概要・あらすじ
歪な形の月が空に浮かぶ碧王星では、先に移民した第一移民と、後からやってきた第二移民との戦争が繰り広げられていた。圧倒的な科学力を持ち、非人道的な作戦すら厭わない第二移民の前に第一移民は領地を減らし、遂に抵抗するのはハストのみ。ハストには女性だけで編成された特別転送隊という部隊があった。彼女らは自らの子宮に碧王星の現地生物・ニーバスの体組織を入れることで、彼らの妊娠した雌が持つ空間転移の能力を手に入れた者で構成された部隊である。
18歳の少女、マナ・オーガはある日軍隊から招集を受け特別転送隊アメリア小隊へ配属された。マナは他の同期と共に訓練を積んでいくが、ある時新たな転送ポイントを創り出す開拓者としての素質が認められ、特別な訓練を受けた後正式な任務に着く。
一方、研究所では転送器官を応用・発展させるための研究が進められる。そんな時、ハストは第二移民から突き付けられた終戦宣言を跳ね除けるために、第二移民が定めた新首都への総攻撃をかけた。転送隊の活躍もあり、終戦宣言を撤回させたハスト。
しかし、故郷を破壊され家族の安否も分からないままに酷使されるマナの身には重大な変化が起こりつつあった。
登場人物・キャラクター
マナ・オーガ (まなおーが)
18歳の時に徴兵され、特別転送隊アルメア小隊に配属された新兵。故郷に家族と恋人を残している。強い意志と素直な感性を持った女性で、好奇心も旺盛だが少し抜けている所がある。愛国心や仲間意識も強く、奪われた領地を取り返すために厳しい訓練にも取り組んでいく。転送器官との相性が良く、同期の中では一番最初に座標空間へのアクセスをすることが出来た。 やがては新しい転送ポイントを開拓する開拓者としての素質を見出され、ハストが新首都に総攻撃をかける際には大きな戦力となる。しかし、総攻撃の影で故郷が破壊されてしまい、家族の行方も分からなくなってしまう。それでも開拓を続けるが上手くいかないことが多くなっていく。
アルメア
特別転送隊の特技一等軍曹。マナ・オーガらの上官で、部下に対しては厳しい態度で当たるものの、心根は優しい女性。元は陸軍に所属し戦闘技術にも長けており、サウラ中佐からの信頼も厚い。転送隊でも古参であり、転送器官は五サイクル目に突入している。過去に部下のエレナ・モーガンが脱走した際に彼女を処刑したことが、現在でも暗い影を落としている。
ミミ
特別転送隊に所属する女性。座標空間で転送ポイントを探したり仲間のサポートをする探索者であり、また座標空間を管理するチーフも務めている。アルメラとは戦友であり、お互いを信頼する仲。転送器官は現在四サイクル目の終盤だが逼迫する情勢の中、早く五サイクル目へと入ることを切望している。
サウラ
ハスト軍に所属する将校で階級は中佐。カリスマ性を持ち部下にも丁寧な口調で話す、落ち着いた雰囲気を纏った女性。過去に使い捨ての人間爆弾としてしか見られていなかった転送兵の中で、座標空間の存在を証明し、転送兵の地位を向上させた立役者。その後も転送兵を見下す軍の上層部に反発している。
ラロ
マナ・オーガの幼馴染で、彼女の恋人。マナが徴兵された際には、彼女が転送兵になることを嫌い、共に脱走しようと持ちかけた。その後自らも徴兵を受けて軍隊に所属することとなる。
ニコルズ
ハスト軍に所属する軍医で、主に転送兵の体調管理や満期を迎えた転送器官の摘出などを担当している。元は産婦人科医だったが、その才能を見込まれて軍に引き抜かれた。真面目な性格で職務には忠実だが、秘密裏に転送兵の人権を無視した研究を続ける上層部との間でしばしば葛藤している。
スー・I・L・16 (すー・あい・える・じゅうろく)
第二移民・碧王連合新政府の代表代行としてハストとの交渉に当たっている女性型アンドロイド。あらゆる交渉資格を持っており、相手の揚げ足を取るような発言が多い。
エレナ・モーガン (えれなもーがん)
過去特別転送隊に所属していた女性で、故人。優れた転送能力を持ち、新たな転送ポイントを発見する開拓者として活躍していた。ある時転送装置の創り出したナビに愛着を抱いて摘出に反対し逃亡、アルメラ軍曹により処刑されたとされていた。
シェッド
マナ・オーガと同時期に特別転送隊へと配属された新兵。短気な性格で、周囲と衝突することも多い。元は空軍を希望し優秀な成績を収めていたが、転送隊への配属となったため自らの性別を呪ったこともある。転送器官移植時の拒絶反応は同期に比べて長く続いていたが、回復後は五週間分の遅れを取り戻す勢いで成長した。
キャス
マナ・オーガと同時期に特別転送隊へと配属された新兵。仲間思いだが、口が悪い。既婚者であり、旦那のマイクも軍に配属されているが、会えてはいない。後に、座標空間を上空から見まわす能力を得て、他の転送兵をサポートしたり転送ポイントを探す探索者として活躍している。
赤毛 (あかげ)
元転送兵で、反逆者として粛正されたエレナ・モーガンのナビで、彼女の死後も座標空間に留まり、転送兵を惑わすとされる存在。実は元アルメラ軍曹のナビであり、その姿は彼女の生まれてすぐに死んでしまった息子の姿を取っている。
開拓者 (かいたくしゃ)
『WOMBS』に登場する能力者。転送隊の中でも特に珍しい、転送ポイントを作りだすことが出来る能力を持つ者のこと。作中では過去に反逆者として処刑されたエレナ・モーガンと、新しく目覚めたマナ・オーガの二人が確認されている。
四ツ足 (よつあし)
『WOMBS』に登場するロボット。第二移民が、コールドスリープした自分たちの代わりに戦場に投入している兵器で、無人で動く。虫のような形をしており、四足歩行。
集団・組織
特別転送隊 (とくべつてんそうたい)
『WOMBS』に登場する部隊。子宮に碧王星の現地生物・ニーバスの体組織を移植し、座標空間を通した転送能力を持つ女性で構成されたハスト軍の部隊。以前は、座標空間の実態が掴めずに気が狂う者で溢れ、使い捨ての人間爆弾と呼ばれていた。現中佐のサウラの活躍により地位が向上しているものの、未だに軍の上層部からは道具のように見られており、隊員はドクターによるカウンセリングと頭に埋めたナノマシンによって管理されている。 科学力で碧王連合新政府に負けるハストが唯一勝っている所である。隊員はwhthin onlyとされた特別な食堂を利用することが出来るなど、優遇される面もある。また、転送が主な任務であるが、一般歩兵としての訓練も受ける。
汎人類協会 (はんじんるいきょうかい)
『WOMBS』に登場する集団。碧王星にて行われている第一移民と第二移民の戦争に立ち会う。彼らが設立した碧王星の近くにある中立ステーションでは、ハストの代表・ウィリアム・アルバと第二移民の代表代行・スー・I・L・16が協議を重ねている。
場所
碧王星 (へきおうせい)
歪な形をした月が空に浮かぶ星で、先に移住していたハストなどの第一移民と、後からやってきた碧王連合新政府・通称第二移民との戦争が行われている。第一移民が来るまでは地表の殆どが原生林で覆われていた。
その他キーワード
ニーバス
『WOMBS』に登場する碧王星の現地生物。妊娠した雌には、座標空間を通した転送能力がある。またいくつかの部族が存在し、それぞれ姿も異っている。第一移民の中では、その姿は見てはいけないものとされている。
ナビ
『WOMBS』に登場する用語。転送兵の子宮に移植された転送器官が、自らを宿主に守って貰うために見せるイメージ。家族や恋人など、その人にとって大切な人の姿を借りて現れる。転送兵からは転送ポイントを探すためなどに利用されている。
犬の日 (いぬのひ)
『WOMBS』に登場する用語。新米の特別転送兵が初めて転送を行う日を指す。第一移民が最初に碧王星に住み着いた時のパートナーであり、異郷の地で野生化した後も規律を守りながら縄張りを広げた犬にあやかってこう呼ばれる。