歴史の闇に埋もれた女性だけの戦車部隊の戦いを描いた戦争漫画。第二次世界大戦後期、ドイツ軍は女性の戦場での運用性を試験するため、ある非公開部隊を戦場に投入した。武装親衛隊第502SS猟兵大隊所属特務救助猟兵小隊、通称「シェイファー・ハウンド」。命は消耗品であるという考えを叩き込まれた、命知らずの女性のみで構成された部隊だ。そんなシェイファー・ハウンドの小隊長に、部隊の理念とは真逆の人命を重んじる理想主義者のユート・ツァイスが着任する。
シェイファー・ハウンドに所属する女性たちは皆、自らを消耗品であると自覚している。彼女たちにとって、自分の命は目的達成のために使われるもの。故に彼女たちは死を恐れず、立てる作戦は自分たちの身の安全を計算に入れないものばかりで、作戦行動中の戦死者も少なくない。そんな部隊に、命の大切さを説く青年ユート・ツァイス上級曹長が、小隊長として配属された。ユートの人命を重視する姿勢は、部隊の小隊長代理を務めていたカヤ・クロイツ曹長をはじめ様々な人物から「甘い」と蔑まれることになる。ユートの理想は誤りなのか。死を恐れぬ女性たちが戦車などの兵器を操り戦う姿、ユートの葛藤などを通して戦争とは何か、命とは何かを問いかけてくる作品だ。
架空のドイツ軍戦車中隊「黒騎士中隊」の戦いと終焉を描いた戦記アクション漫画。1943年の秋、ロシア南部の村外れに、ドイツ軍東部戦線第8戦車中隊、通称「黒騎士中隊」が駐屯していた。エルンスト・フォン・バウアー中尉が率いる黒騎士中隊は、常に最前線で活躍してきた歴戦の中隊。そんな黒騎士中隊に、クルツ・ウェーバー上等兵は補充兵として配属される。クルツは東部戦線で数々の戦いに参加し成長していくのだが、終わりの足音は彼らのすぐ背後に迫っていた。
本作の舞台は、第二次世界大戦中の東部戦線。物語は、ドイツ軍人であるクルツ・ウェーバーを軸に進んでいく。1943年は大戦末期。ソ連軍の進撃を押し止めることがほぼ不可能となり、ドイツの敗北は目前だった。それでもクルツたち黒騎士中隊の面々は、祖国のために戦い続ける。本作の魅力は、戦車の緻密な描写と戦闘シーンの迫力、そして国を守るために戦場で躍動する男たちの生き様だ。黒騎士中隊は架空の部隊だが、物語は数々の資料をもとに作り込まれているため、実際の出来事を漫画にしたかのようなリアリティがある。軍事マニアの間ではバイブル的な存在として知られている本作。戦車での戦いに興味がある人、ドイツ軍に興味がある人は是非手に取ってみてほしい。
スパイアクション漫画『ジャバウォッキー』の続編漫画。舞台となるのは、第一次世界大戦が勃発した20世紀初頭、「戦争の世紀」と呼ばれた時代。人間たちが戦いに明け暮れるその裏で、恐竜たちの秘密結社「殻の中の騎士団」は、人間社会を倒すために大量破壊兵器を開発していた。世界の平和を守るために活動する秘密結社「イフの城」の元工作員であるリリー・アプリコットと、その子どもであるサモエドとシェルティは、殻の中の騎士団の脅威に立ち向かっていくことになる。
前作の特徴は、実は恐竜は滅亡せずに進化を遂げており、進化した恐竜たちが人類の歴史の裏で暗躍していたという斬新な設定だった。続編となる本作でも、その世界観は引き継がれている。主人公の兄妹、サモエドとシェルティ。彼らの生きる世界は世界大戦の真っ只中である。戦況はしばらく膠着状態にあったが、イギリス軍が投入した新兵器「戦車」によって状況は一変した。本作の魅力は、史実や実在の人物に主人公たちや恐竜人たちを絡めた物語を展開している点だ。例えば、戦車がイギリスで作られ第一次世界大戦で実戦投入されたというのは史実通り。本作では、その戦車の誕生に恐竜が関わっていたということになっている。主人公たちの活躍と、虚実入り混じった物語に注目しよう。
戦車の擬人化同人を描いているオタク男子がタイムスリップし、日本軍が戦う戦地に飛ばされてしまうSF漫画。主人公の里見拓也は、武蔵川美大に通う学生。彼は戦車が好きで、戦車の擬人化絵を同人誌として発表している。ある日、オタク仲間とコミケを楽しんだ里見は帰ろうとした際にエスカレーターから落下。気がつくとそこはコミケ会場ではなく屋外で、周囲には戦車と軍服を着た男たちがいた。里見は男たちとの会話で、自分が昭和14年にタイムスリップしたことを知る。
突如現れた戦車に最初は興奮していた里見。しかしすぐ近くに銃弾を撃ち込まれたことで、自分の置かれた状況が異様であることに気づき、その場にいた日本兵たちとの会話で自分が昭和14年の満洲とモンゴルの国境付近にタイムスリップしたことを知る。飛んでしまった過去には、里見が描いた戦車の擬人化絵をやけに気に入ってくれる兵士がいた。彼は武田義三郎大尉。里見は彼に絵を描いて見せたり、未来の日本の話をしたりして交流を深める。本作の大きな見所は、生きる時代は違うものの戦車への愛という共通点によって育まれる里見と武田の奇妙な絆。そして、里見が曽祖父に遭遇するという展開だ。里見の過去の人物たちとの関わり、それによって未来がどうなっていくのかに注目しよう。
命を懸けて戦う若者たちを描いた青春戦争活劇。舞台となるのは、大国同士が大きな戦争をしている世界。多くの若者たちが戦場に赴き、命を懸けて戦っている。そんな彼らを導きながら大地を進む戦闘団の陣頭に「その人」はいた。帝国陸軍騎兵少佐エルミナ・シャウマハ。彼女は独立混成第341戦闘団の戦闘団長なのだ。この物語は、彼女を軸に展開されるフィクションであり、事実の寓話でもある。若者たちの怒りと憎悪、友情と勇気に彩られた物語が今始まる。
『BLACK LAGOON』で知られる作者・広江礼威。彼が描く作品の魅力といえば、ハードなアクションと武器や兵器のリアルな描写。洋画を見ているような洒落た台詞回し。そして、恐ろしいほど強くてかっこいい女性キャラである。本作にもそれらの魅力がちりばめられているが、『BLACK LAGOON』とは異なる特徴がある。物語の重要人物である女性エルミナが、本来戦いとは縁遠いお嬢様であるらしいということだ。ほわほわした雰囲気のお嬢様が戦車に乗って戦うことになるのだが、果たして彼女の実力はいかほどのものなのか。エルミナを侮っている兵士たちとの関係はどうなっていくのか。画力の高さと物語の興味深さから連載開始早々多くの読者を惹きつけている作品だ。