「神が仕組んだ双六ゲーム」への参加
売れっ子だがバッドエンドしか書けない小説家の佐藤は、インタビューの帰り道、導かれるようにとある廃ビルの一室にたどり着く。そこで佐藤は、薄汚れた寡黙な少女、エリと不死者の太宰治(仮名)に出会う。エリとお揃いの指輪をつけられた佐藤は、彼女を守るパートナーになったという。太宰によると、このままでは数年後に世界は滅ぶらしい。それを防ぐ方法は、佐藤とエリが羽白島の北端の岬に行き、そこでクッキーを食べること。二人がクッキーを食べたことによって起きる小さな出来事が連鎖を繰り返し、結果的に世界を救うという。こうして佐藤は、太宰がいう「神が仕組んだ双六ゲーム」に参加することになり、数々の苦難を乗り越えてエリと羽白島を目指す。
「双六ゲーム」のルール
世界を救うためにゴールを目指す「双六ゲーム」のプレイヤーは2名である。太宰とは別の進行役に導かれてゲームに参加している人間が、もう一人いるのだ。プレイヤーはエリを奪い合い彼女と一緒にゴールを目指し、先にゴールできなかった方は命を失う。また、佐藤のゴールは羽白島の北端の岬でエリとクッキーを食べることだが、対戦相手のゴールは別にあり、太宰にもわからないという。なお、プレイヤーがゲーム途中で命を落とすと、進行役が次のプレイヤーを選ぶことになる。プレイヤーは30分以内に死ぬ運命にある人間の中から進行役によって選ばれる。指輪をはめてゲームに参加することで生き延びるのだが、指輪を外せば運命がもとに戻りプレイヤーは死んでしまう。
ネガティブな小説家 VS.好戦的な警察官
「双六ゲーム」のもう一人のプレイヤーは、29歳の警察官、鞠山雪彦。冷酷無比で頭が切れ、戦うことに生きがいを感じる強敵である。雪彦はエリを奪うため、刺客を差し向け佐藤を殺そうとする。そんな刺客に対する佐藤の武器は「洞察と予測」である。相手の言動と外見を観察し、どんな人間かを見極め、相手が一番起きてほしくないと思っている最高のバッドエンドを考え出すのだ。例えば、成功者に嫉妬している相手には、自尊心を傷つけるシチュエーションを作り出し、言動を用いて巧みに自滅へと導く。バッドエンド専門の小説家ならではの戦い方だが、雪彦はすぐに佐藤の能力を見抜き、刺客に着ぐるみを着せるようになる。また、警察の上層部を動かし、佐藤を全国指名手配犯に仕立て上げて後を追う。
登場人物・キャラクター
佐藤 忍 (さとう しのぶ)
ベストセラーを次々と生み出す小説家の男性で、31歳。黒毛のロングヘアーが特徴。ネガティブな性格で、バッドエンドしか書けない。いつか読者に飽きられることを恐れ、ハッピーエンドの作品を書こうとするが、まったく筆が進まない。そんなある日、不死者の太宰に選ばれ、エリのパートナーとなって世界を救うための「双六ゲーム」に参加させられる。
牧野 エリ (まきの えり)
天使の羽根がついたリュックサックを背負う8歳の少女。銀髪が特徴。世界を救うための「双六ゲーム」の鍵を握る人物で、佐藤のパートナーになる。これまで数々のパートナーから虐待を受けていたため心を閉ざしていたが、佐藤の優しさに触れ、彼を守り一緒にゴールを目指すことを誓う。
太宰 治 (だざい おさむ)
世界を救うための「双六ゲーム」の進行役の男性。「趣味と特技はセックス遊び」という金髪のチャラい青年。佐藤をエリのパートナーに選び、「双六ゲーム」に参加させた。どんなに傷つこうがバラバラになろうが蘇る不死者だが、ゲーム終了後は消滅するらしい。1年前、日比谷公園に全裸で倒れていたが、目を覚ます以前の記憶を一切持たない。しかし、人類の歴史と「双六ゲーム」のルールはインストールされていて、エリを見つけ出してゲームを開始した。「太宰治」という名は、佐藤に「人間失格」と罵られたことに由来する仮名。
書誌情報
VANILLA FICTION 全8巻 小学館〈ゲッサン少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2012-12-12発行、978-4091238832)
第2巻
(2013-06-12発行、978-4091242563)
第3巻
(2013-11-12発行、978-4091244390)
第4巻
(2014-04-11発行、978-4091246868)
第5巻
(2014-09-12発行、978-4091252548)
第6巻
(2015-03-12発行、978-4091257598)
第7巻
(2015-08-12発行、978-4091262578)
第8巻
(2016-03-11発行、978-4091270474)







