主人公の少女が悪夢の謎を探るミステリー漫画。16歳を目前に控えたシャロン・ウィンは、幼い頃から誕生月である9月が近付くと、自分が首を絞められる悪夢を見ることに悩んでいた。ある日、謎めいた少年のジーン・ファーラーに出会うが、シャロンは外出先でテレビ塔の映像を見て気を失ってしまう。そのテレビ塔と悪夢の関係性を知るために、シャロンはイリノイ州のフォートバーンへ旅立つのだった。他に「センシティヴ・パイナップル」「EVIL」の2編が収録されている。
表題作『閉じられた9月』の主人公のシャロンは、9月に16歳の誕生日を迎える女子高生。決まって9月には悪夢を見るせいで、彼女は誕生月である9月を嫌いになってしまっていた。夢の中で誰かに首を絞められる自分は、現在とは異なる姿。しかし、シャロンはそれが自分自身であることを認識していた。シャロンを知っているような口ぶりの少年・ジーンの言葉、「リインカーネーションメモリィ」は「再生」を意味し、生まれ変わりを指す。また、医者の話によると、シャロンが気絶する直前に見た映像のテレビ塔は、過去にシャロンと同年代の少女たちが犠牲となった猟奇殺人と関係があるという。果たしてその事件や場所は悪夢や前世と関連性があるのか。謎が謎を呼ぶ展開から目が離せない。
歪な関係を続ける兄妹の禁断愛と周囲の人々の愛憎を描いた大人のラブストーリー。アパートで同居している伊坂広志(いさかひろし)と真鶴(まつる)は、周囲には夫婦に見えているが、実は血の繋がった兄妹。母親が亡くなったことをきっかけに地元の北海道を離れて本州へと渡り、二人のことを誰も知らない場所で新たな生活を始めたのだった。二人の秘密は、兄妹でありながら体を繋げていること。しかし、二人の関係性は不安定で、次第に綻びが生じるようになる。
本作で中心となるのは、二人きりの兄妹の広志と真鶴。二人は禁断の関係に陥っているが、何故このような関係に至ったのか、その背景も含めて描かれている。真面目な兄の広志とは違って、妹の真鶴は短絡的で、問題児のように扱われていた。家庭内で唯一の味方で優しい兄に感じる安らぎは恋へと変わり、母親が亡くなったことがきっかけで二人は初めて体を繋げた。広志はあることがきっかけで女性不信となっていたが、同僚の海老沢碧には特別な感情を抱いており、強引な形で肉体関係を結ぶ。また、真鶴も教師の冴木と援助交際を始めていた。愛し合うというよりも共依存の関係に陥る兄妹はどのような未来へ辿りつくのか。ダークな雰囲気を醸し出しながらも、不思議な引力で人を惹きつける作品だ。
2019年3月に実写映画化された松尾由美の原作小説のコミカライズ作品。自分が死ぬ運命を回避したことでパラドックスが生まれ、新たに浮上した苦難に立ち向かいながら、隣人と惹かれ合っていく純愛ストーリー。一眼レフカメラでフィルム写真を撮ることが好きな北村志織は、小さなマンションに引っ越してきたが、あまり姿を見せない隣人の平野進が気になっていた。ある日、未来からの謎めいた声が届いたことで、志織の運命が大きく動き出す。
本作の舞台となるのは、志織が夏の終わりに引っ越してきた小さなマンション「アビタシオン・ゴドー」。住み始めた部屋の壁の穴が未来と通じており、1年先の隣室から話しかけているという謎の声の主・シラノと交流するようになる。実は志織の未来には強盗殺人事件に巻き込まれる運命が待ち受けていたのだが、シラノの依頼で隣人の平野を尾行していたことによって、その運命を回避した。それ以来、シラノからの連絡は途絶え、代わりに悪夢を見るようになる。志織から事情を聴いた平野はタイムパラドックスが生じたのではと推測。二人は1年後の志織を救う為、全ての鍵を握るシラノが何者なのか突き止めようとするが、行動を共にする内に次第に惹かれ合うようになっていく。
大学受験を控えた男子高校生が夏の終わりに体験した切ないラブストーリー『6秒の9月』の他、3編を収録した短編集。神田公広(かんだきみひろ)は、売れっ子のファッションモデルの藤野咲子(ふじのさきこ)に夢中で、写真集まで買う程大ファンの高校生。可愛いガールフレンドもいて、順風満帆な日々を送っているはずなのに、何故か心は満たされない。そんなある日、憧れの咲子が突然家にやってきて、彼女と自分が実の姉弟であることを知らされ、それまでの日常が一変する。
思春期にお気に入りのアイドルや芸能人に夢中になったことがある人は多いのではないだろうか。表題作の主人公の高校生の公広も、アイドル的存在のモデルの咲子に惹かれていた。しかし、夏休みの終わりに状況が一変する。父と二人暮らしの公広は、自分を一人っ子だと思っていたが、実は姉がおり、その姉は何と憧れ続けていた咲子だった。咲子と共に暮らしていた母親が急死したことで咲子も公広の家で暮らすことになり、姉弟としての生活が始まった。メディアでは色気を醸し出している咲子だったが、家では可愛く関西弁で喋り、美味しい料理も作ってくれる。果たして公広が咲子に抱く複雑な気持ちは恋心か、それとも家族愛なのか。思春期の男子高校生が実の姉に向ける切ない想いに心動かされることだろう。
Jリーグのルーキーが大きなチャンスを掴んでいくサッカー漫画。近原菫(このはらすみれ)は、Jリーグのサッカーチーム「レスティ浜松」に入ったFW(フォワード)の19歳のルーキー。憧れの選手は、菫より9歳年上の28歳の選手・三宅良(みやけりょう)。彼は日本代表でエースストライカーとして活躍しているスター選手で、菫にとって雲の上のような存在だった。しかし、奇跡的に菫が日本代表チームに抜擢されたことで、一方的に憧れていた良と急速に距離が縮まっていく。
FWはシュートを決めて得点を稼ぐことが大きな仕事。ある日、菫が日本代表チームの監督の目にとまり、代表に抜擢されるという転機が訪れる。日本最強のストライカーと謳われる良は、菫がJリーガーを目指すきっかけとなった人物だ。テレビや雑誌でしか見たことが無かった彼を実際に間近で見て、益々憧れの気持ちが強くなっていき、良も自分を無邪気に慕う菫のことを可愛いがるようになる。だが、サッカー選手は常に怪我と隣り合わせ。世界で活躍する良の体は、これまでの試合によってボロボロになりつつあった。菫の期待が上がっていく一方で、良はメインメンバーからも外され、引退の噂が囁かれるようになっていくのだった。