より良い子孫を残す為、人間として生活をしている化け狸の婚活騒動を描いたラブコメディ。狸のぽんこは女子高校生に化け、たぬ沢蘭子としてセレブが通う盟琳学園に入学し、夫となる好条件の人間の雄を探す婚活を行っている。しかし、ひょんなことから苦手に思っていた人気者の双子・二ノ宮一(にのみやはじめ)&真(まこと)に狸姿でいるところを見つかってしまうが、双子にもぽんこが知らない秘密があった。また、転校生で化け狐のこんの里いなりも加わり、婚活が激化していく。
主人公のぽんこは、食いしん坊で婚活中の雌狸。婚活で重視するのは「健康状態と食糧備蓄の量」という実に動物らしい条件だ。条件に合う男子を探す為に自分の可愛さを最大限に利用する一方で、二ノ宮兄弟の執事に自分の存在を認めて貰うために一生懸命努力する一面も。性格が正反対の一と真に翻弄されながらも交流を深めていくが、転校生の化け狐のいなりがライバルとして現れる。他にも化けネズミの根須豊隆(ねずとよたか)など、人間に化けている動物が次々に現れ、騒動が巻き起こる。そして盟琳学園の理事長の孫である双子の二ノ宮兄弟は理事長の孫で、その身に流れている血や学園の秘密についても徐々に明らかになっていく。ぽんこは食いしん坊で素直で可愛らしいぽんこの婚活を応援してあげたくなることだろう。
大正時代の大阪を舞台に、狸の女の子が落語の世界に魅せられ、落語家の弟子になる落語ファンタジー漫画。ある用事のために大阪にやってきた好奇心旺盛な豆狸のまめだは、人間を化かそうとするがすぐに見破られ、人間に追われてばかり。だが、たまたま人気落語家の大黒亭文狐(だいこくていぶんこ)の寄席を見る機会に恵まれたまめだは、初めての落語にすっかり魅了されてしまった。術ではなく芸で人を化かす落語に衝撃を受けた彼女は、文狐に弟子入り志願をし、落語家修業に励むようになる。
本作は、伝統芸能である上方落語をテーマに、若い雌狸のまめだと師匠の文狐の交流を描いた物語だ。主人公は、ひょんなことから落語に出会い、自らも落語家を目指すようになった狸のまめだ。彼女は文狐が演じた落語「遊山舟」で実際にはないはずの風景が目の前に浮かび、自分が化かされているような気分になり、落語の虜となった。師匠の文狐は普段は厳しいが、時には菓子を与えてまめだを甘やかす。作中には有名な落語の大まかな筋が織り込まれ、「ハメモノ(鳴り物)」と呼ばれる三味線など楽器も数多く登場する。落語に関する用語や説明もさりげなく織り込まれており、落語初心者の読者でも、読めばきっと上方落語の魅力に惹きこまれることだろう。
森見登美彦の小説を原作とし、京都を舞台に狸と天狗と人間が騒動を繰り広げるファンタジー漫画。下鴨矢三郎(しもがもやさぶろう)は、下鴨神社の糺の森に暮らす狸の一家・下鴨家の三男。父親の総一郎(そういちろう)は立派な頭領だったが、数年前に食通集団・金曜倶楽部に捕まり、狸鍋の具となって命を落とした。下鴨家を中心に、大天狗の赤玉(あかだま)先生こと如意ヶ嶽薬師坊(にょいがたけやくしぼう)、天敵の金曜倶楽部、親戚の夷川家らの思惑が絡み合い、やがて総一郎の死の真相についても明らかになっていく。2013年テレビアニメ化。
本作で中心となるのは狸の下鴨一家。頭領だった父親の総一郎は数年前に狸鍋にされてしまい、遺されたのは母親と息子たち四兄弟。責任感が強い矢一郎(やいちろう)、呑気な矢二郎、純真な矢四郎(やしろう)。そして主人公の矢三郎は面白おかしく生きることが好きで、父親の中の「阿呆の血」を色濃く継いだと言われているお調子者。四兄弟の中でも特に化けるのが上手だ。下鴨家は親戚関係にある夷川家との間に確執があり、次期頭領を決める偽右衛門選挙では矢一郎と叔父の夷川早雲が争うことになり、不穏な空気が色濃くなっていく。金曜倶楽部に属す弁天こと鈴木聡美(すずきさとみ)は、マドンナであると同時に物語を動かす重要な存在でもある。狸のお家騒動を通じて家族の絆や切なさが描かれ、家族愛に心動かされる作品だ。
平和な山で暮らす仲良しのタヌキとキツネの2匹の日常を描いた動物漫画。タヌキはタヌキ山で暮らすのんびりした性格の持ち主。キツネ山からやってきたキツネに気に入られ、一緒に仲良く遊ぶようになる。キツネは少しだけイジワルで、タヌキに様々なイタズラを仕掛けてくるが、のんびり屋のタヌキはそれらを緩く受け止めるのだった。異種でありながらも共存し、仲良く暮らすタヌキとキツネを中心に、他にもオオカミやクマなど様々な動物が登場する。
昔から狸のライバルとして狐がよく登場するが、本作では仲良しのタヌキとキツネが登場する。どちらも丸みのあるフォルムで、寄り添う姿はとても可愛らしく、癒される。しかし、キツネは少しイジワルで、例えばキツネがタヌキの寝床で「カチカチ山」の絵本を読み聞かせ、タヌキを怯えさせてしまうことも。タヌキは基本的には大らかで、キツネからどんなイタズラをされても受け入れているが、たまに反撃することもある。また、タヌキはのんびり屋さんではあるものの、一匹オオカミに懐くなど意外と大胆な一面も持っている。異種の動物たちが共存する平和な日常が緩やかに描かれ、台詞量も少なく、動きや表情でクスっと笑えるシーンが多いため、親子で一緒に絵本として楽しむのも良さそうだ。
自分たちの暮らしを守る為、女子高校生に化けた雌狸が東京大学合格を目指して奮闘する姿を描いたファンタジーコメディ。田抜(たぬき)たぬ子は、モフモフの耳と尻尾がチャームポイントの人間に化けている狸。エリートたちを輩出してきた東京大学に合格して人間のボスとなり、人間たちに山を好き勝手させないようにすることが目的だ。しかし、たぬ子が入学した高校には個性豊かな人間が多く、更には人間界には様々な誘惑があり、なかなか勉強がはかどらないのだった。
人間たちは日々の暮らしの中で多くの木を必要とし、タヌキたちが生息する山の木も伐採してきた。主人公のたぬ子は山の平穏を守るため、東京大学合格を夢見て高校に入学し、可愛い女子に化けられたものの、変化が中途半端であり、モフモフの尻尾と耳は隠せていない。そのおかげでタヌキマニアのクラスメイト・春風遊(はるかぜゆう)に懐かれてしまう。東京大学は、一握りの人しか合格できない日本で最難関の大学だ。ましてや狸で学力が低いたぬ子が合格を目指すのは無謀というもの。だが、勉強を友人から教わって点数が上がったことを励みにし、努力すれば必ず合格できると信じており、不合格になることは一切考えていないのだ。そのポジティブ思考こそが彼女の強みといえるのかも知れない。