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『さんかく窓の外側は夜』「運命の人」の意味、三角・冷川の関係性の変化を考察0 Pt.

『さんかく窓の外側は夜』は呪いや幽霊が見える三角康介と、除霊師の冷川理人が繰り広げるサスペンス・ホラー。2021年に実写映画が公開され、同年にテレビアニメ化も果たした人気作品だ。2人を中心とした登場人物たちが、遭遇する事件の中で目に見えない禍々しいものに対抗していくオカルティックなバディストーリーが展開していく。除霊の際に快感を覚えるなど、ボーイズラブ的な要素が取り入れられていることや、「愛と救済」がテーマとなっていることにも注目。本記事では、互いを救済し合う三角と冷川の関係性の移り変わりを紹介したい。

作成日時:2022-06-25 19:00 執筆者:マンガペディア公式

『さんかく窓の外側は夜』「運命の人」の意味、三角・冷川の関係性の変化を考察

出典:amazon


一方的に「運命の人」を押し付ける冷川と、戸惑う三角

三角康介は幼い頃から霊が見えてしまう体質で、そのことを周りに打ち明けられずにいた。ある日、三角が働く書店に霊媒師の冷川理人が訪れる。冷川は三角を見るなり三角の体質を見破り、僕たちの出会いは運命の出会いだと告げ、除霊業を手伝うように依頼する。これまで自分の霊感を受け入れることができなかった三角は、冷川の除霊業をインチキだと拒絶するが、今まで自分が見てきた霊の存在を否定するのかと言われ、嫌々ながら協力することにした。


温情のない冷川と、それに困惑する三角

冷川は三角の持つ霊がよく見える能力を借りて除霊を行う。除霊と聞くとお祈りなどで「霊を成仏させる」イメージがあるが、冷川の除霊方法は、自分の手を使って直接霊をつかんでどこかへ放り投げるというもの。ときには、つかんだ霊を生きている人間に取り込ませることもあり、その後、その人間がどうなってしまうかについては無関心だ。三角は冷川の温情のない除霊方法について疑問を抱く。また、業務上、人間の持つ強い憎悪の感情に触れることもあるが、冷川はそれに対して嫌悪感を示さず、むしろ好意的に捉える。三角はそのような冷川のサイコパスめいた面と、除霊の際に自分の体が乗っ取られるような感覚に戸惑いを覚える。
一方、冷川は、三角の持つ能力が自分の予想よりもはるかに優れていたことと、三角の力を利用することで霊に対する自身の能力が高まるため、彼を有能な助手として束縛しようとする。


何かを企む冷川と、疎外感を克服し始める三角

三角は霊が見えてしまう特異な体質のせいで、他者と深い人間関係を築けずにいた。そんな中、同じ感覚を共有できる冷川の存在によって、ただ恐ろしいものだった霊の存在を克服できるようになりつつあった。三角は冷川が自分にとって特別な存在かもしれないと思い始める一方で、自分をどんなことに利用したいのか、その真の目的について疑念を抱き始める。また、冷川の力を使って、彼の心の中を覗いた三角は、そこに広がる暗闇に驚き、一体どんな人間なのかを知りたいと思うようになる。
そんな三角の苦悩を知らない冷川は、呪いの力を集めることによって、自らも誰かを呪ったり、霊現象を作り上げたりすることに価値を見出し始めていた。除霊業が生業の冷川にとって、霊現象を操る力を持つことは、マッチポンプを仕掛けて無限に仕事を生み出せる可能性に繋がるからだ。このような自らの実益を優先させる性格は、冷川の生い立ちに関係していることがその後のエピソードで明かされていく。


助けてもらうことを知らない冷川と、それを知っている三角

自分の能力のせいで常に周囲からの疎外感を感じて生きてきた三角だが、自分のことを理解してくれる温かな母親の存在に救われていた。一方で冷川の生い立ちは謎に包まれており、肉親はいないような素振りを見せていた。そこに心の闇の秘密があると思われたが、冷川は自ら過去を話したがらない。しかし、ひょんなことから三角は彼の生い立ちを知ってしまう。幼い頃の冷川はその特異体質から新興宗教団体の教祖として崇められ、団体の施設の中に軟禁されており、最終的には信者たちを呪い殺していた。彼にとって信者たちは、救いを求めて近寄ってくるが、決して彼を救ってくれることはない存在。このトラウマから冷川の心には、人助けは自分が搾取されるだけ、やるだけ損という思いが植え付けられていた。
しかし、そんな冷川にも三角によって変化の兆しが見え始める。冷川の悲惨な過去を知った三角は、自分も人から救われた経験があるからこそ、冷川を助けたいのだと詰め寄る。冷川は過去の記憶を拭い去ることはできなかったが、三角に側にいてほしいがために三角の申し出を受け入れるのだった。


過去の呪縛から抜け出せない冷川と、そこから救い出したい三角

冷川の過去を知り、救いたいと決意する三角。その一方で冷川は、人の善意よりも悪意の力を信じることから抜け出せておらず、呪いを集めて自分と三角のエネルギーにしようともくろんでいた。結果、三角は冷川の暴挙を阻み、集めた呪いに飲み込まれそうになった相棒を救うことになるが、そんな目に遭っても冷川は自分には呪いに耐性があるから平気だと豪語する。耐性なんてつけてほしくない、お前を救いたいんだと涙ながらに訴える三角。その思いは冷川になかなか伝わらなかったが、見返りを求める善意しか知らない冷川にとって、他人に心から救いたいと言われたのは初めての経験であり、そのことは少なからず彼の心に影響を与える。違和感を覚えつつも、冷川は三角から向けられた無償の善意の存在を認識するようになる。


「冷川に深入りするな」と忠告を受ける三角

2人の関係を最初から危惧していた人物もいた。2人と同じ力を持つ占い師の迎(むかえ)は、霊や呪いと関わる世界に巻き込まれてしまった三角に対して、元いた普通の生活に戻るように促していた。さらに、冷川と長年付き合いのある刑事の半澤(はんざわ)からも、自分たちは冷川の心のよりどころにはなり得ないのだから、彼と深く関わるのをやめるようにと止められる。しかし、彼らの忠告を受けた三角は、冷川に「自分の戻れる場所」を得てほしいという願いをますます強くし、冷川に心のよりどころはないのかと尋ねる。すると、驚いたことに冷川は、それは三角だと答えた。人の善意を信じられないことに変わりはなかったものの、その言葉は冷川の心の闇が薄まっていく予兆だった。


救い、救われた冷川と三角

幼少期、新興宗教団体で過ごした経験を持つ冷川にとって、信じられるものとは憎しみや悪意の感情だった。人間関係とは、支配するかしないか、搾取するかされるかを争うものだと考える冷川は、それを変えてくれるのが三角だということに気付けないままでいた。そんな冷川のもとへ、失踪していた三角の父親が現れる。三角の父親は、冷川と同様に呪いを操る力を持っており、自分の存在を脅かす息子を呪い殺したいと考えていた。父親が三角を呪い殺すか、冷川が三角を呪うかを迫られた冷川は、そこで初めて、彼にとって三角との関係は、支配や搾取といった概念の上で成り立つものではないのだと自覚する。かつて過ごした宗教施設で、自分で自分を呪いにかけていたことに気付いた彼は、三角の善意を理解し、受け入れる。そして「ただそばにいてほしい」と涙を流しながら三角に訴えるのだった。



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