概要
時は江戸時代中期。嵐のなか、山で道に迷った1人の男が雨をよけるために入った祠から不思議な部屋へ移されてしまう。そこは、人に捨てられた傘や反物などが妖怪へ転じた付喪神が大量に巣食う異空間だった。
男は人に尽くしてくれた古道具たちへ感謝をこめて修繕してやり、彼らの嘆きをなだめていく。
登場人物・キャラクター
男 (おとこ)
旅人。山中で雨宿りしようとして付喪神のたまり場に迷い込んだ。傘の張り替えから反物の繕いまで器用な腕前をもつ。物の修理に必要な、ありとあらゆる道具をおさめた大きな箱をかついでいる。お化けを見ても動じない、胆のすわった人物。
蛇の目蛙 (じゃのめがえる)
「九十九」に登場する妖怪。破れた傘が付喪神になったお化け傘たちの一匹。手のひらサイズの小さな蛇の目傘が組み合わさって蛙の形になっている。恨みごとに節をつけて唄うお化け傘たちの音頭をとる。 男が他の傘と共に修繕してやったことで満足して消える。
反物小町 (たんものこまち)
「九十九」に登場する妖怪。流行遅れで箪笥の奥にしまいこまれた反物が付喪神になっている。ふすまに描かれた美人画が反物たちの嘆きを男に伝えた。男が布地の肌触りを褒め、異なる柄の反物を縫い合わせて新しく洒落た柄に生まれ変わらせてやったことで満足して消える。
付喪神 (つくもがみ)
「九十九」に登場する妖怪。長く使われた道具に魂が宿った存在。壊れたり用済みになって人間から打ち棄てられたことに悲しんでいる。劇中では蛇の目蛙や反物小町のほか、茶碗や湯呑みなどのガラクタの集合体が現れて悪臭を放ちながら飛び回った。 本作の題名「九十九」は「つくも」と読み、付喪神という名前への掛けことばになっている。
場所
祠
地蔵をまつっているおんぼろなお堂。中には廃棄された古道具が大量に転がっている。物理的には人がひとり入れば窮屈になる小さな建物だが、男はそこから奥、四方をふすまに囲まれた畳敷きの部屋がいくつも連なる空間へ放り込まれた。