ベネチアに暮らす私立探偵の日々を描くミステリー系コメディ。ベネチアで探偵を稼業にしてきた家に生まれた伊万里マリエル。執事のコーネリアスからは、探偵稼業に精を出すようにいわれているが、その日暮らしでふらふらとしている。実は祖父が残した莫大な遺産があるのだが、相続する条件として失われた名画を探しださなければならなかった。そんなある日、ベネチアの町を騒がせている怪盗ベッキオから、マリエルのもとに手紙が送られる。
町をめぐる石畳の路地、迷路のような細い水路、ふらりと立ち寄れるカフェやバール、気ままにそぞろ歩く猫。背景の細部まで丁寧に描きこまれ、読んでいるとベネチアの街並みだけでなく、その空気感まで感じられるような作品だ。主人公のマリエルは探偵稼業はほどほどに、小説を書いてみたり、ギターをつま弾いたりと、自由気ままな暮らしをしている。仕事に本腰を入れないせいでお金がなく、執事のコーネリアスに食事をめぐんでもらったりする始末だ。しかし、そんなマリエルの探偵魂に火をつけるのが、予告状を送りつけ次々と盗みを働く怪盗ベッキオ。マリエルのもとにまいこんだベッキオからの手紙には、ベネチアの名所の一つ、カナル・グランデにかかるリアルト橋で会おうと書かれていた。
体力なし、海外経験なしで、いきなりヴェネツィア(ベネチア)へ個人旅行をした作者による紀行コミック。漫画家の橘紫夕は、ある日、突然ヴェネツィアに旅行に出ることを思い立つ。友人の瀬戸さんを誘って6泊7日の旅へ。パスポートもなかった大人女子の、自ら計画した個人旅行の顛末を描く。作者の代表作、学園4コマ『ひよわーるど』のキャラクターがアバターとして登場。虚弱体質の女子高校生・守屋ひより=作者、イケメン女子の瀬戸みなみ=瀬戸さんとして描かれる。
リアルト橋、ドゥカーレ宮殿、サンマルコ広場、もちろんゴンドラも乗り、ヴェネツィアの名所をあますことなくおさえた旅行記だ。なぜなら6泊7日たっぷりヴェネツィアづくしなのだ。初めての海外旅行ながら、作者は宿泊先を始めとしてすべて自ら手配。普通は初海外というと、飛行機もホテルも観光もパッケージ化された旅行会社のツアーを選ぶ人が多いだろう。ところが、ヴェネツィアは物価が高いため、ツアー旅行だと短い滞在が多数を占めているのだ。言い出しっぺということもあり、作者はめったに出さないやる気を出して、旅程から防犯対策まで調べに調べまくりいざ出発。美しい町並みや、美味しい食事はもちろん、ドレスアップしてカジノに出かけたりと、非日常の旅の楽しさを存分に楽しめる旅行記だ。
新婚旅行で訪れたベネチアで17世紀の世界に迷いこんでしまうファンタジック・サスペンス。美奈は夫の達彦と共に新婚旅行で初めてベネチアにやって来た。カーニバルに参加するために、17世紀風のドレスを身に纏い町に出る。しかし、仕事をかねてやってきていた達彦は呼び出されてしまい、美奈は一人になってしまう。表題作の他に『イミテーション・ラバー』『見分けがつかない』『宮脇明子の本当にあったプチ怖い話』『宮脇明子エッセイ特集』を収録。
初めて訪れたばずの場所なのに、そんな気がしない。新婚旅行のためベネチアを訪れた美奈は、ホテルの屋上からベネチアの町を眺めながら「夢の中で見たような、生まれる前から知っているような」不思議な気分を味わっていた。実は達彦との出会いはベネチアが縁。従姉妹が勤務するデザイン事務所で、達彦と初めて出会った時、美奈はなぜか初めて会った気がしなかった。そして、達彦がその時手にしていたベネチアグラスの広告に写っていた古い絵画には、美奈によく似た女性が描かれていた。運命に導かれるように二人は結ばれ、絵画の女性が身に纏っていた中世風のドレスを再現したウエディングドレスで結婚式をあげる。ベネチアの地でそのドレスを着た美奈は、事件にまきこまれていく。
16世紀半ばのヴェネチア(ベネチア)を舞台に英国貴族のフランシスと顔に痣のあるジェシカの恋を描くハーレクイン。治療師のジェシカは往診の帰りに、町一番の高級娼婦コズマを巡る決闘の場を通りかかる。大商人のどら息子に勝利したのは、英国貴族の美しい青年・フランシスだったが、ジェシカは彼が古傷を抱えているのを見抜く。治療を通じて二人は接近し、フランシスはいつも仮面で顔を隠しているミステリアスなジェシカに惹かれていく。
16世紀のヴェネチアの歴史的な背景と、ドラマチックなラブストーリーが絡みあう作品だ。ヒロインのジェシカは、常に仮面で顔を隠して生活している。彼女の目元には赤い痣があり、それが異端の証とされて迫害されるかもしれなかったからだ。当時はキリスト教以外の宗教は異端とされ取り締りの対象だった。交易の盛んなヴェネチアは比較的自由な町ではあったが、ジェシカの父はジェシカが往診に行くことにさえ良い顔はしないほどだ。若く美しく、腕のいい治療師として多くの患者から頼りにされているジェシカだったが、顔の痣が彼女を深く苦しめていた。そんな彼女の心をフランシスは少しずつ解きほぐし、二人はカーニバルの夜を共に過ごす。しかし、それは嵐の前の静けさにすぎなかった。
中世のベネチア(ヴェニス)を舞台にしたシェイクスピアの有名な戯曲「ヴェニスの商人」のコミカライズ。舞台は16世紀の貿易都市・ヴェニス。高利貸しを営む強欲なユダヤ人・シャイロックは、貿易商・アントーニオに商売の邪魔をされたことで恨みを抱いていた。ある日、親友のバサーニオの結婚資金のため、アントーニオはシャイロックから金を借りようとするが、担保とするものがない。シャイロックは、アントーニオの体の肉1ポンドを担保とするよう証文を書かせる。
「ヴェニスの商人」は貿易の拠点として栄えた16世紀頃のベネチアが舞台。当時の交易事情や商売の仕方、裁判の様子が物語に巧みに織り込まれた喜劇に仕上がっている。本作は、多くの人がタイトルだけなら知っているけれど、読んだことはないという世界中の名作をコミカライズしたシリーズの中の一冊。主人公は、困っている人からも容赦なく高利を取りたてる金貸し・シャイロックから、友人のために金を借りたアントーニオ。ところが、アントーニオが全財産をつぎこんだ商船が難破したことで、借金返済が不可能になってしまう。普段からアントーニオを逆恨みしていたシャイロックは、アントーニオを苦しめようと証文の通り彼の肉を差し出させようとするが、その対決は法廷に場を移すことになる。