こんな時代だからこそ読みたい社畜漫画特集57 Pt.

ブラック企業という言葉が定着して久しいが、まだまだ厳しい就労条件で働く人たちは多い。そんな社会人の共感と「あるある」を呼ぶ社畜漫画を集めてみた。厳しい労働もこれを読めば耐えられる？

Twitter掲載のIT企業を舞台にしたコメディ。登場人物はいつも終電ギリギリまで働く「社畜ちゃん」をはじめ、社内に謎の影響力を持つ先輩さん、ITに無知で人差し指一本でキーボードを打つ後輩ちゃんなど、ちょっと女の子の比率が多いこと以外は「自分の周りにもこんな人いるよなあ」と思えるような人たちばかりだ。とはいっても、内容はそこまでギスギスしておらずゆるいコメディとなっている。一方で端々のエピソードは作者の実体験をもとにした洒落にならないものも多く、「ここに比べればうちはマシだ」と思うか、「可愛い女の子がいる分この会社のほうがマシだ」と思うかはあなた次第。今後の将来を考え直すきっかけになるかも？

ある日同僚が背山に言う。「この会社、"出る"らしいんですよ」。そんなまさかと思っていた背山のもとに幽霊が現れ……。という筋書きだけだとかつて大流行したホラー映画のようだが、社畜生活が長すぎるあまり思考能力が低下している背山はこれを「疲れのせい」「パソコンが壊れた」などで片付けてしまう。気づいてもらえずムキになった幽霊がいろいろとちょっかいを出すが気づかれず、背山は「これは幽霊というより……オフィスに住み着いた猫ですね」という味わい深い見解を炸裂。やっと背山が幽霊を認識した後は、早く帰りたい背山と幽霊の丁々発止のやりとりが始まる…！ こんな幽霊がいたら、辛い会社勤めももう少し楽しいのかもしれない。

男の部屋に突如現れたウサギとの同居生活と聞けば「仕事に疲れた男のところに可愛いペットか女の子が現れて癒やしてくれる」……という内容を想像したくなるところ。だが、この月のウサギ・ふわみは、ブラック企業で働く主人公の真司郎がどん引きするほどのワーカーホリックで社畜体質。働くことが生きがいと言えば聞こえはいいが、要は仕事以外にアイデンティティーを見出せていないのである。真司郎のために一生懸命働いてくれるのだが、少しでも仕事が切れたり減ったりすると生きる気力を失って自殺しようとする！ 現実のウサギが世話が欠かせない生き物であるように、ふわみには仕事が欠かせないのだが…。「こうはなりたくない」と思いながら笑って読みたい一作。

根強い人気を持つ異世界転移モノだが、本作の表題作である『王がブラック企業の社長になる漫画』では、異世界で勇者に敗れた魔王がブラック企業の新社長に就任するという逆転異世界転移とも言うべき内容。強面の外見だが、魔王時代の経験をもとに悪習を絶ち社内環境を一新していく痛快な内容。自分を倒した勇者にも経緯を払っているし、結構この魔王様、人格者であると思われる。改革の内容もいちいちもっともで、思わず自分の会社にもコンサルタントとして来てほしくなってしまう。いつか出世したときに彼らの視点が役に立つ日が来るかも？

「焼き土下座」と言えばこの人が思い浮かぶであろう『賭博黙示録カイジ』の悪役・利根川幸雄。しかし本作では帝愛グループ会長・兵藤と部下たちとの間に挟まれた中間管理職である。無茶ぶりをしてくる会長、同じようなスーツばかりで見分けのつかない部下たちとの板挟みに苦しみ、会議のたびに「余計なこと言って萎縮させてしまっただろうか」と悩む利根川の姿は、本編で見せた悪魔のような姿とはまるで別物という抱腹絶倒のギャグ作品。時系列は本編より過去なのだが、部下たちとのバーベキューパーティで、将来自分の焼き土下座に使われる鉄板を取り出して使ったりと、本編に絡めたネタも見どころ。