ウィルスの大流行が起こり、原父と呼ばれる帝国主義的巨大政権が世界を牛耳る近未来を舞台に、原父と対立する、大規模な麻薬カルテルのボスを父親に持つ少年エリヤの死闘と、戦いを通しての成長を描く。プロローグである第1話はエリヤの両親、エノアとハナの、たった二人で生き残った少年少女の生活が寓話風の美しいSFストーリーとして描かれているが、本編である2話目以降は、その20年後の南米を舞台に、彼らの息子であるエリヤが主人公となる構成。1話目とは雰囲気を一変して、ノマド、麻薬カルテル、連邦政府軍とのきな臭い戦闘シーンが続く。2100年代の近未来を舞台としており、AIやサイボーグなどのSF要素が至る場面で登場するが、南米のカルテルと政府軍との争い、それらが起因となる市民たちの貧富格差、人種差別、民族間の紛争、売春、麻薬中毒など現代となんら変わらない状況が描写されている。壮大で綿密に練られた舞台設定とストーリー、繊細で美しい絵柄は見る物をを圧倒させ、作者遠藤浩輝初の連載作品にも関わらず9年もの長期連載となった。