あらすじ
第1巻
近い未来の日本。政府は食糧自給率を向上させるために、JFBP主導で開発された新型の薬品を食糧用に管理されていた野菜や家畜などに投与した。しかしその結果、動物や植物は凶悪な自我と強大な力を獲得し、人間を襲う危険な存在へと変化してしまう。食材たちの攻撃行動によって人類は瞬く間に駆逐され、日本は国としての体制を保てなくなる。それから4年後、かつてにぎわいを見せていた都市も、現在は狂暴な食材たちが闊歩する無法地帯となっていたが、人類が完全に姿を消したわけではなかった。家族と共に人のいなくなった町で暮らす殿場料子は、師匠である大頭菜から剣術を学びつつ、戦って倒した食材を料理して日々の糧にするという自給自足の生活を送っていた。修行によって成長し、じゃがいもやにんじんなどの凶悪な食材を難なく仕留めた料子は、料子の母親の仇である黒毛A5和牛に挑む。支配食材である黒毛A5和牛は、圧倒的な身体能力で返り討ちにしようとするが、牛特有の音に頼った戦術を逆手に取られ、敗北する。こうして母親の仇を討った料子は、大頭菜から安全な土地の様子を見に行くことを伝えられ、さらに料子の家族も含めて自分と同行しないかと誘われる。しかし料子はこれを断り、今後は自分一人の手で食材を狩り、自身と家族とで食卓を囲む決意を告げるのだった。
第2巻
師匠である大頭菜の旅立ちを見送った殿場料子は、玉ねぎを狩るために町に出ていたところ、自らを膳と名乗る少年と彼の率いるチームと知り合う。料子は膳たちと力を合わせて玉ねぎを撃破し、共に食卓を囲むことですっかり打ち解ける。しかし、彼らの前に強大な戦力を誇る米の斥候であるもち米が現れ、襲い掛かってくる。人類のテクノロジーを熟知し、的確な対応を取るもち米に、料子や膳は苦戦を強いられる。しかし、家族を守るという決意を新たにした料子は、身体能力でもち米を圧倒するに至り、ついに一刀のもとに切り伏せる。料子は、勝利の余韻に浸ると同時に主食である米を得たことを喜ぶが、それもつかの間、もち米が乗り物として利用していたニワトリが目を覚まし、膳のチームに襲い掛かる。膳たちは、基地を犠牲にした戦術をもってニワトリと戦い、炎に包むことで大きな痛手を与える。なおも生きていたニワトリは膳に突進するが、彼の手が触れた瞬間、急に苦しみだして死亡する。一方、戦いで傷ついた料子に、もち米と組んで活動していた白米が現れる。彼は、生態系を狂わせた人類を死滅させて平和な世界を作り上げると宣言し、剣を振るう。窮地に陥った料子は膳に救われるが、白米は彼こそが探し求めていた細菌者であることを確信。そのまま膳を仕留めようとするものの、苦手とする豪雨に見舞われ、料子の母親が生きていることを示唆しながら撤退する。料子は母親が生きている可能性があることを喜び、その真相を探ることを誓う。
第3巻
殿場料子は、生存の可能性がある料子の母親の情報を求めて、膳と共に皿の町へと向かう。見たことのない町の様子に二人は心を躍らせるが、彼らの前に拳銃を手にした人間の女性が現れ、即座に皿の町から退去するようにせまる。料子は刀を振るって拳銃を奪い、観念した女性は料子たちの求めに応じて皿の町を案内し始める。女性は品品冷々と名乗り、かつて無実の罪で死刑を宣告されつつも、4年前の食材の暴走によって収監されていた留置場を破壊され、一命を取り留めたこと。そして、現在の皿の町は支配食材に君臨しているアワビの破壊行動によってほぼ全壊状態に陥ったうえに、妹の品品奈々を失ったことですべてに諦観し、死に場所を求めていることを告げる。しかし、かつて冷々がアワビと戦っていた痕跡を見つけた料子と膳は、冷々の家にゆっくりと進軍するアワビに立ち向かう。そして、彼らの戦いに触発された冷々もまた、バイクを駆って加勢する。力を合わせてアワビを倒した三人は、奈々の冥福を祈りつつ、アワビを材料とした料理を作って食卓を囲む。生きる希望を取り戻した冷々は、料子と共に暮らすことを望み、お姉さんを欲しがっていた料子もその申し出を快諾。こうして、殿場家に新たな家族が加わるのだった。
第4巻
品品冷々を加えた殿場家の前に、凩と名乗る男が現れる。彼は異様な気配を放ちつつ細菌者の情報を求め、狩った食材の腐敗速度から細菌者の存在を確信する。殿場料介を人質として細菌者を出すようにせまる凩に攻めあぐねる料子だったが、そこに膳が自ら細菌者であることを名乗り出る。凩はこれ幸いと膳と料介を捕え、パートナーであるパセリと共に樹海の町へと撤退する。殿場料子は罠であることを承知したうえで、二人を助けることを決意。同行を申し出た冷々を伴い、樹海の町へと乗り込む。料子と冷々は、町にたどり着くや否や、支配食材であるブロッコリーの襲撃を受ける。ブロッコリーの巨体を生かした攻撃をかいくぐった料子は、凩とパセリが彼にとって目障りな存在であることを見抜き、彼らを排除する代わりに一時休戦するという取り引きを成立させ、ブロッコリーから自分の体を乗り物として使うように提案される。二人はブロッコリーの背中に乗り込み、一直線に凩のもとに向かうが、道中にパセリが現れ、香りの力でブロッコリーの自我を奪い去ってしまう。この影響で料子は地面に開いた大穴に落ちるが、タイミングよくウブメの拘束から逃れていた膳を救出することに成功。難を逃れた冷々は凩を発見し、先手を取って銃撃する。料子たちは冷々と合流し、目的はすべて果たされたかに見えたが、そこに凩が姿を現す。彼の肉体はすでに人間のものではなくなっており、額に銃撃を浴びてもなお、生きていた。凩はパセリからさらなる力を獲得し、料子と最後の戦いに臨む。
第5巻
殿場料子は愛刀を抜いて凩に挑みかかるが、大頭菜から説かれていた「人を斬るな」という教えに囚われ、全力を出せずにいた。凩はこの期に及んで非情になれない料子に対して苛立ちを見せるが、これに対して料子は、日常を誰かに守られてばかりいることへの無力感を吐露し、そんな自分と決別するために武器を構え直す。気持ちを改めた料子の斬撃は、パセリの香りで強化された凩を圧倒し、ついには再生不可能な状態まで追い込む。負けを悟った凩は自分を斬るようにせまるが、料子はこれを拒み、仲間たちと樹海の町をあとにする。そして数週間の時が流れ、凩に乱された日常もようやく落ち着きを見せた頃、殿場料介がお寿司を食べてみたいと言い出す。料子もこれに同意し、膳や品品冷々と共に水着を着て河川敷に集結。川の主として君臨していたキングサーモンと、そのライバルであるキングサーモンReturnと戦い、これを撃破する。こうして殿場家の食卓はお寿司で彩られることになるが、そこに安全な土地の調査から帰還した大頭菜が現れる。彼はかつて料子と戦った米の軍団が大軍で攻め寄せる兆候が見られることや、大頭菜自身もかつて膳と共にJFBPの施設で暮らしていた細菌者であること、そして二人の持つ細菌者の力こそが、米の大群を滅ぼす鍵であることを語る。料子はかつてない激戦を予感するが、そんな時だからこそおいしいごはんを食べるべきだと考え、仲間を集めてキングサーモンReturnを材料とした焼きシャケ弁当を振る舞う。一行は食卓を囲んで英気を養い、数万規模の米との戦いに備えるのだった。
登場人物・キャラクター
殿場 料子 (でんば りょうこ)
凶悪な食材が闊歩する町で、家族と共に暮らしている15歳の少女。ふだんは温厚な性格ながら、食材を狩る際には冷徹な一面を見せることが多い。一方で、同年代の少年である膳に水着姿を見せることを恥ずかしがったり、品品冷々を姉のように慕うなど、年相応の少女らしさを見せることもある。4年前に発生した食材の暴走によって料子の母親を失っており、その仇とされている黒毛A5和牛を倒す力を求めていた。そんな中、近所に引っ越してきた大頭菜から剣術を学び、人間では太刀打ちできないとされる食材を自在に狩るレベルにまで成長を果たす。狩りの際には基本的に大刀を用いているが、必要に応じて父親である殿場料夫が開発した武器を使うこともある。当初は、母親を失った経験も影響し、人類が理不尽に苦しめられるようになった世界そのものに憎しみを抱いていた。しかし、黒毛A5和牛を倒したことで殿場料子自身の気持ちに区切りをつけ、それからは純粋に家族と共においしいご飯を食べるためとして、ある種の敬意を持って食材と向かい合っている。また、大頭菜から安全な土地の調査に同行するように持ち掛けられたが、これを断って未知の食材を求めて修行と狩猟の日々を過ごす。のちに米の斥候であるもち米、および白米と戦うが決着にはならず、去り際に残された発言から母親が生きている可能性を見いだし、彼女の情報を求めて活動範囲を広げるようになる。さらに膳や冷々と出会い、彼らを新たな家族として迎え入れた。凩との戦いでは、大頭菜から受けた「人を斬るな」という教えに苦しむが、自分が家族をはじめ多くの人によって生かされていることを強く実感し、彼らを守るために教えを破って凩を傷つけ、涙した。
大頭菜 (だいとうさい)
殿場家の近所に住んでいる青年。殿場料子に剣術を教えており、彼女からは「師匠」と呼ばれている。豪快ながら人のいい性格で、料子のみならず、殿場料夫や殿場料介からも慕われている。また、尋常ならざる腕力を誇り、独自に開発したハンマーを振るい、黒毛A5和牛の腕すら簡単に切断するパワーを発揮する。かつてはJFBPの研究員で料夫とも面識があり、細菌者であることから同じ境遇である膳の教育係を任じられていた。その際、一日ごとに記憶が失われる膳の前に毎日別人を装って現れては、彼の境遇を改善するために尽力し、のちの彼の生き方に大きな影響を与えている。4年前の食材暴走事件以降は、情報を集めつつ料子を鍛え上げ、彼女が黒毛A5和牛を倒す場面を見届けると、一人前になったことを確信。現在の住居を離れて安全な土地の様子を探る決意を固める。その中で、米の大群が殿場家のある町を襲撃する情報を察知し、料子たちにそれを伝えるために帰還した。
殿場 料夫 (でんば かずお)
殿場料子の父親。温厚かつ優しい性格で、妻である料子の母親や家族たちに強い愛情を注いでいる。かつてはJFBPの職員で、大頭菜とも面識があった。しかし、妻が警察官であることから、研究内容の漏洩を恐れた上層部の判断によって解雇されてしまう。それ以降は家族と暮らしていたが、4年前の食材暴走事件によって足の自由と妻を失う。事件後は料子や大頭菜の狩った食材を糧に、家事のほかに殿場料夫自身の義足や料子が食材を狩るための武器の開発などを行って家族をサポートしている。
殿場 料介 (でんば りょうすけ)
殿場料子の弟。年齢は小学生程度ながら、4年前の食材暴走事件の影響で学校に通えていない。明るく朗らかで、さらに気丈な性格なことから料子の母親を失ったうえに不自由な生活を強いられても弱音一つ吐かず、姉や殿場料夫にとっての癒しの存在となっている。殿場家が凩の襲撃に巻き込まれた際には、細菌者の所在を探るための人質として利用され、さらに料子に興味を持った彼の手によって、兄のように慕っている膳と共に連れ去られてしまう。その後、樹海の町の地下でウブメに拘束されていたが、膳の細菌者の力で拘束から解放され、脱出を促される。膳を心配するあまり即座に走り出せなかったものの、彼の発言に勇気づけられると単身で駆け出し、無事に助けに訪れた料子と合流することに成功した。以降は、平穏を取り戻した際にもお寿司を食べたいと申し出るなど、気落ちすることなく日常を楽しんでいる。
料子の母親 (りょうこのははおや)
殿場料子の母親で、警察に勤めている。運動神経抜群で男勝りな性格から周囲からの信頼もあつく、知り合いなどからは勤務時間以外も敬意を込めて「殿場巡査」と呼ばれている。特に料子からは、その強さと優しさを強く敬われており、目標の女性として認識されている。4年前の食材暴走事件においては、人間をたやすく蹴散らすほどの力を持つ食材の数々を目の当たりにし、一時は心が折れかけた。しかし、家族と共に日常を生きたいという決意から気力を取り戻し、銃を持って食材と勇敢に戦い、料子や家族たちの心の支えとなった。黒毛A5和牛との戦いで負傷し、料子の前で動けなくなったところでガレキの山に覆われてしまい、消息を絶つ。このことから、料子からは死亡したものと思われていたが、米の斥候である白米の発言から、生きている可能性が高いことを示唆される。
膳 (ぜん)
殿場料子が暮らす町から離れた場所で暮らしている少年。人や食材に対して手のひらを押し当てる奇妙なクセを持っている。本名は「膳夫丁」で、膳本人もこの名前を忘れてしまっている。明るくやや天然気味な性格ながら、仲間を思う気持ちは人一倍強く、他者を守るためなら自分を傷つけることもいとわない。細菌者と呼ばれる力の持ち主で、血液を食材に付着させることで、それらの腐敗を急速に早めることができる。かつてはその能力に着目したJFBPに捕えられており、生態観察を受けつつ、一日ごとに記憶をリセットされるという生活を送っていた。しかし、教育係として派遣された大頭菜の尽力で生きる希望を見いだし、食材暴走事件の発生を機に施設を脱走。白滝と出会うことで食材を狩るチームを結成する。メンバーからは「大将」と呼び慕われている。玉ねぎを狩るために大きな爆発を引き起こし、その際吹きあがった黒煙に気づいた料子が様子を見に訪れたところで玉ねぎと遭遇し、なりゆきで共闘することになる。米やニワトリとの戦闘を経て仲間とはぐれ、料子の提案によって彼女の家族と暮らすことになる。その後、アワビや凩、キングサーモンなどとの死闘を仲間と共に生き抜き、ついに恩師である大頭菜との再会を果たす。
白滝 (しらたき)
膳のチームに所属している青年。4年前に発生した食材暴走事件の中で、JFBPの施設から脱走してきた膳に助けられ、共に食材を狩るためのチームを立ち上げた。チームの中では膳に次ぐNo.2の地位にあり、膳を含めた仲間たちからは「副長」と呼ばれている。かつては地味な雰囲気を漂わせており、外見も頼りなかったが、4年間でたくましく成長し、膳たちからも頼られるようになった。手先が器用で頭もよく、チェーンスピアといった、狩猟用の武器を開発している。米やニワトリが襲撃してきた際にアジトを失い、さらに白米の攻撃によって膳と離れ離れになってしまう。
キド
膳のチームに所属している青年。身体能力は膳に匹敵するほど高く、食材が現れたときは白滝からチェーンスピアなどの武器を受け取り、膳と共に前線に出ることが多い。ニワトリとの戦いでは、物理的な攻撃では倒せないと判断した白滝に従い、チェーンスピアを巻き付けたドラム缶を振り回して灯油を振りまき、火攻めにすることに成功する。しかし、白米の攻撃によって膳とチームを分断され、さらに高架橋の崩落に巻き込まれそうになる。その結果、膳を案じつつも彼を助けたいと考えるあまり、無謀な行動に出ようとする白滝を阻止した。
品品 冷々 (しなじな れれ)
皿の町に住んでいる女性。かつて運送業を営んでいたが、ある時運搬していた物体が突然肥大化し、その影響で死亡事故を起こしてしまう。事故にはJFBPがかかわっており、彼らの暗躍によって不当な裁判を課せられ、死刑を言い渡された。拘留中は死の恐怖と妹の品品奈々に会えない絶望に苦しんでいたが、食材暴走事件の際に拘置所が破壊されたため、それに乗じて脱走。真っ先に最愛の妹に会うべく家に向かうが、既に奈々は命を落としていた。以降は怒りと諦観に心を支配され、皿の町の支配食材となったアワビと刺し違えることを望み、幾度となく戦いを挑んだ。銃を用いても致命傷を負わせられず途方に暮れていたが、そんな中で殿場料子および膳と出会う。当初は彼らに強盗を働こうと考えたが、料子のあまりの強さに手も足も出ず、さらに緊張感をまったく見せない二人に毒気を抜かれる。そして、彼らがアワビに戦いを挑むとこれに加勢し、ついにアワビを倒すことに成功した。それからは希望を取り戻し、奈々の墓前にあいさつを済ませると料子たちに同行し、彼女から家族として迎え入れられる。料子のことを奈々と重ねて見ている節があり、彼女からも姉のような存在として強く慕われるようになった。
品品 奈々 (しなじな なな)
品品冷々の妹。明るく姉思いの少女で、冷々は殿場料子に似たような雰囲気を持っていると語っている。冷々と二人暮らしで、裕福とはほど遠い暮らしを送っていたが、それに対する不満を一言も漏らすことなく、冷々の生きる支えとなっていた。しかし、冷々が無実の罪で捕えられたことで離れ離れとなる。姉の死刑が確定しても、欠かさず留置場にいる彼女に手紙を書いていた。しかし、食材暴走事件が発生すると人間の居場所がなくなり、姉とももう会えないと確信したことで絶望し、自ら命を絶ってしまう。
凩 (こがらし)
パセリとコンビを組んでいる青年。かつては母親思いの心優しい性格の持ち主だったが、事故で半身不随になった母親の介護を強いられ、さらに動けなくなったストレスによって豹変した彼女から心ない仕打ちを受け、心身ともに疲弊していく。ついには人生そのものに絶望するに至るが、そんな矢先に食材暴走事件が発生し、瀕死の重傷を負う。しかし、死を迎えることを喜ぶ凩の表情に興味を抱いたパセリから、強力な再生能力を付与されることで命を救われ、行動を共にするようになる。それ以来、パセリとは種族を超えた愛情で結ばれるようになり、彼女を「ハニー」と呼んで大切にしている。しかし、自分のことに対して病的なまでに無関心なのは変わらないままで、パセリから与えられた能力の影響もあり、必要とあらば自らの四肢をもぎ取ることすらいとわない。また、現在はパセリと共に米に従っているように振る舞っているが、実際は利害が一致しているだけで、内心では軽んじている。細菌者の情報を得るために殿場家に侵入し、その痕跡を発見。殿場料介を人質に取り、殿場料子を尋問しようとする。細菌者である膳が自ら名乗り出たことでその場はおさまるが、料子に個人的な興味を抱いたため、膳と料介を連れて彼女に目的地を自ら告げ、追ってくるように仕向けた。料子との再戦時は、人類が滅亡寸前に陥っても希望を捨てようとせず、さらに人間を斬れないという彼女に憤りを見せ、パセリの香りを利用して容赦のない攻撃を繰り出すが、仲間がいるからこそ生きられるという彼女の奮闘の前に敗れ去った。その際、トドメを刺すように求めたところ見逃されるが、パセリと共に樹海の町の崩壊に巻き込まれ、消息を絶った。
ウブメ
樹海の町の地下で、食材の実験を繰り返している女性。凩とは一応の共闘関係にあるが彼とは異なり、米こそが新たな世界を作り上げると信じており、心からの忠誠を誓っている。自らの目的のためなら、人間や食材を平然と使い捨てる冷酷な性格の持ち主。細菌者に対して強い警戒心と興味の両方を抱いており、凩が連れてきた膳に対して、実験と称して自ら育て上げた馬鈴薯をけしかける。しかし、自らを傷つけることで血液を振りまく膳に馬鈴薯を腐敗させられ、そのスキを突いて逃亡される。追撃のために差し向けたメロンも圧倒されるが、細菌者相手に深追いすることは得策でないと考え、残りの食材を囮に使って樹海の町を脱出した。その後は米の軍に交じって実験を続け、米が一斉蜂起した際には新たなシステムを組み上げて彼らの体に適応させた。
じゃがいも
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。殿場料子や大頭菜が住む町を徘徊している。人間の数倍以上の巨体を持ち、上半分の皮がむかれている。基部に触手のような根っこを生やし、それを用いて移動できる。また、人間の唇のような器官が付いており、外敵が近づくと凄まじい声を上げて威嚇してくる。夕ご飯の具材を集めに来た料子と戦闘になるが、彼女の大刀によって両断され、絶命した。残された体は、にんじんと共に野菜スープの具として利用された。
にんじん
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。殿場料子や大頭菜が住む町を徘徊している。人間の数倍以上の巨体で、葉の部分が髪の毛のような形状に変化している。また、動物のような目玉や口を持ち、身の部分から伸びた手足を移動や攻撃のために利用する。じゃがいもを狩った料子に襲い掛かり、巨大な足で踏みつぶそうとした。しかし、攻撃を予測していた料子に回避され、身の部分を太刀で切断されたことで絶命する。残された体は、じゃがいもと共に野菜スープの具として利用された。
黒毛A5和牛 (くろげえーごわぎゅう)
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。かつては米の軍勢によって利用されていたが、現在は殿場料子や大頭菜が住む町の支配食材として君臨している。じゃがいもやにんじんとは比較にならない戦闘能力を誇る。4年前の食材暴走事件で大混乱に陥った町に現れ、料子の母親と戦い、彼女を戦闘不能に追いやる。さらにその直後、料子の目の前で料子の母親がガレキの崩落に巻き込まれて消息を絶ったため、料子からは母親の仇として憎まれている。料子のことは取るに足らない存在として放置していたが、戦いを挑まれたことでこれに応じる。全身から角を生やす能力を持ち、それで相手の目を欺いたところで、隠し持っていた角で突き殺そうとする。しかし、相手の動きを耳で判断するという特性を見抜かれ、それを逆手に取った料子の戦法にはまり、首を斬られて絶命した。残された体は、牛すじ煮込みなどの料理に利用された。
きゅうり
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。星のような形の目と、巨大な口と牙を備えている。4年前に発生した食材暴走事件の際に、出かけていた殿場一家を襲撃するが、間一髪のところで逃げられる。のちに殿場料子と再び遭遇するが、大頭菜との修行を経て強くなった彼女の敵にはなりえず、上空から舞い降りてきた彼女の刀によって切断された。残された体は、浅漬けの具材として利用された。
えのきたけ
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。四足歩行の獣のような形状に変化しており、根の部分に目と口を備えている。大きな物音などに反応する習性を持っており、卒業試験として行われた大頭菜と殿場料子の模擬戦の音を聞きつけて、彼らの前に姿を現した。そして、目の前にいた料子に向けて有無をいわさず全力の突進を見舞おうとするが、簡単に避けられた挙句、無数の斬撃によって粉々に寸断された。残された体は、なめたけの具材として利用された。
エビ
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。純粋な巨大化を果たしており、力も大きく増加している。4年前に発生した食材暴走事件によって殿場料子の住む町に現れ、彼女とその家族の乗った車の前に立ちふさがった。突然の出来事に狼狽する料子たちをハサミで襲おうとするが、そこに駆けつけた料子の母親から無数の銃弾を浴びせられて力尽きた。
トマト
殿場料子が学校で栽培していたプチトマトが、JFBPの開発した新型薬品に空気感染することで進化を遂げた。形は進化前とあまり変わらないが、大きな口を開いて人を丸のみにできる。4年前に発生した食材暴走事件の際、混乱の中にいた料子が持ち帰っていた植木鉢の中に潜んでいた。そして、料子の母親がその存在に気づいたことを察すると姿を現し、料子を捕食しようとする。しかし、襲い掛かるより早く料子の母親から銃撃を受け、活動を停止した。
オレンジ
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。みかんの皮をかぶっており、下半分が節足動物のような形状に変化している。強靱な外骨格を持っており、防御能力と移動速度に特化しているほか、体を丸めて転がることで軌道上にあるものを攻撃できる。ある高校の屋上を根城にしており、食材調達に訪れた殿場料子と戦闘状態に陥る。先手を取って体当たりを仕掛けようとするが、料子からダイエットハンマーVer.6で殴られることで軌道を変えられ、貯水タンクに激突。屋上から落下し、水の張られていないプールでタンクの下敷きとなる。そして、身動きの取れないままダイエットハンマーVer.6の直撃を受けて破裂し、全身から果汁をまき散らした。散らされた果汁はオレンジジュースとして、料子の戦利品となった。
玉ねぎ
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。根の部分が節足動物の形に変化しており、中心には大きな目と小さな目が一つずつ備わっている。膳のチームが滞在している町のショッピングモールを根城にしており、彼らと小競り合いを繰り返している。強靱な身体能力と、優れた反射神経を併せ持っており、チェーンスピアを装備した白滝から奇襲を受けた際は、絡め取られる前に全身から無数のネギを発生させ、彼を切り刻もうとした。さらに、膳の抵抗によって行動不能にさせられるが、発生させたネギに人格を宿らせて膳に追い打ちを加えようとする。しかし、乱入してきた殿場料子によってネギを切断され、ついに絶命した。
白米 (はくまい)
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。人類の駆逐を目的としている米の部隊に所属しており、もち米と共に斥候を務めている。稲の形状をした刀を携えており、もち米と二人がかりとはいえ、戦車を動員した軍隊すら制圧できるほどの戦闘能力を誇る。もち米を倒した殿場料子の前に現れ、戦いで傷ついた彼女に対して剣による攻撃を展開。さらに、黒毛A5和牛を差し向けたのが米であることを思い出して戦慄した彼女に対して渾身の一撃を食らわせ、彼女の愛刀を両断する。しかし、トドメを刺そうと切りかかったところに膳に割って入られ、彼を傷つけたことで流れた血液を浴びた際に、全身を腐敗させられる。これによって膳が細菌者であることを疑い、二人をまとめて始末しようとするが、苦手としている雨に降られたことで、それ以上の追撃を断念して撤退した。去り際に、料子の母親が生きていることを示唆するような発言を行い、図らずもこれが料子に新たな希望を抱かせる結果となった。
もち米 (もちごめ)
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。人類の駆逐を目的としている米の部隊に所属しており、白米と共に斥候を務めている。白米とは逆に遠距離戦に特化しており、両腕から炊き上がったもち米を生成および放出する能力を持っている。軍隊との戦いでは手榴弾や砲台などにもち米をまとわりつかせて、その機能を奪うことで全滅に追いやった。細菌者の所在を探っていたが、偶然遭遇した殿場料子を見つけると、攻撃を仕掛けてくる。一時は彼女を追い詰めるものの、照準を付けることすら困難になる速度を発揮されたことで劣勢に陥り、高架橋を生かした奇襲に屈して両断された。体からは無数の新米が収穫でき、殿場家はしばらくのあいだ主食に困らなくなった。
ニワトリ
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。エビと同様、巨大化した以外は元の生物と変わらない姿を持つが、並みの食材をはるかに凌駕する身体能力と、全身を燃やされても致命傷に至らないほどの強靱な耐久力を誇る。米の圧倒的な組織力に屈した結果、彼らの傘下に入ることを余儀なくされ、現在は搭乗機として利用されている。細菌者の捜索任務に就いていたもち米を背中に乗せて、殿場料子や膳の前に姿を現した。米たちからは道具同然に扱われており、彼らのむちゃな行動で墜落させられ、下半身に大きなケガを負うが、傷ついた怒りに身を任せて膳のチームを襲う。白滝の発案した策略にはまり、ガソリンをかぶったうえで放火されるが、膳に襲い掛かる。しかし彼の血を口の中に浴びると、細菌者の力によって全身の組織が急速に腐敗して絶命した。
長芋 (ながいも)
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。芋虫のような形状に変化しており、頭の部分を巨大な口に変えることもできる。食材の中でも特に巨大な体軀が特徴で、捕食した食材を吐き出して、大砲なみの攻撃力を発揮することもある。一方で、移動するだけで道路に擦れて身が削れていき、最終的には跡形もなく消え去るという弱点を抱えている。また、人間に対しては好戦的でなく、食材を狩るために外出していた殿場料子と膳によって補足された時は、先に捕食していた食材を吐き出して牽制し、地面にとろろをしき詰めながら逃走した。全身が削れて消える前に倒そうとする料子に追われるが、とろろですべる地面に阻まれていたため、そのまま逃げられたかと思われた。しかし、膳が細菌者の力でとろろを腐敗させ、すべらなくなった地面を使った跳躍によって追いつかれ、刀で両断された。残された体は、料子と膳によってとろろいもの材料として利用された。
アスパラガス
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。皿の町に生息している。元のアスパラガスをそのまま巨大化させたような形状をしており、根っこを使って走行することができる。ふだんは地中に潜っており、頭のわずかな部分だけを地面の上に出しているが、頭になんらかの刺激を感知すると、地面を割って飛び出してくる。皿の町を訪れた殿場料子と膳によって発見され、膳が接触したことで姿を現すが、料子からご飯の材料として捕捉される。ほかの食材とは異なり、料子を襲おうとせず一目散に逃げ出すが、彼女の追走があさりに阻まれると、これを好機ととらえて挟み撃ちにしようとする。しかし、そこに現れた品品冷々から複数の銃弾を浴びて力尽きた。
あさり
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。皿の町に複数が生息しており、いずれも支配食材であるアワビに従って行動している。貝から人間の体が生えたような形状をしており、二枚の貝を翼のように羽ばたかせることで飛行することも可能。皿の町に入った人間を排除する役割を担っており、アスパラガスを追って町の奥に踏み入った殿場料子を見つけるとその姿を現し、結果的にアスパラガスを助ける形となった。そのままアスパラガスと連携して料子を仕留めようとするが、そこに現れた品品冷々に急所を銃で打ち抜かれ、アスパラガスと共に殲滅された。のちに仲間の死を悟った別個体が姿を現すが、料子の刀によって両断されている。彼らの体はアサリ汁の具材として利用された。
アワビ
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。皿の町に支配食材として君臨している。ふだんの動きは鈍重で、3分間移動すると休眠するために進行速度は極めて緩やか。しかし、銃弾を軽々とはじき返す強固な貝殻で全身を覆われているうえに、ほかの食材を捕食することによって貝殻をさらに硬質化させることも可能としており、破壊することはおろか衝撃を与えることすら困難。そのため、アワビと長らく戦い続けてきた品品冷々は、進行先にある建物は近いうちに破壊される運命にあると悟りきっており、住処がアワビの進行ルート上に合致した時は、妹を失って自暴自棄になっていたこともあって刺し違えて心中しようと考えていた。しかし、殿場料子による貝殻の隙間を狙った攻撃と、膳の細菌者の力によってダメージを受け、それに触発された冷々がバイクで体当たりをしたことで大きく怯む。最期は高く跳びあがった料子から、渾身の突きを受けたことで致命傷を負って体内に溜め込んでいた真珠を吐き出しながら絶命した。真珠は、品品奈々の墓に備えるためのイヤリングの素材となり、体は料理の材料として使われた。のちに、アワビ自体が実験のために凩によって運用されていたことが明かされている。
サザエ
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。あさりと同様、アワビに従って行動しており、貝殻の下に人間に近い体を持っている。飛行こそできないものの、肉体はあさりと比較にならないほど強靱で、電信柱を片手で軽々と振り回せる。アワビの弱点である貝殻の隙間を狙う殿場料子の前に立ちはだかり、電信柱を変形させて作り上げた大砲で彼女の行く手を阻んだ。さらに、アワビの周囲に落ちていたガレキを連続で投げつけるなどの妨害を行うが、料子のすさまじいスピードですべてかわされる。最後の手段として電信柱を直接投擲するが、逆にそれを足場として利用され、急接近された挙句に刀で両断された。
さくらんぼ
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。肥大化した茎に一つの目と二つの口、さらに複数の実が付いている。食材狩りに来た殿場料子や膳、品品冷々を発見すると、上空から奇襲してくる。さらに、冷々が先んじて撃ちこんだ銃弾を相打ち狙いで受け、根の部分に備わった毒針で彼女を仕留めようとするが、膳に触れられると細菌者の力によって根が腐敗する。そのまま全身に腐敗が広がるが、料子が刀で茎をバラバラに寸断し、実は新鮮なまま活動を停止した。残された実はデザート用として三人に回収された。
パセリ
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。複数のパセリが連なって人間の女性のような体を形成しており、人格も女性そのもの。全身から特殊な香りを放出し、それを他者に嗅がせることで、自我を奪って意のままにあやつったり、強力な再生能力を付与できる。4年前の食材暴走事件で自我を得ると、様子見として食材に襲われた電車に乗り込むが、そこで致命傷を負った凩と遭遇する。そして、彼が死を前にしているにもかかわらず満面の笑みを浮かべていることを疑問に思い、それを尋ねるために香りの力を使って彼の傷を回復させた。それ以降、樹海の町を根城に凩と行動を共にしている。当初は興味本位で凩を観察していたが、彼からは好意を向けられ、次第にパセリ自身も彼を愛するようになる。米の軍の指揮下で動いているが、凩と同様にこの状況を快く思っておらず、白米が目的を果たせず撤退した際には嬉しそうな様子を見せていた。凩が殿場料介と膳をさらい、さらに故意にヒントを与えて殿場料子が来るように仕向けた時は、苦言を呈しながらも彼をサポートする姿勢を見せて、料子および品品冷々が取り引きによって味方につけたブロッコリーを香りであやつり、逆に二人にけしかけた。しかし、ブロッコリーを行動不能にされ、さらに料子に苦戦する凩の能力を上昇させるために香りの力を使い切り、衰弱してしまう。凩が料子に敗れたあとは、彼と共に崩壊するガレキの中に消え、消息を絶った。
白菜 (はくさい)
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。巨大な人間のような形状をしている。膳や殿場料介を追って樹海の町にやって来た殿場料子および品品冷々の前に現れ、襲い掛かってくる。あまりの巨体故に、冷々の銃ですら有効打を与えられないと見られていたが、突如現れたブロッコリーによって全身を絡め取られ、頭から捕食された。
ブロッコリー
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。頭部は龍のような姿をしている。食材の中でも飛びぬけて巨大な体を持っており、樹海の町の支配食材として君臨しているとともに、現在は町の大部分がブロッコリーの体で構成されている。樹海の町で凩やウブメが好き勝手に振る舞っていることから、人間に対して強い憎悪を抱いている。殿場料子や品品冷々を発見した際も、問答無用で攻撃を仕掛けようとするが、その際に凩を快く思っていない旨の発言を行ったため、料子から凩を倒すまで休戦するように持ち掛けられ、ブロッコリー自身もこれを了承する。さらに、凩の居場所まで彼女たちを運ぼうとしたが、パセリによって発見され、香りの力で自我を奪われてしまう。パセリの力が尽きると体が崩壊していき、それに伴って樹海の町自体も大きな破壊に見舞われた。
オクラ
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。花のような頭部の中に巨大な口を備えており、樹海の町の素材となっているブロッコリーと同化しているが、現在はパセリの香りの力によって自我を奪われており、彼女の命令にあやつられるだけの存在となり果てている。殿場料子と品品冷々を乗せたブロッコリーの行く手を阻むために乗り物として利用され、さらに命令を受けたことで料子を樹海の町に開けられた大穴に叩き落としてしまう。しかし皮肉にも、この行動によって料子と膳、殿場料介の合流を早める結果となった。その後は凩が冷々に銃撃されたことを感知したパセリが撤退したために香りの力が切れ、そのまま活動を停止した。
馬鈴薯 (ばれいしょ)
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。じゃがいもに似た形状をしており、蔓を自在に動かして敵対する存在を絡め取ることができる。樹海の町に生息しているが、現在はウブメによって生態を管理されている。ウブメに囚われた膳の前に現れ、細菌者の力を計測するための実験として、蔓で四肢を拘束したうえに彼を絞め殺そうとした。しかし、細菌者の力を使った膳によって蔓を腐敗させられ、さらに全身に腐敗が及んで消滅した。
メロン
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。樹海の町の地下に生息している。ウブメによって生態を管理されており、彼女からは最高傑作と評される。四足歩行の爬虫類のような形状で、網目のような模様が体中に張り巡らされている。拘束を引きちぎったうえに馬鈴薯を倒した膳を危険視したウブメによって呼び出され、その姿を現した。馬鈴薯をはるかに上回る力を持っており、細菌者である膳からも強く警戒されていた。ウブメの命令により、殿場料介を連れて逃げようとする膳にせまるが、自らの血液を武器に反撃しようとした膳を脅威と見たウブメから撤退命令を受け、彼女を背に乗せたまま地下から逃げ去った。
キングサーモン
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。殿場料子たちが暮らす町の河川の奥底に潜んでいる。お寿司を食べるために魚類を狩ろうとする彼女たちによって探し出され、膳に腐ったトマトの残骸を投げ込まれると、あまりのまずさに耐えかねて姿を現した。キングと名乗るだけあって非常にたくましい体軀に恵まれており、尻尾を打ち付けるなどの力に任せた攻撃を得意としている。一方で、細菌者である膳を恐れてまともに戦おうとしなかったり、見た目は強くなさそうな相手を選んで襲おうとするなど、姑息かつ臆病な面も目立つ。料子に襲い掛かるが返り討ちに遭い、さらに戦いの気配を察知して姿を現したキングサーモンReturnの刀で両断された。
キングサーモンReturn (きんぐさーもんりたーん)
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。殿場料子たちが暮らす町で生まれたが、4年前の食材暴走事件で進化したと同時に外洋に旅立って修行を続け、生まれ育った河川へと戻ってきた。キングサーモンとはかつての友人同士で、似た体格をしているが、鰹節刀と呼ばれる剣術を修得しており、戦闘能力ははるかに上回っている。お寿司の具材を狩るために河川を訪れた料子たちと、キングサーモンの戦いの気配に惹かれて姿を現し、キングサーモンを両断して料子との戦いを望む。リーチの差を生かした斬撃で彼女を圧倒するが、機動性を重視するあまり鱗の強度はキングサーモンほどではないという弱点を見抜かれ、刀を投げつけるという奇策に翻弄された挙句、両断された。残された体は、かつてもち米から取れた新米と合わせてお寿司の具材として活用された。
集団・組織
JFBP
日本政府直轄の研究機関。殿場料夫や大頭菜のかつての勤め先で、食糧難を解決するための研究が行われていた。しかし裏では、食糧用に利用されている野菜や家畜の栄養価や質量などを高める薬品を開発しており、それを知らないままでいた料夫や大頭菜を利用し、さらに細菌者であった膳を捕えて実験体としていた。やがて薬品が完成するが、その影響で食材たちに狂暴な自我が芽生えて暴走事件が発生し、研究所が全壊するという惨事に見舞われた。大頭菜や膳もこれに巻き込まれたが、研究員たちのその後の消息は不明である。
米 (こめ)
食材の一種で、JFBPの開発した新型薬品を投与されたことによって進化を遂げた。ほかの食材とは異なり、体は人間程度しかなく、特殊な生態を備えているわけでもない。しかし人間はおろか、大半の食材を上回る身体能力と軍隊すら圧倒する戦術や、三万もの軍勢を組織する統率力など、知恵においても人間を上回る。人類こそが、自然界の食物連鎖を歪ませた元凶と考えており、すべての人間を駆逐することで新たな生態系を構築し、その頂点に君臨しようとしている。一方で、自らの計画に協力的な存在に対しては寛容な一面を見せ、黒毛A5和牛やアワビといった支配食材や、ウブメなどの人間を配下に加えている。細菌者の存在を恐れており、斥候である白米やもち米、協力者の凩やパセリを使ってその行方を探っている。
場所
安全な土地 (ぐりーんぞーん)
日本の北部に存在する区画の一つ。暴走する食材からいっさいの干渉を断つために造られた場所で、高い壁で外敵の侵入を防いでいる。また食材と接触できないため、味のない合成食糧のみが支給されている。大頭菜からは疑念を抱かれており、殿場料子との修行を終えたあとに、安全な土地の調査に赴くことを決めている。殿場家の面々も同行するように誘われたが、料子の母親の思い出がある町から離れたくないという理由でこれを断っている。
皿の町 (さらのまち)
品品冷々が住んでいる町。かつてはふつうの町として家が立ち並んでいたが、支配食材となったアワビにその大半を押しつぶされ、更地に変えられている。その形が料理の乗っていない皿のようだという理由で、現在は皿の町と呼ばれている。現在は冷々が一人で住んでおり、彼女自身もアワビと刺し違えて散ろうと考えていたが、料子の母親の情報を求めてやって来た殿場料子と膳がアワビを倒したことで、それ以上の破壊活動を阻止された。のちに冷々が料子の住む町に引っ越したため、現在は無人となっている。
樹海の町 (じゅかいのまち)
全体が植物で覆われているという、奇妙な町。覆っている植物はブロッコリーの体の一部で、彼が体を動かすだけでその構造が変化する。現在は凩やパセリ、ウブメなどが実験のために居座っており、ブロッコリーの望まない生態系が構築されている。のちにブロッコリーがパセリの香りによって自我を奪われ、やがて力尽きたことで樹海の町を覆っていた植物がすべて枯れ果てて廃墟となった。
その他キーワード
ダイエットハンマーVer.6 (だいえっとはんまーばーじょんしっくす)
殿場料夫が、刀で狩りづらい食材のために開発した武器。先端がドリル状になっており、殴打した食材から果汁などをしぼる機能が搭載されている。威力が高い反面取り回しが難しく、素早い食材を狩るには向いていない。殿場料子はこれをオレンジを狩るために使用し、フェイントによってバランスを崩したオレンジに思い切り打ちつけることで仕留め、先端のドリルでオレンジジュースをしぼり取った。
チェーンスピア
白滝が開発した武器。石突の部分に長いチェーンが仕込まれており、主に突き刺した食材を拘束するために利用される。動きの素早い玉ねぎに対応するため、膳と白滝によって運用され、みごと生け捕りにすることに成功した。
食材 (しょくざい)
JFBPが開発した新型薬品を投与されたことにより、異能に目覚めた食品用の動物および植物。身体能力が大幅に向上しているほか、凶悪な自我に目覚めており、人類の手に負えない存在へと生まれ変わっている。その結果、大勢の人類が駆逐され、日本は国としての機能をほぼ停止させられてしまった。大抵の食材は自身の活動領域を広げることを目的としており、目につくものに対して攻撃を仕掛ける習性を持っている。しかし、白米のように人類に対して明確な敵意をもって組織行動を行っているものや、パセリのように人間に対して恋愛などの感情を抱き、共に行動する食材も存在する。また、味や栄養価などは失われておらず、絶命させれば料理に利用することも可能で、殿場料子や膳など、食材を狩ってその体を料理に利用することで、自給自足の生活を送っている人間も存在する。
細菌者 (じゃーむ)
血液の中に、物質を腐敗させる特殊な細菌を含有している人間。大頭菜や膳が該当し、JFBPの研究員たちからは「変異細菌感染者」と呼ばれている。あらゆるものを腐らせる特性から食材の天敵として認識されており、特に米は細菌者の存在を非常に恐れており、協力者を使ってその行方を探っている。一方で出血しないと効果を最大限に発揮できないため、使用者の体を傷つけなければ使えないという弱点も存在する。膳はこの力を使い、殿場料子の食材狩りや凩との戦いなどに大きく貢献している。
支配食材 (しはいしょくざい)
食材の上位個体で、黒毛A5和牛やアワビ、ブロッコリーなどが該当する。通常の食材より身体能力が優れており、ほかの食材を従えることも可能で、あさりやサザエなど、支配食材の護衛として機能している食材も存在する。一方で、黒毛A5和牛などのように米の軍に利用されたり、ブロッコリーのように、凩やウブメなどによって支配地域を利用されるなど、外敵によって脅かされている支配食材も少なくない。