にぎやかに暮らす大家族漫画73 Pt.

兄弟が多い、居候が多い、複数世帯の同居など形は様々だが、にぎやかに暮らす大家族の毎日は喧噪に満ちている。今回は、タイプの異なる大家族漫画を紹介しよう。

天道家は両親と3姉妹の5人家族。そこに早乙女乱馬と父・玄馬が居候することになり、後に乱馬の母・のどかも加わる。天道家と早乙女家、8人が1つ屋根の下で暮らす生活が始まる。天道家と早乙女家はともに格闘一家であるため、乱馬の周囲には争いが絶えず、いつも騒々しい。また、乱馬と玄馬は、中国での修行中に受けた呪いで、水を被ると変身し、湯を被ると人間に戻るという特異体質。乱馬は水を被ると女になり、玄馬は水を被るとパンダになってしまう。この特異体質が争いの原因になることも多く、騒々しいことにかけては随一の大家族だ。

本作が描かれた1970代の経済成長期は、子だくさんな家族は少なくなかった。とは言え、一週家の7人兄弟というのはかなり多い。一週家は、さらに犬2匹に猫4匹、アヒル、ブタなど多数のペットもいる大所帯だ。一週家の7人兄弟は両親を飛行機事故で失った後、自分たちだけで生きていくことを決意した。しかも彼らは、全員が小学生以下だ。長男は牛乳配達、次男と3男は新聞配達で生活費を稼ぎ、長女は母親代わりとして家事全般を担当。苦境にもめげずに懸命に日々を生きる彼らは、とても健気な大家族と言える。

櫻田家は、王族ながら街中でにぎやかに暮らす大家族。櫻田家の父親は国を統べる王様で、3男6女の子どもたちは全員が特殊能力の持ち主である。長女・葵が18歳になったのを機に、子どもたちの中から次期国王を選ぶ、国民投票が開催されることになった。櫻田家の日々の暮らしの一部始終はは、国民投票の判断材料としてテレビ放送される。支持率上昇のためアイドル活動をする者、王位に就くことを望まず自らの評判を下げようとする者、人見知りで必死にカメラを避ける者など、子どもたちの行動はそれぞれ異なる。果たして投票の行方は如何に？　国をあげての選挙の中で雌雄を決していく櫻田家の兄弟たち。櫻田家は国民からの熱い視線にさらされ続ける大家族である。

兄弟姉妹の多い大家族の長女は、第2の母親のようなポジションに立つことが多い。主人公・内野愛子は、まさにそのタイプだ。母が若くして亡くなったこともあり、愛子の主婦としての手際は22歳にしてプロ級。炊事洗濯はもちろんのこと、5歳の末妹・リンを筆頭に、幼い妹や弟の世話をかいがいしくこなす。愛子の悩みの種は、家計のやりくり。父が懸命に働いているとは言え、子だくさんの内野家の生活はかなり厳しい。食べ盛りの子どもが多いため、食卓では常におかずの争奪戦が繰り広げられる。にぎやかに暮らす大家族・内野家の絆は固く、家庭は笑いに満ちている。とてもアットホームな大家族だ。

吉田家は、物語の冒頭では夫・吉田二郎と妻・美佐、そして3人の子どもたちの5人家族だ。ところが、アパートの大家とのケンカが原因で妻・美佐の実家で両親と同居をはじめ、7人家族になる。そこへ、美佐の兄夫婦が転がり込んできて9人家族に増える。さらに、夫・二郎の兄の“ワケアリの娘”が押しかけてきて10人になる。全員が血縁関係だが、これほどなし崩しにひとつ屋根の下で暮らす家族が増えるというのも珍しい。吉田家は、それまでバラバラに暮らしていた家族の寄せ集めだけに、様々なことで衝突しこじれることも多い。だが、ぶつかり合いを通じてお互いの理解を深め、本当の意味での家族となっていく。吉田家に取り立てて特別な人間はいないが、とてもドラマティックな大家族だ。