大学生になったもののやりたいことが見つからずにいた主人公が、ひょんなことからラグビー部に入部し、仲間たちと日本一を目指していく青春ラグビー漫画。実家が銭湯を営んでいる釜之(かまの)うしおは、家業を継ぐつもりでいたが、父親の指示で大学に進学することに。幼馴染のオカワリこと尾河里(おかわり)勇哉とともに、自宅から電車で40分の星辰(せいしん)大学に進学する。入学初日から、やりたいことがわからず、頭を抱えるうしおだったが、オカワリと一緒にラグビー部を見学。女の子とのバラ色キャンパスライフを目標に、入部を決意する。
大学ラグビーをテーマにした作品である。大学ラグビーは盛んで、毎年全国大会も行われている。全国大学ラグビーフットボール選手権大会はテレビでの中継もされており、目にしたことのある人も多いだろう。大学ではオカワリのように小さなころからラグビーをしているという経験者の入部はもちろん、うしおのように未経験者が入部することもままある。しかし、ラグビーは肉体がぶつかり合う、激しいスポーツ。日本では漢字で「闘球」と表記され、文字からも激しさが伝わってくる。肉体を鍛えていなければ、まず試合に出場することは難しい。一見細身なうしおだが、実はかなり筋肉質。実家の手伝いである薪割りで知らず知らずのうちに身体が鍛えられており、経験者も目を見張るような潜在能力を見せる。即戦力かと期待が高まるが、入部のきっかけが女の子から注目されたいという気持ちなだけに、続けていけるのかという点が不安要素でもある。うしおがラグビーにどのようにしてのめり込んでいくのか、心の変化に注目だ。
大手商社のラグビー部で主将を務め、商社マンとしても順風満帆だった主人公が、父親が倒れたことをきっかけに、家業を継ぎ新たなラグビー部を結成して日本一を目指していく、スポーツヒューマンドラマ。原作は田宮幸一が担当。大石鉄男は30歳。大手の商社である住井商事に勤務し、同社のラグビー部では主将を務め、右プロップとして活躍していた。ニューヨーク支店への栄転が決定し、順風満帆の日々を送っていたある日、鉄工所を経営していた父親が倒れ、昏睡状態になってしまったという知らせを受ける。
大石は大手商社の社員で、海外への栄転も決まっている有能な人材だ。彼は、会社が設立したラグビー部の主将を務め、現役選手としても活躍していた。大石がついているポジション、プロップはスクラムを組んだ時に最前列の位置に立ち、中央のフッカーの左右両サイドをがっちりと固める。体格に恵まれている選手がつくことが多く、スクラムを組むための練習で首が太くなるのが特徴で、大石の首もかなり太い。プロップは「支柱」という意味があり、大石はチームを精神的にも、プレーからも支えていたと言えるだろう。タイトルの『BOSS』は大石の愛称からとられており、そこからも慕われていたことがうかがえる。順風満帆だった商社マン生活から一転、傾きかけた家業を継ぐことになった大石は、そこで新たにラグビー部を設立することになるのだが、従業員の中には反発する者もおり、前途は多難だ。チームの支柱だった男が会社の、そして新たなチームの支柱になれるのか、挑戦が始まる。
幼い弟と2人で生きていくために、生まれ持った俊足を活かして盗みを繰り返していた主人公が偶然ラグビー日本代表選手と出会い、やがてラグビー選手として成長していく姿を描くサクセスストーリー。沢村雄吾は父が多額の借金を作り蒸発をしたことで、幼い弟裕太と2人で暮らしている。生活を支えるため、雄吾は俊足を活かして日々盗みを働いていた。ラグビー日本代表で主将を務める墨崎は、夜の街で逃走する雄吾と偶然遭遇。俊足と素早い身のこなしに驚かされる。後日雄吾を街で捕まえた墨崎は、試合の観戦チケットを贈るのだった。
雄吾はとにかく足が速く、身のこなしも俊敏。日本代表で主将を務める墨崎が目を見張るほどの身体能力の持ち主だ。ラグビーは1チーム15人、計30人で行われる。その激しい肉体のぶつかり合い、スクラムを組んだ時の迫力からか、がっしりとした体格の選手ばかりのように思われがちだ。しかし、俊足を活かしたスクラムハーフやウイングといったポジションもあり、雄吾のような特性のある選手が大きな役割を持っているということがわかるだろう。雄吾には、中学生のころに陸上部に所属していたが、真面目に練習をしていなかったことで、リレーで失敗してしまったという過去がある。しかも物語序盤では、盗みで生計を立てているという状態。チームワークが求められる競技であるラグビーに、果たして向いているのかと思われるところだ。物語が進むにつれ、すさんでいた雄吾の表情がどんどん変化していくのが印象的だ。一人の青年がラグビーと出会い、打ち込んでいく姿に胸が熱くなる。
神奈川県の高校を舞台に、低身長にコンプレックスのある主人公がラグビーと出会い、同級生や部の仲間たちとともに、成長していく姿を描いた青春ラグビー漫画。祇園健次(ぎおんけんじ)は小柄な体格にコンプレックスを抱いている、高校1年生。入学してすぐ、先輩に絡まれている同級生石清水澄明(いわしみずすみあき)と出会う。澄明に同行する形でラグビー部を見学した健次は、「ボールを持ってる奴が主役なんだ」という言葉に惹かれ、入部を決意するのだった。2016年10月から2017年3月にかけてテレビアニメが放送されている。
様々な体格や身体的な特性を備えた選手たちがそれぞれのポジションで活躍できるのが、ラグビーの大きな特徴だ。細身で小柄だから不利であるということはない。主人公の健次は負けん気が強いが、小柄なことで不利となる場面を多く経験してきた。誰もが主役になれる、という言葉に惹かれるのは当然だろう。試合をしている部員たちの表情も生き生きと輝き、本当に楽しそうだというのが伝わってくる。健次だけでなく、他の部員たちにもスポットが当てられるのも、部活動漫画ならではだろう。体格的には恵まれながらも温厚な性格からか、経験者でありながらラグビーから離れようとしている澄明、仲間思いで責任感が強く、人一倍ラグビーに情熱を傾けているキャプテンの赤山濯也(せきざんたくや)、暑苦しいことを嫌う天才型のプレイヤー大原野越吾(おおはらのえつご)など、キャラクターは個性的でぶつかり合うことも多い。身体も心も全力でぶつかり合うからこそ、相手を認め合えるという部分もあるのだろう。熱い青春物語に心が震える。
リオオリンピックに出場した、女子7人制ラグビー日本代表チーム「サクラセブンズ」の、苦難の道のりと成長を描いた実録スポーツ漫画。原作は工藤晋が担当。2013年、桑井亜乃は女子の代表チームが合宿を行っている、熊谷ラグビー場を訪れていた。ラグビーを始めて1年ほどで代表に招集された桑井の実力を、チームメイトたちが試そうとする。皆の真剣な表情に、闘志を燃やす桑井。誰にも譲れない夢のため、皆と同様に人生を懸けてラグビーに打ち込んでいる桑井は、全力でテストに臨むのだった。
女子7人制ラグビー日本代表チーム、通称「サクラセブンズ」は2016年リオオリンピックから正式種目となった7人制ラグビーの出場権を獲得した。7人制ラグビーとは、文字通り7人で行うラグビーである。試合時間は原則的に前後半各7分と短いが、試合に使用するフィールドやルールは変わらないため、持久力やランニングスキルが求められる競技だ。本作には実際に日本代表選手として活躍した、桑井亜乃や主将の中村知春(ちはる)をはじめとした選手たちが登場する。物語の序盤は桑井が主人公だが、回を追うごとにメンバーそれぞれの抱える事情が描かれ、ラグビーに対する情熱が読者にも伝わってくる。女子でもラグビー特有の激しさや迫力は健在で、スピード感のある描写や躍動するプレーに目を奪われる。日本代表とはいえ、彼女たち全員が恵まれた環境下で練習をしているわけではない。それでも、どんな状況でも前を向いて走っていく彼女たちの姿は、応援したくなる力強さにあふれている。