貧しくすさんだ家庭に育ち、結婚後も裕福ではあるが夫から暴力を受け続ける女性が、自分を慕う高校時代の同級生であるレズビアンに夫殺害を依頼。その後あてなき逃亡を続けるなか、何が同情で愛情か、または憐憫か。様々な彼女達の感情の吐露や爆発を描いた、当時弱冠22歳であった中村珍の作品。父と夫から暴力を受け続けたが故に愛情を感じる事なく生きて、女性を唯一見返りなく愛してくれる存在がレズビアンであり、そのレズビアン自身もまた恵まれた環境で育ちつつも自分が一番愛する者から利用され、殺人を犯し家族や恋人を巻き込む苦悩が情熱的な筆致で描かれる。