蒼のアインツ

蒼のアインツ

ワールドカップを夢見るゴールキーパーの神谷蒼が、日本代表に初選出され世界を相手に活躍していく姿を描くサッカーヒューマンドラマ。「コミックDAYS」2019年4月号から2021年月2号にかけて掲載された作品。

正式名称
蒼のアインツ
ふりがな
あおのあいんつ
作者
ジャンル
サッカー
レーベル
ヤンマガKCスペシャル(講談社)
巻数
既刊6巻
関連商品
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あらすじ

サッカーのヒーロー

山梨のプロサッカーチームで期待の新人GKとして活躍し、プロ3年目を迎えた神谷蒼は、いつかはワールドカップで活躍することを夢見て日々の練習に励んでいた。ある日の試合に出場していた蒼は、いつものようにゴールを守り続けていた。試合終了後、食堂でいつもどおり大量の料理を注文し食事をしていた蒼は、大事な話があると鏑木信嗣に呼び出しを受ける。それは、蒼に日本代表チームの監督からスカウトが来ているというものだった。日本代表に初選出されることになった蒼は、信嗣が心配する中で日本代表チームに加入し、母親にそのことを報告する。そして迎えたチャレンジカップのセネガル戦当日、蒼は国内No.1のGKである醍醐健の活躍をベンチから見ていたが、沸き上がる大勢の観客の声援を受けながら、後半から代表デビューを果たす。蒼は懸命にゴールを守り続けるが、海外トップ選手のレベルの違いにゴールを守りきれずに彼のワンプレーが原因で、会場中が騒然となって雰囲気が一変してしまう。相手チームに先制点を奪われた蒼は、失点に焦ることなく相手のシュートを止めることだけに集中する。その後、試合は蒼のビッグセーブと味方のシュートが決まったことで、1対1の同点で終わる。だが、相手選手の最初のシュートを止められなかったこと、チームを勝利に導けなかったことを悔やむ蒼はさらなる努力を誓う。こうして、ワールドカップを夢見る蒼の世界への挑戦と、厳しい試練が始まるのだった。

戦力外通告

ワールドカップに出場して日本代表のゴールを守るという夢を抱くGKの神谷蒼は、その夢を叶えるべく、さらなる成長を求めて海外移籍を決断。一人でドイツに渡った蒼は、ドイツ2部のプロサッカーチーム「レーゲンスブルク」に加入した。だが、蒼をスカウトした監督は彼がドイツに着く前に解任されてしまい、後任の新監督のスヴェンソンからは冷遇されていた。さらに蒼は、ドイツ語の勉強が不十分なためにチームメイトとのコミュニケーションをうまく取ることができず、異国で活躍することの難しさや厳しい現実、ドイツのプロ選手たちとの才能の差を突きつけられることになる。そんな中、蒼は練習試合中に片足を負傷してしまい、リハビリを含めて半年間も練習に参加できなくなってしまう。大幅に遅れを取ることに焦りを感じながらも、蒼は復帰までの時間を無駄にしないよう、復帰までのあいだに筋トレとドイツ語の勉強に力を入れることにする。また、メモ帳にそれぞれの選手の特徴を記録しながら、少しずつチームメイトとの交流を重ねていく。半年後、なんとか練習に復帰できた蒼だったが、スヴェンソンからは事実上の戦力外通告を突きつけられてしまい、練習はレーゲンスブルクのユースチームと行なうことになる。復帰早々さまざまな不満と不安に焦りを隠せない蒼は、一人のコーチとの出会いをきっかけに、その運命は大きく動いていく。

ジャンとカストロ

プロサッカーチーム「レーゲンスブルク」のトップチームで構想外の状況が続く中、神谷蒼はある条件のもとで、リーグ第31節ベルリン戦で自分を起用して欲しいとスヴェンソンに直訴する。蒼が持ちかけた条件とは、自分が試合中に1点でも失えば、今後はスヴェンソンの決定にはいっさい逆らわないというものだった。スヴェンソンとの交渉は成立し、サブメンバー主体で次の公式戦であるドイツ2部の強豪、ベルリンとの試合に臨むこととなる。だが、蒼がチームメイトには秘密にしていたため、彼らは蒼が1点も失えない条件を抱えていることは知らぬままだった。一度の失敗すら許されないという状況と、ドイツに来てから初の公式戦への期待を胸に秘め、ついに蒼はドイツのピッチに立つ。当初は順調なセービングを見せた蒼だったが、味方のイエローカードなど不利な状況が重なり、相手チームのエース、クラウスの策略によりPKに持ち込まれてしまう。イエローカードをもらったカストロを励ましたうえでPKを止めることを誓った蒼は、クラウスのシュートを足でうまく弾き返すが、こぼれ球を拾われ再びピンチに陥る。なんとかクラウスの2度目のシュートを食い止めた蒼だったが、ゴール近くに落ちたこぼれ球のカバーに戻って来たカストロが足を滑らせ、オウンゴールを決めてしまう。その後も仲間とうまく連携するクラウスの猛攻を止め切れずに失点を許し、蒼はスヴェンソンに出した1点も失わないという条件を果たせずに終わってしまう。

復帰への道

ドイツのプロサッカーチーム「レーゲンスブルク」移籍以来、初の公式戦に臨んだ神谷蒼は獅子奮迅の活躍を見せたが、0対5の惨敗を喫してしまう。1点も失わないというスヴェンソンとの賭けにも負けた蒼は、日本のチームに復帰するか、このままドイツに残ってレーゲンスブルクで飼い殺し状態にされるかの選択をせまられる。非情な現実と過酷な選択を突きつけられた蒼は、このままではドイツに来た意味がないと日本には戻らず、レーゲンスブルクに残ることを選択する。そんな蒼は再びユースチームに戻り、トップチームの練習には参加できない日々を送っていた。蒼がスヴェンソンと無茶な約束を交わし、1点も失えないプレッシャーとも戦っていたことを試合後に知ったジャンカストロは、敗北の無念と共に蒼への罪悪感を覚える。一方、今まであらゆる試練に耐えてきた蒼もショックや焦りを隠し切れず、その日の練習にはほとんど集中できずにいた。そんなある日、心配して様子を見に来たニーナ・ベッカーと会った蒼は、彼女の言葉に大きく励まされる。それでも絶望的な状況は変わらず、蒼はどうやってトップチームに復帰するかという新たな課題を抱えることになる。そんな中、スヴェンソンが蒼を明らかに毛嫌いしていることを見抜いていたパトリックは、蒼にもう一度チャンスを与えて欲しいと進言し、スヴェンソンの息子であるヴィクトルを連れて説得を試みる。

逆境への挑戦

監督のスヴェンソンとの確執も解消され、プロサッカーチーム「レーゲンスブルク」の正GKを目指して神谷蒼はさらなる奮闘を続けていた。そんな中、レーゲンスブルクのメインスポンサーの業績不振により、チームは空中分解の危機に陥る。蒼は再びスポンサーを獲得するために、チームのさらなる活躍をアピールし、新たなスポンサー獲得を目指すことを提案。さまざまな逆境に立たされた蒼たちは、ドイツ1部リーグへの昇格を目標に、新たな特訓を始めるのだった。チームメイトたちに危機感と緊張感が高まる中、エドガー・ベッカーは過去にルーゲンスブルクのGKとして活躍していた父親の夢を引き継ぐという決意を思い出す。成長を続ける蒼に感心と期待を寄せながらも、正GKの座は譲らないという姿勢で練習に臨むエドガーだったが、キャッチした瞬間に背中の違和感と痛みを覚える。そして今シーズンの公式戦がせまる中、カップ戦1回戦のスタメンが発表される。サブメンバー主体で組まれたチームの中には、ユースチームから上がってきたエメリヒも名を連ねていた。期待の新人を加えたチームのゴールを守る蒼は、正GK昇格のためにもカップ戦で勝ち抜き続けるという決意を胸に、カップ戦に挑む。

才能と大きな壁

プロサッカーチーム「レーゲンスブルク」の正GKとチームの1部リーグ昇格を目指して、カップ戦を消化していた神谷蒼は、順調に勝ち進んでいた。そんな中、当初は失敗ばかりしていたが、試合の中で才能を開花させていったエメリヒが、サブチームを抜けてスタメン入りすることが告げられる。エメリヒの昇格を喜ぶ蒼だったが、共に上を目指してきた後輩のエメリヒが短期間で一気にスタメンの座をつかんだことで、10人のフィールドプレイヤーとは異なるGKというポジションの厳しさを味わうこととなる。蒼が新たな壁にぶつかって悩む中、チームの1部リーグ昇格のための重要な試合がせまっていた。エドガー・ベッカーからエメリヒ昇格の話を聞き、複雑な感情を抑えられずに調子を崩した蒼の様子を見ていたニーナ・ベッカーは、気晴らしに遊園地に行こうと誘う。最初は蒼を心配して励ますつもりで誘ったニーナだったが、逆に彼に励まされることになり、彼女はある気持ちを自覚する。そして後日、カップ戦3回戦は0対0でPK戦に負け、レーゲンスブルクの敗退が決まる。それでもエメリヒやエドガーの活躍で、リーグ戦ではチームは好調をキープしており、蒼は正GKへの昇格がますます困難になり、厳しい立場に晒(さら)されていた。カップ戦終了後、気持ちを新たにリーグ戦に挑むことになり、次の相手はドイツ2部の強豪であるベルリンに決まる。それぞれが強い目標や思いを抱える中、1か月後のベルリン戦に向けて蒼たちの猛特訓が始まる。

登場人物・キャラクター

神谷 蒼 (かみや あおい)

山梨のプロサッカーチームに所属する青年。ポジションはゴールキーパーで、初登場時は20歳。いつも前向きな姿勢の努力家で、GKというポジションに誇りを持っている。いつかワールドカップに出場し、日本代表のゴールを守ることを夢見ている。山梨でGKとして活躍する中で、日本代表チームに選出されてGKとして加入を果たす。加入後に初出場した試合でドイツのプロサッカーチーム「レーゲンスブルク」の監督、ゼムノヴィッチにスカウトされ、先輩GKの助言を受けて海外で経験を積むために一人でドイツに渡り、レーゲンスブルクに加入した。だが、合流直前でゼムノヴィッチが解任され、新たな監督となったスヴェンソンからは冷遇されたうえに、合流早々に足を負傷して半年間リハビリ生活を送ることになってしまう。療養中はドイツ語の勉強とチームメイトのプレーの特徴を覚えることに専念し、リハビリに励んで無事に復帰すると共にチームメイトにもなじんでいく。復帰してからは、療養中に親しくなったエドガー・ベッカーを押しのけてチームの正GKになることを目指すようになる。しかし、スヴェンソンからの冷遇が続いたことでユースチームに落とされ、苦しい状況に置かれる。その中で出会ったパトリックの指導を受けて急成長を遂げ、彼の協力を得てスヴェンソンとのしがらみからも解放され、エドガーに次ぐNo.2のGKとして活躍するようになる。幼少期に父親から、GKがチームのピンチを救うヒーローのような存在と教えられ、プロとなった今でもそれを信じている。その一方で、ドイツに渡ってからはフィールドプレーヤーとは異なるGKというポジションの厳しさや、レベルの差にたびたび悩まされている。また、幼少期に両親の離婚により、両親と兄の四人で暮らしていた家族がバラバラになったために、いつかサッカーを通して家族と再会することを夢見ている。高校を卒業してプロになるまでは母親と二人暮らしで、離れて暮らしている現在でも、時おり近況を電話やメールで報告している。身長は182センチだが、GKとしては小柄なため、少しでも大きくなりたいと、いつも多めに食事を摂(と)っている。

矢野 美咲 (やの みさき)

山梨のプロサッカーチームの広報担当を務める女性。ロングヘアをポニーテールにまとめている。明るく面倒見のいい性格をしている。神谷蒼に期待を寄せ、努力家な彼の活躍する姿を鏑木信嗣と共に優しく見守っている。蒼がドイツに渡ったあともテレビなどを通じて蒼のプレーをチェックしているが、異国で苦境に立たされている彼を心配している。のちに仕事で信嗣と共にドイツに渡り、蒼と再会を果たした。

鏑木 信嗣 (かぶらぎ しんじ)

山梨のプロサッカーチームの強化部長を務める男性。眼鏡をかけている。クールで理知的な性格ながら、少々怒りっぽいところがある。厳格でそっけないようにも見えるが、選手の能力や心情を冷静に見極め、つねに的確な助言を与えている。期待の新人である神谷蒼に注目すると共に時には厳しく指導し、GKとして類いまれな才能を秘めている蒼を、矢野美咲と共に冷静に見守っている。しかし選手の移籍などに対してはかなりシビアな考えを持ち、蒼が日本代表に選出された際もまだ早過ぎると危惧していた。蒼がドイツに渡ったあとも、テレビなどを通して蒼のプレーを確認している。あまり態度には出さないが、異国で苦境に立たされた蒼を心配している。のちに仕事で美咲と共にドイツに渡り、蒼と再会を果たした。

エドガー・ベッカー

ドイツのプロサッカーチーム「レーゲンスブルク」に所属する男性。ポジションはゴールキーパー。背番号は1番で、初登場時の年齢は39歳。筋肉質で大柄な体格で、家族思いな性格をしている。レーゲンスブルクのトップチームのゴールを守る正GKであり、チームの精神的支柱として周囲からの信頼も厚い。私生活でも面倒見がよく、根っからの兄貴気質でチームメイトに慕われている。2メートル近い身長で、どっしりと構えてゴールを守る姿はチームの守護神と評される。家族は妻のローザ・ベッカー、長女のニーナ・ベッカー、次女のリリー・ベッカーと愛犬のファルコンで、レーゲンスブルクの練習場近くにある一軒家で暮らしている。娘のリリーとファルコンを助けてくれた神谷蒼と知り合い、お礼として家に招いたのをきっかけに親しくなり、時おり彼を食事に招いている。蒼には当初から好意的に接し、異国で孤立しがちな彼を何かと気にかけ、時には助言をしている。同時に蒼のことは同じGKのライバルとして見ており、努力家な彼を高く評価している。かつてレーゲンスブルクのGKとして活躍していた父親を慕って応援もしていたが、大事な試合で父親が失点して夢を失った瞬間を目の当たりにして以来、父親の代わりにレーゲンスブルクを1部リーグに押し上げるという夢を持つようになった。レーゲンスブルクのスポンサーが業績不振に陥ったのをきっかけにその夢を思い出し、蒼の提案をもとにチームの1部昇格を目指すようになる。ドイツカップ戦はサブメンバー主体のチームが組まれたため出場していないが、リーグ戦ではスタメンで大活躍し、トップチームのゴールはもちろん正GKの立場を守り続けていた。だが、リーグ戦を順調に勝ち進む中で背中に違和感と痛みを覚えるようになり、さらにベルリン戦の途中でゴールポストに背中をぶつけてしまう。

ニーナ・ベッカー

エドガー・ベッカーとローザ・ベッカーの長女。ロングヘアのクールでツンデレな性格の少女で、ドイツに来たばかりの神谷蒼と街中で出会った。プロサッカーチーム「レーゲンスブルク」に所属するカイのガールフレンドであるマリーとは友人関係で、父親のエドガーの活躍を見に行くためにマリーと共にレーゲンスブルクの練習場を訪れることが多い。エドガーが蒼を家に招くようになったことで、時おりいっしょに食事をするなど顔を合わせていたが、エドガーと同じポジションのライバルでもある蒼にはそっけない態度を取っていた。ドイツの進学向け学校(ギムナジウム)に通っているが、成績が伸びないことに悩んでおり、次に落第すれば退学という危機に陥っている。名門校出身の母親とプロサッカー選手として活躍する父親を誇らしく思うと同時に、幼少期からあこがれと尊敬を抱いていたが、スポーツの才能がなかったために勉強に力を入れていた。落第の危機に陥ってからは現実の厳しさと両親との才能の違いに落ち込みがちだったが、異国の選手に囲まれながら一生懸命努力する蒼の姿を見て、少しずつ元気を取り戻していく。のちに蒼が悩んでいることを知り、遊園地に誘って励ますも、逆に励まされたことで彼への恋心を自覚する。

リリー・ベッカー

エドガー・ベッカーとローザ・ベッカーの次女。まだ幼いが明るく快活な性格で、二つのお団子にリボンを結んでいる。愛犬のファルコンがいなくなった時に偶然、街を散歩中だった神谷蒼と遭遇し、雨の中で川に落ちてしまったファルコンを助けてもらったことで、彼と親しくなった。それ以来、エドガーがお礼として蒼を家に招くようになり、ファルコンの恩人でもある彼になついている。

ローザ・ベッカー

エドガー・ベッカーの妻で、ニーナ・ベッカーとリリー・ベッカーの母親。料理上手のおっとりしたロングヘアの美人で、口元にホクロがある。州で一番優秀な大学を卒業して会計士となったエリート。娘のローザと愛犬のファルコンを助けてくれた神谷蒼に感謝し、エドガーが家に招くようになったことで蒼と交流を持つようになる。

ジャン

ドイツのプロサッカーチーム「レーゲンスブルク」に所属する青年。背番号は19番で、昔から口が悪く、少々短気で意地悪なところもあるが、本来は友人思いな優しい性格をしている。カストロの唯一無二の友人で、幼少期に内気で孤立しがちな彼に話しかけて親しくなった。当初はドイツに慣れない神谷蒼をからかったりしていたが、共にレギュラーを目指しての練習や交流を重ねるうちに信頼するようになる。リーグ第31節ベルリン戦では、サブメンバー主体のチームでカストロとコンビを組んでサイドバックを守っていた。しかしクラウスの策略で、カストロがファウルを取られPKとなった際に、審判に猛抗議をして退場となる。試合終了後、蒼がスヴェンソンと重要な約束を交わしていたことを知り、罪悪感を覚えることとなった。

カストロ

ドイツのプロサッカーチーム「レーゲンスブルク」に所属する青年。背番号は20番で、色黒肌で大柄な体型をしている。おとなしく無口ながら、友人思いな優しい性格をしている。ジャンの唯一無二の友人で、幼少期に口が悪く孤立しがちな彼に初めて話しかけられて親しくなった。また、ジャンに誘われたのをきっかけにサッカーを始めたため、試合中はジャンのピンチの時に本領発揮することが多い。リーグ第31節ベルリン戦では、サブメンバー主体のチームでジャンとコンビを組んでサイドバックを守っていた。試合中にファウルを受けたジャンを助けようとするが、クラウスの策略にはまり、イエローカードをもらう。ジャンが退場となったあとのPKで神谷蒼のカバーに回っていたが、足を滑らせてオウンゴールとなってしまう。試合終了後、蒼がスヴェンソンと重要な約束を交わしていたことを知り、罪悪感を覚えていた。

スヴェンソン

ドイツのプロサッカーチーム「レーゲンスブルク」の監督を務める初老の男性。神谷蒼が来る直前に解任されたゼムノヴィッチに代わり、新監督となった。蒼のことは、チームの4番目のGKとして何かと冷遇し、彼をユースチームに落として実質の戦力外通告をするなど、蒼の実力に見合わない決定を下す。のちに、明らかに蒼の実力を無視して毛嫌いしていると気づいたパトリックから、蒼を一人の選手として見ていないことを指摘されるも否定し、チャンスを与えて欲しいというパトリックの頼みも断る。その後、友人のヨーセフとパトリックが連れて来た息子のヴィクトルと再会し、説得を受ける。監督として駆け出しだった頃は、病気になった妻と共に、プロサッカー選手となったヴィクトルの活躍を見守っていた。だが、アジアに渡ったヴィクトルが、アジア人の監督や選手から酷い仕打ちを受け続けていたことを知り、アジア人の民度に疑いを持つようになる。さらに、自分がヴィクトルに会うためにアジアに渡った際に、たまたま乗車したタクシーの運転手からヴィクトルを馬鹿にされた苦い体験から、アジア人を毛嫌いするようになった。妻の死後もアジアに留まることを決意したヴィクトルとは決別し、長らく連絡を取っていなかったため、今何をしているかも把握していなかった。しかし、再会したヴィクトル本人の言葉で誤解が解け、パトリックやエドガー・ベッカーたちの説得もあって、蒼への態度も改めるようになった。その後は蒼を厳しく指導しながらも実力を認め、エドガーに次ぐNo.2に昇格させ、カップ戦のために編成したサブチームのGKを任せるようになる。

パトリック

ドイツのプロサッカーチーム「レーゲンスブルク」のユースチームのGKコーチを務める初老の男性。色黒で小太りな体型で、顎ヒゲを生やしている。アフリカ出身。かなりの酒好きで特にビールを好み、練習後にもよく選手を連れて酒を飲んでいる。スヴェンソンがユースチームに落とした神谷蒼のプレーを酷評していたが、熱意と秘められた才能に気づき、同時に蒼のプレーに足りないものを教える。これをきっかけに、ユースで蒼の指導にあたるようになり、彼の才能を引き出した。非常に厳しい指導で、あまり態度には出さないものの、蒼のサッカーへの熱意と成長の早さを高く評価している。初の公式戦出場を控えた蒼がスヴェンソンと無茶な約束を交わしていたことを知っていたが、その約束を果たせなかった蒼が再び冷遇されたのをきっかけに、スヴェンソンが蒼の熱意や実力を評価せず、単に毛嫌いしているだけであることに気づく。そのため、スヴェンソンの友人でもあるコーチのヨーセフにこれまでの経緯を聞き、スヴェンソンの息子、ヴィクトルを彼の前に連れ出して説得を試みた。のちに改心したスヴェンソンが蒼への態度を改めてからも、蒼の活躍を見守っている。若い頃は祖国を離れてドイツにやって来たプロサッカー選手として活躍していたが、異国でプレーすることの厳しさを知っていたこともあり、スヴェンソンに冷遇される蒼を見てかつての自分を重ねている。言葉が通じずドイツにも慣れない頃に親しくなったマリアと恋に落ちて結婚し、プロを引退したあとも幸せな日々を送っていた。マリアが病死したあとはしばらく酒に溺れて荒(すさ)んだ日々を送っていたが、彼女の死後1年経った頃に蒼と出会い、マリアの生前の言葉を思い出して彼をサポートすることを決意したという経緯がある。

マリア

パトリックの妻。いつもにこやかで穏やかな性格だった。1年前にガンで亡くなっている。ドイツのプロサッカーチームの選手寮長の娘で、若い頃は寮で選手のユニフォームの洗濯などを担当していた。その中でアフリカからドイツに来たばかりのパトリックと出会い、異国に適応できず悩んでいる彼に優しく話しかけて励まし、ドイツ語を教えたりもしていた。時には酒場に誘い、パトリックがビール好きになるきっかけを作った。パトリックがドイツになじんでチームの守護神として活躍するようになった頃に、彼からプロポーズを受けて結婚。プロサッカー選手として活躍し続けるパトリックを笑顔で支え続け、穏やかで幸せな日々を送っていた。入院し亡くなる少し前に、かつてのパトリックと同様に努力が報われず苦しんでいるプレイヤーがいたら助けてあげて欲しいと、彼に言い残していた。

ヴィクトル

元プロサッカー選手の男性。スヴェンソンの息子で、ポジションはフォワード。若い頃はプロサッカー選手として活躍し、病気になった母親と、駆け出し監督でまだ収入が少なかったスヴェンソンを支えるためにアジアに渡った。才能にあふれるが頑固な一面があり、FWとしては生真面目で優し過ぎることをスヴェンソンから心配されていた。23歳の頃、オランダで得点王として活躍していたが、アジアのサッカークラブにスカウトされたことで、スヴェンソンの反対を押し切ってアジアに渡った。しかしアジアに渡ってからはほとんど試合に出ることができず、ベンチを温めているばかりでなかなか活躍できずにいた。母親の死後、スヴェンソンと再会した際に欧州に戻るよう説得されるが、アジアのチームにまだ恩を返していないという理由でアジアに残り続け、のちにチームメイトとの事故で足を負傷して入院する。それでもアジアで知り合った同年代の友人との約束を果たすためにアジアに残ることを選択し、スヴェンソンと大きく意見が食い違ったことで、彼との連絡が途絶えていた。その後はプロを引退して、アジア人の友人と共にタジキスタンで教育支援事業に携わっている。パトリックから連絡を受けてドイツに渡り、再会したスヴェンソンに今までのことを話すと同時に、神谷蒼にかつての自分と同じ思いをさせないで欲しいと直訴した。

エメリヒ

ドイツのプロサッカーチーム「レーゲンスブルク」に所属する青年。背番号は28番。巻き毛の短髪で、顔にそばかすがある。元ユースチームの新人で、カップ戦の途中から練習場を移って神谷蒼たちのサブチームに入った。当初はプロとの実力差に悩んで自信が持てず、緊張から練習中に些細(ささい)なミスを繰り返していたが、先輩の蒼の励ましや練習にも真剣に臨むジャンの姿を見てやる気を取り戻していく。またアドバイスをもらったり、励ましてくれた蒼を慕うようになる。カップ戦2回戦のタウヌスシュタイン戦では、潰し屋として知られる相手チームのマニンガーにマークされて実力を発揮できずにいたが、蒼たちにサポートされるうちに戦況把握能力を開花させて先制点を決める。その後も順調に成長を遂げ、リーグ戦の途中からはサブチームを抜けてスタメン候補にまで昇格する。

クラウス

ドイツのプロサッカーチーム「ベルリン」に所属する男性。短髪のオールバックで、長い下まつげが特徴。語尾に「☆」を付けたり間延びした口調で話す変わり者。熟考する際は、試合中でも変なポーズを取ってしまう癖がある。チームメイトとの連携の相性も抜群で、トリッキーなプレーでゴールを決めるエースストライカー。リーグ戦の得点王でもあり、将来はドイツ代表に選ばれるであろう逸材として注目を集めている。過去の試合でエドガー・ベッカーに何度もシュートを止められており、彼へのリベンジを狙っている。

集団・組織

レーゲンスブルク

ドイツ2部リーグのプロサッカーチーム。監督はかつて山梨のプロサッカーチームに所属していたゼムノヴィッチ。若いGKを探していたところで、日本代表チームの試合に出場していた神谷蒼をスカウトした。しかし、蒼がドイツに到着する直前にゼムノヴィッチが解任されため、スヴェンソンが新監督となった。カップ戦を控えた頃にメインスポンサーが業績不振に陥ったことで、チームが空中分解の危機に陥るが、蒼の提案により新スポンサー獲得のために1部昇格を目指すようになった。カップ戦は蒼の活躍と新人のエメリヒが才能を開花させたことで、当初は順当に勝ち進んでいたが、3回戦で敗退。リーグ戦で改めて1部昇格を目指すようになる。

書誌情報

蒼のアインツ 6巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉

第4巻

(2020-07-08発行、 978-4065201916)

第5巻

(2020-11-11発行、 978-4065213728)

第6巻

(2021-05-12発行、 978-4065233399)

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