有名な現役ピアニスト、須江愛子の娘である須江麻子と、かつて愛子とはライバル関係にありながら音楽への道を諦めざるを得なかった母を持つ緒方季晋。同じピアノ教室に通い、特別に仲の良い幼なじみであった二人だが、季晋は留学先ドイツで起きた列車事故により母を失い、それを機に消息を絶ってしまう。やがて成長した二人はピアニストを目指す者同士として再会を果たすが、母達の確執が明らかになり、幼い頃のような関係は結べなかった。季晋への変わらぬ思いを胸に歩み寄ろうとする麻子と、亡き母の果たせなかった思いを背負った季晋が、音楽の世界で悩みながらも成長し理解しあっていく姿を描いた物語。本格的な音楽描写が秀逸な作品。