北幌高校1年生15歳の黒沼 爽子はさわやかな名前とは裏腹に、ホラー映画「リング」（1998年1月31日公開）の中で、呪いを生み出した存在「貞子」の様な容姿の為に「貞子」と同じ存在として、小学校から「貞子」と呼ばれ恐れられるようになっていた。
本人はいつも挨拶もし、人の為に良い事もしているが、外見のせいで周りから逆に捉えられ、避けられてしまう。
そんな中、風早 翔太だけは爽子のことを周りとは違い、自ら挨拶をして声をかけてくれる。
明るく爽やかな風早を中心に輪ができるように人が集っていく……。爽子とは真逆の存在。
初めて会ったのは入学式の日……。
北幌高校の制服を着てうろうろしている男の子に、爽子は道を教えてあげた。いつもなら怯えて逃げる人ばかりだったのに、その男の子は「ありがとう。」と笑顔で言ってくれた。それが、「風早 翔太」だった。
その日から「風早くん」は爽子の憧れの存在になった。
周りから拒否されていることにも慣れてきている爽子は、深く傷つく事にも心が鈍感になっていた。
唯一の幼なじみと話している時に、風早を褒めていたのを本人に聞かれてしまい、「少し話そう。」と言われる。幼なじみが言うには「風早くんはクラスで浮いている子をほっとけない。」らしい。
浮いている自分にも手を差し伸べてくれる「風早くん」を、爽子はますます尊敬していくが、風早が爽子に親切にしてくれるのは別の理由だった……。
2009年と2011年の2回に渡りアニメ化され、その後、2010年に 多部未華子、三浦春馬により実写映画化された。
現在、別冊マーガレットにて連載中、コミックは最新第26巻まで発売中。
椎名軽穂が、前作『CRAZY FOR YOU』の第一作目を書き終えた後、温泉にて主人公のキャラクターを思いついたという。
隣にいた人のくしを拾ってあげたところ、「すみません。」と言われ（本人は良い事しているつもりなのに、怖がられて本気で謝られる主人公ってどうだろう?）と思いついて、主人公「黒沼 爽子」が誕生した。
その後、連載が終わり読み切りを書く事になるが、前作品の暗くて泥沼なストーリーの反動で、椎名曰く「すごいさわやかなマンガがいい。アホみたいにさわやかな男の子がいい。」という事で、「風早翔太」が誕生し、上記の主人公「黒沼 爽子」と「風早 翔太」の超さわやかな読み切り『君に届け』が誕生した。
その後、読み切りで終わるはずだったのだが、次の構想がなかなか浮かばず『君に届け』が連載として始まる事になった。
「人気が出たから読み切りから連載へ昇格したのだろう。」と思っていた人は多いのではないだろうか。
実際、その思い込みを肯定させるようなストーリー展開と、当時のマンガのキャラクターで枯渇していた、真面目で誠実で純粋な性格の持ち主たち……。
元々、世の中の全ての人が持っている純粋な心を、惜しげも無くまっすぐに表現してくれた作品である。
優柔普段でテキトー、人の噂話が大好きな人間が多い中、主人公を含む主要キャラクター達は唯一、人に流されずに自分の考えを信じ、人に伝えようとする。その姿を見て励まされた読者も多いのではないだろうか。
爽子のストーリーや、他のキャラクターのストーリーもそうだが、人とかかわり合うことや恋愛に不器用なのに、一生懸命ぶつかっていくところが心のひだに触れ、感動の涙が溢れてくる。
陰気な見た目であだ名は「貞子」。でも実は前向きな性格。座右の銘は「一日一善」。
よく見ると目が切れ長で美人。周りから拒否されて怖がられることに慣れてしまい、みんなに迷惑をかけないようにいつも気を遣っている。それが普通の毎日であり、いつか友達ができたらいいなと健気に人の嫌がる仕事（委員の仕事や雑用）を引き受けたりしている。
動物の中で犬が一番大好きだが、一番犬に怖がられ警戒される。しかし、めげずに優しくし続ける、心優しい女の子。服の趣味も派手すぎず、清純なお嬢様のようなものを好む。お菓子作りやお料理が大好き。早朝ランニングも日課としている。勉強もでき、人に教えるのが上手。霊感はないのに、生ける都市伝説並みに噂がついて回る。そのことに対し、「みんなの期待を裏切り申し訳ない」と思っている。たまに出る自然な笑顔がとてつもない魅力を放つ。
爽やか、気さくで人気者。まっすぐ意思を貫く性格。座右の銘は「真実一路」。
いち早く爽子の本質を見抜き、その魅力の虜になってしまう。端からは爽子に同情で優しくしているとしか見てもらえない。爽子もそう思っている。
本人曰く、そこまで爽やかではないらしく、「フツーにスケベ」らしい。爽子への独占欲が強いが、爽子に会うまで自分がそういう性格の持ち主とは知らなかった……。
自宅はスポーツ店を営んでおり、父親が今どき珍しい威厳のあるガンコオヤジ。少年野球チームの監督をしている。殴られたりしながら厳しく育つ。
全て完璧に見える彼だが、高校入学を機に野球を辞めた過去を持つ。その原因は……。
義理人情を大切にする感激屋。さばさばした性格。単純でガサツ。座右の銘「腹八分目」。
爽子の純粋さと健気なところに、いつも感激して泣いている。
小さい頃からわんぱくでガキ大将気質。真田 龍とは家がお隣で幼なじみで小中高一緒。龍の兄、透が初恋。龍とはずっと兄弟のような関係でいるつもりだった。龍が辛いとき、心配し過ぎて千鶴が泣いたりイライラしてしまう。高校生になるとその関係が一遍していく……。
いつもクールで大人っぽい、みんなのアドバイザー役。座右の銘「眉目秀麗」。
今どきのオシャレな高校生。美容やダイエットなどが大好きで、男性にモテる上に恋愛の手練手管に長けていると勘違いされている。
派手な外見とはうらはらに、頭も良く真面目。本気で男の人を好きになった事がない。自分より周りの世話を焼いてしまう不器用さを持つ。
千鶴と同様、爽子に出会い人を疑わなくても良い居心地良さを知っていく。
風早の親友で千鶴の幼なじみ。野球部。座右の銘「不言実行」。
自宅はラーメン屋を営んでいる。（たまに千鶴が入り浸ったり、アルバイトしている。）寡黙でクールに見えるが、実は野球の事や食べ物、睡眠、千鶴のことしか興味が無いので何も入ってこない。感情が表に出ないので、周りからは何を考えているかわからないと誤解される事もあるが、千鶴だけはわかっているはずだったが……。
おせっかいで、くったくのない性格。女の子博愛主義。座右の銘「博愛精神」。
「ケントガールズ」というグループがいるほど女の子に人気があるが、モテるというより「友達以上恋人未満」で、女の子達がさみしいときに一緒にいてあげる存在。恋愛相談に乗ったりしている。「女の子としての幸せを放棄している子をほっておけない」と言う、ある意味風早に似ている理由で爽子にちょっかいを出してくる。
世話を焼いているつもりが、風早と同じで爽子の魅力に気がつき始める。
暗い爽子が風早に片思いしているのにかかわらず、風早が「浮いてる子をほっておけない」という理由で爽子を振り回していると勘違いし、爽子を励まそうと奮闘するが……。
担任の体育教師。プロ野球からスカウトがくるほどの野球の腕前を持つ。通称：ピン。座右の銘「唯我独尊」。
本物の霊感の持ち主。（小さいおじさんを見た事がある。）破天荒かつ自分勝手でオレ様気質。高校生よりふざけた存在である。
風早の父親が監督を務める少年野球チームに属していたため、風早や龍のことを幼い頃から知っている。趣味は風早いじり。学校内で恋愛トキメキあっていたり、青春を謳歌しているのが許せないので邪魔をする。
何も知らない爽子に、風早が照れて戸惑うくらいの行動をとるように指示したりする。（爽子は何も知らないのでそれを意味もわからずやってしまう。）
しかし、爽子達が悩んでる時や迷っている時に現れ、的確な励ましやゲキを飛ばし、背中を押す存在。（本人は自覚がないかもしれないが……。）
風早と同じ中学校で、そのときから風早の事が好きだった。座右の銘「用意周到」。
外見がものすごくかわいく清純派美人。華奢で小さく男の子にモテる。
胡桃沢家の女性は代々花の名前をつけられるが、自分は「梅」という名前でダサくて気に入らない。周りの人たちには「くるみ」と呼ばせている。「梅」と呼ぶ人は許せなく、呼んだ人をノートにつけて根に持っている。
風早を想う気持ちは純粋だが、表現の仕方は爽子と逆でどす黒い。
天使のような笑顔を見せながら、あらゆる手練手管を使って、風早を取り巻く女の子達を陥れていく。爽子も千鶴もあやねもその餌食になってしまうのか……。
疲れた心に、純粋でまっすぐな彼らの青春は癒しの材料となるだろう。
高校生活から巣立った彼らの関係にも変化が見え始めた現在。アニメのその後が展開されているので、青春を思い出しながら読んでみてほしい。
