甘さと苦さが交錯する大人の恋愛漫画！いくえみ綾先生特集55 Pt.

フラれて傷心の善十の心を癒やしたのは、何となく立ち寄ったとあるバーと、老齢のマスターだった。店の雰囲気に惹かれた善十のここで働かせてほしいという突然な申し出に、マスターは翌日履歴書を持ってもう一度来るよう告げる。言われた通り善十が再び店を訪れると、そこにマスターはおらず、代わりに1人の女性がいた。彼女の話によると、マスターは彼女の父であり、1週間前に亡くなっていたのだという。思わぬ事態に驚愕し、落ち込む善十。しかしその場を立ち去ろうとした善十を、マスターの娘が引き止めた。彼女は善十に、父の店を継いでほしいと懇願。善十はヒモ生活から一転、バーのマスターとして日々奮闘していくことになる。冴えない男が仕事と恋を通して成長していく姿は必見だ。

特別嫌なことはなく、かといって特別楽しいこともない毎日は、岬に妙な居心地の悪さを感じさせていた。それを払拭したのが、楡との交流である。楡も岬同様、日常の諸々に馴染めていない存在であり、同じ居心地の悪さを感じていた2人が意気投合するのは、ごく自然なことだった。同じ高校へ進学した2人は、楡が父親から譲り受けたフラットハウスに入り浸り、同居同然の生活を送ることになる。毎日を共に過ごし友情を深めていく岬と楡。しかし2人の前に楡の幼なじみである井田日帆（いだかずほ）が現れたことをきっかけに、岬の楡への想いが友情とは異なるものへと変わっていく。友情と愛情の間で揺れ動く少年少女たちの心情が丁寧に描かれた、甘酸っぱい物語を堪能しよう。

美都は「2番目に好きな人」である渡辺涼太と結婚した。結婚したからといって、2番目が1番目に成り代わるとは限らない。少なくとも美都は、涼太と結婚しても「1番好きな人」は変わらなかった。誰にとっても初恋の人は特別な存在だ。美都にとっても、初恋の人であり初めての男である有島は忘れられない特別な存在であり、いつまで経っても変わらない「1番好きな人」だった。そんな「1番好きな人」と再会した美都は、当然のことのように彼と身体を重ねてしまう。ひっそりと逢瀬を重ねる2人。やがて子供が生まれた有島は美都から離れようとするが、美都はそんな有島を引き止め不倫関係を続行させる。許されざる関係はどのような結末を迎えるのか。歪な男女の関係の行方が気になる大人の恋愛漫画だ。

厚志にとって、ニーナは遠くから眺めることしかできない高嶺の花だった。そんな彼女が、幼なじみのアパートで縛られているのを見た時の厚志の驚きは、想像に難くないだろう。ニーナのことが好きだから拉致を決行したのだというマサに呆れながら、厚志はニーナを救出。そして、拉致事件の黒幕が同級生の不良・牛島清貴であることを知る。後日厚志は、事件の真相をニーナに伝えた。だが牛島に唆されたからといって、マサのしたことが許されるわけではない。ニーナは厚志に自分を牛島から守るよう依頼。幼なじみのやったことに罪悪感を抱いていた厚志はそれを引き受けるのだが、それは牛島からの攻撃に晒されることを意味していた。性に関する様々な問題が提起される、甘いだけではない恋愛漫画だ。

糸真が北海道の高校で出会った和央と弦は、女子たちの間で「2人はみんなのもの」という暗黙のルールができるほど人気のある男子2人組だ。転校してきたばかりの糸真はそれを知らずに2人と接触。事情を知った時にはすでに遅く、糸真は和央に急速に惹かれていた。女子たちからの無視など様々な問題にぶつかりながらも、交流を深めていく糸真と和央と弦。ところがある日、糸真の実父と和央の母親が再婚するという事態が発生。それをきっかけに、3人の関係性に大きな変化が生じていく。恋愛だけでなく、同性同士の友情や家族愛にもスポットを当てた青春漫画。多感な時期にある少年少女の心の揺らぎを繊細に表現した本作に、読者は惹き込まれることだろう。