所属するプロボクサーで、駒沢麦の兄。スーパーフェザー級の8回戦で、7戦全勝(1KO)。相手の攻撃をかわし、的確にカウンターを打ち出すという事で、自分で付けたニックネームは「バタフライスナイパー」。極度のナルシストで、砂原世界のスパーリングの相手を務めた時は、世界のパンチをぎりぎりでよけて、相手のグローブにキスをするという演出を繰り返す。 実際はまったく実力がともなっていない口だけの弱小ボクサーで、勝てない相手との試合は断り、試合も消極的なプレイで勝ちをつないでいる。
結城 未来 (ゆうき みらい)
大砂原ボクシングジムに所属するボクサーの男性。前人未踏のアマ8冠を成し遂げた天才ボクサー。超人的ハンドスピードで繰り出す左ジャブは、打たれた者が動けずに固まってしまう事から「メデューサ」の異名を持つ。必殺ブローは、高校時代に幾多の強豪をマットに沈めた超光速左フック「フューチャーフラッシュ」。人気実力共にあり、2020年の東京オリンピックでのメダルを期待されていたが、急遽プロに転向する。 ジムでの練習では砂原世界にまったく歯が立たなかった事から、世界に激しい対抗心を持っている。目標はあくまで世界を倒す事のみ。世界のプロデビュー後、山に籠って多数の野犬を相手に特訓し、プロデビュー戦ではフィリピン国内4位の対戦相手を、わずか13秒でKOした。
久我山 創 (くがやま はじめ)
砂原世界のアイドルオタク仲間。太った男性で、世界をマジかよ少女隊(マジ少)のイベントに誘った。マジ少のリーダーであるリサリサ推し。リサリサがプライベートで通うコグレジムの場所を突き止め、おっかけだとバレないように注意しながら、世界を誘ってジムへ見学に訪れる。会長の策略でボクシングのプロテストを受ける事になるが、食い意地がはっているため減量ができない。 それでも世界のスパーリング相手をしているうちに締まった体つきになった。プロテストでは善戦したが、仲間うちで唯一不合格となる。
吉田 (よしだ)
砂原世界のアイドルオタク仲間。イケメン社会人の男性で、オタク仲間からは「ヨッピー」の愛称で呼ばれる。もともと運動神経がよく、ボクシングのセンスもあって、ボクシングのプロテストに合格する。マジかよ少女隊のユイ推し。
鶴田 (つるた)
砂原世界のアイドルオタク仲間。体格のいい男性で、ガテン系の仕事をしているだけあってパンチ力があり、ボクシングのプロテストに合格する。サウスポー。マジかよ少女隊のヒッキー推し。
ジョーカー
砂原世界のアイドルオタク仲間。長い黒髪で顔を隠し、太めのバンダナを頭に巻いた、口数の少ない近寄りがたい雰囲気の男性。アイドルオタクの中ではカリスマ的存在である伝説のドルオタで、砂原世界達からも「ジョーカーさん」と呼ばれて一目置かれる。マジかよ少女隊のあなきゅん推し。ボクシングのプロテストでは、リーチの長さを活かしたフリッカージャブで健闘するが、すぐにスタミナ切れ。 それでも得意技の「道化師の逆襲(ジョーカーカウンター)」で相手を倒し、見事合格した。
小日向 樹里 (こひなた じゅり)
ボクシング雑誌「ボクシングゾーン」の記者。派手な女性。マカロンが好きで、いつも食べている。ファッション誌の編集者になる事を夢見て出版社に就職したが、まったく興味のないボクシング誌に配属されて強い不満を抱えている。それでも自分の担当した記事でボクシング誌の部数を伸ばして結果を出せば、希望のファッション誌に異動できると考え、結城未来と砂原世界という二人のボクサーに目をつける。 美人だが、仕事のストレスからかやたらと下品な言動が目立ち、「ペニス」などの単語を多用する。世界の強さをスクープ後も、映像を捏造して世界の凶暴性をアピールし、勝手に入場時のコスチュームや演出まで用意して、世界に「犯罪者」というニックネームを定着させた。
ランディ 坂口
砂原世界がプロテストで対戦したボクサーの男性。地下格闘技ブラックミストの三代目王者。すさまじいパンチ力で毎試合、相手を秒殺してKO勝ちを続け、ボクシング界へ転向した。しかしプロテストのリングで世界に負け、初めて敗北を知る。それ以来、打倒世界を目指して、世界を研究し続けるうちに、すっかり世界の強さの虜となり、ファンになってしまう。 恋人にその事を指摘されると、あらためて自分のトレーニングに集中。その後、ジョナサン・ウィッチマンとの死闘を繰り広げる。
伴場 先人 (ばんば さきと)
プロボクサーでラッパーの男性。砂原ウニが砂原世界を倒すために大砂原ボクシングジムから差し向けた。イカの触手のようにしなやかに伸びるジャブの連打が脅威。世界のプロデビュー戦の相手となり、世界を苦しめたが、最後は世界の必殺技「世界アッパー」を食らって敗れた。
白鳥 千尋 (しらとり ちひろ)
砂原世界のプロ2戦目の対戦相手の男性。0戦12敗という万年4回戦ボーイ。世界のファンであり、世界から教えてもらったマジかよ少女隊(マジ少)にハマる。マジ少ファンとして世界と意気投合し、なかよくなる。「おら、この地球上で一番強くなりてぇ」とか「おらワクワクしてっぞ」といった口ぶりだが、実際の試合はクリンチばかりのヘタレで、「世界アッパー」を食らってあっさり敗れた。 試合後もマジ少ファン同士として世界との交流は続く。かわいらしい見た目から女性ファンが多く、「未勝の王子様」「ルーザーズプリンス」というあだ名で、試合会場では黄色い声援が飛ぶ。
ジョナサン・ウィッチマン (じょなさんうぃっちまん)
アメリカ人プロボクサーの男性。砂原ウニが砂原世界を倒すために見つけてきた。やたらと性欲が強く、ところかまわず自慰を始める。アメリカでも軽量中に突然自慰を始めて理事長にぶっかけ、ボクシング界を追放された。そこをウニからスカウトされて日本へやって来る。世界の部屋にあるマジかよ少女隊のグッズをオカズにして自慰をしていたところを世界に見られる。 必殺技は猛牛のような破壊力の「ダブルホーンアッパー」。東日本新人王バンタム級1回戦でもランディ坂口をこの技で沈めた。決勝となる2回戦で世界の「世界アッパー」に敗れる。
チーターたかし
お笑いタレント兼プロボクサーの男性。TV番組の企画でボクシングを始めたところ、空手の経験もあった事から、その身体能力の高さで、開始3か月でプロテストに合格し、デビュー戦も判定勝利を収める。東日本新人王バンタム級1回戦で砂原世界と対戦し、開始24秒でのパンチ1発で倒される。
集団・組織
マジかよ少女隊 (まじかよしょうじょたい)
砂原世界が夢中になっている五人組のアイドルグループ。略称は「マジ少」。メンバーはリーダーのリサリサ、さつきん、ユイ、ヒッキー、あなきゅん。1stシングルは「ラブインパンチャー」。デビューして2年だが、知名度はいまひとつ。新曲「はちみつとポニーテール」で念願のオリコントップ10入りを狙う。