江戸を舞台に、若き力士と猫が紡ぐ人情味溢れる相撲漫画。三毛(みけ)の山は、すぐに相手力士に押し負けてしまう若手力士。三毛の山を投げた相手力士は出世すると言われており、付いたあだ名は「福猫」。あっけない勝負に客からも野次が飛び交い、親方からは毎度叱られる日々を送っていた。勝負事に向いていない、心優しい三毛の山の心を慰めてくれるのは、相撲部屋に居ついた猫たち。三毛の山を中心に、様々な力士と猫の日常や絆を描いた心温まる物語。
本作の中心となる幕内力士は、おっとりとした性格の三毛の山。他にも、勝つためには何でもする黒石、鬼のように強い小結の谷山など、様々な力士が登場する。そして、そんな彼らをすぐ傍で見守っているのは、相撲部屋で過ごしている猫たち。力士としての素質は十分だが成績不振の三毛の山は、親方から力士以外の道を示唆され、実家に戻ることも考えるが、やはり大好きな相撲から離れることはできない。そして、可愛がっていた猫の梅が逃げ出してしまったことをきっかけに、初めて力士としての本領を発揮することになる。若い力士と猫たちが過ごす日々の中で彼らの絆や力士としての成長が描かれるが、自由気ままに人を癒やし、時には元気づけてくれる猫の魅力を感じられる猫漫画としても楽しめる。
大相撲を題材に、力士の生きざまや成長を描いた相撲漫画で、『バチバチ』の続編。鮫島鯉太郎は、荒くれ者として有名だった今は亡き元大関・火竜の息子で空流(くうりゅう)部屋の幕下力士。一方、宿敵である王虎剣市は、大横綱・虎城昇の息子の天才力士。前相撲では鯉太郎に敗北し怪我を負うが、幕下までは怒涛の勢いで連勝を重ね、周囲を驚かせていた。親子二代にわたり因縁がある二人の若き力士が、横綱を目指して土俵上で熱い戦いを繰り広げる熱血相撲ストーリー。
メインとなる力士の鯉太郎と王虎は、二人とも有名な力士を父親に持ち、生まれた時から相撲に慣れ親しんで育ってきた。生まれや環境は似ているが、彼らの性質はまるで似ていない。暴れん坊ながら人情味がある鯉太郎に対し、王虎にはそれが無い。自分の勝利のためならば容赦なく対戦相手を壊す横暴な性格の王虎だが、一方で精神的脆さが弱点でもある。火竜と虎城は親友同士であったものの相撲や横綱の在り方を巡り決別した過去があった。その息子である鯉太郎と王虎も因縁にさいなまれるが、二人は様々な力士相手に取組を重ねるうちに、自分と向き合い、力士として成長していく。土俵上で繰り広げられる男同士の真剣勝負を通じて、力士の生きざまや相撲の泥臭さも含めた魅力が伝わってくる本格的な大相撲漫画だ。
相撲を愛する地味なOL目線で相撲の魅力を描いた日常系コメディ漫画。愛敬紗英(あいきょうさえ)は、仕事ができるアラサーOL。そんな彼女が周囲に秘密にしていることは、大の相撲好きであるということ。ご贔屓力士は、入門4年目で19歳という若さの前野川。休日出勤前には朝稽古、休みには地方巡業や遠征にも出向き、相撲ファンの生活は忙しい。月給も決して高くはないが、愛する前野川の成長を願って差し入れも奮発し、日々の仕事にも気合が入るのだった。
主人公の愛敬は、好角家である前に尻フェチでもある。そのため、力士を見て一番気になるのはお尻の形で、前野川の尻はプリプリのお尻だ。よく動くお尻がまるでヒヨコのようで目が離せない。生活費を削ってでも差し入れし、新人力士を見守る愛敬の目線はファンというよりおかみさん。まるで我が子を見守るようにハラハラしながらも成長を喜び、取組の結果に一喜一憂。調子が不安定な前野川だが、名古屋場所では幕下優勝を果たし、愛敬は大喜び。世間で注目を浴びやすいのは幕内力士だが、幕下にも将来有望な力士がひしめきあっている。まだ世間に知られていないうちから自分だけのお気に入り力士を見つけ、成長を見守るという相撲の楽しみ方があることを教えてくれる一冊だ。
日本の国技である相撲の世界に現れた異形の肉体を持つ力士の戦いと生い立ちを描いた相撲漫画。大相撲界は、科学的に生み出された怪物力士・リヴァイア山が現れたことで、大きな危機に見舞われていた。関係者は、すがる思いで眠りについている伝説の横綱を呼び起こそうとする。相撲の真髄である「心・技・体」の「体」に特化した者と、全てを持ち合わせている者。大相撲の未来は、この二人の勝敗の行方にかかっていた。
「心・技・体」とは、精神、技術、体のバランスが整い、それらの歯車が上手く回っている状態。だが、その一つだけを極め、他の二つが皆無だった場合はどうなるのか。本作は、「心・技・体」に注目した三部作からなるSF相撲漫画の第一部。第一部は「体」の章。主人公の力士・リヴァイア山は、薬物投与と遺伝子操作をされたことで身長250cm、体重300キロもある怪物のような存在で、「技」と「心」は必要ないと科学者たちは考えていた。一方、木像となって眠っていたが、理事長の手で呼び起こされた伝説の横綱は、「心・技・体」の全てが揃っている立派な力士。究極の二人の力士の取組のみならず、リヴァイア山が産みだされた背景や苦悩についても描かれ、人間ドラマとしても読みごたえがある。
女人禁制の角界で、元女子相撲世界チャンピオンの主人公が自分なりのやり方で相撲と共に生きていく相撲漫画。常盤桜子(ときわさくらこ)は浜松親方の一人娘で、元女子相撲世界チャンピオンの経歴を持つスポーツ記者。父の経営する浜松部屋が弱小部屋に成り下がったのは父親が行う稽古に問題があると感じていた。自分も相撲に関わっていたい桜子は、ボクシング選手の藤原拳(ふじわらけん)に目をつけ、スカウトする。自分が横綱になることは叶わずとも、培ってきた相撲理論を用いて彼を横綱に育て上げることを決めたのだった。
本作は、王道の相撲漫画とは一線を画しており、女主人公が培ってきた経験と技術を活かし、指導者として相撲界に身を投じる頭脳派相撲漫画だ。伝統を重んじる父親に反発し、自分が指導者ならば少なくとも力士を幕内にまでは上げられると思っていた主人公の桜子は、ある日、横綱になれる逸材と出会う。スレンダーな体つきの藤原は、頭で考えて動くことができ、優れた技術と運動神経も兼ね備えていた。桜子は、相撲に関して何も知らない藤原に、ぶっつけ本番で相撲の「足し算」と「引き算」を指導し、浜松部屋の若手力士相手に負けない相撲を指南する。相撲初心者だった藤原だったが、相撲の魅力や面白さに気付き、彼女の指導に従って次第に成果を上げていく。