子竜と子竜を育てる人間たちの生活を描くファンタジー漫画。物語の舞台は「コーセルテル」という小さな国。かつては「竜の都」とも称されていた。コーセルテルには、子竜を育てる役目を担う「竜術士」たちが暮らしている。魔族の襲撃を受け、国が衰退した今も、竜術士たちに課せられたその使命は続く。生まれた子竜は、竜術士たちの愛情をうけながら、日々たくましく成長していく。続編に『コーセルテルの竜術士〜子竜物語〜』関連作に『イルベックの精霊術士』がある。
生まれたばかりの子竜たちは、好奇心旺盛な子供そのものだ。さまざまなことに興味を持つ、自由奔放な子竜たちの姿は、とても愛らしい。手を焼かされることは多いものの、竜術士たちもまた、愛をもって子竜らを育てていく。人間と竜、異種族ではあるものの、二者の関係性は真の親子のように固い絆で結ばれている。竜術士の愛情を受け、様々な事柄を学んでいく子竜たち。人間と同じく、子竜たちにも性格という個性がある。さまざまなタイプの子竜たちの成長と、子育てに奮闘する竜術士たちの生活を、どうか見届けてほしい。また、本作には、竜術士・竜だけでなく、精霊や獣人といった他種族も多く登場する。練り込まれた世界観を堪能できる、ハイファンタジーとしても秀逸な作品となっている。
ドジでヘタレなドラゴンの日常を描くファンタジー漫画。ドラゴン属のレティは、のんびりとした性格。ある日、父親に指示されて卵番をしていたが、うっかり昼寝をしてしまい、狩人(ハンター)に、あっさりと卵を奪われる。この失態をきっかけに、レティは一族から勘当されてしまう。ひとり(一匹)で生きていかねばならなくなったレティ。のんびりと平和に暮らせる安住の地を探し求めて、ヘタレなドラゴンの壮大な物語が幕を開ける。
ファンタジー作品には、ドラゴンという種族を「高位の種族」として特別なポジションに据えたものが多く存在する。本作も然りなのだが、主人公レティは、飛べない・泳げない・ドジで要領が悪いなど、とことんヘタレなドラゴンである。前途多難なレティの旅だが、エルフ族・ディアリアとの出会いをきっかけに、事態は好転。ディアリアは、建築・不動産業を生業とするエルフだったのだ。何やら怪しい気配はあるが、安住の地「マイホーム」を手に入れることを目的とするレティにとっては、棚からぼたもちの展開。かくして、ヘタレなドラゴンと奇妙なエルフのマイホーム建築計画を兼ねた、不思議な生活が始まる。はたして、レティの夢は叶うのか?ほのぼのとした世界観を楽しみながら、その行方を見守ってほしい。
巫女の少女と呪いの影響で竜の姿になってしまった人間の男性との恋を描くファンタジーロマンス漫画。生まれ育った村に居場所をなくした巫女・ルクル。村を去った彼女は、アズファレオ王国の宮殿に棲む「竜」の世話をする仕事に就く。気難しくて気性が荒い王宮の竜・ユリウスに当初は苦戦していたルクルだが、次第に彼の不器用さ・優しさに惹かれはじめる。奇しくも、二人が惹かれあうにつれ「王国の闇」が明らかになっていくのだった。
見るからにかよわい・小柄な少女が気性の荒い巨大な竜の世話をする光景は、とてもアンバランスだ。実際のところ、鱗の手入れをしていたルクルが怪我を負ってしまうなど、ハラハラするシーンも多い。ユリウスは、そうしてルクルが不手際を起こすたび、激しくたしなめる。ルクルに同情してしまいがちだが、物語が進行するにつれ、彼の乱暴な物言いに「優しさ」が垣間見えることに気付くだろう。当人のルクルもまた、彼の優しさに気付き、惹かれていくのだ。王国が抱える「闇」にも注目したい。ユリウスは、いわばこの闇に飲まれかけている状態といえる。そこへルクルという光が差し込んでくるような展開だ。王宮を舞台に展開される、少女と竜のロマンス。その美しい旋律に酔いしれよう。
人間と子竜の共同生活を描くファンタジー日常漫画。物語の舞台は、東欧のとある国。ある日のこと、日本人留学生の「のの」は、自宅で「白い球体」を見つける。テーブルの下に転がっていたそれは、ドラゴンの卵だった。翌朝、卵が孵化し、一匹の子竜が産声をあげる。一人と一匹、ひとつ屋根の下。人間とドラゴンの、ほのぼのとした共同生活が始まる。原作は縞田理理作のネット小説『台所のドラゴン』本作は、原作のコミカライズ版である。
本作の魅力は「ほのぼの」とした雰囲気。人間と子竜が穏やかな生活をおくる「優しい世界」が、柔らかく繊細な画風で描かれている。主人公「のの」は、自宅で見つけた卵から孵化した子竜を「トカゲ」と認識している。ドラゴンの子供だなんて、これっぽっちも思っていないのだ。孵化して間もない頃は「ちょっと大きなトカゲ」ということで、何とかなる。だがしかし、成長していくにつれ、その認識に無理が生じてくる。トカゲは空を飛ばないし、口から炎も吐かない。ののは戸惑うが、捨ておくような非道なことができるはずもなく、子竜の世話を続けていく。やがて子竜は、東欧で語り継がれる伝説のドラゴン「ドラク」にそっくりな風貌へと成長していく。一人と一匹、秘密の共同生活の行方に注目だ。
召喚士の男と、男に召喚された黄龍(イエロードラゴン)の生活を描くマジカルコメディ漫画。自称・天才召喚士のエンジは、ある日、最強の霊獣・黄龍の召喚に成功する。偉業を成し遂げた自分を褒めたたえ、バラ色の人生に心踊らせるエンジだが、出現した黄龍は「少女」の姿をしていた。拍子抜けするエンジに、少女は言う。さも当然かのように「メシはまだか?」と。召喚士エンジと、黄龍らしき少女キミドリの出会い。期待外れで期待以上の賑やかな生活が幕を開ける。
エンジとキミドリの愉快な関係性が本作の魅力。召喚した側のエンジが、召喚された側のキミドリに、あれこれとコキ使われる。成人男性が少女に翻弄される光景は微笑ましく、見ていて飽きない。文句を言いながらも、なんだかんだでキミドリの要求をのむエンジは優しい。キミドリもまた、エンジの優しさを感じ取っている。立場が逆転しているような気がしなくもないが、二人の主従関係は、次第に確固たるものになっていく。召喚士と召喚獣というよりかは、面倒見の良い兄と、わがままな妹。あるいは、父親と娘。物語が進むにつれ、二人は固い絆で結ばれていく。キミドリという存在を軸に、召喚士として成長していくエンジの姿にも注目。ちょっと異質な人間とドラゴンの共存を堪能できる作品だ。