シェンから「ユニオン」のメンバーを殺せば、新たなメンバーとして推薦すると言われた風子とアンディ。指示されて向かったロシアのバイカル湖で2人を待ち受けていたのは、あらゆる物の形の変化を否定する「不変(アンチェンジ)」の否定者・ジーナだった。自身の能力と「ユニオン」のアンチエイジング技術による若作りで10代の美少女に見えるジーナだが、実年齢は66歳。50年前にアンディを捕獲したことがあり、以来アンディに恋心を抱き“デッドちん”と親しげに呼びかけている。ジーナの能力を知らなかったアンディだが、湖の固定化、それを持ち上げる念動力、見えない壁や階段などを作る彼女の技を見て能力を推測。それを確かめるために、アンディは自身の「不死」を生かし、自ら爆弾を飲み込んで、身体を分裂させて血の雨を降り注がせた。ジーナの周辺だけ弾かれる血の雨を見て、彼女が空気を変形させたバリアを作っていることに気づいたアンディは、ジーナが「不変(アンチェンジ)」であることを見抜く。さらにアンディは、空気によるバリアも“光”なら通るのではないかと分析し、風子の力を使って光を利用した不運“UFOの爆破”をジーナに直撃させ、勝利する。かつてアンディと関わりを持ち、強敵として立ちはだかったジーナの最期はとても切なく、思わずグッときてしまう。
任務の一環で、「ユニオン」が管理できていない否定者やUMA、古代遺物が出回る闇市“黒競売”にやって来たアンディと風子。そこで“否定者狩り”の組織「アンダー」のリーダー格である「不治(アンリペア)」のリップと遭遇する。金髪のショートヘアに眼帯をつけた青年のリップは、自分がつけた傷の治癒を否定する「不治」を駆使し、相手の傷の自然治癒と治療行為を否定して死に至らしめる。戦いの最中、アンディも「不治」の攻撃を食らうが、彼は治癒を否定されたくらいではもちろん死なず、反対に自ら切り落とした腕を弾丸のように操作してリップに攻撃を仕掛ける。アンディたちの優勢で進むかに見えた戦いだったが、“黒競売”に巻き込まれた「不動(アンムーブ)」の否定者・重野力(しげのちから)をかばった風子が「不治」による瀕死の重傷を負い、窮地に陥る。風子が受けた「不治」を無効化するために、アンディは重野の「不動」、そして「ユニオン」のメンバーであるタチアナの「不可触(アンタッチャブル)」と連携して、リップに重傷を負わせることに成功する。ピンチに際し、仲間の能力の特性や発動タイミングを瞬時に理解して応用するアンディの頭の回転の早さと、仲間を信じて戦う心の強さが垣間見られる戦いだ。
「不動」の重野も「ユニオン」入りを果たし、アンディと風子が新たな否定者と共に任務に向かおうとしていた矢先、「ユニオン」の一員だった「不可信(アンビリーバブル)」のビリーが実は“否定者狩り”の組織「アンダー」のリーダーであることが明らかになる。“銃限定でどんな状況でも確実に必中する能力”の「不可信」を名乗っていたビリーだが、その言葉は嘘で、実際は「不正義(アンジャスティス)」の否定者であることが判明する。「不正義」は他の否定者の力をコピーする能力で、「ユニオン」メンバーたちの「不死」「不動」なども当然ながらコピー可能。相手の力をそのまま自分のものとして使う、史上最強ともいえる能力を使いこなしてアンディたちに襲いかかるビリー。この強敵に対し、「ユニオン」メンバーたちが否定能力や武器を総動員して立ち向かう様子は圧巻だ。また、そんな戦いの中で圧倒的な強さを見せるビリーを倒すのではなく、彼の目的を阻止するような戦い方にシフトするアンディの戦略も必見だ。
ビリー謀反のあと、アンディと風子は世界の過去とこの先の未来が描かれているという古代遺物の調査を依頼される。その古代遺物とは、なんと風子がずっと愛読していた大長編少女漫画「君に伝われ」。2人は作者である正体不明の漫画家・安野雲(あんのうん)に会い、原稿の状態を知るために行動を始め、驚きの体験を通じて安野雲が九能明(くのうあきら)という「不明(アンノウン)」の否定者であることを知る。久能が「不明」となったのは、小学生の頃にペンの形をしたGライナーという古代遺物を拾ったことがきっかけだった。Gライナーによって未来の出来事まで含めた“否定者の戦い”の全てを知った彼は、同時に他の人にまったく認識されなくなる「不明」の能力に目覚め、絶望的な孤独にとらわれた人生を送ることになってしまう。そんな彼の生きる支えとなったのが、自らの信念に従って戦うアンディたち否定者の物語だった。やがて彼は、別人として描いた漫画が他人に認識してもらえることを発見し、覆面漫画家・安野雲となってアンディたちを危機から救うためのメッセージが込められた「君に伝われ」を描いていたのだ。アンディと風子が安野雲の正体に辿り着くために漫画を制作して出版社に持ち込んだり、本の中に入り込んで過去や未来を行き来する体験をしたりと、それまでの異能バトルとはまた違った展開が楽しめる、ユニークかつ熱いエピソードとなっている。