概要・あらすじ
一般に知られる幕内力士は約40名。しかし、その番付の下には、実に600名もの力士が存在する。17歳の鮫島鯉太郎も、そんな幕下力士の1人だった。鮫島は、天才といわれて目下無敗の幕内力士・王虎剣市に、前相撲で土をつけた唯一の存在であり、その五月場所での対決が注目を集めていた。鮫島の父親であった元大関の火竜と、王虎の父親で現相撲協会理事の元大横綱・虎城(虎城昇)は、かつて同じ天城部屋に所属する力士同士であった。
因縁の2人の対決も交えた、幕内力士達の熱い戦いが始まる。
登場人物・キャラクター
鮫島 鯉太郎 (さめじま こいたろう)
空流部屋に所属する幕下力士。年齢は17歳。父親は角界一の悪タレと言われ、暴力沙汰を起こして角界を追放された元大関・火竜。無敗記録を持つ王虎剣市を前相撲で下しており、因縁の相手となっている。兄弟子として、新しく入門した丸山大吉と常松洋一の面倒を見るよう言われて、手を焼いている。
王虎 剣市 (おうこ けんいち)
虎城部屋に所属する力士。序ノ口、序二段、三段目と、すべての番付で全勝優勝し、いまだ負けなし。序ノ口から27連勝という記録を更新中の天才力士。父親は大横綱・虎城(虎城昇)。端正な顔立ちで、女性人気も急上昇の人気者。しかし、態度が大きく、対戦相手を壊す危険な相撲をとるため、力士たちの間では評判が悪い。前相撲のため記録には残っていないが、鮫島鯉太郎に負けたことがある。 そのため、鮫島に対して強い対抗心を燃やしている。昔から虎城部屋に稽古に来ていた常松洋一を、兄のように慕っていた。常松が角界入りすると、自分が兄弟子だとして、「常松」と呼び捨てにする。
丸山 大吉 (まるやま だいきち)
太った引きこもりのオタク青年。年齢は17歳。学校へも行かず、家に籠っているため、叔父に騙されて、相撲部屋に入門させられる。本人は格闘技はおろかスポーツすらしたことがなく、ニキビすら痛くてつぶせない気弱な性格。鮫島鯉太郎の所属する空流部屋にいやいやながら入門することになる。新弟子検査合格時の身長は187センチ、体重139キロ。
田上 大 (たうえ まさる)
虎城部屋に所属する幕下力士。王虎剣市、鮫島鯉太郎と同期。大卒のため同期たちの中では年長者だが、王虎からは見下されている。鮫島鯉太郎に敗れ、親方の虎城昇からもどやしつけられる。子供の頃から相撲だけが取り柄だったが、大学では監督からプロになっても、これ以上の成長は見込めないと言われていた。同期への遅れと、自分の限界に焦り始めている。
空流 旭 (くうりゅう あさひ)
鮫島鯉太郎が所属する大海一門・空流部屋の親方。元小結・春風(はるかぜ)。得意技は「仏壇返し」で、現役時代は虎城昇から金星を稼いだ横綱キラーだった。負傷で右目の黒目がない。なお、空流部屋は、上野駅から徒歩20分、不忍池を少し行った住宅地の中にある。
新寺 宗男 (にいでら むねお)
新寺部屋の親方。鮫島鯉太郎が所属する空流部屋と同門のため、一緒に稽古をすることも多い。
白水 英樹 (しらみず ひでき)
空流部屋に所属する幕下力士。ナマズのようなヒゲが特徴のお調子者。鮫島鯉太郎の兄弟子で、良き理解者。十両の壁に何度も跳ね返され、苦戦している。
虎城 昇 (こじょう のぼる)
次元一門・虎城部屋の親方。元横綱・虎城。王虎剣市の父親。現役時代は、鮫島鯉太郎の父親である火竜と犬猿の仲だった。現在は相撲協会理事も務める。
仁王 剛平 (におう こうへい)
空流部屋に所属する平幕力士で部屋頭。番付は十両。元・阿形。もみあげが特徴で、斎藤真琴からは「モミアゲゴリラ」と言われたこともある。日本人離れした馬鹿力による滅茶苦茶な相撲をとり、大いに客を沸かせる。調子に乗りすぎて、勇み足で負けることもしばしば。巨乳好きで、取り組み前はいつもエロ本を読んでいる。
川口 義則(仮) (かわぐち よしのりかり)
空流部屋に所属する三段目力士。自然と鳩が集まるなど、一部で超人的カリスマ性を発揮する謎の男。本名も不明で、一言もしゃべらない。鮫島鯉太郎からは「川さん」と呼ばれている。
奥村 椿 (おくむら つばき)
空流部屋の親方・空流旭の一人娘。黒髪でショートカットの女の子。亡くなった母親の代わりに部屋を切り盛りしているが、料理がド下手。鮫島鯉太郎が、ネギを10円高く買ってきただけで、怒鳴りつけるような気の強い性格。
常松 洋一 (つねまつ よういち)
丸山大吉と同時に空流部屋に入門することになった若者。年齢は22歳。元学生横綱で、眼鏡をかけている。もともとは虎城部屋に入門する予定だったが、鮫島鯉太郎を土台にしてのし上がろう、と密かに企んでおり、無理を言って空流部屋に入門した。口調は丁寧だが、生意気な性格で、兄弟子にも平気で大きな口をきく。新弟子検査合格時の身長は186センチ、体重は118キロ。 由香という妹がいる。
斎藤 真琴 (さいとう まこと)
鮫島鯉太郎が以前世話になっていた家の娘。鯉太郎を小さい時から知る、お姉さん的存在。黒髪ストレートの美人。空流部屋には、ちょくちょくチャンコ作りなどを手伝いにやって来る。奥村椿からは「マコさん」と呼ばれ、慕われている。この春から大学に通うため、上京して来たばかり。
石川 大器 (いしかわ だいき)
新寺部屋に所属する幕下力士。注目される若手のうちの1人。気性が荒く、押し一辺倒の相撲をとりがち。奥村椿に言わせると、鮫島鯉太郎の友達とのこと。「石川」だが、よく天雷からは「山本」と間違えられる。
飛天勇 豪士 (ひてんゆう たけし)
新寺部屋に所属する幕内力士。新十両の仁王剛平が、三役クラスの力士が使う支度部屋の奥を陣取っているため、それを注意した際に大ゲンカとなり、仁王とは仲が悪い。
天雷 (てんらい)
若竹部屋に所属する幕内力士。実力は関取クラスと言われる若手のうちの1人。怪力天雷と呼ばれるほど力が強い。兄(裕也)も若竹部屋に所属する力士だったが、大鵠に土俵上で、故意と思われる汚い手段によって腕の骨を折られ、引退している。
大森海 (おおもりうみ)
川柳部屋に所属する幕内力士。若手ながら日本人力士で最重量の240キロ。十両への返り咲きを狙っているが、プロ初土俵となる常松洋一に初戦で敗れる。
渡部 仁 (わたなべ じん)
北里部屋に所属する三段目の力士。ツブラな瞳で、石川大器からは「ドングリ三段目」と呼ばれる。
大森山 太一 (おおもりやま たいち)
柳川部屋に所属する三段目力士。大森海の兄。弟同様に重量級の力士。常松洋一と対戦することになった大森海に、注意するよう警告した。
大鵠 (たいこう)
十文字部屋の幕下力士で元十両。大仏のような福耳と分厚い唇が特徴。田上大が、バンテージを何重にも巻き、手付き不十分の「突っかけ」で相手にダメージを与える、という姑息な手段を使った時、さらに、バンテージの下に鉄板を仕込め、とアドバイスする。汚い手段を使い、土俵上で相手に怪我をさせるという噂で、力士からは性根の腐ったゲス野郎と呼ばれる。
猛虎 哮 (もうこ たける)
虎城部屋に所属する幕内力士。王虎剣市、田上大の兄弟子。
畑 文太 (はたけ ぶんた)
相撲雑誌「月刊力士」の記者を務める初老の男性。時には横綱にすら技術論を説き、「教えのハブさん」の異名を持つ。お互いが負けたら相撲廃業という賭勝負で、負けた鮫島鯉太郎を50点と評した。
青山 達夫 (あおやま たつお)
大栄大学の相撲部顧問を務める男性。常松洋一を学生横綱まで育てた恩師。「虎城」や「火竜」を生んだ天城部屋に所属していた元力士。常松の父親である「松明(たいまつ)」は青山達夫の弟弟子だった。
山崎 光 (やまざき ひかり)
スポーツ新聞「日刊トップ」の相撲担当記者。目つきの鋭い人相の悪い男だが、王虎剣市に敗れた鮫島鯉太郎と常松洋一に、廃業を迫る記者たちを一蹴した。まだ相撲番として配属されたばかりの新人の頃、若き日の火竜や虎城(虎城昇)を見ており、火竜とは酒を飲みながらグチを聞く間柄でもあった。かつて虎城と火竜の間に何があったのか、火竜が角界を追放される原因となった暴行事件の真相などを知っている。
大刀力 一 (だいとうりき はじめ)
若竹部屋に所属する十両力士。天雷の兄弟子。天雷から対戦相手の大鵠のことを聞かれると、大鵠が手段を選ばない汚い男であると説明した。
闘海丸 つよし (とうかいまる つよし)
鏡川部屋に所属する幕下力士。鮫島鯉太郎や王虎剣市、石川大器、天雷といった、六勝一敗の相星6名による幕下優勝決定戦に残った1人。学生相撲のときに、緊張のあまり土俵上で放屁してしまったトラウマを持つ。
岩の藤 要 (いわのふじ かなめ)
宮野浦部屋に所属する幕下力士。鮫島鯉太郎や王虎剣市、石川大器、天雷といった、六勝一敗の相星6名による幕下優勝決定戦に残った1人。ブチカマシで鍛えた、おでこの大きなコブが特徴。親方にタメ口をきき、「ヒュー、OK!Shit!」などと軽い口ぶりの男。幕下優勝決定戦の土俵上で、鮫島と壮絶なブチカマシ勝負を繰り広げる。
細川 将太 (ほそかわ しょうた)
闘海丸つよしの学生時代のクラスメイト。メガネをかけたひょろひょろの青年だが、学生時代から相撲部に所属しており、プロになることが夢だった。顔が怖いし、デブだからと、闘海丸を相撲部に誘った。闘海丸が思いを寄せる女の子に手をまわして、相撲をするように仕向けた策士。後に闘海丸と共に鏡川部屋に入門する。
鏡川 一平 (かがみがわ いっぺい)
闘海丸つよしと細川将太が所属する鏡川部屋の親方。学生相撲で目にした2人を相撲に誘った。パンチパーマにちょびヒゲ、さらにサングラスをかけており、見た目は完全にヤクザ。
火竜 (かりゅう)
鮫島鯉太郎の父親。虎城(虎城昇)とともに天城部屋に所属し、「角界一の悪タレ」と言われながらも、大関まで上り詰めた。暴力沙汰を起こして角界を追放された後、酔って走行中のトラックに挑み、命を落とした。
天城 源吾 (あまぎ げんご)
天城部屋の親方でスキンヘッドの男性。元関脇。天城部屋には、火竜、虎城昇、青山達夫、常松洋一の父親である「松明(たいまつ)」などが所属していた。のちに虎城(虎城昇)が、天城部屋初の横綱となる。
床上手 (とこじょうず)
空流部屋に所属するオカマの床山。ボブヘアーで後頭部を刈り上げており、化粧が濃い。筋骨隆々で、網タイツを履いている。五月場所の幕下優勝決定戦で初優勝した鮫島鯉太郎の髷を結った。
前作
続編
鮫島、最後の十五日 (さめじまさいごのじゅうごにち)
佐藤タカヒロの『バチバチ』『バチバチ BURST』の続編。激しすぎる取組の中で、とうとう慢性外傷性脳症となってしまった力士の鮫島鯉太郎が、死も覚悟して九月場所の十五日間を戦う姿を描いた大相撲巨編。秋田... 関連ページ:鮫島、最後の十五日