君に届け

君に届け

椎名軽穂の代表作。雰囲気の暗さで悪目立ちする少女、黒沼爽子が北幌高校での学園生活を通して、かけがえのない恋と友情を手に入れ、悩みながらもそれを育んでいく。集英社「別冊マーガレット」にて2006年1月号から2017年12月号まで連載。2008年、第32回「講談社漫画賞」を受賞。2009年10月、2011年1月にテレビアニメ化。2010年9月25日実写映画化。2023年3月Netflix配信で実写ドラマ化。

正式名称
君に届け
ふりがな
きみにとどけ
作者
ジャンル
恋愛
レーベル
マーガレットコミックス(集英社)
巻数
全30巻完結
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あらすじ

第1巻

黒沼爽子は日本人形のような風貌と暗い雰囲気から、学校で「貞子」とあだ名され、不気味がられていた。しかし、クラスメイトの風早翔太だけは爽子を普通に扱い、クラスメイト達の考案したきもだめし大会に誘う。きもだめし大会の詳しい企画について頭を悩ませていた吉田千鶴矢野あやねに、爽子は自らお化け役を買って出る。クラスメイト達を驚かせるという目的を達成して満足する爽子は、それをきっかけに翔太や千鶴、あかねと親しくなる事ができた。実は翔太は、入学式の前に偶然出会った爽子に道を教えてもらった時から、爽子の事が気になっていた。(episode0.「プロローグ」)

爽子はどしゃぶりのある日、学校へ行く途中に捨てられている子犬を見つけ、傘をその子犬にあげて自分はびしょぬれになってしまう。事情を聞いた翔太は爽子と共に子犬を保護し、家で飼う事に決める。次の日、タオルを貸してくれた翔太と、ジャージを貸してくれた千鶴に感謝の気持ちを込めた手作りクッキーを渡そうとした爽子だったが、クラスメイト達から避けられている事を改めて実感した爽子は落ち込み、自信をなくしてしまう。しかし翔太、千鶴、あやねが席替えでわざわざ爽子の周囲の席を選んだ事で、爽子は嬉しさのあまり涙があふれてしまう。(episode1.「席替え」)

翔太の行動がきっかけになり、爽子は千鶴、あやね、真田龍とも親しくなっていく。千鶴と龍は幼なじみであり、翔太とも高校入学以前からの友達だった。翔太と親しく接する場面を目にした校内の女生徒達は、二人が付き合っているのではないかと危惧し、それが噂になってしまう。特に翔太の事を以前から好きだった同じ中学出身の女子達は、噂の真相を気にするあまり、自分達に都合のいい仮説を立ててしまい、噂が独り歩きしてしまう。一方、爽子が交友関係を広げた事により、それまで爽子を避けていたクラスメイト達も少しずつ爽子に打ち解けていく。(episode2.「放課後」)

少しずつクラスメイト達とのあいだの壁を壊していく爽子は、ある日、翔太と待ち合わせて、いっしょに拾われた子犬、ペドロ・マルチネスの散歩をする。そこで爽子が勉強を人に教える事にあこがれを抱いているという話を聞いた翔太は、次の日の学校で自習の時間に、爽子に勉強を教えてほしいと懇願する。翔太に教えているうちに、勉強が苦手な千鶴も加わり始め、やがてほかにも爽子に勉強を教えてほしいクラスメイト達が集まって来る。みんなの役に立てて嬉しい爽子からは思わず笑顔がこぼれ、翔太は改めてその魅力に惹かれてしまう。しかしその一方で、千鶴とあやねに関する黒い噂が校内に広まりつつあった。(episode3.「笑顔」)

第2巻

自分達に関する黒い噂を流したのが黒沼爽子だという情報を耳にした吉田千鶴矢野あやねは、まったく信じておらず、爽子とは今まで通り友達として付き合っていた。しかし悪い噂は、尾ひれがついて広がる一方で、しかもタイミング悪く、爽子がほかの女生徒に対して千鶴とあやねを友達じゃないと話している場面に遭遇してしまう。爽子は単に遠慮しただけの意味だったのだが、部分的に耳にしてしまった千鶴とあやねは、爽子に対して疑いの気持ちを持ち始める。二人とのあいだに重苦しい空気を感じた爽子は、二人に黒い噂が流れているのは自分のせいではないかと責任を感じ、風早翔太からも離れる覚悟をする。(episode4.「噂」)

爽子に避けられていると感じた翔太は、すぐに爽子に対して真意を尋ねる。爽子は自分とかかわると悪い噂を立てられてしまうと考え、翔太から遠ざかろうとする。一方、千鶴とあやねは爽子が意気消沈している事に気づき、爽子が黒幕なのだという噂の真相について考えるのだが、どうしても違和感を感じてしまう。一人ぼっちに戻ろうとした爽子だったが、初めて友達に囲まれた時の喜びを思い出し、もう一人に戻る事はできないと痛感する。放課後、爽子を追いかけて事情を問いただす翔太に対して、爽子はこれまでの自分の状況と気持ちを伝えるのだった。(episode5.「本音」)

翔太にすべてを打ち明けた爽子は、親しくなって嬉しいと思ったのは爽子だけでなく、翔太もまた同じ気持ちだった事を知る。そして、迷惑をかけないように離れようとした自分は、いかに独りよがりだったかに気づく。一方、千鶴とあやねもまた、自分達が爽子をどれだけ大切に思っていたのかに気づき、もし爽子との間に誤解があるのなら、それを解きたいと考えていた。次の日、学校のトイレで女生徒達が黒い噂について話しているのを聞いた爽子は、勇気を出してそれはまったくのデマだと主張する。しかし女生徒達は集団で爽子を囲み、脅そうとする。(episode6.「決意」)

爽子を囲んだ女生徒達は、実は以前から翔太の事が好きで、爽子の事を目障りだと感じていた。翔太から離れるように爽子を脅しつける女生徒達に向かって、爽子は千鶴とあやねのために、噂はまったくのデマだと主張し続ける。そこへ騒動を聞いた千鶴とあやねが駆けつけ、爽子を救い出した。爽子が必死で黒い噂を消そうとしていた事、迷惑をかけないように二人から離れようとしていた事を知った千鶴とあやねは、これまで爽子を少しでも疑った事を恥ずかしく感じる。三人は改めてお互いに抱いている気持ちを伝え合い、翔太はやっと幸せそうになった爽子を見守っていた。(episode7.「友達」)

第3巻

吉田千鶴矢野あやねに誘われて、真田龍の家が経営しているラーメン屋、徹龍軒にラーメンを食べに行った黒沼爽子は、そのまま千鶴とあやねといっしょに龍の部屋に上がり、楽しいひと時を過ごす。龍の中学時代の卒業アルバムに胡桃沢梅の写真を見つけた爽子は、梅が千鶴や翔太と同じ中学校出身だった事を知る。途中から風早翔太も合流し、爽子は普段の学校以外の翔太の一面を見る事ができた。翔太に家まで送られながら、爽子は翔太に対して感謝の気持ちを伝える。(episode8.「土曜の夜」)

千鶴とあやねとなかよくなった事から、爽子はほかのクラスメイト達とも親しくなっていく。翔太は体育祭実行委員に選ばれるが、その情報を入手した梅は、巧妙な手を使って自分もクラスの体育祭実行委員になり、翔太との時間を作ろうとする。一方、サッカーの試合に出る事になったものの、チームプレイが苦手な爽子は、クラスメイトの足を引っ張らないために、放課後一人で自主練をする。委員会の会議室からその様子を見ていた翔太は、爽子の練習に付き合う。そして二人がなかよくボールを蹴っている姿を、梅は悔しい思いで見つめていた。(episode9.「自主練」)

翔太からサッカーのコツを教えてもらった爽子は、以前に比べると格段に進歩を遂げていた。ある日爽子は、翔太を訪ねてクラスにやって来た梅に声を掛けられる。梅と翔太が親しく話している場面を見て、爽子は梅のかわいらしさをうらやましく思い、翔太が梅の事を下の名前で呼ぶのを聞いて、なぜか心がちくりと痛むのだった。そして梅は、翔太の前で爽子の事を友達だと宣言する。(episode10.「新しい友達」)

友達宣言をして以来、梅は爽子の姿を見るたびに声を掛けて来るようになる。その反面、翔太に対して意識し過ぎてしまうせいか、普通に話したり、接する事ができなくなってしまった。爽子の悩みを聞き出した梅は、遠回りな言い方で爽子に翔太をあきらめさせようとするが、爽子はそれに気づかずに前向きにとらえてしまう。実は梅は中学の時から翔太に片思いをしており、千鶴を巧妙に利用したりしながら、翔太を誰にも取られないように画策していた。しかし、遠回しな方法ではらちが明かないと感じた梅は、翔太が好きだという気持ちを爽子に伝え、協力してほしいと頼む事で爽子の気持ちを制しようとする。(episode11.「協力」)

第4巻

恋の応援をする事を断った黒沼爽子に対して胡桃沢梅は豹変し、これまでのいい人の仮面をかなぐり捨てる。そして体育祭当日、爽子は風早翔太との自主練の甲斐があってか、少しだけ活躍する事ができた。梅は自分の名前にコンプレックスを持っており、爽子の前では本性を出すようになったが、それ以外では相変わらずいい人の仮面をかぶっていた。共に翔太が活躍するソフトボールの試合を見ながら、梅は爽子に対し、翔太への気持ちが本物なのかどうかを知るためにも、ほかの男子とも親しく付き合ってみるべきだと指摘する。折しも誰かが暴投したボールが爽子に当たりそうになり、真田龍がそれをかばう。(episode12.「とくべつ?」)

梅は爽子に龍と親しくなる事を勧めつつも、爽子の前では本性が出てしまうようになった梅は、つい自分の翔太に対する思いを爽子に詳しく話してしまう。梅の気持ちを知った爽子は、改めて自分が翔太に対して抱いている気持ちが恋愛感情なのだと意識する。(episode13.「しりたい」)

翔太に対する気持ちが恋愛感情なのだと自覚した爽子だったが、一方翔太は爽子を襲ったボールを、龍ではなく自分が取りたかったと悔やんでいた。爽子と翔太の仲を裂くために、梅は爽子と龍がなかよく話している場面を翔太に見せようと画策する。その一方で、翔太に対して爽子が龍を意識しているかのような嘘の情報を伝える。龍に対してかばってもらったお礼を伝えた爽子は、龍が吉田千鶴の事を好きなのだと知り、友達のために喜んでいた。そんな二人の様子を見た翔太は耐えられなくなり、爽子の手を取って遠くに連れ出してしまう。(episode14.「恋愛感情」)

龍に対してやきもちを焼いた翔太は、正面切って爽子に対して、龍が好きなのかと尋ねる。しかし爽子は、龍への気持ちは恋愛感情ではないと断言する。その頃、千鶴と矢野あやねは龍が嘘の手紙で呼び出された事を知り、黒い噂を流して爽子を陥れようとした事もすべて、梅の仕業なのではないかと推察する。翔太に置き去りにされた梅は翔太が戻って来るのを待つが、爽子達の担任である荒井一市から、自分の事が好きなのだと誤解されてしまい、それを翔太に聞かれてしまう。そして千鶴とあやねは梅を呼び出し、疑惑について追及する。(episode15.「恋」)

千鶴とあやねから、梅が黒い噂を流した犯人だったと聞かされても、信じる事ができない爽子は必死に梅をかばう。しかし、そんな爽子に苛立った梅は自分の罪を認め、爽子の事を邪魔に思っていたという真実を告げる。ショックを受けて涙を流す爽子だったが、千鶴とあやねに対して梅のやった事を、翔太にばらさないでほしいと懇願する。たとえ梅が悪い事をしたのだとしても、すべてが嘘だという事を信じられない爽子は、もう一度梅と向き合おうと考え、梅に対して自分が翔太に抱いている恋愛感情を伝える。梅が翔太を強く思う気持ちを知り、爽子はそんな健気な梅に対して親近感を抱く。(episode16.「くるみ」)

第5巻

風早翔太に対して胡桃沢梅と同じ気持ちを抱いている事から、黒沼爽子はライバル心ではなく親近感を覚える。その美貌から女子達の反感を買ってしまう梅は、嫌われないようにうまく合わせて表面上の友達しかいなかった中学時代に、翔太に対して恋をしていた。しかし、その気持ちを真っ直ぐに翔太に伝えるよりも、翔太をほかの女子達に取られないように画策する方に動いてしまった。その結果、翔太は真っ直ぐな爽子に対して恋心を抱き、梅の思いは叶わなかった。梅は最後に自分の気持ちを真っ直ぐに翔太に伝え、はっきりと断られる。一晩中泣き明かした梅は、爽子に対して正々堂々とライバル宣言をする。(episode17.「ライバル」)

ある休日、吉田千鶴矢野あやねが爽子の家に遊びに来て、楽しい時間を過ごす。その頃、ペドロ・マルチネスの散歩中の翔太は真田龍とばったり出会う。そこへ荒井一市から電話が掛かり、悪霊に取り憑かれているので爽子を連れて来てほしいと翔太に頼み込む。翔太は千鶴経由で爽子に連絡を取り、爽子、翔太、千鶴、あやね、龍の五人で一市の見舞いに行く事になった。一市は風邪で寝込んでおり、看病のあとは全員で散らかった部屋を片付ける。一市はすっかり回復し、一同は帰路に着く。一市からの助言を受けて、爽子は送ってくれる翔太の前で目を閉じ、動揺した翔太は思わず本当にキスしそうになってしまう。(episode18.「休日」)

秋も深まり、正月を待ち遠しく感じる千鶴はいつもより明るく、反対に束縛する彼氏と付き合っているあやねは、いつもより暗い顔をしていた。千鶴は龍の誕生日プレゼントを買いに、爽子と二人で買い物に出かける。龍のために楽しそうに買い物をする千鶴を見て、龍が千鶴を思っている事を以前から知っている爽子は、二人の仲が気になり、千鶴に対して好きな人がいるのかどうかを尋ねる。千鶴が語る幼なじみの片思いの相手が龍だと思い込んだ爽子だったが、詳しく聞いているうちに、龍ではない事に気づく。実は千鶴が好きなのは、龍の8歳年上の兄である真田徹だった。(episode19.「千鶴の恋」)

正月に帰省するはずの徹のために、ミニスカートを履いて見せたいと考える千鶴に対して、次の週末に徹が帰って来るという事を、龍は伝える事ができない。束縛する恋人に別れ話をして殴られたあやねは、既に千鶴の気持ちを知っていた。その日の夜、龍は千鶴に徹が帰って来る事を伝えようとするが、龍への誕生日プレゼントを隠し持つ千鶴は、秘密が苦手なあまり、龍を避けようとする。伝えるべきかどうか複雑な龍は少し苛立ち、週末は龍の家に来るなと忠告する。龍の不機嫌の原因がわからない千鶴は、あやねの助言を受け、早めにプレゼントを渡して謝る事にして龍の家に行くが、そこに突然現れた徹にバッタリ出くわしてしまう。(episode20.「兄帰る」)

第6巻

大好きな真田徹と久しぶりに再会できて喜ぶ吉田千鶴だったが、徹は結婚相手を家族に紹介するために帰省して来たのだった。告白せずに失恋してしまった千鶴に、黒沼爽子矢野あやねはかける言葉がなかった。翌日、徹に会いに真田龍の家に行った千鶴は、家族水入らずの中に入っていく事ができず、徹とは会えないままに再び離れてしまう。夜になって、千鶴は龍への誕生日プレゼントを渡しに行くが、龍は千鶴が失恋した事にほっとしていると発言し、怒った千鶴は龍へのプレゼントを叩きつけて去ってしまう。(episode21.「夢」)

爽子とあやねは、失恋した千鶴に対してなにも言えない自分達を不甲斐なく思い、落ち込んでいた。そんな二人に、心配してくれる友達がいる事が一番の慰めになると、風早翔太が助言する。千鶴は元気なそぶりを見せていたが、龍に対して腹を立て、無視をしていた。龍が強引に声を掛けると、千鶴は龍への怒りを爆発させ、爽子とあやねの前で泣きながら現在の気持ちを打ち明ける。千鶴を慰めるために、放課後に三人は楽しいひと時を過ごし、帰路に着く。しかしそこに突然徹が現れ、千鶴を連れて夜の町を散策する。(episode22.「ミニスカート」)

徹は千鶴と共に思い出の残る場所を巡り歩きながら、幼い頃の千鶴と過ごした思い出を懐かしく語る。昔から今でも、徹からとてもかわいがってもらった事を実感した千鶴は、成長して高校生になった事も認めてもらい、徹に対してずっと秘めていた思いを吐き出す。徹は笑顔で受け止め、千鶴の事をかわいい妹だと思っているという気持ちを伝えた。徹と別れ、一人で海を眺める千鶴のとなりに龍がやって来て、千鶴に対して誕生日プレゼントのお礼を伝える。そして、涙を流す千鶴の事を慰めるため、そっと抱きしめる。(episode23.「初雪」)

2学期も終わりに近づいた頃、翔太がクリスマスにはクラス全員で集まってパーティーをしようと企画する。翔太から誘われて爽子は心が傾くが、家族でクリスマスを過ごす事をとりわけ楽しみにしている父親の気持ちを慮って、クラスでのクリスマスパーティーをあきらめる。爽子は千鶴とあやねには先にプレゼントを渡せたが、翔太に用意してあった手編みの帽子は、自分へのプレゼントだと勘違いした父親の手に渡ってしまう。クリスマス当日、家族で過ごしているところに、千鶴とあやね、そして翔太から連絡が来る。行きたいという気持ちを抑えられなくなった爽子は、少しだけ参加しに行く。爽子を待っていた翔太から携帯ストラップのプレゼントをもらい、爽子は父親からのプレゼントである携帯電話にそれを付け、翔太と初めての番号交換をした。(episode24.「クリスマス」)

第7巻

2学期の終業式、冬休み中の約束を取り付けられないまま風早翔太と別れて冬休みに入ってしまった黒沼爽子だったが、携帯電話を手に入れた事を吉田千鶴矢野あやねに打ち明け、なおかつ大晦日が爽子の誕生日であるという話から、真田龍、翔太も誘ってみんなで初詣に行こうという計画が持ち上がる。千鶴とあやねに促され、爽子は自ら翔太を誘い、翔太は二つ返事で了解する。大晦日当日、約束の時間よりも早めに現れた千鶴とあやねは、爽子にほんの少しだけメイクをほどこし、かわいく仕立て上げる。そして自分達は気を利かせ、別行動するのだった。こうして、翔太と爽子の二人きりのデートが実現する。(episode25.「ふたり」)

爽子と突然二人きりになった翔太は、意識するあまり緊張してしまって、爽子と並んで歩く事さえままならない。しかし千鶴とあやね、龍はそんな二人をうまくフォローし、なおかつ先回りして邪魔をしそうなクラスメイトを見つけては、二人に近寄らせないようにする。翔太は爽子に、女の子と二人で初詣をする事も、女の子にストラップを買ったのも初めての経験だと打ち明ける。そして爽子と翔太はメールアドレスを交換し合い、そのアドレスから大晦日が爽子の誕生日なのだと知った翔太は、爽子になにもプレゼントを用意できなかった事を悔しがるが、一方の爽子は初めて好きな人と過ごす誕生日に幸せを感じていた。(episode26.「誕生日」)

誕生日の話題から、これまで爽子がどんな子供時代を過ごして来たかを知りたがる翔太に、爽子はいつも一人ぼっちながらも楽しい時間を過ごして来た事を伝える。しかし、とりわけたくさんの思い出が詰まっている今年1年は語りつくす事ができない。そんな爽子と初めて出会った時の事を翔太が覚えていたと知り、爽子は驚いてしまう。そんな中、爽子が引いたおみくじが凶だった事を知り、翔太は自分の大吉を誕生日プレゼント代わりに渡す。(episode27.「新年」)

3学期になって再び席替えがあり、翔太や千鶴やあやねと離れてしまった爽子は、これまでのように翔太と話す機会を作れずにいた。そうこうしているうちにバレンタインデーになり、爽子は千鶴、あやね、龍、そのほかいつもお世話になっているクラスメイト達のために手作りチョコレートを渡すが、翔太に渡すタイミングを逸したまま時間が過ぎてしまう。翔太はほかの女の子達からチョコレートをたくさんもらっていたが、義理チョコは受け取っても、本命チョコは断っていた。そんな翔太を見て、爽子は自分のチョコレートには、単なるお礼ではなくて、あわよくば翔太ともっとなかよくなりたいという下心が込められている事に気づき、渡せなくなってしまう。そして翔太は担任の荒井一市さえ爽子からもらっているのに、自分だけチョコレートがもらえなかった事にショックを受けていた。(episode28.「バレンタイン」)

第8巻

4月になり、黒沼爽子は進級して高校2年生になった。風早翔太吉田千鶴矢野あやねと再び同じクラスになった爽子だったが、バレンタインのチョコレートを渡せなかった事から、翔太に対してうまく話せないでいた。爽子は新しいクラスメイトの三浦健人という男子ととなり同士になったが、健人はチャラチャラした性格で、億面なく爽子に対しても接して来る。爽子と翔太がすれ違ってしまっている様子を心配したあやねが翔太に真意を訪ねようとしても、翔太は頑として自分の気持ちを大切にしようとする。翔太は爽子に、爽子にとって一番近いところにいるのは自分だと確認したかったが、爽子を困らせてしまうと気づき、中途半端なところで切り上げてしまう。(episode29.「2年生」)

爽子に対して社交的に話し掛ける健人の姿に、翔太は嫉妬の気持ちを抱えてモヤモヤしていた。爽子に対して気持ちを打ち明けたいと考えるが、自分だけチョコレートをもらえなかった事実を引きずっていた。健人は爽子の暗い雰囲気と固い表情を緩ませてクラスに溶け込ませたいと考え、放課後にクラスメイトを集めて爽子による講習会を開こうと提案する。翔太の呼びかけで大勢集まったクラスメイト達に勉強を教えた爽子は生き生きしており、そんな爽子をほかの誰かに取られるかもしれないと考える翔太は複雑な気持ちを抱えていた。そしてそんな翔太と話をするため、健太が待ち構えていた。(episode30.「忘れて」)

爽子が翔太に対して望みのない片思いをしているのだと勘違いした健人は、爽子が無駄に傷つかないために、翔太に対して爽子に期待させるのは酷だと忠告しようとする。しかし爽子の思いについては内緒のまま伝えようとするあまり、翔太が爽子にかまい過ぎると、せっかく前向きに頑張っている爽子に対して、翔太の事を好きな女子達が意地悪をするかもしれないと警告する。そして、翔太と爽子はあまりにも遠すぎると伝える。健人のお節介に腹を立てつつも、爽子を理解するのは無理だと指摘された事に対して、翔太はショックを受ける。(episode31.「遠い?」)

健人から言われた言葉にショックを受けた翔太は、帰り道にバッタリ会った千鶴に対して、爽子と自分が違い過ぎる事、爽子の事を理解できていない事について相談する。千鶴は深く考えずに、これまでの環境を考えると爽子と翔太があまりにも違うという事は事実だと伝えるが、翔太はますます爽子に対してどういう態度を取ればよいのかわからなくなってしまう。(episode32.「わかってない」)

翔太を意識し過ぎてしまったせいで、普通の対応ができなくなってしまった爽子は、あやねからの助言を受けても、翔太とこれまで通りに接する事ができないでいた。新しいクラスメイト達からも受け入れられていく爽子だったが、翔太とは距離が広がっていた。爽子に迷惑がられているかもしれないと考えると、なにもできなくなってしまう翔太だったが、荒井一市からの助言を受けて、一人で考えてモヤモヤしていてもなんの解決にもならないと気づき、爽子のもとへ走る。しかしその頃、爽子は健人に捕まっていた。(episode33.「走る」)

第9巻

風早翔太が同情心から黒沼爽子をかまい、そのせいで爽子が翔太に対して勘違いをしていると思い込んでいる三浦健人は、爽子に対して翔太をあきらめるように説得する。なるべく爽子を傷つけたくないという考えからの行動だったが、翔太はほかに好きな人がいると健人に聞かされ、爽子はショックのあまり涙を流してしまう。そんな爽子に対し、健人は自分と付き合おうと提案する。しかしその現場を見た翔太は激情し、爽子を泣かせた健人をなじる。そこへ通りかかったクラスメイト達から、どういう事態なのかを問われた翔太は、爽子を好きなのだと告白する。(episode34.「すきなひと」)

翔太の告白を、単なる友達としての好意なのだと受け取った爽子は、周囲の人達の誤解を受けて翔太の名誉を損なわないように気を遣う。しかし、それが翔太にとって拒絶の言葉と受け取られてしまい、爽子が迷惑がっていると勘違いしてしまう。爽子の涙の原因が、自分への拒絶の表れだと思い込んだ翔太は、爽子に対して抱いているのは好意だと伝えるが、爽子はそれを恋愛感情だと気づけずに、単なる友達としての好意だと思い込んでしまう。翔太もまた、自分の恋心を受け止めてもらえなかったのだと曲解してしまう。(episode35.「好意と迷惑」)

翔太が爽子に告白したという情報をキャッチした胡桃沢梅は、健人を捕まえてさらに詳しい情報を聞き出す。一方、爽子は翔太にフラれたと思い込み、授業もサボったまま涙にくれていた。爽子を心配して駆けつけた吉田千鶴矢野あやねは、爽子から事情を聞き、爽子があまりにも自分を卑下した考えから抜け出せない事を知り、もどかしい気持ちと不憫な気持ちと同時に、少しだけ苛立ちの気持ちを抱く。爽子を叱咤激励した二人は、爽子の底力を信じて見守る事に決める。そして梅もまた、ライバルである爽子を叱咤激励し、爽子の鈍感さを指摘する。(episode36.「何を見てるの?」)

失恋したと思い込んでいる翔太に対して、荒井一市は面白おかしくからかう。爽子と翔太の気持ちに気づいている一市は、二人の思いが通じ合っているのにもかかわらず、二人がすれ違っている原因は、お互いがきちんと自分の気持ちを伝えきれていない事だと気づいていた。しかしその中途半端な結果を招いたのは、それっぽっちの思いしか抱いていないからだと判断し、翔太に対してあきらめる事を勧める。一方爽子は、千鶴とあやねに対して謝罪し、自分を卑下せずに二人からの好意を素直に受け止められるようになった事を伝える。(episode37.「あきらめちまえよ」)

学校祭当日、爽子は翔太とのあいだの誤解が解けないまま、気まずい思いをしていた。爽子は健人に指摘され、翔太に対して自分自身が壁を作ってしまっていた事に気がつく。これまで、好きだからこそ臆病な気持ちになってしまい、恥ずかしい、嫌われたくないという気持ちから、相手に迷惑をかけてはいけないという言い訳に逃げて、素直な自分を出せないでいたのだった。しかし爽子は臆病な気持ちや、分不相応だと遠慮する気持ちや、傷つきたくないという気持ちさえ捨てて、自分の思いをすべて翔太に伝えようと決意する。(episode38.「届け」)

第10巻

風早翔太を探して教室にたどり着いた黒沼爽子は、翔太に自分の気持ちを伝える。これまでのお礼と、そして翔太の事を好きだという気持ちを涙ながらに精いっぱい伝える爽子を、翔太は強く抱きしめる。翔太もまた自分の思いを伝えようとするが、そこにクラスメイトの男子が現れ、二人の事を邪魔してしまう。爽子は我に返って教室を飛び出し、学校祭の手伝いに戻る。吉田千鶴矢野あやねに翔太との事を報告した爽子は、そこに現れた荒井一市に、翔太に対して下心を抱いている罪悪感を吐露し、励まされる。その頃翔太は、明日こそ爽子ともう一度話をしようと決意していた。(episode39.「告白」)

学校祭2日目、爽子も翔太もそれぞれ、クラスの出し物のために奔走し、話をするどころか、顔を合わせる事さえままならない。しかし爽子のもとに駆けつけた翔太は、学校中の生徒達がひしめく校庭で、爽子を引き留める。二人のあいだには、どんな邪魔が入っても障害にならなかった。翔太の言葉をさえぎって先に爽子が翔太への下心を打ち明け、クラスのために精いっぱい自分の役割を果たす。そんな爽子に、翔太は改めて自分の爽子への恋心を伝えるのだった。校内の生徒達が見守る中、二人はやっと思いを通じ合わせるのだった。(episode40.「ここから」)

学校祭の打ち上げに、クラスメイト達の待つカラオケボックスに合流した爽子と翔太は、その場にいるクラスメイト達みんなから告白の事をからかわれる。そして、明るくて人気者の翔太と、暗くて不気味がられている爽子が相思相愛になった事に改めて驚く。一次会が終了したが、盛り上がった勢いでクラスメイト達は海へ足を延ばす。そこにいた三浦健人は翔太と爽子を祝福し、一市は翔太をからかう。一市に指摘され、翔太は改めて爽子に対して、付き合ってほしいという意志を伝える。(episode41.「祭りのあと」)

次の日、学校は爽子と翔太が付き合い始めたという話題で持ちきりだった。翔太を狙っていた女子生徒達から爽子が嫌がらせをされないかと警戒した千鶴とあやねだったが、杞憂に終わる。質問攻めになった翔太は、改めてみんなの前で爽子と交際宣言をし、二人は公認の仲になる。しかしその一方で、胡桃沢梅は翔太への思いを断ち切るため、つらい思いをしていた。翔太が好きなあまり爽子に嫌がらせをしようと目論む女子生徒に向かって、梅はその姿がいかに見苦しいかを指摘し、真っ向からケンカを売る。そこに、梅と話をしようと決意した爽子がやって来る。(episode42.「爽子とくるみ」)

第11巻

胡桃沢梅黒沼爽子は屋上で二人きりで話をする。爽子は風早翔太に告白し、付き合う事になった事実を報告する。それは自慢ではなく、謝罪でもなく、単なる報告であり、爽子の梅に対する精いっぱいの誠意だった。爽子の気持ちを汲み取った梅は、翔太にフラれたものの、きちんと告白した事を後悔しておらず、爽子がライバルだったから告白できたのだという本音を呟く。一部始終を聞いていた三浦健人は、梅と爽子の意外な一面に驚き、新鮮な気持ちになる。そして爽子は、梅の気持ちを受け止め、これからもずっと翔太を大切にしていこうと心に誓う。(episode43.「いたから」)

話は入学式の日に遡る。その日、時間よりもかなり早めに学校へやって来た翔太は、知らない道を通って学校へ向かおうとして、道に迷ってしまっていた。そこに声を掛けて来た爽子が、正しい道を教える。爽子に好印象を抱いた翔太は、同じクラスになった爽子が気になり、つい観察してしまう。爽子は口数が少なくて大人しく、暗いイメージを持たれていたが、誰よりも積極的にクラスのために動いていた。それは誰かに押し付けられたり、我慢してやっているわけではなく、爽子が自発的にやっているという事を知った翔太は、爽子の事を特別な異性として強く意識するようになったのだった。(episode44.「あの日」)

付き合い始めた爽子と翔太の初々しい様子に、吉田千鶴矢野あやねは温かく見守っていた。千鶴はあやねが爽子を守るために、翔太の事を好きだった女生徒達や梅に対してフォローした事に対して、素直に賞賛する。しかしあやねは、その行動の裏には優しさではなく計算があるだけだと謙遜する。そんなあやねに、荒井一市は温かい理解を寄せる。真田龍は千鶴との恋の成就を気長に待つ事に決め、翔太と爽子は周囲の人達の驚きをよそに、恋人同士としての関係を築いていく。(episode45.「もうすぐ夏休み」)

爽子と翔太は初めてのデートをする。休日に待ち合わせて、私服姿を見るだけで照れてしまう二人だったが、公園で爽子の作ったお弁当を食べ、散歩をした二人は、プラネタリウムに行く。幸せを噛みしめた爽子は、その幸せが怖いとすら感じていた。帰り際に爽子は、クリスマスに渡せなかったプレゼントと、バレンタインに渡せなかったチョコレートを渡し、喜んでくれる翔太を見て胸がいっぱいになる。(episode46.「デート」)

第12巻

色々あった2年生の1学期が終わり、夏休みが始まった。付き合いだしたばかりの黒沼爽子風早翔太は、夏休みでもいつでも約束をして会う事ができるという喜びをかみしめる。講習を受ける爽子達は、夏休みが始まっても学校で顔を合わせる。ある日、図書館で勉強していっしょに帰る道すがら、爽子は翔太と手をつなぎたくなり、気づかれないようにこっそり手を伸ばす。(episode47.「ちょっとだけ」)

爽子がこっそり触れようとした事を翔太に気づかれ、爽子は恥ずかしくてたまらない。いつも通りに振る舞う翔太に、自分ばかりが普通でいられないと自分を責める爽子だったが、実は翔太もまた爽子の事を苦しいほど意識していた。手をつないで帰る道中、爽子は買い物帰りの母親にばったり出会ってしまう。母親が翔太を招待し、翔太は思いがけなく爽子の家にお邪魔する事になる。(episode48.「普通に見える?」)

爽子からの連絡を受けて、動揺しながら帰って来た爽子の父親は、爽子と翔太に対して素直に祝福できない複雑な思いを抱えていた。しかし、爽子が目に見えて明るく楽しそうになった原因には翔太の存在があると悟った爽子の父親は、やきもちを焼きながらも、翔太を歓迎する。帰り道、翔太は両親から大切に育てられた爽子を大切に扱っていこうと考え、まじめな付き合いを心がける。(episode49.「嫌いになんてなるわけがないんだ」)

話は1年と数か月前に遡る。高校に入学したばかりの吉田千鶴は、同じ中学出身のクラスメイト達と騒いでいた時に、誤って矢野あやねにぶつかってしまう。千鶴はすぐに謝ったものの、声が大きくてガサツそうな千鶴にあやねは悪い印象を持つ。しかし後日、千鶴には悪気がなく、素直でざっくばらんな性格だという事を知り、見る目が変わっていく。千鶴もまた、クールに見えて実はとても熱い性格をしているあやねの事を気に入り、二人はいつしか親友になっていく。(episode50.「大きな声で」)

第13巻

夏休みなのに吉田千鶴は毎日補習を受けている事に嫌気がさしてしまい、三浦健人の提案に乗って、黒沼爽子風早翔太矢野あやねと共に海へ遊びに行く。爽子と翔太は砂浜で遊び、健人とあやねは海を見ながら語り合い、千鶴はナンパして来た男性達を相手に腕相撲大会をしていたところ、野球部のトレーニングで砂浜に来ていた真田龍と会い、二人きりで話をする。少しずつみんなの気持ちが進展する。(episode51.「夏と海」)

夏休みも中盤になり、爽子は翔太の家に遊びに行く。翔太の家はスポーツ品店を営んでおり、店番をしていた大らかで優しい翔太の母親に迎えられる。翔太の部屋に通された爽子は、翔太の昔の写真を見せてもらう。1年生の時のきもだめしの写真を見ながら、翔太は改めて、その時にはもう爽子の事が好きだったのだという自分の気持ちに気づく。(episode52.「風早家」)

爽子の方は、初めて翔太を好きだと自覚したのが、初めて下の名前で呼ばれた時だと打ち明ける。二人は照れてしまい、勉強どころではなくなってしまう。そこへ翔太の母親からの頼みで、少年野球の監督をしている翔太の父親と、チームに所属する翔太の弟、徹太のためにアイスの差し入れをしにいく。爽子はやんちゃな徹太と、強面な翔太の父親から気に入られる。(episode53.「名前」)

夏休みが終わり、2学期が始まった。2学期のイベントには修学旅行が控えており、爽子達は楽しみで仕方がない。一方、夏休みが終わり、校内にカップルの数が明らかに増えていると感じた千鶴とあやねは、翔太との恋愛が順調な爽子と共に、恋の話に花を咲かせていた。下校になり、みんなで帰ろうとしていたところに、玄関で待ち伏せしていた男子が突然あやねに告白する。(episode54.「出会い」)

修学旅行の初日、爽子達は沖縄に向かって飛行機で移動していた。あやねに告白して来た男子は茂木という名前で、あやねは交際を申し込まれてOKしていた。自由行動では爽子は翔太と、千鶴は龍と、あやねは茂木と回るという計画を立てていたのだが、あやねは爽子からの、いつ茂木の事を好きになったのかというピュアな質問に対し、何も答えられないでいた。(episode55.「修学旅行」)

第14巻

黒沼爽子達は沖縄での修学旅行を満喫していた。友達や好きな人といっしょに寝泊まりする特別感や、これからずっと鮮やかに残されるはずの思い出に、爽子は感動する。風早翔太は爽子の事を強く意識しながらも、爽子との付き合いに節度を守ろうと、必死で自分を抑えていた。吉田千鶴は、真田龍が女生徒から告白されたと知り、複雑な気持ちを感じていた。そして矢野あやねは、茂木のキスを受け入れたものの、冷静なまま波立たない自分の心に気づいていた。(episode56.「朝から夜まで」)

あやねのキス話を聞いて以来、爽子は翔太の事を強く意識し過ぎてしまう。龍に告白してフラれた女生徒が、千鶴に因縁をふっかけて来る。キツイ言葉で撃退したものの、千鶴はますます龍に対して面白くない気持ちを抱き、龍に対して誰か好きな相手がいるのかと問いただす。爽子と翔太は二人きりで話しているうちに、お互いの距離の近さを意識し、ドキドキが止まらなくなってしまう。(episode57.「キス」)

翔太は爽子の頬を抑えて顔を近づけたが、そこへちょうどあやねがやって来て、二人のキスは未遂に終わってしまう。千鶴は龍と気まずい状態になってしまった事にもやもやし、あやねは茂木からのキスを拒絶してしまった自分の行動を思い出し、爽子は翔太との未遂に終わったキスを思い出しては、うまく眠れない夜が過ぎていった。(episode58.「どんな顔で」)

爽子は翔太と、あやねは茂木と、千鶴は龍と共に自由行動を過ごす。翔太は爽子に対して暴走してしまいそうな自分を抑えるため、少し距離を置いていた。あやねは、茂木があやねに身体の関係を期待していただけだったという事を知り、平気な顔をして別れたあとに一人涙して、三浦健人に慰められる。千鶴は龍との気まずさを払拭しようと、意地を抑えて話し掛け、龍は千鶴に対して、自分がずっと好きなのは千鶴だけだと告白する。(episode59.「自由行動」)

第15巻

修学旅行をきっかけに、みんなの関係性が少しずつ変わっていた。矢野あやねは茂木と別れ、吉田千鶴真田龍からの告白を受けて以来気まずい関係になっており、そして風早翔太黒沼爽子に対して、以前よりも少しよそよそしい態度を取るようになる。あやねは三浦健人に涙を見られてしまった事を恥ずかしいと感じていたが、健人はむしろあやねの事を意識するようになっていた。そして千鶴は、これまでのような龍との関係がすべて破綻してしまった事を改めて感じ、寂しい気持ちが押し寄せていた。千鶴は龍のために持って来た海苔巻きを直接渡せないまま、逃げてしまう(episode60.「終わったんだな」)

次の日、千鶴は龍と顔を合わせたくないと感じ、学校をサボってしまう。心配したあやねと爽子は、千鶴に連絡を取ろうとするが、つながらない。健人は爽子に、以前爽子の事を特別に思っていた事と、今はあやねの事を思っている事を伝える。能力が高いわりに自己評価が低いあやねの事を、健人は健気だと感じていた。爽子とあやねは千鶴を心配して千鶴の家に向かうが、千鶴が海にいるのではないかと勘を働かせた龍に頼まれた翔太は、千鶴のもとへおにぎりを届ける。翔太は龍との事で悩む千鶴の話を聞く。(episode61.「そんなことないよ」)

翔太からの連絡を受けて、千鶴のもとに爽子とあやねが駆けつける。千鶴は龍との幼なじみとしての親密な関係が終わってしまった事で、深い喪失感を抱えていた。母親同士が友達で、兄同士も友達だという環境から、千鶴と龍は幼い頃からいつもいっしょだった。口数が少なく、何を考えているのかわからないと周囲から誤解を受けがちな龍だったが、龍の気持ちを一番に理解し、伝えるのは千鶴の役目だった。そして、千鶴が龍の兄である真田徹に失恋した時も、そばにいてその気持ちを一番理解していたのは龍だった。やがて、龍にとってつらい出来事が起きる。(episode62.「今はもう」)

龍が小学3年生の時に、龍の母親が交通事故で亡くなってしまう。龍にも千鶴にも優しく、いつも笑顔で見守ってくれた存在がいなくなり、ただでさえ感情を表さない龍は、泣こうともせず、まったく笑わなくなってしまった。そんな龍のために、千鶴は龍の母親がいつも作ってくれたおにぎりを思い出し、龍のために作って毎日届ける。不格好なおにぎりを見て、千鶴が徹のために持って来たのだと勘違いしていた龍だったが、龍のために涙を流す千鶴によって、龍はやっと涙を流す事ができ、感情を取り戻した。そんな事を思い出し、千鶴はその日の夜、龍に対してこれまでの関係が壊れてしまった悔しさをぶつける。しかし龍は、これまでの関係を終わらせ、新しい関係を作る事を望んでいた。(episode63.「終わらせろ」)

第16巻

風早翔太は、黒沼爽子と健全な付き合いをする事を心がけ、下心を抑えるために自然と爽子を避けていた。吉田千鶴真田龍を少しずつ意識するようになり、これまでになかった緊張感を漂わせる。爽子は矢野あやねの助言を受け、今年のクリスマスは翔太と二人きりで過ごす事を期待していたのだが、翔太は爽子に、クラスメイト達とのクリスマスパーティーに参加する事を提案する。(episode64.「彼氏と彼女」)

クラスのクリスマスパーティーに参加する事になった爽子は、翔太の様子がおかしい事に気づき、そのうえで千鶴から翔太が悩んでいるらしい事を耳にする。一方、あやねに対して本気の思いをつのらせる三浦健人は、荒井一市にからかわれながらも、あやねへの思いを伝え続ける。翔太を心配した爽子は二人きりで悩みを聞こうとするが、翔太は爽子を避けるようにはぐらかしてしまう。(episode65.悩みがあるの?)

爽子の真っ直ぐな瞳を見つめ返す事ができず、自分の思いを胸に秘めたまま帰路に就いた翔太は、爽子の父親にばったり遭遇する。爽子と二人きりのクリスマスを過ごさないという事実に念を押され、翔太は改めて、爽子への気持ちが燃え上がらないように自分の気持ちを制御する。そのあと、翔太とばったり会った健人は、翔太に対してあやねへの思いを吐露し、翔太もまた、健人に自分の抱えている恋心の重さに苦しんでいる事を打ち明ける。一方その頃、爽子は翔太が自分を避けているという事実を確信し、深く傷ついてしまう。(episode66.「大事」)

2学期の終業式、翔太との関係に不安を感じていた爽子は、あやねに相談する。不安がほとばしって涙を流してしまった爽子だったが、あやねもまた、自分を本気で好きになる相手などいないだろうという後ろ向きな気持ちを抱えていた。自己評価が低いあやねは、爽子と翔太の関係にあこがれを抱いていた。自分よりも大人で細やかな気遣いができるあやねが自分自身をそんなにも低く感じている事に、爽子は寂しい気持ちを覚える。しかし、精いっぱいのなぐさめの言葉が、あやねに届かない事もわかっていた。その夜、爽子達はクリスマスパーティーに参加する。(episode67.「クリスマスパーティー」)

第17巻

クラスメイト達とのクリスマスパーティーは盛り上がっているものの、風早翔太は幹事として忙しく、黒沼爽子とゆっくり話す事もできないでいた。一方、三浦健人矢野あやねにちょっかいを出そうとする男子生徒を牽制し、あやねにアプローチする。そして吉田千鶴は、真田龍のために買って来たプレゼントがプレゼント交換で別の男子生徒にあたってしまい、慌ててひったくったあげく、店を飛び出してしまう。龍は千鶴の上着を持って、千鶴のあとを追う。(episode68.「プレゼント」)

千鶴を引き留めた龍は、千鶴のプレゼントを受け取り、自分もまた千鶴のために買ってあったプレゼントを渡す。照れて逃げ出そうとする千鶴を引き留め、龍は千鶴と親密な時間を過ごす。その頃、ナースとの合コンに敗れた荒井一市が生徒達を邪魔するためにクリスマスパーティーの会場にやって来るが、爽子とばったり会って毒気を抜かれてしまう。そのまま不安を抱える爽子に対して発破をかけ、悩める爽子の本当の気持ちを引き出す。そして健人は、同じカラオケボックスのトイレであやねの元カレである茂木にばったり遭遇していた。(episode69.「守りたいもの」)

パーティー会場に戻らず廊下で語らう爽子と一市の目の前で、トイレで出会った健人と茂木が真剣な話を始める。修学旅行であやねが泣いていた原因を茂木に尋ねた健人に対し、茂木は下心のみであやねとつき合った事、あやねを傷つけておいて全然その事に気づいていない事が露呈し、健人の逆鱗に触れてしまう。茂木を殴った健人はそのまま逃げだしてしまい、爽子に呼ばれたあやねは殴られた茂木から謝られる。茂木を許し、健人を追いかけたあやねは、健人からのありったけの気持ちを伝えられ、受け入れる。(episode70.「大事にする」)

クリスマスパーティーは解散し、あやねは健人と、千鶴は龍と共に帰っていく。爽子もまた翔太に送られながら帰路に就くが、翔太の心の中はいつも爽子への感情のほとばしりをギリギリのところで止める事で精いっぱいだった。爽子を大切に思えばこそ健全な付き合いを貫こうと思うが、自分自身の中でほとばしる強い感情を押し込める事に苦しんでいた。しかしその悩みを爽子にも伝えずに一人で抱える翔太を見ていて、爽子もまた苦しさを抱えてしまう。翔太に対して寂しさをぶつけた爽子に、翔太は気持ちを抑え消えれなくなり、爽子にキスしてしまう。(episode71.「聖夜」)

第18巻

黒沼爽子にキスした風早翔太は、自分の気持ちを相手に伝える事を忘れていた自分を反省する。お互いきちんと向き合って話をしようと決め、爽子と翔太は爽子の父親から45分だけという許しを得て話をする。翔太は、爽子の事を好きすぎて自分が抑えられなくなるかもしれないと恐れ、そのせいで修学旅行以来ずっと爽子を避けていた事を告白する。本当の自分は独占欲が強い事、爽子を好きになった事でこれまで知らなかった自分自身を発見した事を伝える。(episode72.「45分」)

翔太は、爽子がどれほど自分にとって特別な存在なのか、そして爽子が特別だからこそ、自分の気持ちを抑えられず大事にできなくなる時がある事を伝える。それでも爽子を決して離したくないという本心を吐露した翔太に対して、爽子は自分も同じ気持ちなのだという事を伝える。そして、たとえ傷ついたとしても、相手は翔太がいいという気持ちを伝える。翔太に送られた爽子は、別れ際に頬にキスをし、幸せな気持ちで帰路に着く。(episode73.「たしかめあって」)

爽子と別れて帰路についた翔太は、その夜、眠れない夜を過ごしていた。そこへ三浦健人から電話が掛かって来る。健人は翔太に、矢野あやねと付き合う事になったと報告する。明けてクリスマスの日、あやねと吉田千鶴が爽子の家に遊びに来る。あやねは二人に、健人と付き合う事になった事を報告し、昨夜茂木と会った事、健人が自分を思う気持ちに心を動かされた経緯を伝える。(episode74.「女子会」)

爽子とあやねから追及されて、千鶴は真田龍からクリスマスプレゼントをもらった事を報告する。そして、千鶴は龍の事を初めて男性として意識し始めているという自分の気持ちを伝える。盛り上がっている三人に、爽子の母親がみんなの彼氏を読んでホームパーティーをしようと提案する。呼ばれてやって来た翔太と龍と健人と共に楽しく過ごし、翔太は改めて爽子の父親に挨拶をする。(episode75.「幸せなひととき」)

第19巻

黒沼爽子風早翔太は、元旦の朝にいっしょに初詣に行く約束をする。その頃、矢野あやね三浦健人と、吉田千鶴真田龍と、それぞれ大晦日の夜にいっしょに初詣に行く約束をしていた。大晦日の午後に爽子の家に遊びに来たあやねと千鶴から、翔太は冬休み中ずっと家業の手伝いをやらされており、多忙だという話を爽子は聞く。夜になり、あやねと千鶴はそれぞれデートを楽しむ。そして翔太は、爽子の誕生日が終わる直前に爽子の家を訪ね、誕生日プレゼントを渡す。(episode76.「大晦日」)

元旦の朝に待ち合わせていっしょに初詣をした爽子と翔太は、千鶴からのSOSを受けて龍の家、徹龍軒を訪ねる。そこには、酔いつぶれて寝ている荒井一市の姿があった。久しぶりに実家に戻っていた真田徹から、一市がかつて野球部のエースであり、プロからもスカウトを受けながらもそれを断って教師になったという話を聞く。やっと目が覚めた一市は爽子に対して、将来に関する希望を考えるように宿題を出す。(episode77.「宿題」)

3学期が始まり、爽子、千鶴、あやねはそれぞれの恋にドキドキの学校生活を楽しむ。学校では進路面談が始まり、あやねは自分の成績ですんなり推薦で入れる大学を無難に選ぶが、自己評価が低く、なにかにがむしゃらになった事がない自分を恥じていた。千鶴は将来についてなにも考えていない事に苦悩し、爽子は地元で就職すると決めていたが、一市からもっと自分を高く評価するべきだと言われて悩み、翔太は家業を継ぐために地元に残る決断をしていた。(episode78.「選択肢」)

就職を希望する事を母親に伝えた爽子だったが、母親からはもっと自分の将来についてたくさん考えて迷っていいと言われ、爽子は考える。地元に残る事を希望する千鶴は徹龍軒でアルバイトを始める。あやねが地元を離れて遠くの大学を受けるという話を聞いた爽子は、高校を卒業したらみんなと離れ離れになってしまうという可能性を考え、寂しい気持ちになる。そして翔太は、進路のための三者面談で、学校にやって来た父親から殴り飛ばされてしまう。(episode79.「底にあるもの」)

第20巻

家業を継ぐと発言して父親に殴られた風早翔太は、黒沼爽子に誘われて彼女の家に行き、そこで爽子に色々と話しているうちに冷静になって来る。翔太はこれまで、いつも父親を喜ばせられない自分を不甲斐ないと感じて来た。店を継ぐと決めた事は、心のどこかに、そんな父親の鼻の穴を明かしたいという下心があったのかもしれないと、翔太は自分の気持ちに気が付き、もう一度しっかり考えようと決意する。そして爽子は、教師になりたいという夢を翔太に初めて打ち明ける。(episode80.「好きにしろ」)

吉田千鶴真田龍の実家である徹龍軒でアルバイトをし、その頑張りを認められていた。龍は高校生最後の夏まで野球に全力で打ち込む事を決めており、千鶴はそれを陰ながら応援していた。千鶴は三者面談で荒井一市から、得意な数学を活かして資格を取るという新しい可能性を示唆される。そして矢野あやねは、冒険せず無難にまとまろうとしている事を指摘され、もうひとのびできる実力を持っている、と一市から高い評価を受ける。(episode81.「提案」)

バレンタインのために、爽子とあやねと千鶴はいっしょに手作りチョコを作る。爽子は今年こそちゃんとチョコレートを渡そうと思いつつも、なかなかタイミングがつかめない。爽子とあやねと千鶴は三人で一市にチョコレートを渡し、あやねは三浦健人へ、千鶴は龍へそれぞれチョコレートを渡す。龍に対してドキドキが止まらない千鶴だったが、龍が地元に残らず大学に進学して野球を続けるという話を聞き、ショックで固まってしまう。(episode82.「それぞれのバレンタイン」)

チョコレートを渡すタイミングを外したまま放課後になり、翔太は父親の命令に逆らえずに雪かきのために家に帰ってしまう。爽子は一人で放課後も日直の作業をしながら、自己嫌悪に陥っていた。そんな時に爽子は胡桃沢梅にバッタリ遭遇する。梅にあざ笑われ、奮起した爽子はチョコレートを持って翔太の家に向かう。頑固で強面な翔太の父親に堂々と自分の気持ちを話し、家に招き入れられた爽子は、雪かきを終えた翔太にやっとチョコレートを渡す事ができた。(episode83.「そんなかお」)

第21巻

ホワイトデーの日、吉田千鶴真田龍から、矢野あやね三浦健人からホワイトデーのプレゼントをもらう。黒沼爽子風早翔太に誘われ、放課後二人で雪の中を歩き、いい景色が見える場所でホワイトデーのプレゼントをもらう。そして、翔太が地元の大学に進学する事を決意した話を聞く。(episode84.「ホワイトデー」)

春になり、爽子達は3年生になった。相変わらず徹龍軒でアルバイトをしていた千鶴は、龍が進学のために地元を離れてしまうという事実を受け入れられないでいた。アルバイト終わりに、千鶴は爽子とあやねに愚痴をこぼす。あやねが留学を夢見ている事を聞き、千鶴がみんなと離れる事を寂しがっている気持ちを聞いた爽子は、自分の夢と、誰とも離れたくないと願っている二つの気持ちについて考える。翔太の誕生日プレゼントに、これからも末永くなかよくしていきたいという気持ちを込めた手紙を渡した爽子だったが、進路面接で荒井一市から、札幌の国立教育大学を勧められる。(episode85.「最後の1年」)

熟に通いながら受験勉強に励む胡桃沢梅が札幌の国立教育大学を志望していると聞き、爽子は衝撃を受ける。お互いに同じ夢を抱いているという事を知り、梅は爽子に自分が通う熟の体験を勧める。教師一家の生まれである梅は、何が何でも札幌の国立教育大学に入ろうと決めており、爽子は梅に刺激を受ける。一方、同じ塾に通うあやねは、健人と共に札幌の大学に推薦入学するという約束をしながらも、心の中では東京の大学に行きたいという気持ちもあり、まだ迷っていた。そして、健人が自分に対して持っているイメージについて少しだけ違和感を感じ、一市から評価された時の事を思い出していた。(episode86.「受験生」)

両親に大学進学を希望する話を切り出した翔太は、翔太の父から頭ごなしに叱られていた。父親に対して自分の決心が本物だと証明するために、翔太は本気で受験勉強に取り組む。健人は一市との進路面談で、希望する事はあやねと同じ大学に通う事で、あえて言うならインテリアに興味がある事を伝える。だがインテリア関係の勉強ができる大学に入るよりも、健人はあやねだけを主体に物事を考えていた。しかし、あやねは自分の選ぶ選択肢について悩んでおり、一市に相談する。あやねは一市の言葉で、今まで大人ぶって背伸びして生きていたはずが、既に背伸びする必要がないほど、自身が自分の人生に責任を取るべき大人になる、という岐路に立たされている事に気が付く。(episode87.「行きたい道」)

第22巻

真田龍が人一倍頑張っている姿を見ながら、吉田千鶴は複雑な思いを抱えていた。千鶴は龍と離れたくないという気持ちのせいで、龍が地元を離れて遠くの大学に行く事を応援できず、そんな自分に落ち込んでしまう。千鶴は誕生日に、爽子とあやねからプレゼントをもらうが、朝から晩まで野球に打ち込んでいる龍とはゆっくり話もできないでいた。龍はランニングの途中で千鶴に会いにやって来て、誕生日を祝い、徹龍軒を千鶴が手伝って来れている事、自分を心配して来れている事に感謝の気持ちを伝える。しかし千鶴は、龍と離れる事が耐えられないと感じ、大学なんか行くなと伝える。泣きながら好きだと伝える千鶴に、龍はキスをする。(episode88.「行くなよ」)

千鶴の部屋で朝まで過ごした龍は、また元のように野球で忙しい日常に戻るが、時々ランニングの途中に千鶴に会いに来るようになる。千鶴と龍の関係について興味津々の黒沼爽子矢野あやねだったが、同じ塾に通う胡桃沢梅はそれどころではなく、勉強が思ったように進まないせいでイライラしていた。しかし、数学が得意な爽子から勉強を教えてもらう約束をして、梅はやる気を取り戻す。そして爽子もまた、梅に引っ張られてやる気になるのだった。あやねもまた、目標を決めて努力している二人にあこがれており、なにより高いハードルに対して怖がらずに挑もうとする梅を尊敬していた。そして自分も、高いハードルに向かって頑張りたいという気持ちを動かされる。(episode89.「認めたいの」)

あやねは、ありのままの自分を受け入れてくれる健人に、今の自分の迷いを聞いてもらおうと彼を呼び出す。だが健人は、あやねが無理に勉強を頑張り過ぎないで欲しいと訴え、共に札幌の大学に行く事を確認する。しかし、あやねは心の中にあった、東京の大学に行ってみたいという気持ちを伝える。ショックを受けた健人の顔を見て、あやねは応援して背中を押してもらおうと思っていた自分の甘さを責める。次の日、健人は風早翔太にあやねが東京の大学に進学したいと考えていた事を伝え、あやねの気持ちがどこにあるのか不安を感じている事を相談する。実は翔太もまた健人と同じ不安を抱えていたが、翔太は爽子になにも言わない事を選んでいた。(episode90.「まちがえた」)

梅と爽子は共に受験勉強に励み、お互いの存在を意識しながら切磋琢磨していた。一方翔太も受験勉強に励んでおり、爽子と翔太は二人きりでゆっくり話す時間が取れないでいた。二人きりの時間を作りたいと、爽子と翔太は朝の教室で待ち合わせる約束をし、早朝の教室でのデートは毎日の大切な時間になる。一方、健人はあやねの夢を応援できない気持ちを抱え、あやねを引き留めたいと思っていた。そして千鶴は、龍が遠くの大学に行く事をどうしても応援できず、そのために野球に打ち込んでいる今の状況さえ応援できないと感じていた。爽子もまた、好きな気持ちが相手の重荷になるという、恋の抱える矛盾を知る。(episode91.「待ち合わせ」)

第23巻

矢野あやねは東京の大学をすっぱりあきらめ、札幌の大学に推薦で入学しようと考える。しかしそれを荒井一市に伝える時、引き留めてもらえるのではないかと期待する自分の下心にイラついてしまう。東京の大学について質問して来る三浦健人に対し、あやねはイライラして八つ当たりをしてしまう。しかし健人は、それが付き合って初めてあやねが見せる本音だという事に気づいていた。あやねの部屋で、健人はあやねの事を大切にしたいという気持ちを伝え、東京の大学や留学について考えないでほしいと懇願する。しかしあやねは、それに対して真剣に答えようとせずはぐらかしてしまい、結果的に健人を一番傷つけてしまう。(episode92.「本音」)

あやねは健人に対して本気で向き合おうとしなかった事を後悔し、そもそも健人の事を好きなわけではないのに、告白を受け入れて付き合ってしまった事を後悔する。健人が出て行った部屋に一人でとどまっている事に耐えられず、雨の中をさまようあやねは、一市に遭遇する。事情は話せないながらも、自分が大きな失敗を犯した事を吐露したあやねに対して、一市は失敗したらそれを取り消そうとするのではなく、後悔してそれを次に生かせと伝える。一市から連絡を受けた黒沼爽子吉田千鶴があやねを保護し、あやねは自分がいかに薄情で異性を本気で好きになった事がない欠陥人間かと自分を責めるが、爽子と千鶴は、あやねは誰よりも友達思いで優しいと懸命に伝える。(episode93.「後悔」)

あやねはこれまで、自分には価値がなく、自分に言い寄って来る異性もまた、本気で自分を好きなわけではないと思っていた。あやねからどうでもいいと思われていたといじける健人に対して、爽子はあやねが健人に対してはちゃんと本気で向き合おうとしていたと叱咤する。爽子に叱られた健人は、自分があやねを守ろうとして逆に追い詰めてしまっていた事を反省し、必死で自分の思いに応えようとしてくれていたあやねの気持ちを思い出す。その頃、あやねと風早翔太は文化祭の準備のための買い出しの途中、雨宿りをしていた。あやねは爽子や千鶴や胡桃沢梅のように、誰のせいにもできないほどまじめに自分の目標に向き合いたいと決心する。(episode94.「自分」)

あやねは健人に別れ話を切り出す。これまでの事を改めて、もう一度やり直したいと望む健人だったが、あやねは自分を嫌いなまま健人に甘やかされるのはもう嫌だときっぱり断る。一人で、自分の力で頑張りたいと決意したあやねは、結果的に健人の気持ちに応えられなかった事を詫びる。けれども、これまでの相手とは違って、健人に対して本気で好きになろうと決めた事は、決して流されただけではなかったと伝える。健人はあやねがきちんと誠実に向き合ってくれた事を理解し、自分が少しでもあやねに自信を与えられた事に満足して身をひく。そしてあやねは、東京の大学を受験する事を決め、健人のためにも頑張る事を決意する。(episode95.「ありがとう」)

第24巻

矢野あやね三浦健人は、別れてからもお互いが気を使い過ぎないように表面上は普通に接していた。学校祭の季節になり、校内は慌ただしくなる。黒沼爽子風早翔太の早朝の教室デートは続いていたが、爽子は学校祭の準備もあって寝不足の翔太の事を心配していた。胡桃沢梅とあやねと共に通う塾の模試の結果が出て、爽子と梅は成績を上げていた。梅のやる気に引っ張られて励まし合う爽子だったが、まだ自分の受験する大学については具体的な目標を定められずにいた。ちょうど1年前の学校祭で付き合いだしたという事から学園祭に対して特別な思い入れがある爽子と翔太は、最後の学校祭を迎える事をしみじみと胸に刻む。(episode96.「現在 過去 未来」)

学校祭が始まり、爽子と翔太は共に見て回る。すっかり二人が公認の仲になっている事を爽子は改めて実感する。改めてお互いに感謝の気持ちを伝えあう二人は、恋人同士としての親密な時間を過ごす。一方あやねは、荒井一市から受験へのプレッシャーを指摘され、一市と話すうちにリラックスする。一市から自分の持つ長所を指摘され、思った以上に嬉しいと感じている自分に気づく。そして爽子はクラスの出し物であるお化け屋敷でありったけの頑張りを出すが、疲れて動けなくなってしまった爽子を心配して駆けつけた翔太が突然倒れてしまう。(episode97.「学校祭」)

クラスの出し物であるお化け屋敷で、吉田千鶴真田龍はなかよくケンカしながらお化け役に取り組んでいた。その頃、爽子の目の前で倒れてしまった翔太は、保健室に運ばれていた。寝不足と朝食抜きの上に全力疾走した事でダウンしてしまった翔太を見て、爽子はいつも自分のせいで無理をさせてしまっている事に気づく。保健室でゆっくり休んだ翔太は、帰宅してまた夜通し学校祭の作業に戻る。爽子はそんな翔太を心配しつつ、学校祭が終わったら早朝のデートをもうやめようと言うつもりでいた。(episode98.「ずっと」)

学校祭は最終日を迎え、爽子達は仮装パレードのテーマである、将来の夢にちなんだ衣装を身につける。千鶴はラーメン屋の恰好に扮し、龍とずっといっしょにいたいという気持ちを表す。かつてクラスの中で浮いていた爽子は、今ではクラスのマスコット的存在になり、みんなの人気者になっていた。爽子達のクラスは高く評価され、打ち上げで爽子はMVPとしてみんなから感謝の気持ちを贈られる。その後、爽子は翔太の身体を慮って早朝のデートをやめようと切り出すが、翔太は爽子が札幌の教育大学を受験する事を決心したのだと勘違いし、爽子の気持ちを聞く前に、応援すると伝える。(episode99.「夢じゃない」)

第25巻

真田龍は大事な試合の直前に吉田千鶴に会いに来るが、龍が地元を離れて野球のために大学に行く事を考えると、千鶴はどうしても素直に応援してあげる事ができない。千鶴は黒沼爽子矢野あやねと共に龍の試合を観戦に行くが、ピンチを迎えて苦しむ龍の姿に、試合を見ている事すらできなくなる。しかし応援に来ていた風早翔太から、千鶴の応援を受けた時の龍は必ず打つといわれた千鶴は応援席に戻り、必死でバックネットから龍に声援を送る。(episode100.「がんばれ」)

千鶴の声援を受けて、龍はピンチを脱する。千鶴はあらためて、龍を応援せずにいられない自分の気持ちに気づく。しかし龍のチームはギリギリで負けてしまい、龍の高校野球は終わりを告げる。その夜、千鶴は夜の海で落ち込む龍の前に現れ、大学で野球を続ける龍を応援する事、この町で龍の帰りを待ち続ける事を約束する。龍は千鶴に、戻って来たら家族になろうとプロポーズする。(episode101.「いってらっしゃい」)

龍のために打ち上げをしようと計画した千鶴から連絡を受け、受験勉強に明け暮れていた爽子、あやね、翔太は久しぶりに龍の部屋に集まって楽しい時間を過ごす。千鶴は先に集まった爽子とあやねに、龍を応援する事と、龍からプロポーズされた事を打ち明ける。久しぶりに顔を合わせて話ができた翔太に、爽子は進学についての話をする。(episode102.「絆」)

教育大学に行きたいという気持ちと同じくらい、みんなと離れ離れになりたくないという気持ちを抱えている爽子は、進学先についてまだ迷っていた。しかし翔太は、自分が爽子の重荷になっているのではないかと考え、爽子の背中を押そうとする。爽子はそんな翔太に対して、自分の気持ちを聞こうともせずに決めつけないでほしいと主張し、とうとう二人は初めてのケンカをしてしまう。二人は気まずいまま夏休みを迎える。(episode103.「けんか」)

第26巻

ケンカをしたまま夏休みになってしまった黒沼爽子風早翔太は、特になんの約束もせず、お互いに受験勉強が忙しいという事情もあり、連絡すら取れないでいた。しかし、おっかなびっくり周囲の人達と付き合っていた頃に比べて、言いたい事を言える間柄になったという実感があり、爽子は大切な友達に本音が言えるように変われた事は、すべて翔太のお陰だと実感する。一方翔太は、自分の話をまったく聞こうとせず一方的に決めつけて来る父親への憤りから、自分が爽子に対してまったく同じ事をしていたと思い当たる。二人はやっと顔を合わせ、お互いに自分の落ち度を認め合って仲直りする。(episode104.「もうちゃんと甘えてる」)

爽子と離れたくないという気持ちと同じくらい、爽子を応援したいという気持ちがある事を翔太は打ち明ける。そして、いつもまっすぐに生きる爽子を尊敬し、自分もそうありたいと願っている事を伝える。爽子は、自分がこれまで翔太にあこがれていたのと同じ気持ちを、翔太も感じていたと知る。爽子は約束通り胡桃沢梅を招待し、泊まりの勉強会を開く。大学を目指す梅の決意を聞き、爽子は梅に対して、共に頑張ろうと発破をかける。(episode105.「憧れ」)

精いっぱい勉強に励んだ二人は、布団を並べて就寝する。梅は爽子に対して自分がしてしまった事を後悔していた。自分が爽子に対してやった事を決して忘れないと泣きながら謝罪する梅に対して、爽子もまた涙を流す。爽子と友達になりたいなんて言えるはずがないと、自分の過去の行いを恥じる梅に対して爽子は、友達とは、気づいた時にはすでになっているものだと語る。そして梅と自分は、もうとっくに友達だと伝えるのだった。(episode106.「忘れていいの」)

爽子の家からの帰り際、梅は爽子に同じ教育大学を受けようと伝える。その後、爽子は久しぶりに吉田千鶴矢野あやねと会い、梅が過去にしてしまった過ちを後悔している事を伝える。あやねは帰り道で荒井一市にバッタリ遭遇する。一市の憎まれ口に対して、あやねはいつものように応酬する事ができない。一市からの激励を受けて帰宅したあやねは、一市の事を異性として大切に思っている自分の気持ちを確信する。(episode107.「初恋」)

第27巻

風早翔太の母親が倒れて入院したと聞いて、黒沼爽子は差し入れを持って風早家を訪れる。爽子は翔太の弟の風早徹太や翔太の父親に歓迎され、翔太は父親ときちんと向き合って話をしようとする。頑固で、似ている部分があるからこそぶつかり合って来た親子関係だったが、だからこそ理解し合えるはずだと信じた翔太は、自分の将来について考えている事、家族の事を思っている事などをすべて父親に伝える。(episode108.「言えたよ」)

子供だと思い込んでいた翔太からきちんと伝えられた思いを、翔太の父親はしっかり受け止めた。動揺のあまり入院中の翔太の母親の病室を訪ねたあと、翔太の父親は家に戻る。見舞いに来た翔太と爽子の前で、翔太の母親は翔太の父親が不器用ながらも翔太の事を深く愛している事を伝える。母親から教えてもらって開けたタンスの引き出しには、翔太が幼少の時からの思い出の品が大切に保管してあった。(episode109.「翔太」)

爽子のお願いで、翔太と爽子は秋の一日を使って遠くの遊園地まで遊びに行く。誰にも邪魔されずに、二人きりの楽しい時間を過ごした翔太と爽子は、最後に観覧車に乗る。そこで爽子は翔太に、札幌の教育大学を受験する事を決めたと伝える。そして翔太は爽子を応援する。(episode110.「いつも」)

真田龍の野球推薦が決定し、大学合格が決まった。吉田千鶴は龍の合格を心から祝福する。三浦健人もまた推薦合格が決定し、矢野あやねに報告と激励をする。あやねはくじけそうな時はいつも荒井一市の激励の言葉を思い出し、自分を奮い立たせていた。そんなあやねのいつもと違う様子に気づいた爽子と千鶴は、あやねに直接尋ねる。そしてあやねが一市の事を異性として好きになってしまった事を知る。(episode111.「こぼれた」)

第28巻

終業式の日、少しでもクリスマスイブを共に過ごしたいと思った黒沼爽子風早翔太は、ランチデートをしてプレゼントを交換し合う。その頃、吉田千鶴真田龍と共に二人だけのクリスマスパーティーをしていた。そして矢野あやねは、塾終わりに買い物をして帰る途中にナンパをして来た男性から、偶然、荒井一市に助けられる。そのまま帰り道を送ってもらったあやねは、自分を子供扱いして来る一市に対し、つい自分の思いをぶつけてしまう。(episode112.「気づき」)

大晦日の日、千鶴は実家に里帰りして来た真田徹に、龍と付き合い始めた事を伝える。一方、爽子と翔太は二人きりで初詣に行く約束をしていた。ひどい吹雪の中、待ち合わせ場所にいた爽子を連れて、翔太は自分の家に連れて帰る。そして翔太の母親の勧めにより、爽子は翔太の家に泊まっていく事になる。(episode113.「吹雪」)

爽子と翔太は翔太の部屋で二人きりのバースデーを過ごす。翔太の母親から、くれぐれもおかしな事をしないようにと釘を刺されていた事もあり、翔太は爽子に対してキス以上の事をしないように心掛けていた。翔太は爽子へのプレゼントに指輪を渡す。そして、いつか本物の指輪を渡すと約束する。(episode114.約束)

朝になり、爽子と翔太は初詣へ出かけた。そこへ千鶴やあやね、龍らクラスメイトや一市もやって来て、みんなで初詣をする。久しぶりに一市に会う事ができたあやねは、ドキドキが止まらない。そして爽子達は大学合格のための、千鶴達はこれからの未来を思って祈願をする。(episode115.「ねがいごと」)

第29巻

黒沼爽子風早翔太矢野あやねは、それぞれ志望校の本番を迎える。一足早く第一志望に合格したあやねは、その事を荒井一市に報告しに学校へ行く。しかしあやねは、一市と顔を合わせたとたんに気持ちがあふれてしまうのではないかと考えて身がすくんでしまい、一市に報告する事ができないまま家に戻ろうとする。だが偶然バッタリ会った三浦健人に励まされ、思い直して一市のもとに向かう。そして、一市がもう学校から帰ってしまったという事を聞き、自宅へ向かう。(episode116.「うけとめて」)

あやねを招き入れた一市は、あやねの様子がおかしい事から、あやねが志望校に不合格してしまったものと思い、慰めの言葉を掛けようとする。しかし、それを自分の思いへの拒絶だと受け取ったあやねは、悲しみのあまり泣いてしまう。驚いてなおも慰める一市だったが、あやねが志望校に合格した事を聞き、ホッとする。そんな一市に対して、バレンタインデーのチョコレートを渡しながら、あやねは自分の気持ちを伝える。一市に思いを受け止めてもらう事はできなかったものの、あやねは好きな人に思いを告げる事ができた自分に誇りを持つ。(episode117.「大丈夫」)

試験を終えて地元に戻って来た爽子を出迎えた翔太は、爽子と共に学校に忍び込み、3年間の楽しかった思い出に浸り、この先も幸せな未来を願う。卒業式前の登校日に、あやねは吉田千鶴と爽子に、一市に失恋してしまった事と、後悔がない事を伝える。そして迎えた卒業式に、爽子は首席として卒業生代表で答辞を読む事になっていた。爽子はクラスメイト全員分のマスコットを作り、みんなは喜んでそれを受け取る。(episode118.「宝物」)

爽子は答辞で、これまでの高校生活の思い出と感謝の気持ちを自分の言葉で伝える。クラスメイト全員が爽子の作ったマスコットをつけている中、自分の分を作らなかった爽子のために、翔太は自分のネクタイを爽子にしめる。そしてクラスメイトと一市ら全員で記念写真を撮る。(episode119.「卒業」)

第30巻

風早翔太、続いて黒沼爽子胡桃沢梅も第一希望の大学に合格する。翔太と爽子と梅は、真田龍の家での合格祝いパーティーに参加し、そこで梅は吉田千鶴矢野あやねに過去にしてしまった嫌がらせについて謝罪する。それから間もなく、龍は大学の寮生活に合わせて地元を離れ、あやねも東京での生活に旅立つ。爽子と千鶴に内緒で旅立とうとしていたあやねだったが、爽子と千鶴は駅に駆けつけ、泣きながらお互いに感謝の気持ちを告げる。(episode120.「旅立ち」)

翔太の一人暮らしが始まり、爽子は引っ越しの日に翔太の新しいアパートに行って手伝いをする。共に家の中を片付け、いっしょにスーパーに行き、夕飯を作る事で、二人は新婚夫婦のような気分を味わう。楽しい時間はあっという間に過ぎ、帰る時間になってしまう。まもなく新しい生活が始まったら、なかなか会えない日々が続いてしまう事を爽子は実感する。翔太は爽子を駅まで送るが、爽子は電車に乗ろうとせず、帰りたくないと翔太に伝える。(episode121.「新しい生活」)

爽子の母親に今日は帰らないという事を伝え、二人は翔太のアパートに戻る。突然の事態に翔太は驚きと緊張を隠せないが、爽子は覚悟を決めていた。爽子は翔太に、離れ離れになる事を不安になっているわけではないが、ずっといっしょにいたい、離れたくないと思っている気持ちを伝える。そしてそれは翔太も同じだった。二人は身も心も結ばれ、朝を迎える。(episode122.「おなじきもちで」)

爽子は両親にこれまでの感謝の気持ちを伝え、生まれ育った家を旅立つ。駅では千鶴が見送りに来ており、遅れて翔太もやって来た。千鶴は気を聞かせて退散し、二人はホームでお別れをする。翔太は爽子に、手紙と自分のアパートの合鍵を渡す。そして二人は別々の場所で、お互いの存在に励まされながら真っ直ぐ生きていく。(episode123.「君に届け」)

登場人物・キャラクター

黒沼 爽子 (くろぬま さわこ)

長い黒髪のストレートヘアと口下手のために、周囲に暗い印象を与える少女。だが、本来の性格はいたって前向き。当初は貞子と呼ばれ敬遠されていたが、矢野あやねや吉田千鶴と親しくなったことで、周囲にも徐々に理解されていく。また、入学以来憧れていた風早翔太とは、気持ちのすれ違いを繰り返しながらも、相思相愛の仲となった。 学生の本分である学業は優秀で、しかも教え上手。クラスで開いた勉強会を通して、自分が教師に向いていることを実感した爽子は、大学進学を前に、具体的な未来像の実現に心向けるようになる。

風早 翔太 (かぜはや しょうた)

爽やかな笑顔が印象的な元野球少年。中学時代から女子生徒にもてていたが、恋愛バトルは本人の知らないところで繰り広げられている。だが、翔太の瞳に映るのは黒沼爽子ただ1人。入学式の朝に出会って以来、ずっと好意を持ち続け、2学年の学園祭でようやく告白。念願かなって、晴れて彼氏彼女となった。とはいえ、爽子を大切に思うあまり、付き合いはじめてからも、よくギクシャクしてしまう。

矢野 あやね (やの あやね)

ピアスをした、茶髪ミディアムヘアの大人びた雰囲気の少女。成績はほどほどに優秀で異性にもてる。長い間、恋にも勉学にも中途半端な自分に強いコンプレックスを抱いていたが、黒沼爽子や吉田千鶴の友情に支えられて、ようやく自分の夢に向かって本気の一歩を踏み出した。留学に強い、東京のJ大学が志望。 そのため、つき合っていた三浦健人とはきっぱり別れた。

吉田 千鶴 (よしだ ちづる)

茶髪のショートヘアが似合う、長身の女生徒で、学業はかなり苦手。男勝りな性格だが、情に厚く涙もろい。口数少なく、性格がわかりづらい真田龍の幼馴染でよき理解者でもある。龍に恋愛対象として告白され、戸惑い思い悩む日々を送った後、結局は、自分も龍と離れられないことに気づいた。だが、当の龍が大学野球を目指し、地元を離れることを知り、衝撃を受ける。 本人は地元に残ることを希望している。

真田 龍 (さなだ りゅう)

吉田千鶴や風早翔太の幼友達。野球部のキャッチャーで1年のときから4番打者。将来は、大学野球で活躍することを目標にし、日々練習に励んでいる。口数は少ないが、受け答えは誠実で、黒沼爽子にも彼なりの気遣いを表している。恋愛に関しては根気強く、幼い頃から吉田千鶴を一筋に想い続けている。

荒井 一市 (あらい かずいち)

北幌高校の体育教師で野球部顧問。当初は、黒沼爽子たちのクラス副担任だったが、1年の3学期から正式に担任となった。がさつな性格だが、生徒の長所短所をよく見ており、アドバイスもかなり的確。進路指導では、爽子たちに自分自身を見つめ直すきっかけと、夢へ向かって歩き出す力を与えている。自身の夢は、高校野球をもう一度やること。

胡桃沢 梅 (くるみざわ うめ)

緩やかにウェーブがかかった茶髪、ロングヘアの美少女。中学時代から想いを寄せていた風早翔太が、黒沼爽子を特別視していることに逸早く気づき、爽子を翔太から引き離そうと裏で画策していた。事実を知った爽子は大きな衝撃を受けるが、本音をぶつけ合ったあと、奇妙な友情で結ばれる仲となる。 翔太には、気持ちを告白して失恋した。

三浦 健人 (みうら けんと)

2年のクラス編成で、黒沼爽子たちのクラスメイトとなったノリの軽い男子。矢野あやねの忠告を無視して、風早翔太と爽子にちょっかいを出し、二人の仲をこじれさせたことがある。2年のクリスマスイベント以降は矢野あやねの彼氏となり、まじめにつきあっていた。だが、大学受験を前にして二人はわかれる。

ペドロ・マルチネス

『君に届け』に登場する。雨の日の河原で拾われ、風早翔太の家で飼われることになった犬。新井一市が口にした名前を黒沼爽子が気に入ってしまったため、元大リーグ投手の名前がついたが、普段はマルと呼ばれている。犬に嫌われる体質の爽子は、餌付け作戦を実行して、マルと仲良しになった。

城ノ内 宗一 (じょうのうち そういち)

風早翔太や真田龍と仲のよいクラスメイトだが、空気を読まない性質。よく失恋騒ぎを起こすわりに、恋愛感情にも鈍感で、黒沼爽子を想う風早翔太の気持ちにもまったく気づいていなかった。その鈍感さが逆に、友人たちに愛される要因にもなっている。

真田 徹 (さなだ とおる)

真田龍の兄。無口な弟とは違い、おしゃべりな二枚目で、札幌に住んでいる。吉田千鶴が一途に想いを寄せていた相手だが、別の女性との結婚を決め、千鶴を失恋させてしまう。だが、千鶴のことは妹と思い、チーと呼んで特別に大切にしている。気持ちの整理がつかない千鶴のために、後日、札幌から日帰りで車を飛ばしてくるやさしさを見せ、千鶴の心を癒した。

集団・組織

北幌高校 (きたほろこうこう)

『君に届け』に登場する施設。北海道の架空の町、北幌町にある進学校。比較的自由な校風で、学校祭や体育祭などのイベントも盛りあがる。2学年の学校際では、貞子の黒魔術カフェが模擬店部門で堂々1位に輝いた。ちなみに、そのときに出されたハーブティーには、黒沼爽子が学校の花壇で育てた薬草が使われている。なお、この学校祭は、風早翔太と爽子が互いに想いを告白しあった思い出のイベントでもある。

場所

徹龍 (てつちゅう)

『君に届け』に登場する施設。真田龍の実家が営むラーメン屋で、吉田千鶴がたまにアルバイトとして働いている。千鶴のおすすめは、みそラーメン。2階には真田龍の部屋があり、千鶴と一緒に黒沼爽子や矢野あやねも訪ねたことがある。新井一市は店の常連客。

関連

君に届け 番外編~運命の人~ (きみにとどけ ばんがいへん うんめいのひと)

『君に届け』のスピンオフ作品。黒沼爽子のライバルで後に親友となった胡桃沢梅が主人公。『君に届け』の後日談で、北海道・札幌を舞台に、同じ大学に通う梅と爽子の大学生活を描く。顔はかわいいものの意地っ張りで... 関連ページ:君に届け 番外編~運命の人~

アニメ

君に届け

北海道に暮らす女子高生・黒沼爽子は、極端に陰気な見た目のためホラー映画のキャラクターにちなんで貞子と呼ばれ恐れられている。だが彼女の実態は、人を喜ばせるため日々努力し、ちょっとした会話のなかでも感動を... 関連ページ:君に届け

君に届け 2ND SEASON

北海道に暮らす女子高生・黒沼爽子は、1年生から2年生に上がろうとしていた。陰気な見た目から貞子と呼ばれ恐れられてきた爽子だったが、ピュアで健気な彼女の努力は少しずつ実を結び、クラスメートの印象も修正さ... 関連ページ:君に届け 2ND SEASON

書誌情報

君に届け 全30巻 集英社〈マーガレットコミックス〉

第1巻

(2006-05-25発行、 978-4088460611)

第3巻

(2007-01-25発行、 978-4088461342)

第4巻

(2007-05-25発行、 978-4088461748)

第5巻

(2007-11-22発行、 978-4088462370)

第6巻

(2008-03-25発行、 978-4088462783)

第7巻

(2008-07-25発行、 978-4088463131)

第8巻

(2008-11-25発行、 978-4088463568)

第9巻

(2009-09-11発行、 978-4088464404)

第10巻

(2010-01-13発行、 978-4088464817)

第11巻

(2010-06-11発行、 978-4088465395)

第12巻

(2010-09-24発行、 978-4088465685)

第13巻

(2011-03-11発行、 978-4088466354)

第14巻

(2011-09-13発行、 978-4088466958)

第15巻

(2012-01-25発行、 978-4088467382)

第16巻

(2012-05-11発行、 978-4088467726)

第17巻

(2012-09-25発行、 978-4088468297)

第18巻

(2013-01-25発行、 978-4088468815)

第19巻

(2013-06-25発行、 978-4088450599)

第20巻

(2013-10-25発行、 978-4088451145)

第21巻

(2014-03-25発行、 978-4088451817)

第22巻

(2014-09-12発行、 978-4088452616)

第23巻

(2015-01-23発行、 978-4088453316)

第24巻

(2015-07-24発行、 978-4088454184)

第25巻

(2015-12-25発行、 978-4088454986)

第26巻

(2016-05-25発行、 978-4088455761)

第27巻

(2016-09-23発行、 978-4088456362)

第28巻

(2017-02-24発行、 978-4088457185)

第29巻

(2017-07-25発行、 978-4088457888)

第30巻

(2018-03-23発行、 978-4088440071)

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