SARU

SARU

古今東西に伝わる伝承を題材に、“猿”と呼ばれる謎多き生命体と、世界に迫りつつある危機に対峙する人々を描いたミスティックファンタジー。伊坂幸太郎の小説「SOSの猿」との競作企画として描かれた作品。

正式名称
SARU
ふりがな
さる
作者
ジャンル
ファンタジー
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概要・あらすじ

時は現代。イタリアのエクソシスト、カンディド・アマンティーニは謎の神父サベーリョの依頼で、とある“悪魔憑き”とされた少女イレーヌ・ベアールと面会する。彼女は自らを孫悟空と名乗り、古今東西に伝わる謎の生命体“”そのものであると言う。そして、世界に迫りつつある大災害を示唆するのであった。カンディドは、彼女が語る“”とは一体何者であるかを突き止めるため、彼女と行動を共にするようになる。

一方、フランスのアングレームに住む日本人留学生の辺見奈々は、出自不明の謎の僧侶ナワン・ナムギャルに出会う。彼は己の出自を知るためにアフガニスタンに向かうのだという。とある出来事からナムギャルに興味を抱いた奈々は、ナムギャルに同行し、アフガニスタンに住む老婆ニルファ・カムルカンの元へと向かう。

偶然か必然か、アフガニスタンで合流したカンディド一行とナムギャル一行は、カムルカンから“”が何者か、いかにして生まれたかを聞く。そして、やがて世界を滅ぼしかねないという強大な力の存在と、そこに秘められた陰謀を知るのだった。

登場人物・キャラクター

イレーヌ・ベアール

不気味な雰囲気の漂う幼い少女。フランスのパリで、暗殺団によって引き起こされた交通事故に遭い両親を失う。彼女自身は一命を取り留めたものの、“悪魔憑き”とされ、イタリアのエクソシスト、カンディド・アマンティーニと面会することになる。実は彼女には、古くから伝承されている“猿”が憑依しており、自らを孫悟空としたうえで、“猿”にまつわる様々な知識と、世界に迫りつつある危機をカンディドらに語るのだった。 作中では憑依している“猿”としての人格しか描かれていないため、イレーヌ本人の人格は不明である。

カンディド・アマンティーニ

バチカンの公式エクソシストを務める中年の男性。“悪魔憑き”とされたイレーヌ・ベアールと接触し、それ以来“猿”の謎と世界に迫りつつある危機と対峙することになる。彼女との対面の翌日、彼女を保護していたサベーリョという男性が行方不明となったことから、彼女をバチカンで保護することになり、以後行動を共にするようになる。 バチカンからの命を受け、イレーヌの予言とも取れる導きのもとにアフガニスタンへと向かい、そこでナワン・ナムギャルと辺見奈々に出会う。

ナワン・ナムギャル

ブータンで僧侶をしている青年。伝統ダンスの名手としての一面もある。国際ダンスビエンナーレのゲストとしてフランスのアングレームに赴き、そこで辺見奈々と出会う。初対面にも関わらず、奈々にかけられた黒魔術やその原因などを見事言い当てるなど、謎の多い人物。また、出生から幼年期までの記憶が失われている。 以上の件がきっかけで奈々に興味を持たれ、以後行動を共にするようになる。そして、己の出自について解き明かすためアフガニスタンへと赴き、ニルファ・カムルカンと対面するのであった。

辺見 奈々 (へんみなな)

黒髪ショートの女性で、フランスのアングレームに住む日本人留学生。原因不明の右眼の痛みに悩まされていたが、偶然知り合ったナワン・ナムギャルの助言のおかげで右眼にかけられた黒魔術を解くことができた。その後、ナワン・ナムギャルに強い興味を抱くようになり、彼に同行するようになる。そして、“猿”にまつわる事件に巻き込まれていくのだった。 特にこれといった能力を持たない平凡な少女であるが、イレーヌ・ベアールからは特別視されている。

ニルファ・カムルカン

アフガニスタンに住む老婆。“猿”が憑依した兄の代弁者として、イレーヌ・ベアールらと対面する。“猿”が憑依したものを監視する一族、ウォッチャーの1人。“猿”の起源を知る重要人物でもある。

フランシスコ・ピサロ

かつてインカ帝国を征服したコンキスタドール。“反魂”により死から蘇り、アングレームの大猿を目覚めさせるために暗躍している。残虐非道の冷徹な男であり、「命は奪うためにある」とまで発言している。征服欲が強く、狂気じみた表情で他人を威圧する。

ディエゴ・デ・アルマグロ

フランシスコ・ピサロと共にインカ帝国を征服したコンキスタドール。“反魂”により死から蘇り、ピサロの片腕として策略を巡らせている。ピサロに比べると冷静沈着な性格をしている。また、インカ帝国の先住民に左目を潰されている。

フランシスコ・ザビエル

日本にキリスト教を伝えた宣教師フランシスコ・ザビエルその人。現世に姿を現し、サベーリョと名乗る。常に優しげな表情をしている。カンディドをイレーヌに引き合わせた張本人であり、世界に迫りつつある危機を回避するために暗躍する。アロンの杖を所持したフランシスコ・ピサロをも圧倒するほどの力を持っている。

マルコリオス

エチオピア正教会の神父。頭にターバンを巻いている。“猿”が憑依したものを監視する一族、ウォッチャーの一人であり、カンディド一行をアロンの杖の隠し場所へ案内する。また、シンギングウェルとは一体何なのかを一行に説明する。

『SARU』に登場する用語。古より伝えられている、実体のない知的生命体。その呼び名は古今東西によってさまざまであり、そのうちの一つに孫悟空がある。世界の秩序を左右するほどの力を持った存在が生み出した身外身の一つ。独自の人格のようなものを持っている。他の身外身とは異なり、精神を進化させ、多数の人間に分担しながら憑依することで肉体と分離している。 憑依の強弱は人によって様々であるが、強く憑依している者ほど暗殺団に狙われやすい。

ビエラ・カリ

パーマがかかった髪をした大柄な女性。SARUに抵抗できる可能性のある力を伝えているとされている。自らが率いる星の楽団と共に、歌で星を操ることができる。隕石を操り、SARUにぶつけることでSARUの進行を食い止めようと画策する。

集団・組織

暗殺団 (あんさつだん)

『SARU』に登場する組織。“猿”がより強く憑依している人間を、一般の事件や事故に装い殺害してまわっている謎の多い集団。黒魔術を操る。イレーヌ・ベアールが巻き込まれた交通事故も、この暗殺団によって引き起こされた。正体は不明だが、2体の“猿”の身外身のバランスを崩し、アンゴルモワの大王を復活させることで世界を破滅へと導こうとしている。

その他キーワード

身外身

『SARU』に登場する用語。かつて世界の秩序を左右するほどの力を持つ存在が生み出したという分身のこと。その中でも二つの身外身が独自の進化を遂げ、現在も残存している。その一方は精神を進化させた“猿”であり、もう一方は暗殺団が復活させようとしているアンゴルモワの大猿である。二つの身外身のバランスが崩れると、世界は危機的な状況に陥るとされている。

SARU

『SARU』に登場する用語。フランスのアングレームで突如発生した爆弾低気圧の名称。その正体は暗殺団の画策で“猿”が激減したことにより復活した、強大な肉体を持った身外身である。世界中を徐々に移動しながら、無尽蔵のエネルギーで破壊の限りを尽くす。中心部にはアンゴルモワの大猿とされる巨大生物が存在しており、あらゆる近代兵器による攻撃が無効である。

アロンの杖 (あろんのつえ)

『SARU』に登場する用語。モーセがイスラエルの神から授かり、兄とともに使用したとされる杖。エジプトで九つの災いを起こしエジプト王を懲らしめ、出エジプト時に海を割ったのはこの杖だとされている。本作では、“契約の箱”の中にあるとされており、この杖を巡って、イレーヌ・ベアールらと暗殺団との争奪戦が繰り広げられる。

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