概要・あらすじ
世界的な有名な天才小説家Mは、パンチドランカーになってしまった元ボクサー・武居捨郎の試合をプロモートする。武居の対戦相手は伝説の元世界チャンピオンで、その栄光とは裏腹に、敗北の屈辱感にあえいでいる男だった。試合当日、Mは利権を貪り安穏と暮らす権力者たちを拉致し、2人の肉体のぶつかり合いを見せつけるのであった。
登場人物・キャラクター
M (えむ)
世界的に有名な小説家。肉体を鍛えるためにボクシングのトレーニングをしており、筋骨隆々たる体をしている。自己愛主義者。異様なファイトスタイルを貫く武居捨郎に興味を持ち、近づく。パンチドランカーになり引退した武居の死に場所を作るために、伝説の元世界チャンピオン・ケイリーとの試合をプロモートする。 その試合は、飽食の時代を貪る日本への警鐘でもあった。実在の小説家・三島由紀夫をモデルにしていると思われる。
武居 捨郎 (たけい すてお)
シャベルパンチと呼ばれる強烈な右パンチで世界フェザー級タイトルマッチまで上り詰めた元ボクサー。戦後、満州からの引き揚げ時、過酷な体験をする。その経験から強迫観念に囚われ、うずくまるような体勢で相手に打たせるだけ打たせてから反撃するボクシングを続けていた。そのいびつなファイトスタイルゆえに、パンチドランカーになり、記憶と知能を失う。
ケイリー
前・世界ミドル級チャンピオン。「ビーナスの鼻」の異名を持つほど美しい顔立ちをした伝説のボクサー。KO負けを喫したのはチャンピオンになる前のたった一度だけだが、その敗戦が屈辱となり、いつまでも心に傷を残している。Mに説得され、引退後にもかかわらず、トレーニングを積み、武居と試合をする。
F (えふ)
米国現代文学の旗手と言われる作家。下層階級の肉弾世界をかわいたタッチで描く作風。Mが開いたFの出版記念パーティーに、ケイリーを同伴して出席する。