概要・あらすじ
ある日、財閥「帝愛グループ」の総帥である兵藤和尊が、「生身の人間が命がけで競うゲームを見たい」と言い出す。兵藤の命を受けた利根川幸雄は、この難題を実現に導くために黒服たちを招集して、プロジェクトを始動する。手始めにチーム内で自己紹介させると、似たような名前が多く、しかもなぜか全員の趣味がボウリング。
この状況に、部下のことを指導・統率しなければならない立場の利根川は激昂する。こうして、中間管理職・利根川の前途多難な日々がスタートするのだった。
登場人物・キャラクター
利根川 幸雄 (とねがわ ゆきお)
兵藤和尊に仕える、財閥「帝愛グループ」の実質的ナンバー2。スピンオフのもととなった『賭博黙示録カイジ』では単なる悪党であった。本作『中間管理録トネガワ』では、兵藤のわがままと、個性派ぞろいの黒服たちの奇行に振り回される中間管理職、苦労人として描かれる。とはいえ、利根川幸雄は単なる冴えない中年サラリーマンなどではなく、基本的には有能。 部下たちの心を掌握する術にも長けており、組織内での信頼も厚く、兵藤からもそれなりに重きを置かれている存在である。ほとんど休みも取れない忙しい日々を送っている。給与は高額で、時折部下に奢る時は、万札や札束をポンポン渡している。たまにある休日の楽しみはゴルフ。
兵藤 和尊 (ひょうどう かずたか)
財閥「帝愛グループ」の総帥。利根川幸雄の雇用主である老人。大富豪でありながら、なおも多くの富を求め続ける金の亡者。平凡な暮らしに飽きており、癇癪持ちなうえに気まぐれ。利根川にしょっちゅう無理難題を押し付けている。また、押し付けた無理難題を、そのまま忘れてしまうことも多々ある。乾燥肌に悩んでいるらしく、風呂上りには肌パックでスキンケアを欠かさない。 いつも高そうな和服を着ていて、本人は和装がアイデンティティーだと語っている。
山崎 健二 (やまざき けんじ)
黒服の1人で、利根川幸雄の直属の部下である「利根川チーム」の一員。チームの中では唯一、過去に兵藤和尊の直属の黒服をしていた経験がある。チームの中心的人物であり、利根川の右腕としてサブリーダーを務める。利根川の九州出張にただ1人同行。ところが仕事だというのに、「ちょっとした小旅行気分」で浮かれてビールを飲み始め、利根川を呆れさせる。
佐衛門三郎 二朗 (さえもんさぶろう じろう)
黒服の1人で、利根川幸雄の直属の部下である「利根川チーム」の一員。チーム最年少の23歳だが、限定ジャンケンのもととなるアイデアを最初に考えたり、会場を豪華客船エスポワールに設定するなど、プレゼン能力に優れた優秀な人物。珍しい名前なので、周囲からは佐衛門と呼ばれている。
川崎 敏政 (かわさき としまさ)
黒服の1人で、利根川幸雄の直属の部下である「利根川チーム」の一員。ある日、仕事中に高熱を発し、利根川の差配により自宅ではなく病院に運ばれ、結果、インフルエンザにかかっていたことが判明した。本人はその後、静養のため病欠しているが、利根川やほかの黒服にもインフルエンザが移ってしまったため、チームが一時壊滅する事態となった。
荻野 圭一 (おぎの けいいち)
黒服の1人で、利根川幸雄の直属の部下である「利根川チーム」の一員。作中で結婚式を挙げ、所帯持ちとなる。その際、アフリカ南部ザンビア共和国の生まれで、25歳の時にはお笑い芸人をやっていた、などの衝撃的な過去を持つことが明らかになった。
萩尾 純一 (はぎお じゅんいち)
黒服の1人で、利根川幸雄の直属の部下である「利根川チーム」の一員。同僚に荻野圭一がいるため、しょっちゅう「おぎお」と間違えられている。本人もそのことを気にして、間違えられると即座に訂正する。弟の幸一も「帝愛グループ」の入社試験を受けたが、「同じ名前が2人もいると紛らわしい」という理由で、面接官をしていた山崎健二に落とされた。 かなりの猫好き。
権田 (ごんだ)
黒服の1人で、利根川幸雄の直属の部下である「利根川チーム」の一員。チーム最年長の49歳だが、取り立てて取り柄があるわけではない。49歳でまだ黒服ということは、「帝愛グループ」の幹部コースから外れているという認識を持っており、本人も焦っている。利根川がインフルエンザで寝込んだ時、年功序列でリーダー代行を任された。 しかし、自分もインフルエンザになった挙句、無理をしてチーム全員に移し、チームを一時的な壊滅に陥らせた。
堂下 (どうした)
黒服の1人で、利根川幸雄の直属の部下である「利根川チーム」の一員。利根川がインフルエンザにかかって、一時、権田がチームを率いていた際に、限定ジャンケンに使う小道具のデザインについて権田に詳細な指示を求めた。権田はあたふたと答えるばかりだった。その後、自分の能力の低さに悩む権田に対して、堂下は「権田さんのおかげで、悪魔的なホルスターができあがりましたよ」とフォローして、良き同僚ぶりを見せる。
海老谷 (えびたに)
黒服の1人で、利根川幸雄の直属の部下である「利根川チーム」の一員。プロジェクト初期メンバー11人の中で最初に脱落する。やる気と熱意だけは人一倍だが、何から何まで空回りしてしまうというタイプ。独断専行の行為から兵藤和尊の怒りを買って、財閥「帝愛グループ」を首になる。その後、怪しい商売に手を染めたり、警察の厄介になったりと、転落人生を送っている。 利根川は海老谷になにくれとなく世話を焼いてやっている。
本田 正安 (ほんだ まさやす)
兵藤和尊のそっくりさん。似ているのは顔だけで、内面的には兵藤と似ても似つかない善良な人物。「影武者を用意しろ」という兵藤の無茶ぶりに困っていた利根川幸雄と「利根川チーム」の懇願を受け、影武者役を引き受ける。その後、兵藤が影武者の話を忘れてしまったため、実際に影武者役を務めたことはないが、その後もなんとなく「帝愛グループ」に居着いている。 利根川やチームの黒服たちからは不思議と愛されており、「まさやん」と呼ばれている。
黒崎 義裕 (くろさき よしひろ)
財閥「帝愛グループ」における利根川幸雄のライバル。利根川を脅かし得る、ナンバー2候補の1人と言われている。暴君というべき兵藤和尊に対して率直な物言いをすることが多い。利根川なら怒られるようなことを言っても、なぜか黒崎義裕だと、兵藤の怒りを買うことは滅多にない。
遠藤 勇次 (えんどう ゆうじ)
財閥「帝愛グループ」の傘下で金融会社を経営しているヤクザ。利根川幸雄とは個人的な接点はあまりない。エスポワール号船上で限定ジャンケンのリハーサルをしていた時に登場し、利根川にさまざまなアドバイスを送った。影武者としての仕事がなくなった本田正安を、あっさり路上に捨ててくるなど、基本的に非情な人物。
一条 (いちじょう)
財閥「帝愛グループ」の傘下で闇カジノを経営している若き幹部。若くしてその地位についただけはある如才のない人物だが、接待におけるバランス感覚に欠けている。パチンコ「沼」を打ちに来た利根川幸雄は、そのぬるすぎる対応に、まるで子供扱いされているように感じ、胸中の不快の念を押し殺していた。
木根崎 (きねざき)
財閥「帝愛グループ」の関西支社を統括している幹部。利根川幸雄が関西支社に短期出向した時、おいしい居酒屋を紹介してもらえれば、などと暢気なことを考えていた利根川の前で部下に厳しく訓戒していた。このことから、利根川に「まるでヤクザのようだ」と思われていた。ちなみに利根川自身も木根崎の言動を頭越しに否定できず、結局、飲みニケーションの機会を得られぬまま、東京に戻ることになった。
集団・組織
帝愛グループ (ていあいぐるーぷ)
兵藤和尊が率いる財閥。主に消費者金融や闇賭博を手がけている。巨大なグループであるということ以外、全容は明らかにされていない。利根川幸雄も、黒服たちも、本質的にはこのグループに雇用されているサラリーマンである。毎年春に新卒採用をしており、黒服たちもそれを通じて採用される。
黒服 (くろふく)
利根川幸雄の手足となって働く、財閥「帝愛グループ」の社員たちを指す。服務規程により、サングラスから靴まで、黒一色で統一することを義務付けられている。「帝愛グループ」の社員は、利根川などの幹部を除いて基本的にほとんどが黒服。利根川直属のメンバーはだいたい10人ほどで、特に「利根川チーム」と呼ばれている。ちなみに「利根川チーム」のメンバーは、全員ボウリングを趣味としている。
その他キーワード
土下座用の鉄板 (どげざようのてっぱん)
バーベキューで使用された巨大な鉄板。利根川幸雄が直属の黒服である「利根川チーム」の心を掴むために、企画した社員旅行で使われた。「帝愛グループ」社員用保養施設「億兆荘」の倉庫にあったものを、利根川が「大きい鉄板だからバーベキュー用だろう」と判断し、神戸牛を焼くのに使った。その正体は人間を熱した鉄板の上で土下座させるために使う拷問器具で、兵藤和尊が気まぐれで作らせたもの。 この時は知る由もなかったが、のちに利根川は『賭博黙示録カイジ』作中で、この鉄板の上で本当に土下座をする羽目になる。
限定ジャンケン (げんていじゃんけん)
オリジナルの特殊ルールに基づくギャンブル。利根川幸雄と「利根川チーム」の黒服たちが作り上げ、紆余曲折の末、開催に漕ぎ着けた。もととなるアイデアを考え出したのは佐衛門三郎二朗だが、限定ジャンケンという名前は利根川が付けた。
沼 (ぬま)
色々と特別な仕掛けがある難攻不落のパチンコ台。財閥「帝愛グループ」が経営する裏カジノにある。利根川幸雄は、カジノ店長である一条の接待を受け、これに挑むことになった。しかし、あからさまに釘などの設定が緩められており、勝つには勝ったが、拍子抜けな気分を味わう羽目になった。
クレジット
ベース
賭博黙示録カイジ (とばくもくしろくかいじ)
福本伸行の代表作で、のちにシリーズ化される「カイジ」シリーズ1作目。カイジこと伊藤開司は、友人の保証人になったことで多額の借金を抱え、返済のために様々なギャンブルに挑んで行く。講談社「ヤングマガジン」... 関連ページ:賭博黙示録カイジ
書誌情報
中間管理録トネガワ 10巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2015-12-04発行、 978-4063827217)
第2巻
(2016-04-06発行、 978-4063827743)
第3巻
(2016-08-05発行、 978-4063828337)
第4巻
(2016-12-06発行、 978-4063828849)
第5巻
(2017-06-06発行、 978-4063829723)
第6巻
(2017-11-06発行、 978-4065105269)
第7巻
(2018-07-11発行、 978-4065120330)
第8巻
(2019-02-13発行、 978-4065145593)
第9巻
(2019-11-13発行、 978-4065177242)
第10巻
(2020-08-11発行、 978-4065204542)