逃避行の果てに待っているものとは？オススメ漫画5選74 Pt.

彩女は、北に強盗目的で襲われた際、普通では考えられない言動を取る。一切抵抗せずに進んで自らの体を差し出したばかりか、金を用意することを約束し、ご丁寧にコーヒーまで振る舞う。さらに、北が、蟹を食べに北海道まで行こうと考えていることを明かすと、彼女が運転する車で向かうことに。北が彩女に脅しをかけたわけではなく、彼女が自分から、彼の人生最後となる旅の同行を申しでる。北は、あまりに不可解な言動を取る彩女を「雪女が現実にいたらこのような女ではないか」とすら思う。奇妙な縁で繋がった2人は、北海道で蟹を食べることができるのだろうか。どことなく浮世離れした雰囲気に包まれた2人の逃避行の行方を楽しもう。

本作で目を引くのは主人公の辻ではなく、彼が出会った謎の女性の浮世だ。彼女は、とにかくトラブルを生み出しやすく、自分の都合が悪くなると嘘をついて逃げるというとんでもない女性。その一方で、人を引きつける不思議な魅力を持っている。辻は、彼女を不審に思いながらもその魅力に取り憑かれ、トラブルに巻き込まれる。物語は、浮世が問題を起こしては解決せずに逃げることを繰り返すせいで、話を追うごとにどんどん悪い方へと進んでいく。逃げ続ける浮世と、彼女を放っておけない辻は、果たしてハッピーエンドを迎えることができるのか。人間のドロドロとした感情が緻密に描かれているため胸が苦しくなるが、ページをめくる手が止まらない作品だ。

継は、再会した友人たちとかつてのように楽しい日々が過ごせると信じていた。しかし、時の流れは残酷で、継を待っていたのは変わってしまった友人たちだった。優心に片思いしている朝里は、彼と距離が近い継に嫉妬し、仲間外れにしようとする。小学生時代は優等生だった優心は、父親の不祥事によって心が病み、親友の空をいじめるようになっていた。空はいじめを受け、どんどん生きる気力を失ってしまう。継は自殺しようとしていた空を間一髪のところで止め、2人は一緒に家出をし東京へと向かう。東京への逃避行を経て、継と空は何を思うのか。優心や朝里との友情は取り戻すことができるのか。多感な高校生たちのリアルな心理描写に注目してほしい。

本作で逃避行を描いている作品は、表題作の『エンド・オブ・ザ・ワールド』だ。とある家で、資産家夫婦の惨殺死体が発見される。犯人は、彼らと共に暮らしていたイースとモリー兄妹だった。妹のモリーは養子であるため、兄のイースとは血が繋がっていない。義兄妹の2人が結託して両親を殺したのは、イースは母親を、モリーは父親を嫌っており、家という檻から逃げ出したかったからだ。両親の殺害に成功し自由を手に入れるが、2人を待っていたのは気の休まらない逃亡生活。地獄を抜け出した先には、また別の地獄が待っていた。罪を犯した2人の逃避行はどこまで行ったら終わりを迎えるのか。何かから逃げ続けることの苦しさを突きつけてくる作品だ。

理生の母親は家から逃げ、父親は長期間不在だ。このことを周囲にひた隠し、まだ小学6年生でありながら幼い弟と2人暮らしをしている。これが彼女が抱えている秘密だ。夏留はその秘密を知ったことで、彼女との距離を縮めていく。理生はある日、海外にいるはずの父親が見知らぬ女性と一緒にいるところを目撃し、声を掛けるも知らぬふりをされ絶望する。夏留は、彼女を過酷な家庭環境から救うため、勇太も連れて3人で遠くへ逃げることを決意する。大人の理不尽さに巻き込まれた子どもたちに、どのような結末が待っているのだろうか。無垢で切ない逃避行が迎える結末を、ぜひ確かめてほしい。